伊東潤のレビュー一覧
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購入済み
事実は小説よりも奇なり、と言う
が、伊東氏の小説家は通説と言われているものよりさらに深く丁寧に掘り下げられ、まさに事実に迫っているのではと思わせる臨場感が私は好きだ。その観点から、この短編集のなかでは特に吉川広家、豊臣秀次の物語が非常に興味深い。
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沖縄をルーツの一つに持つ人間として,いい作品に出会えた.
描いたのが本土の人と言うのも,知っていてくれる人が本土にもいるって言う感触は,何と言うのか…言い表せない感覚だった.
僕自身は東京で生まれてほぼ東京周辺で今までを過ごして来て,沖縄との繋がりは,父,そして父方の親戚が沖縄に住んでる事くらい.沖縄に住まう人たちのがんじがらめの苦悩は,間接的にしか知らない.それでも,こう言う本を見かけたら手に取らずにはいられなかった.
瀬長亀次郎を敬愛する父に,次はプレゼントしようと思う.
後日談:父も楽しく読んでくれたようだ.奄美や,与論島出身者に対する「差別」についても良く書けている,もっと陰湿だった -
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「大隈重信」という人物に関してはかなり詳しい伝記の新書や、故郷でもある佐賀で出された評伝や、その他に様々な形で接しているのだが、本書は或る意味で「決定版!」的な迫力も在る小説になっていたと思う。
大隈重信は大正時代まで生きて、晩年近くになっても色々と活躍している。様々な挿話に彩られた人物が。本書は「幕末佐賀風雲録」となっていて、「何事かを夢見た若者達の一群」の中に在った大隈八太郎が、幕末の揺れる情勢の中で様々な活動に携わり、新たに登場した明治政府の官吏になって活躍するようになるまでが描かれる。
少年から青年になるような頃、「あのようなモノ!」と少し毛嫌いしていた『葉隠』のような古典について、少 -
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大隈重信の生涯を描いた評伝的小説。
かなりの力作、佳作と思います。私自身早稲田大学卒業ですが、大隈重信のことはあまりよく知らず、どちらかというと強い主義主張があるというより政局の人的な勝手なイメージを持っていましたが、この作品では大局観を持った孤高の硬骨漢として描かれていて、さすがにこれは良く描かれ過ぎだろう…とやや思いつつ、大隈重信観が変わりました。(というか初めて知ったこと多数なのですが 苦笑)
だいたい、慶応の附属校に入ると福沢諭吉の著作を読まされたりするようですが、早稲田に入っても大隈重信のことは全く教えられないですからね… この辺りは早稲田創建時からの(大隈の望んだ)校風なのかもしれ -
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これは、なかなか面白かったです。「佐賀」とありますが、大隈重信が主人公。明治維新の立役者は「薩長土肥」と言われながら、新政府では薩長閥が中心となるなか、それ以外の藩(主に備前藩)の動きがわかります。「NHK大河ドラマ」狙いかと思われる展開で、幕末から第一世界大戦頃までの有名人がオールスターで登場。小説ではありますが、立派な政治史でもあります。
初めて知ったことは、大隈重信が「西洋事情」「学問のすゝめ」などを読んで福澤諭吉を私淑して教育に目覚め、一方で実際の政策に反映しようとしたこと。圧巻は、第6章の「進取果断」で、福澤諭吉が大隈重信に国のあり方を説く場面。その後、大隈重信はあまりに急速に近 -
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書き尽くされた感のある戦国時代。まだこんな切り口があるのかと改めて筆者の構成-筆致力にただただ脱帽です。作品は桶狭間の戦いから、大阪の陣までを背景として、その中で生きた者達を焦点にあてた短編集。短編集と侮るなかれ、すべてが秀逸な作品。「家康謀殺」は、スリルとサスペンス交りのスピード感溢れる展開に釘付け。時は大阪の陣の直前。江戸から大阪に向かう家康とともに護衛の任を受けた伊賀出身吉蔵の視点から物語が始まる。そこで受けた上役からのやっかいな指令。それは、護衛仲間に紛れている刺客を暴く事。旅を続けるにつれ、少しずつ明らかになる真実から炙り出された結末とは。。。特徴は、明日をも知れぬ苦難の中で生きる者
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すばらしい。これぞ私の思う「歴史小説」。読んでいれば自然とその状況がわかる、読みやすくておもしろいやつ!
伊東潤さんの本は何冊か持っていますが、読むのはこれが初めて。それがこんなにおもしろかったんだから、これから他の作品を読んでいくのが滅法楽しみになりました。
舞台は鎌倉、主人公は源頼朝と政子夫妻。頼朝がとにかく冷酷なのですが、彼がしたことを考えればこういうことになるんだよなぁ、と納得。政子が御家人たちに〈そこまで佐殿を恐れておいでか〉と感じるんだけど、そりゃ恐れるでしょうよ、と言いたい。
あとは、奥州攻めがしっかり描かれているのと、謎に満ちている頼朝の死について、著者ならではの -
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ネタバレいやー面白かった!
「実戦あってこそ城には魅力がある」という主題で書かれたこの本、さすがさすがと言わんばかりのマニアックな城の数々。歴史・城ファンにはたまりません。(逆に天守閣とか景色良い本とか探してる方には絶対オススメしません。笑)
著者は小説家だそうですが、事細かに自分の足で調べ、客観的に書かれてるのだなと思いました。
個人的に行ったことある城もあるのですが、
まだ行けていない北関東の河越、箕輪、鉢形、八王子辺りは特に面白い。
箕輪は長野業政という、この本読むまで全く知らなかった人に関する城なのですが、戦国期には珍しく国人との橫のつながりを重視することで敵の侵入を防ごうとした、中小企業的 -
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伊東潤『ライトマイファイア』幻冬舎文庫。
2021年10月新刊の幻冬舎文庫ミステリフェアの1冊。600ページ近い長編公安ミステリー。
タイトルは、やはりドアーズの名曲『ハートに火をつけて』に由来するものだった。ジム・モリソンの何かに怒りをぶつけるようなシャウトが本作のストーリーにマッチする。
時代を扇動し、日本を思う方向へ動かそうとする政治家とその傀儡たる警察組織に翻弄された若き警察官の数奇な人生。人生を踏みにじられた男の声が、タイトルの『ライトマイファイア』なのだろう。史実をベースに創作で味付けした、なかなか読み応えがある面白い作品だった。
平成27年。川崎市の簡易宿泊所で放火事件が