無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
所謂「北条五代」(早雲・氏綱・氏康・氏政・氏直)の中、二代目の氏綱の頃から、豊臣秀吉との戦いに敗れる五代目の氏直の時代までを背景に6つの挿話で構成されている物語である。
6つの挿話を通読すると、北条家が勢威を拡大し、関東の覇者となり、そして滅ぼされてしまうまでの経過が視えるのだが、本作はそういう経過を少し変わった視点で描いている。代々の北条家に仕え続けて独特な活動を展開していたという大藤家の人達を主要視点人物に据えて各挿話が綴られているのだ。
最初の挿話の冒頭は「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞で始まる。この『城をひとつ』が最初の挿話の題名であり、同時に本作全般の題名ともなっている。
この「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞を口にする男、大藤信基(だいとう のぶもと)が挿話の主人公で、やや先走ればその息子達、孫、曾孫が各挿話の主人公となって行くのだ。
紀州の根来から北条氏綱を訪ねて現れた大藤信基は北条早雲と交流が在り、北条早雲に仕えると約束していたが、身辺整理に手間を要していた間に北条早雲が逝去してしまったので、後継者である北条氏綱を訪ねて仕官を願い出ているということだった。その仕官を願い出る場面の描写が物語の冒頭で、「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞が出て来る。
“城”というのは、軍勢が拠る場所で、諸勢力が争う場合の拠点となる場所であり、時代が下ると一帯を差配する領主の権威の象徴となって行く場所である。その“城”を「取る」というのは、正しく「言うは易く、行うは難し」というものである。戦国時代には方々に“城”と呼ばれるモノは夥しい数が在った。戦いの焦点となった“城”も多い訳だが、「お取りすればよろしいか」と簡単に陣営が切り替わった例が多々在るのでもない。
この「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞を口にした大藤信基という男…何をどうしようというのか?
この「何をどうしようと?」が最初の挿話の顛末であり、以降は大藤信基の一族が北条家の下で展開する「独自の戦い」の有様が綴られる挿話が折り重なっている。
“戦国時代”というモノの中には、勇壮な合戦譚も多々在る訳だが、そればかりでもない色々な要素が在る訳だ。本作はそういう方面に光を当てるような物語である。
何れにしても、本作は夢中になってしまうものが在る。「城をひとつ、お取りすればよろしいか」と言い出して、何がどうなるのか?是非、本作で!!
Posted by ブクログ
後北条氏五代に仕え、‘入込’の調略を担った大藤氏一族を扱った小説。信基から曾孫の直信まで、連綿と続く陰の仕事人にスポットを当てており大変渋い。
難事難局に駆り出されては鮮やかな手際で事に当たる。まさに名人芸!
やはり当代無双・足利義明との駆け引きに手に汗握る。また、秀信と越後の龍・上杉輝虎の応酬では軍神を完璧に手玉に取る模様に心躍る。…というよりも思った以上に「上杉謙信」について私自身が無知であったことに気付かされた。
次は謙信を扱ったものを読んでみたい。
これは伊東潤氏の作風なのか、この『城をひとつ』の特徴なのか残念ながら語れないのだが、人物の人間味というか呼吸・溜息まで伝わってくるような文章であると感じました。
短編ながら土方雄久の苦労振りや足利晴氏のどうしようも無さが、まるで知り合いの話のようによく伝わります。
個人的に弓を得意とする人が好きなので横井神助が妙に印象に残りました。
1刷
2021.2.2
2021.2.3 追記
Posted by ブクログ
簡単に説明すると歴史小説×スパイ小説。
まず書き出しの「城をひとつ、お取りすればよろしいか」の言葉だけで、カッコいいたらありゃしない!
城攻めというのは本来落とされないように厳重に作られ、敵の装備や食料などの準備も万端なところを攻めるわけなので、長期戦になりがち。
そのため攻め手にとってもかなりリスクの伴う戦いなのだけど、それをこともなげにこう言い切ってしまう。それだけで先のしびれるものがあるし、先の展開にワクワクしてしまいました。
関東を治めた北条五代。彼らに陰から使えた大藤一族を描く連作短編。時の武将たちの欲や心理のスキを突いた鮮やかな手法と展開の数々! いかに敵を惑わし分断するか、心理戦や頭脳戦に引き込まれます。
それでいて伊東潤さんらしい歴史小説ならではの悲哀も、作品に深みを与えます。どれだけカリスマ性があっても、立派な理念があっても、それが時代の趨勢と合わなければ消えゆくしかない厳しい戦国の時代。
そうした悲哀を描きつつも、一方でその先に広がる新たな人生の広がりも鮮やかに力強く描かれていて、今まで読んできた戦国時代を舞台にした伊東潤さんの作品の中でも少し違った感慨が残る、爽やかな作品でした。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸
小説・文芸
ビジネス・実用
小説・文芸