伊東潤のレビュー一覧

  • 修羅の都

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    2022-06-17

    「修羅の都」(伊東 潤)を読んだ。
    約三年ぶりに再読。
    伊東潤氏の"してやったり"という顔が目に浮かぶようだ。
    我々読者はもはや抵抗する術もなくがっちりとハートを鷲掴みにされて、はやる気持ちを抑えつつページを繰るのであった。
    『永井版 政子』も悪くはないのだが、私はこちらに軍配を。

    2019-09-24

    「修羅の都」(伊東 潤)を読んだ。
    透徹した視線で頼朝と政子の生き様を見事に描ききる。
    抑え気味の筆致がクライマックスにおいて一気に極限の高みに駆け上る。
    嗚呼、痺れる!
    これは伊東潤氏の代表作のひとつになるかもしれない。

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    2019年09月24日
  • 横浜1963<文庫版>

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    本作は「米国人の風貌を持つ日本人」(=ソニー沢田)と「日本人の風貌を持つ米国人」(=ショーン坂口)という“境界”に在るような、やや複雑な背景の視点人物達を設定している。そして物語が、「戦後から高度成長の真っただ中へ」、「オリンピックを経て大きく踏み出そうとする前夜」という時代の“境界”という状況下に在る1963年の横浜で展開するのだ。
    “境界”に在るような、やや複雑な背景の視点人物達が、警察官や憲兵という「正義を貫く職分」で「正義を貫きたい」とする強い想いを抱きながら、「色々な事情」の下で苦闘する、“境界”を蠢くというような感もした物語だ。全般として、各々の社会で「やや異質?」な者達が自身と社

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    2019年07月19日
  • 野望の憑依者(よりまし)

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    ネタバレ

    鎌倉時代の終焉から建武の新政、南北朝、室町幕府が勃興するあたりの時代には疎く、この作品の主人公「高師直」も名前ぐらいしか知らなかったが…。伊東潤の筆のおかげもあるんだろうが、思ってたよりずっとオモロい小説だった。
    高師直といえば、名前しか知らない俺でも、日本史の中では名だたる悪役だと知ってるくらいのワル。主人公に持ってくる人物がシブいよなぁ。

    彼には「実力主義で野心と栄達に強欲」という一本まっすぐな信念が貫かれている。そのためには既得権益や情やそんなものは一切無用、皆が仲良く平和に暮らす世界などクソくらえだと豪語する。いやーワルい、潔い。ワルの信念を貫き、主君足利尊氏に天下をとらせるため東奔

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    2019年07月14日
  • 吹けよ風 呼べよ嵐<文庫版>

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    伊東潤さんの作品は、読み手を「そこ」に連れていってくれる。目に見えるものや聞こえてくるもの、感じられるもの。そして、人物たちの心情までも。
    ページをめくる手が、止まらない。

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    2019年06月16日
  • 吹けよ風 呼べよ嵐<文庫版>

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    ネタバレ

    甲斐の武田と、北信の勢力による支援要請を入れた越後との争いである川中島合戦を詳しく描く作品である。主要視点人物は、信濃出身で上杉家に仕えるようになる人物をモデルにしている。
    本作は「合戦の場面」が非常に多い。殊に「最大の激戦」と伝えられる“第4回”の戦いの辺りは凄い…
    何か…欲深き者に欲無き者の平穏がかき乱されるというようなことがあって、それに抗うという、作中の越後・信濃陣営が掲げる“正義”というようなモノに共感を覚える面も在る…

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    2019年06月11日
  • 城を攻める 城を守る

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    実際に戦闘の舞台となった城について、図とともに解説。あとがきにもあるとおり、作家さんが内容にこだわって書かれた逸品。図が秀逸すぎる。それぞれの城に行く前に再読したい。

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    2019年05月08日
  • 決戦!本能寺

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    本能寺といえば明智光秀。時代小説を読んでいて様々な説に出会ってきましたが更に濃い物語集でした。光秀の後ろからどれだけ沢山の糸が引かれていたのか。千利休黒幕説が面白かったです。信長はあれね、もう少し人の心をね・・・と言っても詮無いことですね。

