あらすじ
太平洋戦争中に起きた非道な捕虜殺害事件。
戦後、BC級戦犯裁判で浮かび上がった、驚愕の真実。
法の正義はどこにあるのか――。
一人の若き弁護士が、“勝者なき裁判”に挑む。圧巻の歴史小説!
昭和19年3月、大日本帝国海軍の重巡洋艦「久慈」は、インド洋でイギリス商船「ダートマス号」を撃沈。救助した捕虜を殺害した。
敗戦後、「久慈」艦長であった乾と、「久慈」が所属していた第16戦隊の司令官・五十嵐は、戦犯として起訴される。戦犯弁護人として香港にやってきた若手弁護士の鮫島は、裁判資料を読み込むうちに、この事件の――大日本帝国海軍の――抱える闇に気づいていく。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
伊東さんの作品を読んでいると、そこに一緒にいて、共に悩み、苦しみ、迷い、怒り、悲しみなど、様々な感情に襲われる。一作読む事に、自らの感性が研ぎ澄まされ、経験値も上がる。そんな気がする。
Posted by ブクログ
2020.02.09
B、C級戦犯法廷について初めて読んだ本だ。五十嵐中将と鮫島弁護士の戦いから日本が今の日本へと繋がったように感じる。「復讐や報復からは何も生まれない。それでは大国にはなれない」そこに今の国際社会におけるそれぞれの国の評価が見て取れる気がする。
しかし、何故か「鮫島」という名前が気になって仕方ない•••。
Posted by ブクログ
責任の所在を曖昧にし、押し付けあい。今の組織の中にもあるのでは。その中で良心ともがく日々です。 そして、戦争というものが如何に過酷なものか、、、。
Posted by ブクログ
艦名や人物名が架空のものに変えられているが、ビハール号事件のドキュメンタリー的な小説と言えよう。ここに出てくる各軍人の実際の性格は不明だが、かなり史実を研究して書かれているように思われる。
終戦記念日に近い時期、そして、軍内部の指揮命令や忖度といった時宜にかなったテーマなど、いま読むべき一冊であった。責任者が結果の責任を取る姿勢とか、戦中・戦後の日本の歩みなど、考えさせられるところが多い。
Posted by ブクログ
本小説の一節。
あの戦争は、日本が国際社会の一員になるために必要なもの、いわば通過儀礼のようなものだったんだ。明治日本は、ほかのアジア諸国と違っていち早く産業革命の恩恵を受けて近代国家へと変貌を遂げた。それゆえその後、欧米諸国に伍していけると勘違いしてしまった。その根拠のない自信が孤立を招いた。今回の大戦で、日本は外交的に孤立しては駄目だということを痛感しただろう。それが分かった今、初めて日本は諸外国の立場を重んじ、痛みを分かち合える国際社会の一員として生まれ変われるはずだ。それを思えば、彼らは、これからの日本の礎を築いたことになる戦死者たちは無駄に死んだんじゃない。
久々に精神性の高い小説を読みました。
Posted by ブクログ
実際にも このような事件があったこと 初めて知った
戦争の恐ろしさ 闇深さを改めて突き付けられたように思う
ただ読後感がどこかあっさりしていて もっと どっぷり がっつり 向き合いたかったな と少し残念
Posted by ブクログ
夏の課題図書《その1》
大日本帝国海軍の巡洋艦「久慈」がイギリス商船「ダートマス号」を撃沈、救助した捕虜のうち69人を殺害、海に投棄した。
「必要最低限の捕虜を除いて、すべての捕虜を処分せよ」という命令。「処分」の意味も明言されず、状況に応じて忖度せよというあいまいな状況下、上官の命令は絶対の軍隊において苦しい判断を迫られる「久慈」の艦長・乾。そして起こった最悪の事件。
敗戦後開かれたBC級戦犯裁判で、乾の上司で「久慈」が所属していた第16戦隊の司令官・五十嵐を弁護することになった若き弁護士・鮫島は、死を受け入れ何も語ろうとしない五十嵐を説得し、「死刑」という結論ありきの裁判で真実を追求する戦いに挑む。
BC級戦犯裁判というものにスポットライトを当てた作品は初めてだが、結論ありきの形骸化した連合国主導の裁判で、戦後の日本を再建していくために鮫島が真摯に真実を追求しようとする姿勢が青臭くも清々しい。
あったことに蓋をするのではなく、法の正義を武器として法廷で戦勝国と対等に戦う鮫島の姿勢、真実を明らかにすることが次の一歩を進めることになるという信念に胸が熱くなりました。
Posted by ブクログ
大日本帝国海軍の「久慈」艦長、乾。インド洋でイギリス商船「ダートマス号」を撃沈。救出した捕虜は上からの圧力もあり殺害してしまう。乾、そしてその上司である五十嵐は、その後、戦犯として起訴されてしまう。弁護士・鮫島は五十嵐の弁護をすることになり、軍の内情に迫る。
戦争の小説は読んだことがあるけれど、戦後の戦犯の裁判については、初めて読んだかもしれない。捕虜や弱い立場とされるもの受ける悲劇、改めて戦争の悲惨さを感じる(そう行動しなければならなくなった時代、状況が怖いです)。そして、軍としての誇り、日本人としての矜持を最後まで持つ五十嵐の生き様、意見は様々でしょうが、読んでほしい本でもあります。