伊東潤のレビュー一覧
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大好きな伊東さんの本をようやく読めました。
金曜日の夜と土曜日の朝で一気読み。
相当読書に飢えてました。
舞台は武田信玄の死から長篠の戦いに向かう2年ほどの期間。
武田勝頼、徳川家康、羽柴秀吉
この3人の視点で物語が展開します。
時代の中では、信玄の死から長篠の敗戦までの武田家滅亡への軌跡
は必然のように思われていますが
決してそんなことをなく、家康が滅亡を意識したほどに勝頼に追い詰められた場面もあり
それゆえに長篠の戦いというのが、いかに重要なターニングポイントになったかが
この本を読むと気づかされます。
伊東さんお得意の合戦シーンも臨場感たっぷりでおもしろいですが
それまでの2年間の攻防、信長や信玄への畏怖
そういう入り混じった感情の表現がとってもよくてとにかく一気読みでした。
おもしろい!
こういう歴史小説に出会えるのは本当に幸せです。 -
Posted by ブクログ
以下、本文より引用。
「わいなんか、取るに足らない男です。」
「人なんてものは皆、取るに足らないもんさ。
だがな、取るに足らない男ほど何事にも真摯に取り組む。
そして成果を出す。その見本があんたさ」
七兵衛と宗甫が声を上げて笑った。
「いかにも、わいの人生はその繰り返しでした。
人よりも劣るから人よりも懸命に働く。それだけです。」
「それが、あんたって男を築いたんだね」
宗甫は、「作った」ではなく「築いた」という言葉を使った。
その理由が、七兵衛にもよく分かる。
「宗甫さんも一芸を極めに極めた。
それで、どれだけの人が喜んだか分かりません」
「そう言ってくれると、人生の終わりを前にして、
晴れがましい気分になるってもんだ」
高らかに笑おうとして、宗甫は顔をしかめた。
痛みに耐えかねているのだ。
「七兵衛さんよ、これからの時代、
皆、あんたに倣って生きていくことになる」
「何てことをー」
七兵衛はこれまで、そんなことを思ったことなどない。
ただ、立ちはだかる問題を一つひとつ解決してきただけである。 -
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「吹けよ風、呼べよ嵐」
甲斐の武田と越後の上杉に挟まれた信濃の小豪族たちの生き残りを賭けた戦い。そして史上最も有名な戦の一つ、川中島の戦いの火蓋が切って落とされる。
全然知らない須田一族が主人公ですが、面白いです。
「真田丸」が始まってから、やたら信濃の小豪族たちを描いた小説が目につきます。流行ですかね。
それよりも興味が湧いたのは本書の題名。これってピンクフロイドの登録商標じゃないの?
念の為にググってみましたが、ピンクフロイドとブッチャーしか出てきません。
魅惑的なフレーズですがピンクフロイドに許可は取ったのでしょうか。そもそも「one of these days」がなんで「吹けよ風、呼べよ嵐」になったのでしょう。
題名を付けたのは何処のどなたなのでしょう。イーグルスの「one of these night」は「呪われた夜」なのに。
くだらない疑問が嵐の様にうずまく今日この頃でした。 -
Posted by ブクログ
伊東潤さんの本を月1ぐらいで読み漁っていますが
今月読んだこの「北天蒼星」もおもしろかったですね。
上杉謙信が亡くなった後に勃発する跡目争い。
その敗者側の上杉景虎の視点で書かれた小説。
今まで自分自身が感じていたこの跡目争いのイメージを
根本からひっくり返された、歴史ってあらためて視点によって全然見え方が違うということを
知りました。
なにせみんな大好き直江兼続が徹底的に悪役。
若干20歳そこそこで景勝を操り、景虎を陥れていく様はすごく苦々しいものがあります。
なぜこの跡目争いが勃発したのか
なぜ圧倒的に有利に見えた景虎側は御館の乱に敗れたのか
そしてなぜこれほどまでに凄惨な終わり方を向かえないといけなかったのか
この1冊によって新たな見方が間違いなくできます。
