伊東潤のレビュー一覧
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以下、本文より引用。
「わいなんか、取るに足らない男です。」
「人なんてものは皆、取るに足らないもんさ。
だがな、取るに足らない男ほど何事にも真摯に取り組む。
そして成果を出す。その見本があんたさ」
七兵衛と宗甫が声を上げて笑った。
「いかにも、わいの人生はその繰り返しでした。
人よりも劣るから人よりも懸命に働く。それだけです。」
「それが、あんたって男を築いたんだね」
宗甫は、「作った」ではなく「築いた」という言葉を使った。
その理由が、七兵衛にもよく分かる。
「宗甫さんも一芸を極めに極めた。
それで、どれだけの人が喜んだか分かりません」
「そう言ってくれると、人生の終わりを前にして、
晴れ -
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「吹けよ風、呼べよ嵐」
甲斐の武田と越後の上杉に挟まれた信濃の小豪族たちの生き残りを賭けた戦い。そして史上最も有名な戦の一つ、川中島の戦いの火蓋が切って落とされる。
全然知らない須田一族が主人公ですが、面白いです。
「真田丸」が始まってから、やたら信濃の小豪族たちを描いた小説が目につきます。流行ですかね。
それよりも興味が湧いたのは本書の題名。これってピンクフロイドの登録商標じゃないの?
念の為にググってみましたが、ピンクフロイドとブッチャーしか出てきません。
魅惑的なフレーズですがピンクフロイドに許可は取ったのでしょうか。そもそも「one of these days」がなんで「吹けよ風、呼べ -
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伊東潤さんの本を月1ぐらいで読み漁っていますが
今月読んだこの「北天蒼星」もおもしろかったですね。
上杉謙信が亡くなった後に勃発する跡目争い。
その敗者側の上杉景虎の視点で書かれた小説。
今まで自分自身が感じていたこの跡目争いのイメージを
根本からひっくり返された、歴史ってあらためて視点によって全然見え方が違うということを
知りました。
なにせみんな大好き直江兼続が徹底的に悪役。
若干20歳そこそこで景勝を操り、景虎を陥れていく様はすごく苦々しいものがあります。
なぜこの跡目争いが勃発したのか
なぜ圧倒的に有利に見えた景虎側は御館の乱に敗れたのか
そしてなぜこれほどまでに凄惨な終わり方 -
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紀伊半島の漁村・太地。そこで組織捕鯨を確立し、日々鯨に挑む漁師たちの姿を描いた連作。
「なんという迫力……」
この小説を読み終えた時の感想を最も簡潔に表すとこうなります。
太地の人々の鯨漁はもはや漁ではありません。それは戦いなのです。時に十数メートル以上の鯨に対し銛を打ち込み、何度も網をかけ少しずつ弱らせ最後にとどめを刺す…。言葉にすればただそれだけの話なのですが、その描写力たるや…
太地の漁師たちの息遣いやピリピリした感じももちろん伝わってくるのですが、さらにすごいのは狩られる側である鯨の生きたい、死んでたまるか、という気持ちすらも伊東さんが書き込んでいること。
作中で -
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太地・鯨シリーズの第一弾。江戸時代末期から明治時代までの紀伊半島の漁村・太地で組織捕鯨に携わる男たちを描いた連作短編集。いずれも読み応えのある6編を収録。
鯨と人間が対等に近い立場で、命をやり取りをした時代…太地鯨組の厳しい掟と捕鯨に携わる男たちの勇気と苦悩。若者は捕鯨を通じて成長し、若者を導く年長者はいつか身を引いていく。
『旅刃刺の仁吉』。流れ者の刃刺の仁吉が太地鯨組の中での地位を確立していくと共に妾腹の音松に刃刺への道を示す。
『恨み鯨』。鯨組の厳しい掟の中で生きていく親子と物哀しい家族愛を描いた佳作。
『物言わぬ海』。耳が聞こえない喜平次と刃刺となった与一の友情とその間に立ちは -
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6編収録の歴史小説短編集。
伊東潤さんの作品は”熱い”です!
戦国時代の己の生命を懸けた戦いに挑む人々を
描くからか、伊東さんも作品を書いている時、
アドレナリンがめちゃくちゃ上がっているの
ではないかと自分は感じています。
そのアドレナリンが作品を通して読者である
自分に伝わってくるように思います。だから
”熱い”のです!
どの短編も読み応え十分の傑作・佳作揃いですが
いわゆる傭兵的存在である武田軍の牢人衆を
描いた「牢人大将」は彼らの心意気が非常に
カッコいい作品です。
「天に唾して」は時の権力者、豊臣秀吉と最後
まで戦い抜いた茶人の山上宗二の姿や心理描写が
凄まじくそして素 -
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タイトルは「城を噛ませた男」だけど、短編集なので
ここの感想とかそうゆう類のものを書こうかな、と。
見えすぎた物見…
小さい集落である佐野家。そんな佐野家の筆頭家老である宝衍の話。
当時の各勢力に、のらりくらりと応対しているのに対してお家を守るという義の塊なのではないかと。
外様大名として生き残った佐野家だけども、この物見の仕事が出来過ぎる感が遺恨の原因となり
結果的にお家取り潰しという何とも皮肉な話。
宝衍の頑張りも確かによくわかるが、何でも頑張りすぎちゃいかんな…とか。
鯨のくる城…
北条家の傘下である伊豆国雲見の海での戦い話。
鯨漁を主に生活している長、高橋丹波守のとんちにもに似た実 -
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信玄亡き後の甲州武田家の棟梁となった勝頼だが、長篠で信長と家康の連合軍に破れたことにより、勢力が弱まる。しかしそれだけが原因で武田家は滅亡へとむかったわけではない。
長篠後の武田家は増大する信長の勢力に対抗するために、南関東を支配する北条家から桂姫を輿入れさせ、同盟を結ぼうとする。
嫁入り後の桂姫は二心なく一貫して両家の繁栄を祈り行動するが、勝頼の側近・釣閑の策謀により、武田家と北条家の関係は悪化する。金山の枯渇により軍資金の不足が深刻になったと判断した釣閑は北条家領内にある金鉱脈を狙ったのだ。
武田家が無敵を誇れた一因は潤沢な軍資金にあったが、それも金山があってのこと。武将 -
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類まれなる知性と厳格さで、摂関家の再興に執念を燃やす左大臣・藤原頼長。権力を盤石にするため、多子を近衛天皇の入内(じゅだい)へと送り込む。しかし、頼長のあまりに潔癖で妥協を許さない政治手法は、周囲の貴族や皇族、台頭する武士たちの反発を招き、やがて時代は凄惨な内乱「保元の乱」へと突き進んでいく。政争の道具とされた多子が、滅びゆく頼長の背中を見つめながら見出した、自らの生き様とは。。。特徴は、王朝文化の終焉と退廃を見事に小説の中で描き切った点かな。そして、頼長の信念である「理」や「法」と、多子が抱く「情」との対立が物語の通奏低音となっており、読後には滅びゆく美しさと哀愁が深く残りまよ~。