伊東潤のレビュー一覧

  • 義烈千秋 天狗党西へ

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    余りにも多くのことが次々に起こる時勢の中、とにかくも信じるところを訴えようとした一団が在り、無残に粛清された…敢えて一言で言えば、“天狗党”の歩みはそういうことになるのだろうか?何かそういう辺りに、煩雑な経過の“時代モノ”でありながら、強い“今日性”を滲ませる物語だった…更に余計な話しをすれば…本作は“映画原案”として好適かもしれないと読後に思った…

    劇中人物達の“迷い”のようなものが赤裸々に綴られる感で、少し圧倒された…そういう辺りが、この天狗党の一件を扱った従前の作品とは一味違うと感じた…お勧め!!

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    2014年11月04日
  • 武田家滅亡

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     信玄亡き後の甲州武田家の棟梁となった勝頼だが、長篠で信長と家康の連合軍に破れたことにより、勢力が弱まる。しかしそれだけが原因で武田家は滅亡へとむかったわけではない。

     長篠後の武田家は増大する信長の勢力に対抗するために、南関東を支配する北条家から桂姫を輿入れさせ、同盟を結ぼうとする。


     嫁入り後の桂姫は二心なく一貫して両家の繁栄を祈り行動するが、勝頼の側近・釣閑の策謀により、武田家と北条家の関係は悪化する。金山の枯渇により軍資金の不足が深刻になったと判断した釣閑は北条家領内にある金鉱脈を狙ったのだ。


     武田家が無敵を誇れた一因は潤沢な軍資金にあったが、それも金山があってのこと。武将と言うより経済官僚だった釣閑は、長篠で生き残った信玄以来の古参の武将を悉く遠ざけ、武田家内部で権力を集中することに成功した。しかし軍事には疎く、北条家との同盟を壊し、なおかつ金策にも失敗するという最悪の結果を招く。


     事がそこまで悪化してから、勝頼は自らの不明を家臣に詫び、釣閑を遠ざけるが、あまりにも遅かった。急速に滅亡への坂道を転がり落ちていく。


     勝頼が愚将だったから武田家は滅んだ、というのは簡単だ。
     しかし、勝頼は武将としては優秀だった。棟梁としても私心なく、ただ武田家の行く末に心を砕く、凛々しき青年武将の姿が小説からは見える。


     武田家滅亡の主な原因は金山の枯渇と、長篠で多くの人材を失ったことによる人的資源の欠乏といわれる。
     しかし、人は探し出せばいたんではないかと思う。北条家との同盟をうまく運べば歴史は変わっていたかもしれない。つまりは勝頼が信玄ほど人を見抜く慧眼がなかったということに尽きるのだと思う。釣閑さえいなければと勝頼も思ったことだろう。


     この小説は600ページを超す大作で、登場人物が多すぎるので読むのが大変だ。しかし「長篠の合戦以降に急速に衰えた」と、学校ではわずか一行で片づけられる歴史を、とてもドラマティックに描いている。知らないことばかりだったので歴史小説好きにはかなり面白い。


     信長、家康と拮抗していたはずの武田家が、一気に瓦解する後半は読み応え十分だ。
     
     武田家を裏切る者、武田家に信義を尽くす者、滅亡の際に立たされた人々の生き様の対比が鮮やかで、心を打つ。時代小説の傑作だ。









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    2017年08月15日
  • 海峡の女神

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    太平洋戦争開戦直後から終戦まで、氷川丸とそこに乗り組む軍医中尉河野を主人公として描く。戦いの真っ只中に置かれることはほぼないが、それでも凄まじい業務内容・量である。収容した軍人もかなりの数が死んでいく。
    日本の病院船がほとんど撃沈されたのに、氷川丸だけが(?)攻撃を受けず、戦後まで生き残ったのは運も勿論だろうが、それだけではない。病院船としての塗装、灯りを守り、輸送物資・人員についても極力(100%ではないのが微妙だが)国際法を守ったのが大きいのはだろう。
    病院船の実態がよく分かる。基本的に日本から医療物資を運び、南洋諸島を回って病気(これが多い)と傷ついた軍人に対して医療を施し、戦いに参加出来なくなった軍人を日本に連れ返す。
    17年の初め頃から南洋ではもう米国はかなり強く出ており、結果負傷者が多かった、ミッドウェーが転換点という認識は正しいにしても、ソn前は日本が押していたというのは間違いだ。
    なお、南洋諸島の位置関係、ミッドウェーがハワイより北だというのは初めて認識。

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    2026年09月24日
  • 吹けよ風 呼べよ嵐