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    2019年04月25日
  • 江戸を造った男<文庫版>

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    以前、伊東さんがTwitterで「何かを学ぼうとする読書は、もう古い。教養としての読書。」というようなことをおっしゃっていた。確かに今までは何かを学ぼうと思って、読書をしていたところがある……。

    河村屋という材木商がいた。彼は急増する江戸に米を運ぶため、海の道を作り、治水をし、大阪の治水までし、銀山まで開いた。晩年は、瑞賢と号した。

    ほほぅ、そんな人が、いたのか。で、良いのかもしれない。

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    2019年02月23日
  • 天地雷動

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    ネタバレ

    今まで読んできた伊藤潤の歴史小説の中でも、屈指の面白さだった。歴史小説というジャンル内だけでなく、これは中々スゲー小説だ!

    長篠の合戦を描いた歴史小説。誰か一人を主人公に据えるのではなく、4人の主人公(武田勝頼・徳川家康・羽柴秀吉・地侍の宮下帯刀)の視点から、細かい章立てでめまぐるしく替えて描き切るテクニックが活きる。

    4人の主人公それぞれの傍にいる参謀役というか相方がまたそれぞれに良い味を出していて、対比のさせ方も上手い。筆の力もそうだけど、技巧で読ませるあたりがニクいなぁ~

    武田家終焉の切なさも去ることながら、信長・秀吉・家康の特徴が典型的によく分かる。この本を読めば、ほととぎすの句

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    2019年02月09日
  • 江戸を造った男<文庫版>

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    冒頭の方で、木曽を訪ねた七兵衛が出くわした地元の子ども達に「一寸した玩具」として、子ども達が珍しがった銭をあげる場面が在る…七兵衛が大物になって行く前の、「明暦の大火」というようなことで江戸が大変な騒ぎだったような時代…「全国津々浦々で銭が幅を利かせていたのでもない」という状況が反映されている…七兵衛が手掛ける航路のような、全国各地を結ぶ輸送ルートが拓かれ、定着して発展する中、全国津々浦々で“貨幣経済”ということになって行く…或いはそれが「江戸時代の社会変化」な訳で…正しく七兵衛は「“江戸時代”と呼ばれるモノの礎を造った」ということにもなる訳だ…
    或いは…「“ビジネス書”的な“時代小説”」とい

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    2018年12月10日
  • 天地雷動

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    武田信玄の死から長篠合戦終結までの、四者(勝頼、家康、秀吉、武田方雑兵ら)の物語。

    「武田信玄、死す―」元亀4年、その噂が戦国の世を揺さぶった。
    父の悲願、天下掌握を果たすべく信長の追い落としを謀る勝頼。
    生き残りを賭け謀略をめぐらせる家康。
    信長の命で大量の鉄砲調達に奔走する秀吉。
    そして兵として戦場を駆け回る地侍の宮下帯刀。
    男たちは長篠の地に集結し、死力を尽くした戦いに臨む。

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    2019年09月01日
  • ライト マイ ファイア

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    伊東潤氏の作品としては近代歴史ということで随分と毛色が違うのかな?と思いましたが、史実を的確にわかりやすく伝えようとされている点は他の作品と全く変わらず読みやすい作品でした。
    よど号ハイジャック事件というのは私が生まれる前の事ですので、あまり良くわかっていませんでした。よくTV番組で特集を組まれているのを見た記憶程度を持ち合わせていたレベル。
    TV番組では起こった事象を表面的に解説したり、被害者の視点に立って解説されたりというレベルですので、語られない(語れない)事実もあるのだろうと思います。
    伊東潤氏は他の作品においても、その場にいるかのような表現をされ、どちらか一方の視点だけではなく、何が

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    2018年09月17日
  • 鯨分限(くじらぶげん)

