伊東潤のレビュー一覧
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ネタバレ江戸時代から明治にかけての紀州太地における集団鯨漁を題材にした短編小説集。さすが伊東潤ブランド、捕鯨の迫力、人間ドラマ、漁という職種のもつ悲劇性…どれも漏らすことなく丁寧に描かれていて読ませる。この人、ホンマに上手いなぁ。
捕鯨については色々意見もあるだろう。
俺は「食うために獲る命ならやむを得ないだろう」派だが、一部反捕鯨団体とそれに対する一部反反捕鯨団体の、お互いヒステリックな応酬には辟易している派でもある。
命を戴くとは、という本来一番考えなければいけないテーマをないがしろにして、ああいうバカげたことをする連中のいうことなどなんの中身もない。
捕鯨文化の歴史、鯨の生態、経済や地域に及ぼ -
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大好きな伊東さんの本をようやく読めました。
金曜日の夜と土曜日の朝で一気読み。
相当読書に飢えてました。
舞台は武田信玄の死から長篠の戦いに向かう2年ほどの期間。
武田勝頼、徳川家康、羽柴秀吉
この3人の視点で物語が展開します。
時代の中では、信玄の死から長篠の敗戦までの武田家滅亡への軌跡
は必然のように思われていますが
決してそんなことをなく、家康が滅亡を意識したほどに勝頼に追い詰められた場面もあり
それゆえに長篠の戦いというのが、いかに重要なターニングポイントになったかが
この本を読むと気づかされます。
伊東さんお得意の合戦シーンも臨場感たっぷりでおもし -
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以下、本文より引用。
「わいなんか、取るに足らない男です。」
「人なんてものは皆、取るに足らないもんさ。
だがな、取るに足らない男ほど何事にも真摯に取り組む。
そして成果を出す。その見本があんたさ」
七兵衛と宗甫が声を上げて笑った。
「いかにも、わいの人生はその繰り返しでした。
人よりも劣るから人よりも懸命に働く。それだけです。」
「それが、あんたって男を築いたんだね」
宗甫は、「作った」ではなく「築いた」という言葉を使った。
その理由が、七兵衛にもよく分かる。
「宗甫さんも一芸を極めに極めた。
それで、どれだけの人が喜んだか分かりません」
「そう言ってくれると、人生の終わりを前にして、
晴れ -
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「吹けよ風、呼べよ嵐」
甲斐の武田と越後の上杉に挟まれた信濃の小豪族たちの生き残りを賭けた戦い。そして史上最も有名な戦の一つ、川中島の戦いの火蓋が切って落とされる。
全然知らない須田一族が主人公ですが、面白いです。
「真田丸」が始まってから、やたら信濃の小豪族たちを描いた小説が目につきます。流行ですかね。
それよりも興味が湧いたのは本書の題名。これってピンクフロイドの登録商標じゃないの?
念の為にググってみましたが、ピンクフロイドとブッチャーしか出てきません。
魅惑的なフレーズですがピンクフロイドに許可は取ったのでしょうか。そもそも「one of these days」がなんで「吹けよ風、呼べ -
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伊東潤さんの本を月1ぐらいで読み漁っていますが
今月読んだこの「北天蒼星」もおもしろかったですね。
上杉謙信が亡くなった後に勃発する跡目争い。
その敗者側の上杉景虎の視点で書かれた小説。
今まで自分自身が感じていたこの跡目争いのイメージを
根本からひっくり返された、歴史ってあらためて視点によって全然見え方が違うということを
知りました。
なにせみんな大好き直江兼続が徹底的に悪役。
若干20歳そこそこで景勝を操り、景虎を陥れていく様はすごく苦々しいものがあります。
なぜこの跡目争いが勃発したのか
なぜ圧倒的に有利に見えた景虎側は御館の乱に敗れたのか
そしてなぜこれほどまでに凄惨な終わり方 -
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紀伊半島の漁村・太地。そこで組織捕鯨を確立し、日々鯨に挑む漁師たちの姿を描いた連作。
「なんという迫力……」
この小説を読み終えた時の感想を最も簡潔に表すとこうなります。
太地の人々の鯨漁はもはや漁ではありません。それは戦いなのです。時に十数メートル以上の鯨に対し銛を打ち込み、何度も網をかけ少しずつ弱らせ最後にとどめを刺す…。言葉にすればただそれだけの話なのですが、その描写力たるや…
太地の漁師たちの息遣いやピリピリした感じももちろん伝わってくるのですが、さらにすごいのは狩られる側である鯨の生きたい、死んでたまるか、という気持ちすらも伊東さんが書き込んでいること。
作中で -
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太地・鯨シリーズの第一弾。江戸時代末期から明治時代までの紀伊半島の漁村・太地で組織捕鯨に携わる男たちを描いた連作短編集。いずれも読み応えのある6編を収録。
鯨と人間が対等に近い立場で、命をやり取りをした時代…太地鯨組の厳しい掟と捕鯨に携わる男たちの勇気と苦悩。若者は捕鯨を通じて成長し、若者を導く年長者はいつか身を引いていく。
『旅刃刺の仁吉』。流れ者の刃刺の仁吉が太地鯨組の中での地位を確立していくと共に妾腹の音松に刃刺への道を示す。
『恨み鯨』。鯨組の厳しい掟の中で生きていく親子と物哀しい家族愛を描いた佳作。
『物言わぬ海』。耳が聞こえない喜平次と刃刺となった与一の友情とその間に立ちは -
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6編収録の歴史小説短編集。
伊東潤さんの作品は”熱い”です!
戦国時代の己の生命を懸けた戦いに挑む人々を
描くからか、伊東さんも作品を書いている時、
アドレナリンがめちゃくちゃ上がっているの
ではないかと自分は感じています。
そのアドレナリンが作品を通して読者である
自分に伝わってくるように思います。だから
”熱い”のです!
どの短編も読み応え十分の傑作・佳作揃いですが
いわゆる傭兵的存在である武田軍の牢人衆を
描いた「牢人大将」は彼らの心意気が非常に
カッコいい作品です。
「天に唾して」は時の権力者、豊臣秀吉と最後
まで戦い抜いた茶人の山上宗二の姿や心理描写が
凄まじくそして素