歴史好きにはたまらない。 -
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紀伊半島の漁村・太地。そこで組織捕鯨を確立し、日々鯨に挑む漁師たちの姿を描いた連作。
「なんという迫力……」
この小説を読み終えた時の感想を最も簡潔に表すとこうなります。
太地の人々の鯨漁はもはや漁ではありません。それは戦いなのです。時に十数メートル以上の鯨に対し銛を打ち込み、何度も網をかけ少しずつ弱らせ最後にとどめを刺す…。言葉にすればただそれだけの話なのですが、その描写力たるや…
太地の漁師たちの息遣いやピリピリした感じももちろん伝わってくるのですが、さらにすごいのは狩られる側である鯨の生きたい、死んでたまるか、という気持ちすらも伊東さんが書き込んでいること。
作中で鯨のエピソードで、過去に鯨漁から逃げ切った経験を活かし太地の人々の漁から逃げ切ろうとする鯨や、子を思う鯨の姿が描かれるのですが、そうしたエピソードだけでなく、死に際の鯨を描く場面がまた秀逸です! 作品全体を通してみると鯨もまた主人公なのです。
最終話の「弥惣平の鐘」の漁の描写と自然の厳しさの描写は圧巻の一言! いかに人間が自然の厳しさの前に無力かということを感じさせられます。
もちろんそれぞれの短編の人物描写、心理描写も伊東さんらしい情念が込められた作品ばかりです。
厳しい掟が支配する閉鎖的な共同体の太地。そこで暮らす少年たちは何を目指すのか、男たちはどう行動するのか。掟に縛られながら生きた人、掟を全うした人、時に太地に疑いをもち外の世界を夢見るもの。それぞれのドラマが伊東さんの圧倒的な筆勢で描かれます。そこにあるのはただ生きるだけでは満足しない、本物の「生」を渇望する男たちのドラマだと思います。
伊東潤さんがどんな人か全く知らないのですが、もし会うことがあればいきなり「兄貴ィ!」と読んでみたいです(笑)。こんな例えで伝わるかどうか不安ですが、本当にそれだけ伊東さんの作品には迫力があります。男が漢に惚れるってこんな感じなのかなあ。
第4回山田風太郎賞
第1回高校生直木賞 -
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太地・鯨シリーズの第一弾。江戸時代末期から明治時代までの紀伊半島の漁村・太地で組織捕鯨に携わる男たちを描いた連作短編集。いずれも読み応えのある6編を収録。
鯨と人間が対等に近い立場で、命をやり取りをした時代…太地鯨組の厳しい掟と捕鯨に携わる男たちの勇気と苦悩。若者は捕鯨を通じて成長し、若者を導く年長者はいつか身を引いていく。
『旅刃刺の仁吉』。流れ者の刃刺の仁吉が太地鯨組の中での地位を確立していくと共に妾腹の音松に刃刺への道を示す。
『恨み鯨』。鯨組の厳しい掟の中で生きていく親子と物哀しい家族愛を描いた佳作。
『物言わぬ海』。耳が聞こえない喜平次と刃刺となった与一の友情とその間に立ちはだかる太地の厳しい掟。
『比丘尼殺し』。本作の中ではミステリーの色合いが強い異色の短編。一番、面白かった。比丘尼や遊女を連続して殺害した犯人は太地鯨組の刃刺と目されたが…
他に『訣別の時』と『弥惣平の鐘』を収録。 -
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6編収録の歴史小説短編集。
伊東潤さんの作品は”熱い”です!
戦国時代の己の生命を懸けた戦いに挑む人々を
描くからか、伊東さんも作品を書いている時、
アドレナリンがめちゃくちゃ上がっているの
ではないかと自分は感じています。
そのアドレナリンが作品を通して読者である
自分に伝わってくるように思います。だから
”熱い”のです!
どの短編も読み応え十分の傑作・佳作揃いですが
いわゆる傭兵的存在である武田軍の牢人衆を
描いた「牢人大将」は彼らの心意気が非常に
カッコいい作品です。
「天に唾して」は時の権力者、豊臣秀吉と最後
まで戦い抜いた茶人の山上宗二の姿や心理描写が
凄まじくそして素晴らしいという言葉につきます!
