伊東潤のレビュー一覧
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伊東潤『横浜1963』文春文庫。
これまで歴史小説を書いてきた著者が初めて書いたミステリー小説。
容貌が米国人のハーフの日本人・ソニー沢田と容貌が日本人の日系米国人・ショーン阪口という二人の登場人物の設定が面白い。また、描かれている時代と事件はデイヴィッド・ピースの一連の作品を彷彿とさせる。
読んでみると、ミステリー小説としてこれだけ起承転結がはっきりしているが珍しく、最終章でもう一波瀾あるなと思ったら、その通りであった。
本作の舞台となる1963年と言うと終戦から18年が経過した高度経済成長期の最中にあり、戦争の面影など微塵も無いのかと思っていた。しかし、米軍が駐留する港町の横浜や横 -
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本小説の一節。
あの戦争は、日本が国際社会の一員になるために必要なもの、いわば通過儀礼のようなものだったんだ。明治日本は、ほかのアジア諸国と違っていち早く産業革命の恩恵を受けて近代国家へと変貌を遂げた。それゆえその後、欧米諸国に伍していけると勘違いしてしまった。その根拠のない自信が孤立を招いた。今回の大戦で、日本は外交的に孤立しては駄目だということを痛感しただろう。それが分かった今、初めて日本は諸外国の立場を重んじ、痛みを分かち合える国際社会の一員として生まれ変われるはずだ。それを思えば、彼らは、これからの日本の礎を築いたことになる戦死者たちは無駄に死んだんじゃない。
久々に精神性の高い小 -
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牢人大将(那波無理之輔、五味与惣兵衛門。「長篠合戦」)
戦は算術に候(石田三成、長束正家。「関ケ原合戦」)
短慮なり名左衛門(毛利名左衛門、直江兼続)
毒蛾の舞(佐久間盛政、まつ。「賤ケ岳の戦い」)
天に唾して(山上宗二。小田原合戦)
国を蹴った男(今川氏真、五助)
信玄や信長、秀吉は天下に手を伸ばした名将でありながら、ときに義を忘れ欲から逃れられずに生涯を閉じた。
一方で、彼らに翻弄されつつも恩を重んじ、自らの信念を貫き通した者たちがいた。明日なき乱世で、誇り高き牢人、茶人、職人らが命を賭して挑む、それぞれの戦い
。吉川英治文学新人賞受賞作。 -
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【白河城】 東北戊辰戦争の行方を左右した城郭攻防戦
【会津若松城】 幕末最大の悲劇の舞台となった白亜の名城
【五稜郭】 箱館戦争の舞台となった欧州式稜堡型城郭
【新井城】 武士の時代の終わりを告げた海城
【河越城】 新旧交代の舞台となった武蔵国の要衝
【箕輪城】 孤高の奇才・長野業政の築いた城郭網
【鉢形城】 戦国時代の黎明から終焉まで、激戦の舞台となり続けた要害
【八王子城】 関東平野を睥睨する巨大山城
【水戸城】 血で血を洗う同士討ちの舞台となった名城
【川中島合戦と海津城】 信玄の高速道路を支えた一大兵站拠点
【一乗谷朝倉館】 現代によみがえる中世城郭都市
【七尾城】 北陸有数の巨大山 -
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河村瑞賢という名前は歴史の教科書で
東廻り、西廻りの航路を考案した人物として載っていた記憶があったけど、本作を読んですごい人だなとしきりに感心。
明暦の大火で、建物には木材が必要だと気付いて、木材を
調達して財をなすものの、そのお金でお米を買って、明暦の大火で被災した人々に、お粥をふるまった話もびっくりしたが、なによりも、流れてきたナスやキュウリで、漬物を作って商売したりとアイデアもさることながら、ある程度商売が軌道に乗ったら、ほかの人にさっさとゆずりわたすあたりも
すごい。それで本来材木商でありながら、新田開発、銀山開発、航路開発といったプロジェクトに幕府の老中、大老に次々任命される。これ -
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簡易宿泊所が放火される。警察官・寺島は捜査を進めるが、難航する。少しの手がかりでもと調べてゆくうちに、一冊のノートを見つける。「1970」「H・J」暗号。1970年前後、学生運動が盛んな頃、警察官・琢磨は統学連に潜入することになる。琢磨はトップの白崎の信頼を得て、ハイジャックのメンバーとなり北朝鮮に向かう。現在の放火の捜査と過去の琢磨の活動を互い違いに入れて物語は進んでゆく。放火事件の真相と琢磨がとった行動は…。ハイジャック犯の中に警察がいるという設定、ハイジャック犯の行く先、琢磨の運命、興味深く読めました、緊張感を維持しつつ最後まで。洗脳やら熱エネルギーが強い時代なんだなあと思いつつ、学生運
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現代の放火事件の捜査と、過去の学生運動過激派グループによるハイジャック事件の実行犯となった公安の潜入捜査官の物語が点から線に結びついていき。。。って、これ以上は言わないほうがいいでしょう。このヒリヒリするような潜入捜査の緊張感や、当時の学生運動の青臭いが故の狂気がビシビシ伝わってきて、息苦しくなるほど。仕掛けられた物語上の謎は、あ、こうだろうな、ってすぐわかっちゃうんだけど、それはあまりの生々しい世界観に対して、物語の進行上の仕掛けが「お話」っぽい肌感があるからかもしれない。当時を知らなくてもそこにいるような気分を味わえる、VR超えの活字作品、強くおススメしたい。