あらすじ
蘇我氏VS 物部氏の骨肉の争いに、推古天皇を中心とした愛憎劇。
功罪半ばする日本最古の“悪役” 蘇我馬子を描く古代史浪漫小説、誕生!
【電子書籍特典】
予防医学研究者 石川善樹×編集者 佐渡島庸平 対談
「伊東潤の小説の面白さについて語る」
「伊東潤の小説は時代を超えて残る」—。
予防医学研究者である石川善樹氏と、伊東潤が所属するエージェント、株式会社コルク代表・編集者 佐渡島庸平。
旧知の仲であるふたりが、伊東潤の小説の魅力について大いに語ったYoutubeチャンネルの回を対談テキストにて収録。
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Posted by ブクログ
数多くの歴史小説を読んできましたが、そのほとんどが戦国時代や幕末、明治維新のものであり、この時代(飛鳥時代)は新鮮だった。そして、最高に面白い一冊だった。歴史小説がお好きな方はぜひ読んでみて欲しいと感じるくらいお薦めできます。全体評価が現在3.57とあまり高くないようですが、私は過去にも全体評価の逆をいくことが多いことも補足しておきます。。
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飛鳥時代の勢力が拮抗している3人の物語。
いろんな方向から読んでみるとより人間性が深まり歴史が面白くなる。
この本の厩戸死亡説はなるほどだけれど、真実は誰にもわからない。
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乙巳の変、俗に言う大化の改新で暗殺された蘇我入鹿の祖父蘇我馬子の物語。中国に認められ、三韓の上に置かれる仏教国家を蘇我氏よ主導で作る野望を胸に物部氏や崇峻天皇、厩戸皇子を暗殺し、蘇我氏の栄華の元となる。厩戸皇子の優秀さが石田三成と被るような印象を持つ書き方で新しかった。
Posted by ブクログ
歴史に疎い方でも教科書程度の知識があればグッと引き込まれそうなドラマティックな人間模様が盛り込まれている点に、著者の読者の裾野を広げたい気持ちが表れていると感じました。
とくに恋愛模様は現代人に完全に寄せている感があります。
時代考証で明らかになっていない部分は大胆に創作しエンターテイメント性で引き付け、大王と豪族の関係や三韓との関係など歴史の軸となる部分は大変分かりやすく、主に登場人物の台詞で解説されているので情報が入ってきやすいです。
仏教を政治外交の具として導入しようとした馬子が、国づくりに邁進するなか生じる迷いや、老いの中で、次第に自身も心から仏教を信仰するようになってゆく様はこの物語の軸のひとつであると思います。
古代を舞台にした作品は貴重だとのこと。学生さんをはじめ歴史の入門書にも良いと思いました。
Posted by ブクログ
人物の実在性すら確証の取りづらい時代について、当時の東アジア情勢や氏族間の勢力関係などに基づいて、納得感のあるストーリーで史実がつなぎ合わされていて、面白かった。著者の作品としては初めて読んだが、他にも歴史小説の作品があるようなので、これからぜひ読んでみたい。
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6~7世紀を描いた時代小説が少ないのは史実を裏付ける史料が少ないためと思料する。著者は今までにないぐらい大胆に大王や王子、蘇我・物部の大臣等を生臭く・人間臭く描き、作品の評価としては真っ二つに割れることは十分承知の上で上梓されたと思うが、私は是の方に与したい。私もこの時代の知識は教科書レベルしか知らないので史実云々は置いておくとして、この時代を生き、国を治めた為政者に親近感を抱かせることは十分貢献できる作品。歴史的評価はおいても、蘇我馬子や推古天皇、厩戸王子の人間臭さはとても興味深く面白く読ませてもらった。
Posted by ブクログ
山岸凉子さんのコミック『日出づる処の天子』にハマった者としては堪らない作品だった。
あちらは厩戸皇子(聖徳太子)が政治的工作活動から汚れ仕事までを裏で行い、大王という飾り物ではなく摂政(=執政者)という実を取るために強かに立ち回るまでを描く話だったが、こちらは蘇我馬子が主役。
当時としては新しい宗教である仏教を日本に取り入れ、仏教で国を束ね一つにしていくことを理想とし、そのために時に手を血で汚しながらも邁進していく。
日本古来の神道を掲げ、仏教を国教とすることに猛反対する物部守屋を始めとする一派との戦い。
その一派が担ぎ上げる穴穂部皇子の排除。
即位した途端に強硬な姿勢で蘇我一族と対抗する崇峻天皇の排除。
そして馬子のやりたかったことを次々実現させていく厩戸皇子との確執。
偉大な父・稲目の遺言に従い、最初は自信のなかった馬子が国と一族の繁栄のため、時に恋愛関係のある女性と別れても時に人を殺してでも突き進んでいく姿は彼の覚悟と信念を感じさせた。
