伊東潤のレビュー一覧
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戦後の本土復帰(という言葉も差別的だと思うが)までのおよそ四半世紀にわたるUSCAR統治下前半の沖縄が舞台設定。瀬長亀次郎の人民党の不屈の政治闘争を伏線に、琉球警察公安刑事の活躍と精神世界の彷徨を、幼少期からの友情や傀儡組織である琉球警察刑事たちの葛藤等を絡めながら見事なプロットで描く。沖縄の悲惨な戦後史(勿論まだ終わっていない)をもっと沖縄以外の日本人は知るべきで、約3か月の悲惨な沖縄戦以降の米国領としての四半世紀のもっと悲惨な歴史を知る、とっかかりとしてはこのようなエンタメ要素もある優れた小説が最適では。。一つだけ難点はもっと適当なタイトルがあったんじゃないかということぐらい。
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幕末期から明治期を舞台とする時代モノだ。「意外に知られていない?」と見受けられる事柄が扱われている。そして「時代の奔流」という中で生きた“竹馬の友”という2人が主要な登場人物ということになる。
冒頭の「プロローグ」で、80歳代に差し掛かった男が高台に上って故郷の街を望むというような場面が在る。題名の『西郷の首』の「西郷」が在る故に「桜島が視える鹿児島」でも登場するのかと思えば、「加賀百万石」と謂われた前田家の城下町であった金沢が出て来る。
本作は、西南戦争の際に『西郷の首』に関わることとなった、「文次郎」こと千田登文(せんだのりふみ)と、その“竹馬の友”ということになる「一郎」こと島田朝勇(し -
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自らの命を賭して守るべきもの。死を覚悟して生きた人間と、死を恐れながら生きる人間とは、迫力も濃さも異質だ。そういう時代だったという事もあるだろうが、武士道というある種のイデオロギーに身を投じる姿は、その壮絶な生き様に惹きつけられながらも、別の見方では、意固地な頑迷さを感じる面もある。合理的なところで、恭順、帰順すべきでは。生かすべき若手のためという大義名分を持ち、大鳥や榎本は降伏する。一方、最後の武士として死に場所を選んだ土方。土方が死に、榎本が降伏し、だが物語は終わらない。勝海舟が、降伏が遅く、黒田清隆の政治力学の中で、残る榎本や大鳥は新政府の中で役目を果たすべきだと。新政府における幕臣の出
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ネタバレ作家と言う者は洗脳が出来ないといけないのだろうか?
当事者は洗脳者のいう選択以外ないと思い込む、たとえとして相応しくないがイジメも今では逃げてしまえと言える時代だが、当該者は相手の言いなりにならざるをえない、DVDも然り
茶道を極め、茶聖と言うにふさわしい美の巨人である千利休は、信長の眼鏡にかない名物を見極める「眼」として茶頭として近づけられたが、信長の真意を聞き、震えそして湧き上がる衝動に身を任せるのだ
「この世の武士のすべてを茶の湯に狂奔させねばならぬ」「茶の湯は武士たちの荒ぶる心を鎮められるからだ」
この考えは秀吉も同じ様に行きつく
このルールがなければ、秀吉と利休の丁々発止のやり -
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ネタバレ江戸を造った男ということで、興味が湧いた。
江戸時代は200年以上続いた統制の世だが、合戦がなかったので、日本史を学んでいた当時、さほど興味が湧かなかった。
しかし、年を経るごとにこの統治の勘所が何かを知りたかったが、なかなかとっかかりがない。
そういう意味で本書は非常に良かった。
本書の主人公は河村屋七兵衛という名の商人。
明暦の大火によって、息子の一人を失い、そこから立身出世を奉公によってなしていくストーリーが非常に良かった。
多くの事業を興した七兵衛だったが、西回り、東回りの廻米航路や機内の治水事業、そして鉱山開発など、特に50代以降の晩年にこういった大きな事業をやり遂げた。
途中、 -
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一言で本作を形容すれば「鎌倉時代の政治ドラマ」ということになる。鎌倉時代辺りの“大鎧”というような華麗な装備に身を包んだ武将が勇躍するような場面が多々在るような物語ではない。源頼朝と妻の北条政子との物語ということになる。
鎌倉幕府が成立して、安定して行くという過程の中、源頼朝は「敵対的勢力が擁立し得る“旗頭”になりそうな人物」ということになる、兄弟や縁続きの源氏系の武将を排するような政治闘争を随分と行っている。本作の物語の基礎となっているのはそういう経過である。
鎌倉幕府が成立して、安定して行くということは、「そこまでの時代の社会の在り方」を「抜本的に変えて行く」という大事業であった。源頼朝は -
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後北条氏五代に仕え、‘入込’の調略を担った大藤氏一族を扱った小説。信基から曾孫の直信まで、連綿と続く陰の仕事人にスポットを当てており大変渋い。
難事難局に駆り出されては鮮やかな手際で事に当たる。まさに名人芸!
やはり当代無双・足利義明との駆け引きに手に汗握る。また、秀信と越後の龍・上杉輝虎の応酬では軍神を完璧に手玉に取る模様に心躍る。…というよりも思った以上に「上杉謙信」について私自身が無知であったことに気付かされた。
次は謙信を扱ったものを読んでみたい。
これは伊東潤氏の作風なのか、この『城をひとつ』の特徴なのか残念ながら語れないのだが、人物の人間味というか呼吸・溜息まで伝わってく -
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本作品の著者は、以前から注目していたものの、直近では、やや作品の仕上がりが低迷していた印象があったが、久々に完成度の高い作品であったと思う。個人的に歴史小説としては、史実に基づいた作品が好きであるが、一方では、小説化し易い史実は、既に多くの作品が存在し、新鮮魅に欠けるところがあるが、本作品はその両方を満たす出来栄えと評価する。
一般的に大久保暗殺は、西南戦争の傍流、後日譚として描かれることが多いが、本作品はこれに焦点を当て、ここに至る経緯並びに暗殺当時の状況をきめ細かく描かれており、この題材(大久保暗殺)を暗殺者側の目線でここまで描き切れた作品をはじめて読むことができた、というのが感想であ