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    かの有名な川中島の合戦。初めて読みました。だから登場人物の多さにちょっと困惑しながらも、上杉、武田両雄の熾烈な攻防に加えて、主人公の須田満親と幼馴染の信正が運命に翻弄されながら争う様子が、ページをめくる手を止めさせませんでした。伏兵と陣立までも詳細に書かれた第四次川中島の合戦の臨場感あふれる様子からは、目が離せません。

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    2026年09月09日
  • 江戸を造った男

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    河村瑞賢の一生を史実を元に書かれた❗️
    伊東潤の、「男たちの船出」と同時代だが、この小説では、海路の開発よりも、大阪の治水や、銀山の発掘が中心だ❗️
    ヨット乗りとして、もう少し西側(日本海)の海路、港湾開発が知りたかったが。

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    2026年09月03日
  • 修羅奔る夜

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    東京で派遣社員として働いていた紗栄子だったが兄でねぶた師の春馬が病気になってしまったため、助けに帰郷する。
    動けない春馬の手足になりねぶたを仕上げて行くが、本番2日前に春馬が「これはわしのねぶたじゃねぇー!」と言って壊してしまった途端意識を失い緊急手術となる。
    壊されてしまったので、一時はもう出台を諦めたが、奇跡的に春馬の一番弟子が壊された箇所のスペアを作っており、徹夜で本番に間に合わせ、無事大賞を獲る物語。
    ねぶた祭りへかける青森の人達の思いやねぶた師の強い想いが上手く描かれていて先が気になるまさに題名に奔るとあるように疾走感溢れる小説だった。

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    2026年08月03日
  • 決戦!関ヶ原

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    勝利のため、生き残るため、戦うため
    それぞれの思いで描かれる関ヶ原の戦い
    教科書では一言で終わる戦いの裏に、人々の交錯する思いがあることを感じさせられた

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    2026年08月02日
  • 修羅奔る夜

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    不遇な時代に、懸命に生きることが本当に難しい時代になってしまいました。展開は結構ステレオタイプだけど、1人が立ち上がったら周囲を巻き込めるという展開はなんか心が動くね。昭和おじいちゃんですから。

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    2026年07月29日
  • 走狗<文庫版>

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    「大警視」川路利良は、名前は知っていたが人となりは知らず勝手に清廉潔白な聖人君子だと思っていた。考えたらあの時代の人間なのだからそんな訳ない権謀術数に長けた人間の筈だということを忘れてた。非常に面白かった。

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    2026年07月16日
  • 囚われの山

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    ネタバレ

    着地に失敗した幻の"傑作"。
    それでも、同じ人間として、極限まで頑張る姿に勇気をもらえるので星4つ。
    もし貴方がドニー・アイガー著「死に山」を読んで面白かったのなら、「八甲田山雪中軍遭難事件」に潜む疑問を突いた本書は十分楽しめます。

    以下はネタバレあります。
    1902年1月199人もの犠牲者を出した八甲田山での雪中行訓練は、ソ連の南下策を念頭に陸軍で計画されたもの。
    歴史雑誌編集者が社内企画で社運をかけたのがこの事件。そして調べれば調べるほど計画、装備(防寒対策)、組織体制が杜撰だったことが判明。
    なぜ現地に精通した案内人をつけなかったのか、なぜ防寒対策を軽視したのか、なぜ統率系統を乱す上司の随行参観を許したのか。
    これらの疑問は、人が冬山でどのくらい耐えられるのかという軍の「人体実験」だったのでは、という恐ろしい仮説(疑惑)を生む。
    計画された全行程22kmのうち険しいのは賽の河原から馬立場までの3kmのみという点も甘く見ていた要因の一つだったが、厳冬の八甲田山は秒速20〜30mの暴風雪が吹き荒れ前方が見えなくなり、5〜6mに積もった雪溜まりを踏破しなければならなかった。もちろん、寒冷地出身者や冬山に慣れた隊員もいたが、猛吹雪に外を出歩く危険な経験などなく、ほとんどが素人集団だった。さらに行軍当時は、観測史上最悪の天候だったのも不運だった。
    また、手紙や文献資料を当たっていると、稲田一等兵の行軍参加が濃厚となるが、遭難者名簿には名前がない。
    そして、歴史に埋もれた稲田を主人公とした第三章が展開される。
    そして彼一人、命からがら村にたどり着き助かったと思ったその瞬間、思わぬ衝撃的事態が…
    この辺から小説的展開(フィクション)となり、やり過ぎ感が出てくる。
    ガイド役の小山田が、雑誌記者菅原とはぐれて遭難させようとしたところまでは許容範囲だが、猟銃で脅すとなると話は違う。ここまで傑作だった本書の着地はそこじゃないと歯噛みしている自分がいた。
    さらに、桐野編集長の妊娠というエンディングは壮絶で暗い話を緩和させようとした筆者の試みだと思うが、余計でした。
    そうして「囚われの山」は、ラスト近くまでほとんど傑作だったのに結果残念な1冊(怪作)となりました、ちゃんちゃん。