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    本作は覚吾という人物が、幕末期から明治期の「大きな時代のうねり」という中で、個人的な事や仕事の様々な問題、時代の動きの中で生じた出来事に「飽くまでも諦めずに、果敢に挑む」という姿が描かれる…覚吾の“後半生”とでも呼ぶべきか、“区切り”とでも呼ぶべきか、或いは“曲がり角”となって行くのが「明治11年の冬の日」の出来事である。その出来事の顛末と、そこまでの道程が語られる訳だ…

    「産業、経済、社会の構造を創る営為」を束ねて行く立場の人物…小説の劇中人物として登場する場合、色々な描かれ方が在るのであろう…本作の覚吾は、「なかなかに惹かれる人物」で“力”を分けてもらえそうだ…

    そういう愉しさが在るの

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    2018年09月05日
  • ライト マイ ファイア

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    伊東さんの歴史小説ばかりを追っていましたが、この現代史のミステリーも超おもしろい。
    よど号ハイジャックと簡易宿泊所の放火事件を見事に繋げたこの点と線の描写は秀逸です。
    一気読みは間違いなし、おもしろ過ぎです。ドラマ化、いや映画化を激しく希望する。

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    2018年08月11日
  • 走狗

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    幕末の動乱から明治初期を駆け足でウォークスルーができるとともに、川路という そこまでこれまで注目されていなかったであろう人物の視点で眺めることができるのは、非常に楽しく一気に読むことができた。
    川路がやった歴史も手伝い、ミステリー・サスペンス的な流れもあり歴史小説にはない面白さを見つけることができる。

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    2018年07月29日
  • ライト マイ ファイア

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    実際の事件を扱っているので、興味深く読めた。主人公の心の揺れも、きっとこんな人もいただろうなという気持ちにさせられる。この時代には生きてないけど、焦燥感とか喪失感とか若者にはあったんだろうなーということをつねづね思う。読後感も大変良いなと思います。

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    2018年07月26日
  • 吹けよ風 呼べよ嵐

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    「吹けよ風 呼べよ嵐」(伊東 潤)を読んだ。信玄や謙信目線の川中島決戦ではなく『須田満親』目線の川中島決戦が新鮮で面白い。またしても伊東潤氏の妙手にしてやられた感たっぷりである。今年の夏に(今はもう静かな)川中島古戦場跡とか海津城跡とか行ったんだよね。読んでから行けばよかったな。

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    2018年07月06日
  • 武田家滅亡

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    「武田家滅亡」(伊東 潤)を読んだ。
    『絶対に泣くもんか!』
    そう思っていたのに、両頬を伝うこのしょっぱい水はなんだよ。
    伊東潤氏にしてやられたなぁ。
    歴史が変わるわけではないのだが、『もしもあの時・・・だったら』そう思わずにいられない哀しい物語。
    見事な書きっぷりに脱帽です。

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    2018年07月06日
  • 江戸を造った男

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    ネタバレ

    河村瑞賢と言えば、高校生の時、日本史の問題集で東廻航路・西廻航路とセットでおぼえさせられたくらいで、ほとんど知らない。
    そしていつも私は角倉了以(高瀬川や天竜川などの開削をした商人)と河村瑞賢がごっちゃになるのだった。

    河村瑞賢もまた商人で、幼いころ紀州から江戸の口入屋に奉公に出された。
    主人が亡くなって店を辞めてから、彼は自分の才覚だけで生きていかねばならなくなった。

    欲しいものを、欲しい人が、欲しい形で提供する。
    今の世の中では当たり前のことだが、商売というものを論理的に考えることが今ほど当り前ではなかった当時、彼の目の付け所は当たるのだった。
    そうして霊厳島で材木商として店を構えるよ

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    2018年06月21日
  • 幕末雄藩列伝

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    激動の幕末で各藩は何をして何を考えたかっていう
    歴史のおさらいのような。
    大小併せて14藩の話。読みやすい。
    勝てば官軍・負ければ賊軍、とまぁその通りなんだけど
    筋を通すことの難しさとか、徳川への忠誠心のことはもちろん
    頑張りすぎるが故あまりにもあっけない最後があったり
    新時代の幕開けでその必死さって必要だったのかなーとか。
    あーそいゆうことか!と納得するのにちょうどいい本だった。

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    2018年06月01日