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開国から十年。貿易の激化で北関東の民は困窮していた。水戸藩士・藤田小四郎は、幕政を正し外敵を掃おうと各地に書状を放つ。集まったのは貧しくも真摯に国を想う、若き志士たち。一同は筑波山で挙兵するが、幕府の討伐軍が迫り来る。内部分裂、強大な追手、峻烈な山越え。犠牲を払いながらも、一橋慶喜に志を訴えるべく京を目指し――。理想に燃えた男たちの歩みに涙する、歴史長編。
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Posted by ブクログ
あまりにも切ない物語。 見てきたように語れる著者の作品の中でにあっても、際立つ白眉だ。 「愚挙」「捨て石」といわれる水戸天狗党の挙兵。 悲惨すぎる末路へと、物語は冷酷に進んでいく。 しかしたとえ結果的に愚かな行為だったとしても、そこには生きている人たちがいて、信頼関係を築き、見えない未来に向けて熱...続きを読むい想いを燃やしていたのだ。 著者はそれぞれの思惑を、またそれぞれにやむにやまれぬ背景を、丁寧に説いていく。したがい読み手は、登場人物たちとの信頼関係に巻き込まれてしまう。 何度、この本を中途で閉じたことだろう。 未来を知るとは、これほどつらいものなのか。 できれば、彼らが幸せな段階で時が止まってほしい……そう願いつつも、やはりこの本の締めくくりには納得できる。 著者の筆力に圧倒される傑作。 日本人なら、教養としても必読の書だ。
「水戸天狗党」という言葉は聞いたことがありましたが、去年「恋歌」を読んであまりの壮絶な出来事に驚きました。 ボタンをひとつ掛け違えたように悲劇に転じていく様がわかりました。それにしてもこの時代は藩がまさに「国」だったのですね。藩の矜持なのでしょうが、遺体を藩に持ち帰り、改めて磔にするなど、現代の私に...続きを読むはただただ残酷なことにしか思えませんでした。大義に殉じた侍たちの意志は崇高ですが、彼らが新政府で活躍していたらと思わずにはいられません。
余りにも多くのことが次々に起こる時勢の中、とにかくも信じるところを訴えようとした一団が在り、無残に粛清された…敢えて一言で言えば、“天狗党”の歩みはそういうことになるのだろうか?何かそういう辺りに、煩雑な経過の“時代モノ”でありながら、強い“今日性”を滲ませる物語だった…更に余計な話しをすれば…本作...続きを読むは“映画原案”として好適かもしれないと読後に思った… 劇中人物達の“迷い”のようなものが赤裸々に綴られる感で、少し圧倒された…そういう辺りが、この天狗党の一件を扱った従前の作品とは一味違うと感じた…お勧め!!
幕末の水戸藩内の抗争と、そこから派生した一集団(天狗党)が京都を目指して西へ行軍する様子を描いた歴史小説。幕末の政局は難しすぎて、内容を理解しきれない…。1000人近い武装集団が移動する中で、天狗党の通り道となった村々や宿場町が見せた様々な対応が興味深かった。彼らにしてみたら、天狗党の通過はいい迷惑...続きを読むだったと思うよ。
血で血を洗うお家騒動、この本を読む前の水戸藩のイメージはそれだけでした。この本を読み、彼らの強い志が新しい時代への礎になったのだと思い胸を打たれました。 莫大な資料を調べたのだろうと感心させられた一方、それらを一部割いてでも、もっと伊東さんの描く人物像や歴史観が全面に出ていても面白かったのではないか...続きを読むと思いました。
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