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時は鎌倉時代末期。幕府より後醍醐帝追討の命を受け上洛の途に就いた高師直(こうのもろなお)は、思う。「これは主人である尊氏に天下を取らせる好機だ」。帝方に寝返った足利軍の活躍により、鎌倉幕府は崩壊。建武の新政を開始した後醍醐帝だったが、次第に尊氏の存在に危機感を覚え、追討の命を下す。そのとき師直は……。野望の炎を燃やす婆娑羅者(ばさらもの)・高師直の苛烈な一生を描いた南北朝ピカレスク、開演。
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Posted by ブクログ
南北朝時代のことをあまり知らなかったけど、けっこうスケールの大きいことやってたんだなーと。 二転三転してちょっと複雑すぎるので、どこかの期間に絞った方がもっと面白かったと思う。
「野望に取りつかれた者は、いつか野望に滅ぼされる」高師直 巻末の縄田一男との対談も面白い。司馬遼太郎や吉村英治や童門冬二など、様々な歴史小説家もいるが、時代が違えば求められるもの作家が伝えたいことも変わる。伊東さんの伝えたいことに、これからも耳を傾けていこうと思う。
足利尊氏に天下を取らせた執事高師直の生涯記。欲望に取り憑かれたものはやがて欲望に滅ぼされる。尊氏の弟直義と師直の争いは直義の勝利にて決着するが、その直義も尊氏に毒殺され、足利幕府の安定が築かれる。人の世の諍いと儚さが上手く描かれている作品でした。
高師直を主人公とした小説。 2013年の本なので、太平記の内容や、1965年の佐藤進一説を多く採用している。尊氏が躁鬱、って小説の中で文字として見るの初めて! 愛や情を知らず「野望」のため生きる師直の生き様。半分までは、周囲を馬鹿にして、ともかく自分(足利家)のために策謀を巡らし、戦で功を立ててるけ...続きを読むど、篠(太平記の塩谷の妻)に惚れてから、どんどん人らしさを持ってしまう師直。篠が出てから王道感な流れになって面白くなってきた。 しかし師直も直義も絶対尊氏は守らないと!ってなるの良いね。 歴史物語は史実が必ず基になるので、オリキャラが脇キャラが展開を動かすのが常道だけど、今回の野望の憑依者は、オリキャラの動かし方が本当によかった。 鎌倉時代から打出浜までの、行為が悪役な師直の最盛期と没落。面白かった。 直義は最初から最後まで嫌なやつとして描かれて、師直目線だったらこう感じるだろうな……と足利兄弟推しになる物語との比較として面白かった。 あと、久しぶりに見た、尊氏が正成を好きじゃない本です。その代わりに師直&正成がかなりおいしい。敵としての関係、立場が真逆な二人としての関係性がよかった。おいしい関係性の師直と正成を見たい方は是非ともおすすめします。
鎌倉時代の終焉から建武の新政、南北朝、室町幕府が勃興するあたりの時代には疎く、この作品の主人公「高師直」も名前ぐらいしか知らなかったが…。伊東潤の筆のおかげもあるんだろうが、思ってたよりずっとオモロい小説だった。 高師直といえば、名前しか知らない俺でも、日本史の中では名だたる悪役だと知ってるくらいの...続きを読むワル。主人公に持ってくる人物がシブいよなぁ。 彼には「実力主義で野心と栄達に強欲」という一本まっすぐな信念が貫かれている。そのためには既得権益や情やそんなものは一切無用、皆が仲良く平和に暮らす世界などクソくらえだと豪語する。いやーワルい、潔い。ワルの信念を貫き、主君足利尊氏に天下をとらせるため東奔西走大活躍するさまを読むことの幸せ。 楠正成やその息子正行(彼らとて河内のヤクザ、悪党と呼ばれているのだが)の武辺才能を認めつつ、善人っぷりを憎悪し、湊川や四条畷で合戦し、最終的に勝利する描写。ここって太平記では真逆の読ませどころお涙頂戴のシーンなのに、師直目線ではこうも違ってくるのか、と感動する。 そして終盤、師直が恋愛を意識し、一族を贔屓し、主君にとってかわることを拒否する、つまり、ワルな彼の生き方が善い方にブレてしまう。優しさ、人間らしさをもった師直の可愛いこと、弱いこと。 勧善懲悪、正義の味方、仁義を守る…そういう考えもストレートでよいが、そればっかりだと飽きてくるし、そういう思想ってそれこそワルい政治家に利用される弱さがあるねんなぁ。その点、あくまで「ワルい奴が最後に勝つ」を貫く本書のようなピカレスクはしたたかに強い。 あとがきの対談にあったように、歴史の勉強になったり、自己啓発になったり、歴史小説ってのは紆余曲折を経て一時は衰退すらしかけたのだが、そんな余禄なんかうっちゃといて、「小説としてオモロい」という本来の志向を追いかけたら、この本のように、魅力的な読ませる小説ができあがるのである。
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野望の憑依者(よりまし)
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伊東潤
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