伊東潤のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
歴史に疎い方でも教科書程度の知識があればグッと引き込まれそうなドラマティックな人間模様が盛り込まれている点に、著者の読者の裾野を広げたい気持ちが表れていると感じました。
とくに恋愛模様は現代人に完全に寄せている感があります。
時代考証で明らかになっていない部分は大胆に創作しエンターテイメント性で引き付け、大王と豪族の関係や三韓との関係など歴史の軸となる部分は大変分かりやすく、主に登場人物の台詞で解説されているので情報が入ってきやすいです。
仏教を政治外交の具として導入しようとした馬子が、国づくりに邁進するなか生じる迷いや、老いの中で、次第に自身も心から仏教を信仰するようになってゆく様はこの物語の軸のひとつであると思います。
古代を舞台にした作品は貴重だとのこと。学生さんをはじめ歴史の入門書にも良いと思いました。 -
Posted by ブクログ
簡単に説明すると歴史小説×スパイ小説。
まず書き出しの「城をひとつ、お取りすればよろしいか」の言葉だけで、カッコいいたらありゃしない!
城攻めというのは本来落とされないように厳重に作られ、敵の装備や食料などの準備も万端なところを攻めるわけなので、長期戦になりがち。
そのため攻め手にとってもかなりリスクの伴う戦いなのだけど、それをこともなげにこう言い切ってしまう。それだけで先のしびれるものがあるし、先の展開にワクワクしてしまいました。
関東を治めた北条五代。彼らに陰から使えた大藤一族を描く連作短編。時の武将たちの欲や心理のスキを突いた鮮やかな手法と展開の数々! いかに敵を惑わし分断するか、心理戦や頭脳戦に引き込まれます。
それでいて伊東潤さんらしい歴史小説ならではの悲哀も、作品に深みを与えます。どれだけカリスマ性があっても、立派な理念があっても、それが時代の趨勢と合わなければ消えゆくしかない厳しい戦国の時代。
そうした悲哀を描きつつも、一方でその先に広がる新たな人生の広がりも鮮やかに力強く描かれていて、今まで読んできた戦国時代を舞台にした伊東潤さんの作品の中でも少し違った感慨が残る、爽やかな作品でした。 -
Posted by ブクログ
命懸けで千石船造りに挑む船大工の父子! が、海は凄まじい力でその挑戦を打ち砕く!! 男たちの船は海に勝てるのか!? 感動必至──魂を込めた渾身の長編時代小説。
船大工の親子が千石船作りに挑む歴史長編。『巨鯨の海』に続き伊東作品の2冊目。中盤までは巨鯨の海の方が面白かったなぁと残念に思っていたが、最後まで読んでみたら凄くいい本だと感じました。最近、涙腺が弱くなっているせいもあるのかわからないけど、思わずウルッとくるシーンが何度もあり。人情、親子の絆、健気な恋心。海洋ロマンもたっぷり詰まっています。 ストーリー進行のテンポがとてもいいです。楽に読書できるので息抜きに最適。 -
Posted by ブクログ
熊本地震から間も無い7月の梅雨明け頃に、熊本市街から植木まで路線バスで移動、植木から徒歩で田原坂へ向かったことがあります。曇り空のなか、移動中の高低差は無く、田原坂を突破されると熊本城まで遮るものが無いため、加藤清正が北の要衝と定めた地勢を足で実感しました。
その後、大河ドラマ「西郷どん」の放送も決まり、西郷隆盛に関連する本を読み耽りました。しかし小説はそれが面白いほど史実が分からなくなるので、愛読の「翔ぶが如く」を除いて読まないことにしていました。
もうそろそろ良いかと思い、遅ればせながら本書を手にしました。史料が少ないため謎多き人物である「村田新八」を主人公とした西南戦争を舞台とした物語。期待どおりに面白い!殺伐とした戦場に新八のフランス滞在時の想出が入り交じるのは、人間新八が感じられて「手風琴」(小説ではコンサーティーナ)を奏でる場面と共に小説を彩っていて素晴らしい。
読み始めるとふむふむと頷く場面が多いですが、佐賀の乱の事後の対応のエピソードで大久保利通がますます嫌いになりました。
田原坂では博物館を見学したあと、激戦地の薩摩軍陣地の田原熊野座神社(宮山)まで10分程歩きました。熊本地震直後の訪問であったので、社殿にも多少の影響が見られました。境内は野球グランドの内野程の大きさで、ここで双方が最新のスナイドル銃をわずか60メートルの距離で射撃を行ったと言います(境内から薬莢が発掘されています)
本書は素晴らしい出来かと思いますが、西南戦争を真正面から語るには短すぎるのではと思いました。
小説でも名前が登場する熊本隊はじめ各地の士族など約一万名が薩軍に参加し、この中には熊本の協同隊、佐土原の佐土原隊など自由民権運動や農民兵も多く含まれていました。今で言うと右派から左派まで、政府打倒の為の呉越同舟でした。もう少し彼らが登場すると、「明治六年の政変」から「最後の内戦」まで、より面白かったのではと思うのは贅沢でしょうか?