伊東潤のレビュー一覧
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歴史に陰謀はつきものに思えるが、陰謀の日本中世史を書かれた呉座先生の論を待つでもなく、日々の最適手を選んだ結果が歴史に残る、本書412Pにあるが「そなたの思惑など、すべて己の都合に合わせたものばかりでないか」と崇徳院からなじられる悪左府=藤原頼長の打つ手は悪手ばかりである・・・頼長と言えば「ア━━━━ツッ!!」という場面を想像したが期待外れw
日本第一の大学生と慈円から称えられた知性を治世に向けようと若くして認められ、父親の期待を受けて摂政の兄忠通より摂関家の正邸東三条殿や宝物の朱器台盤を接収し、氏長者の地位を剥奪して頼長に与えたとある・・・興味深いのは「忠通が持つ藤原師実・藤原師通の日記正本 -
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東京で派遣社員として働いていた主人公の工藤紗栄子に、地元の青森の母より、ねぶた師で兄の春馬が重い病気であるとの連絡が来る。
病状から早期の検査、治療が必要だが、本人はねぶたの制作を諦め切れず治療を拒んでいるという。
紗栄子は仕事を辞め、取るものもとりあえず、帰郷する。
亡き父もねぶた師だった工藤兄妹は病気と闘いながらねぶたの制作を決断。狙うは、ねぶた大賞。
津軽衆のじょっぱりぶりの春馬に対して、出来過ぎな紗栄子の描かれ方に違和感を感じつつも、青森市民にとってのねぶた祭にかけるパッションが全編を通じて語られることで胸が熱くなる。
青森出身のワタシとしては、ラッセラーラッセラーの掛け声を聞くともう -
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青森のねぶた祭りを題材にした小説。
ねぶた制作師の兄が脳腫瘍になり、東京で夢を持ちながらも派遣社員として働いている妹が帰郷して兄をサポートしながらねぶたを制作する。
スポンサー企業の厳しい注文やちょっとした裏切りや。しかしそれを逆手に利用してこれまでにない発想で乗り越える。
そして直前に起こる事件。
最後には関係者全員でこの逆境を跳ね返す。ストーリーとしては起承転結がわかりやすくなってはいるが、読んでいて感動を味あえる。
仕事でねぶた祭り1週間前に青森に行ったことがあるが、あの大きなテントの中でこういった葛藤がそれぞれ大なり小なり行われていたのかと思うと、また青森に行きたくなる。 -
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ネタバレ元々、制作する楽曲の多くが、過去の文学作品を礎にしている人間椅子、彼らの作品が今度は小説のモチーフになったということで、いわば音楽界から文芸界への逆輸入、という発想がまず面白い。
そして、そのような出自であるからして、彼らの楽曲がノヴェライズのベースとして馴染まない訳がない。
まず選ばれた5曲を見てみると、1つは筋肉少女帯との共作だが、残り4作はすべて和嶋慎治氏の手による詞、ということに少し驚いた。
また、著名な代表曲ばかりということはまったくなく、むしろコアなファン以外にはすぐにピンとこないであろう作品も。
口火を切る大槻ケンヂ氏の「地獄のアロハ」、イカ天をリアルタイムで観ていた世代にとっ -
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■上巻は、覇者、蜜月、相克の3つの章立て。下巻は聖俗、静謐の2つの章立て。下巻の最後に、文庫特別収録として、著者インタビューがある。上巻・下巻ともに、今年6月に文庫化された。また、表紙は同じ金の茶室を模したものである。
■著者インタビューで、著者は日本史から日本の若者は多くを学んでほしい、そのために著者の歴史解釈力、ストーリーテリング力を駆使すると発言している。その言葉の通り、歴史小説だが現代に通じる教訓や考え方が様々なところに散りばめられている。
■下巻は、秀吉の九州征伐が終わり、小田原平定、山上宗二の処刑を経て、千利休の最期までとなっている。
■千利休の視点での構成となっており、戦国武将や -
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ネタバレ志士の時代、九州にも義祭同盟という将軍藩主より
天皇に忠誠を誓うグループが出来た(賢人会?)
大隈重信も脱藩をして大政奉還を将軍に伝えんとす
るが秘策を土佐に漏らし功を奪われる(史実は不明)
なお本作では薩長同盟の意義が正確に語られている
と思うが、薩摩藩士としての亀山社中と描いてない
(通説はまだ健在?)
四賢公と言われた閑叟だがギリギリまで幕府を支え
たのに薩長土肥として存在感を示したのは日本最大
の武器生産国だったためである
中立とは敵に回したくないだけの存在(軍事力)を
もって初めて可能になる(現代にも通じる真理)
そして、新政府に加わった大隈重信の強みは英語と
西洋人の考え方・合理性 -
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ネタバレ500頁の大作、しかも慣れない歴史小説…
ずっと連れ歩いて、それでも8日間格闘。
しかし、自身の栄養になっていく実感のある作品だった。
本作で生きる利休は、時代のフィクサーに偏っている。
茶の湯の存在も、繰り返し唱えられる「世を静謐へ導く」(荒武者達を抑える事で戦の無い世の中を創る)為、大いに利用されるのである。
そして秀吉は利休に死を言い渡すが、切腹を命じてはいない。
これも作者独自の解釈だろうか。
紹安曰く切腹は武士達の美学の到達点であり、独占していたい自裁の方法である。
一茶頭が、一茶人が切腹に及ぶと言う事は、秀吉に対する侮辱であった…
と、言う。
しかしながら歴史小説は史実 -
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ネタバレ真の武士は戦わないのが葉隠の教え
武士である大隈重信は国家の為だけを想い
経済で教育で外国に立ち向かおうとした
(言うまでもなく早稲田大学創設者)
実はイメージでは頭のネジが飛んだ人
アメリカへの宣戦布告まがいの態度
明治大帝の「大丈夫か?アイツで?」
抜け駆け的な憲法草案の奏上未遂
本書で五代友厚の忠告を読んで納得した
短所5ヶ条(笑)頭が良すぎる故の欠点
①愚説愚論も最後まで聞く
②同様意見は部下のを採用し徳を広める
③見苦しい怒気を慎み徳性を保つ
④会議は意見百出で方向見えたら決断
⑤好まぬ人にこそ丁重に親しく交際
そして明治天皇に嫌われていたから大成
出来なかったのだと思った
上巻 -
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歴史に疎い方でも教科書程度の知識があればグッと引き込まれそうなドラマティックな人間模様が盛り込まれている点に、著者の読者の裾野を広げたい気持ちが表れていると感じました。
とくに恋愛模様は現代人に完全に寄せている感があります。
時代考証で明らかになっていない部分は大胆に創作しエンターテイメント性で引き付け、大王と豪族の関係や三韓との関係など歴史の軸となる部分は大変分かりやすく、主に登場人物の台詞で解説されているので情報が入ってきやすいです。
仏教を政治外交の具として導入しようとした馬子が、国づくりに邁進するなか生じる迷いや、老いの中で、次第に自身も心から仏教を信仰するようになってゆく様はこの物語