特に額田部女王(後の推古天皇)との関係は新たな視点で面白かった。
権力が集中すれば周囲の人々からの嫉妬と非難を買い、権力が分散すれば決断と実行が進まない。難しいバランスだ。
『この国と王家、そして仏教を守っていくことが、わが一族の使命だ』
その使命のためならとどんな汚れ仕事も、人を陥れることもやってきた馬子だが、晩年に振り返るシーンがある。殺生を禁ずる仏教を繁栄させるために殺生を行ってきた馬子や額田部は万寿国(極楽浄土)に行けるのか。
厩戸皇子と馬子の息子・蝦夷が予想以上に強かで面白かった。ダークな厩戸皇子に出会うのは『日出づる処の天子』以来ではないだろうか。しかしあちらでは毛人(蝦夷)と厩戸皇子との決別は描かれていたものの、そこからどう山背大兄皇子排除に繋がるのかが想像できなかった。
一方この作品では蘇我一族と厩戸皇子とは共存の余地がないように描かれていたために、さらに後の乙巳の変までの流れまでが自然に想像できた。それも厩戸皇子の呪いが出てくるなんて、ちょっと『日出づる処の天子』に通じるところもあってニヤリとする。
国と仏教の繁栄への道に背くものを排除してきた馬子が、国と仏教の繁栄という理想を同じくし次々実現していく厩戸皇子にも反抗心を抱く理由が面白い。馬子は大王を補佐し支える立場にありながら、国を造り覇王であることに拘った男でもあった。結局は厩戸皇子と蘇我一族は共に生きることは出来なかったということか。
逆に馬子の長男・善徳が僧として文字通り仏に身を捧げる姿は地味ながら馬子・蝦夷親子と対照的で印象に残った。
最近の研究で推古天皇は伝わっている以上に政治力があったという説もあるようだが、この作品での額田部女王もこれはこれで良かった。
蘇我一族は入鹿の代で歴史から姿を消すが、稲目から四代にかけて守ってきた仏教や仏教と共に入ってきた様々な文化はその後も栄えていくことになる。
Posted by ブクログ
仏教国家を造ろうと奮闘した蘇我馬子の小説。
読み進めながら、馬子と一体化した。共に権勢の頂に上り詰め、排除し、老い衰え、この世を去っていく。天寿国の末席に行けただろうか。
伊東さんの読者を登場人物にグッと感情移入させるというか、一体化させる筆致は本当に素晴らしい。これは『修羅の都』の頼朝や政子の時もそうだった。今回は特に馬子と額田部。共に苦悩し、感情を押し殺し、嫉妬し、時にハッとさせられた。
しかし、人によって一概には言えないが、遺言とは人を縛るものであり(稲目→馬子)、子どもに親の思いはなかなか伝わらない(馬子→入鹿)ものであるなぁ。
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国を守り、そして仏教を守るため、蘇我馬子と額田部こと推古天皇は、あらゆる手を尽くす。
蘇我氏が四代にわたり守り抜いた仏教は、大和国の隅々にまで浸透し、日本は仏教国として栄えていく事になる。
今まで遠い世界であった歴史がこの本により、私たちの手元にきたように感じます。ドラマティックな展開で飽きさせない。是非いろいろな方に読んでいただきたい。
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記録がほぼ無い時代を、時系列情報だけで膨らませる力はやはり作家さんというのは凄い
新聞連載を元にしているため、軽く読める様にしてあるのでしょうが、セリフと心情描写ー説明ーでストーリーが進められるのが物足りない
とはいえ、後半以降は引き込まれる内容 古墳時代の歴史小説は少ないので、もっと書いていただきたい
アニメにしたら面白そうです
Posted by ブクログ
蘇我氏といえば乙巳の変で討たれた蝦夷・入鹿親子がまず浮かびますが、そもそも蘇我氏を大きくしたのは稲目・馬子親子なわけで、その辺りのお話は厩戸皇子目線のお話を以前に読んだけど、馬子目線のお話は初めてかもですね。時代の流れはよく分かったけども何だろう…何か物足りない感が残るなぁ(^^; この作家さんは3冊目ですが、最初に読んだ本はほんと面白かったのにな…うん。
Posted by ブクログ
蘇我馬子の後半生を描く歴史小説。
黒岩重吾以来、古代小説の書き手が少ないので嬉しいです。
冒頭に入鹿暗殺が出てくるので、蘇我氏4代の大河小説とした方が、この時代を理解するには良かったかもしれません。
登場人物では額田部(後の推古天皇)との関係や崇峻厩戸(聖徳太子)の有能さ、崇峻天皇との対立などはうまく脚色されていると思いました。
一方、敵方の物部氏や穴穂部についてはちょっと乱暴な扱いかなと感じました。
特に新解釈っぽいのは厩戸との対立と暗殺だと思います。
もっとこの時代を描いてほしいと期待します。
Posted by ブクログ
物部守屋や崇峻天皇たち排除される側の扱いが酷いので、彼らのことが好きな人が読むには心構えが必要。
かといって蘇我マンセーしたい人向けか?と問われればそうでもないような…