「毒蛾の舞」は武将という男同士の戦いという面
だけでなく、女の強さや妖艶さ、計算高さ、そして
それに翻弄される男の姿を描いた、他の作品とは
また違った意味で非常に中身の濃い短編になって
います。
表題作の「国を蹴った男」は蹴鞠職人の男が主人公。
身分を越えた絆の強さや、選択を迫られる場面、
そして時代に翻弄された男の切なさなど、傑作
揃いの短編集の中で表題作を飾ったのも納得の
読み応えでした。
各短編に共通するのは歴史上の敗者たちの物語です。
そのため表舞台でなかなか語られることのない彼らの
物語に対し、伊東さんは敬意を持って新たに魂を
吹き込んでいる、そんな風に読んでいて感じました。
文庫表紙の著者紹介で伊東さんが「高校生直木賞」
なるものを受賞されていると紹介されていたのですが、
それもなんとなく分かります。
これは過去一年の直木賞候補作の中から、
高校生が直木賞を決めるという企画らしいのですが、
これだけ物語に魂を込められる伊東さんの物語ならば、
歴史小説というある程度読み手の年齢層が固まって
しまうジャンルでも、それに関係なく読み手の心に
届くはずです。
小説のジャンルの幅が狭くなっている昨今、
いろんな世代に伊東潤さんの熱い小説が読まれて
ほしいな、と思います。
第34回吉川英治文学新人賞 -
Posted by ブクログ
タイトルは「城を噛ませた男」だけど、短編集なので
ここの感想とかそうゆう類のものを書こうかな、と。
見えすぎた物見…
小さい集落である佐野家。そんな佐野家の筆頭家老である宝衍の話。
当時の各勢力に、のらりくらりと応対しているのに対してお家を守るという義の塊なのではないかと。
外様大名として生き残った佐野家だけども、この物見の仕事が出来過ぎる感が遺恨の原因となり
結果的にお家取り潰しという何とも皮肉な話。
宝衍の頑張りも確かによくわかるが、何でも頑張りすぎちゃいかんな…とか。
鯨のくる城…
北条家の傘下である伊豆国雲見の海での戦い話。
鯨漁を主に生活している長、高橋丹波守のとんちにもに似た実に豪快な話。
秀吉の水軍に立ち向かうため、こちらたちの集落も戦わなければならなくなるけど
鯨漁を利用して撃退していくその様が清々しい。
最後の文面に「鯨取りの親方と馬鹿にされながら、伊豆侍の意地をつらぬき、下田城に籠る兵の命を救った上、雲見の地を守り抜いた丹波という男」
スッキリ後味の良い作品。
城を噛ませた男…
この本の表題にもなっている作品。
ご存知であろう真田幸村の父、真田昌幸の話。
国を守るため、自分の所有している城を敵方に取らせるという知略でとにかく頭がいい。
真田太平記を読むとこの昌幸の凄さがよくわかるけど、これはこれでまた違う一面が見えるというか。
城を噛ませた男というタイトルに実にふさわしいと言っても過言ではないと思う。
椿の咲く寺…
可愛らしいタイトルに全く似合わない悲しい話。
徳川家康に破られた武田家。その家臣であった今福家の残された人々話だけど、最後の最後に仰天。
こんなのありですか?みたいな。
なんとも言えない残酷っちゃ残酷だけど、全うした彦蔵はすごいなとか。結果的に切ない。
江雪左文字…
この本の中で唯一時系と場所が記載してあって、その場面によって異なるような。
人の記録を見てるようなそんな感覚。
北条に仕えて、家康に仕えて関ヶ原でやってやったぜ!話なあるけど
これはこれで面白いし、駆け引きと心境が変化していく様というか。
左文字を渡すとことか、小早川秀秋とのやりとりとかもそうだけど江雪のお家が明治維新まで残ったのも初めて知った。