伊東潤のレビュー一覧
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時代を問わず、日本史の事件や人物を小説化する著者だが、本作品で選んだのは保元の乱。政権争いのキーマンが貴族から武士に移るきっかけになった事件として有名だが、戦闘そのものは短期間で片方の圧勝に終わり、見どころは少ない。しかし、著者の手にかかると、人のエゴが渦巻くサプライズあり、エンターテインメントありの大ドラマに。
主人公は保元の乱の敗者、藤原頼長に密命を与えられて、皇室に送り込まれた女官、栄子。当時は天皇家、藤原家、源氏、平氏、それぞれが一族の主導権争いで一触即発の状態。そんなキナ臭い社会で、女性ができることなんて、たかが知れている。しかし、栄子は女であること、琵琶奏者であること、独特の風貌 -
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『商いとは人のしないことをし、人の望む物を望む形で供すること。』
まずここから始まる。
河村屋七兵衛自身は、学問や芸術で大成したわけでもなく、抜きんでた技術を身につけていたわけでもない。ひたすら実直に困難に立ち向かうだけ。
『大計を論ずる者は小費を惜しまず。速きを欲さずしておのずから速き者なり。』
物事を推し進める奥義ではないだろうか。
『いつか死ぬその時に、もっとがんばればよかったと思わないために、今出来ることに全力を尽くさねばならない。』
『人の成功を喜べる者に、商いの神は微笑む。』
『人なんてものは皆、取るに足らないもんさ。だがな、取るに足らない男ほど何事にも真摯に取り組む。そして成 -
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主要視点人物が大鳥圭介となっている。幕末から明治の初め、「箱館の戦い」に至る旧幕府系の人達の物語である。
「箱館の戦い」に身を投じた様々な人達を取上げた小説等は多く在ると思う。色々なモノに触れて来たと思う。そういうモノの作中に大鳥圭介は色々と登場もしている。だが「大鳥圭介」を主要視点人物とした作品は余り記憶が無い。そういう意味でも少し惹かれたのだった。
本作では、鳥羽伏見の戦いの後に、新政府側に対して抗戦を唱える人達が各々の行動を始めようとしていたような頃から物語が起こっている。
幕府の中でも「精兵」と呼び得る、当時のもっとも新しい理論に基づく、フランス人顧問団の指導も受けた<伝習隊>は、鳥羽 -
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「賢者は理屈で動き、愚者は感情で動く。」人気歴史作家が分析した戦国の合戦十二番勝負。
幅広い分野の歴史小説で名を馳せる筆者の一冊。小説を支える豊富な知識に基づいた、戦国時代の合戦を最新の知見から分析している。
本書は陸上自衛隊の隊内誌「修親」という何ともマニアックな雑誌の連載コラム。かなり専門的な読者を想定している。
特に長篠の戦いの織田信長と、摺上原の戦いの伊達政宗。相手方を自分の仕掛けたトラップ、窮地に引きつける戦術の見事さ。
近年、関ヶ原の戦いを始め従前の定説を否定する新説が広がりつつある。そんな最新の解釈も踏まえた合戦の解説。
筆者の小説とはまた違った視点から楽しめます。 -
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事実は小説よりも奇なり、と言う
が、伊東氏の小説家は通説と言われているものよりさらに深く丁寧に掘り下げられ、まさに事実に迫っているのではと思わせる臨場感が私は好きだ。その観点から、この短編集のなかでは特に吉川広家、豊臣秀次の物語が非常に興味深い。
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沖縄をルーツの一つに持つ人間として,いい作品に出会えた.
描いたのが本土の人と言うのも,知っていてくれる人が本土にもいるって言う感触は,何と言うのか…言い表せない感覚だった.
僕自身は東京で生まれてほぼ東京周辺で今までを過ごして来て,沖縄との繋がりは,父,そして父方の親戚が沖縄に住んでる事くらい.沖縄に住まう人たちのがんじがらめの苦悩は,間接的にしか知らない.それでも,こう言う本を見かけたら手に取らずにはいられなかった.
瀬長亀次郎を敬愛する父に,次はプレゼントしようと思う.
後日談:父も楽しく読んでくれたようだ.奄美や,与論島出身者に対する「差別」についても良く書けている,もっと陰湿だった -
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「大隈重信」という人物に関してはかなり詳しい伝記の新書や、故郷でもある佐賀で出された評伝や、その他に様々な形で接しているのだが、本書は或る意味で「決定版!」的な迫力も在る小説になっていたと思う。
大隈重信は大正時代まで生きて、晩年近くになっても色々と活躍している。様々な挿話に彩られた人物が。本書は「幕末佐賀風雲録」となっていて、「何事かを夢見た若者達の一群」の中に在った大隈八太郎が、幕末の揺れる情勢の中で様々な活動に携わり、新たに登場した明治政府の官吏になって活躍するようになるまでが描かれる。
少年から青年になるような頃、「あのようなモノ!」と少し毛嫌いしていた『葉隠』のような古典について、少 -
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大隈重信の生涯を描いた評伝的小説。
かなりの力作、佳作と思います。私自身早稲田大学卒業ですが、大隈重信のことはあまりよく知らず、どちらかというと強い主義主張があるというより政局の人的な勝手なイメージを持っていましたが、この作品では大局観を持った孤高の硬骨漢として描かれていて、さすがにこれは良く描かれ過ぎだろう…とやや思いつつ、大隈重信観が変わりました。(というか初めて知ったこと多数なのですが 苦笑)
だいたい、慶応の附属校に入ると福沢諭吉の著作を読まされたりするようですが、早稲田に入っても大隈重信のことは全く教えられないですからね… この辺りは早稲田創建時からの(大隈の望んだ)校風なのかもしれ -
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これは、なかなか面白かったです。「佐賀」とありますが、大隈重信が主人公。明治維新の立役者は「薩長土肥」と言われながら、新政府では薩長閥が中心となるなか、それ以外の藩(主に備前藩)の動きがわかります。「NHK大河ドラマ」狙いかと思われる展開で、幕末から第一世界大戦頃までの有名人がオールスターで登場。小説ではありますが、立派な政治史でもあります。
初めて知ったことは、大隈重信が「西洋事情」「学問のすゝめ」などを読んで福澤諭吉を私淑して教育に目覚め、一方で実際の政策に反映しようとしたこと。圧巻は、第6章の「進取果断」で、福澤諭吉が大隈重信に国のあり方を説く場面。その後、大隈重信はあまりに急速に近 -
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書き尽くされた感のある戦国時代。まだこんな切り口があるのかと改めて筆者の構成-筆致力にただただ脱帽です。作品は桶狭間の戦いから、大阪の陣までを背景として、その中で生きた者達を焦点にあてた短編集。短編集と侮るなかれ、すべてが秀逸な作品。「家康謀殺」は、スリルとサスペンス交りのスピード感溢れる展開に釘付け。時は大阪の陣の直前。江戸から大阪に向かう家康とともに護衛の任を受けた伊賀出身吉蔵の視点から物語が始まる。そこで受けた上役からのやっかいな指令。それは、護衛仲間に紛れている刺客を暴く事。旅を続けるにつれ、少しずつ明らかになる真実から炙り出された結末とは。。。特徴は、明日をも知れぬ苦難の中で生きる者