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    2026年06月29日
  • 幕末雄藩列伝

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    個人的に列伝好きなのだが、人物でなく藩を主体にしたのは珍しい。薩摩や長州藩といったメジャーどころだけなく裏切りの彦根藩や無敗の庄内藩などあまり知らない藩も取り上げており面白かった。

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    2026年06月07日
  • 真実の航跡

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    良かった
    戦後に、いわゆる戦犯になった人間の弁護を通して戦争とはや尊厳などの心を描き熱い物語が展開します

    3234冊
    今年133冊目

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    2026年05月24日
  • 天下大乱

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    この辺の話を最初から知っていると、イメージが湧いて楽しめる。
    そうでない人、興味のない人はそうでもないかも。

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    2026年05月23日
  • 池田屋乱刃

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    池田屋騒動について、それに関わった複数人の志士の立場や視点が描かれており、様々な思いが錯綜しながらこの出来事に至ったのだということがよく描かれていた。

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    2026年05月10日
  • 悪左府の女

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    類まれなる知性と厳格さで、摂関家の再興に執念を燃やす左大臣・藤原頼長。権力を盤石にするため、多子を近衛天皇の入内(じゅだい)へと送り込む。しかし、頼長のあまりに潔癖で妥協を許さない政治手法は、周囲の貴族や皇族、台頭する武士たちの反発を招き、やがて時代は凄惨な内乱「保元の乱」へと突き進んでいく。政争の道具とされた多子が、滅びゆく頼長の背中を見つめながら見出した、自らの生き様とは。。。特徴は、王朝文化の終焉と退廃を見事に小説の中で描き切った点かな。そして、頼長の信念である「理」や「法」と、多子が抱く「情」との対立が物語の通奏低音となっており、読後には滅びゆく美しさと哀愁が深く残りまよ~。

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    2026年04月28日
  • 峠越え

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    桶狭間、姉川、三方ヶ原、長篠など家康の局所となる戦が描かれている。

    本能寺については、そういう展開にするかーとまた新しい解釈で楽しめた。

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    2026年04月12日
  • 峠越え

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    家康の遺訓
    人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くがごとし、急ぐべからず

    そのありようが、随所でみられる本でした。
    驚いたのは
    武田が滅んで、信長にとって家康は用済みとなった。それどころか織田家の天下のために、一転して邪魔者となった。
    本能寺の変は、光秀をつかって家康を殺すはずだったが?
    歴史好きな人には、興味深い本だと思った。

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    2026年04月08日
  • 天地震撼

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    2026.4.7完了
    大筋は想定通りで信虎の存在をうまく活かしていた。さすがは伊東潤だな。面白いです。

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    2026年04月07日
  • 国を蹴った男

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    短編集なので、さらっと読むにはちょうどいい
    読み易いし、ストーリーも面白い
    一本一本ちゃんとしてて、考えさせられるところも多い
    戦国武将の評価や人となりというのは
    本当によくわからない
    全てとは言わないが、かなりの部分は後世に面白おかしく作られたはずで、本当のことは誰にもわからない
    江戸後期から維新の時代だってかなり怪しいわけで
    ましてや信長や秀吉がどんな人間だったかなんてわかるはずがない
    そういった意味では歴史物はやはりファンタジーと言うべきか
    たまたま今大河ドラマで秀吉は出てくるが
    あんなにいい人間であるはずもなく、もっと卑しくてずる賢くて、嫌な人間と考えたほうが自然である
    しかしファンタジーである以上、面白ければよい
    ボクは現代物もよく読むし、好きだけど
    上橋菜穂子や司馬遼が大好きなのだと再認識

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    2026年04月01日
  • 武田家滅亡

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    久しぶりの歴史小説。戦国時代の知識は高校の頃に習った日本史に加えて太閤立志伝ってゲームをちょっとやってたくらいです。みかん転売しまくってた。
    現代とはあまりにも命やプライドの価値観がかけ離れていて、だからこそこの時代にしか存在しなかった美しさみたいなものが後半にかけて押し寄せてくる。それに、どんな時代であっても等しく憧れる生き様、かくありたいという人間が存在していたということを確かに感じました。
    歴史小説の楽しいところって、誰もが知ってる戦国大名から小さな村の兵卒まで、直接的な接点がなくともドラマが繋がっているところが…いいなぁって思いますよね。

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    2026年03月26日