伊東潤のレビュー一覧
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幕末期から明治期を舞台とする時代モノだ。「意外に知られていない?」と見受けられる事柄が扱われている。そして「時代の奔流」という中で生きた“竹馬の友”という2人が主要な登場人物ということになる。
冒頭の「プロローグ」で、80歳代に差し掛かった男が高台に上って故郷の街を望むというような場面が在る。題名の『西郷の首』の「西郷」が在る故に「桜島が視える鹿児島」でも登場するのかと思えば、「加賀百万石」と謂われた前田家の城下町であった金沢が出て来る。
本作は、西南戦争の際に『西郷の首』に関わることとなった、「文次郎」こと千田登文(せんだのりふみ)と、その“竹馬の友”ということになる「一郎」こと島田朝勇(しまだともいさみ)の物語である。2人は加賀の前田家中の士であった。家中では低い位置付の足軽であった。
文次郎や一郎が中心視点人物となって展開する物語であるが、何方かと言えば一郎が中心となっている場面が多かったような感である。
激動の幕末期、加賀の前田家中でも佐幕派と尊王派との内訌のような状態は見受けられ、他方に開国後の経済の色々な動きや天候不良による凶作という領内の混乱等の様々な事情が生じていた。そんな中を文次郎や一郎が駆け抜ける。所謂「水戸天狗党上洛」の一件や、その後の「戊辰戦争」という大きな動きの中で2人は活動し、戦いにも参加した。そういう他方に各々の人生も在る。
激動の幕末期を共に駆け抜けた文次郎と一郎であったが、時代が明治になった中で「各々の道」を歩み始める。明治初期の様々な動きの中、高まる不満という背景の中で政治運動家的な動きに身を投じる一郎と、職業軍人として生きようとする文次郎とが各々辿る運命が綴られる。そして行き着いた先は?
互いの良さを認め合った「真の友」という感の文次郎や一郎だが、「時代…」の故に結果的に袂を分かつこととなって行く様が描かれる作品だが、強く引き込まれる。そして、江戸幕府の時代に「最大の大名家」であった加賀の前田家中の幕末の様子に関して、正直余り知らなかったので、そういう辺りも興味深く読んだ。
非常に興味深い物語である… -
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ネタバレ作家と言う者は洗脳が出来ないといけないのだろうか?
当事者は洗脳者のいう選択以外ないと思い込む、たとえとして相応しくないがイジメも今では逃げてしまえと言える時代だが、当該者は相手の言いなりにならざるをえない、DVDも然り
茶道を極め、茶聖と言うにふさわしい美の巨人である千利休は、信長の眼鏡にかない名物を見極める「眼」として茶頭として近づけられたが、信長の真意を聞き、震えそして湧き上がる衝動に身を任せるのだ
「この世の武士のすべてを茶の湯に狂奔させねばならぬ」「茶の湯は武士たちの荒ぶる心を鎮められるからだ」
この考えは秀吉も同じ様に行きつく
このルールがなければ、秀吉と利休の丁々発止のやり取りも色あせて見える
そう思わせる作家とは何とも怖ろしい生物だろうか
奥祐筆の持つ「権」を読者に刷り込み全ての会話がロジックで肯定・否定される時代小説や、デスノートという設定からくるロジカルなやり取りを毎週積み上げる
いずれも衝撃だった
一方、小説に描かれる秀吉はいつも万能であり、その素質で「侘び」という利休のフィールドでさえ比肩する勢いで作品に緊張感を与える
(ほかの作品では「美」で利休を上回っていた)
強大で権力を握る関白を相手にしてこそ、利休の研ぎ澄まされた感性による「天下静謐」の為であればあらゆる策謀を駆使していく生き様がより映える -
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ネタバレ江戸を造った男ということで、興味が湧いた。
江戸時代は200年以上続いた統制の世だが、合戦がなかったので、日本史を学んでいた当時、さほど興味が湧かなかった。
しかし、年を経るごとにこの統治の勘所が何かを知りたかったが、なかなかとっかかりがない。
そういう意味で本書は非常に良かった。
本書の主人公は河村屋七兵衛という名の商人。
明暦の大火によって、息子の一人を失い、そこから立身出世を奉公によってなしていくストーリーが非常に良かった。
多くの事業を興した七兵衛だったが、西回り、東回りの廻米航路や機内の治水事業、そして鉱山開発など、特に50代以降の晩年にこういった大きな事業をやり遂げた。
途中、鉱山では息子を亡くしてしまい、最終的に4男以外は親よりも早く逝去することになるが、そうした家族のストーリーも七兵衛の人間味あふれる事業家のストーリーに華を添える。
結果、江戸時代には鎖国を実施し、各国の公共事業を整備していたため、長らく反映していったのだという事実がわかった。
特に経済的な安定がもたらしたことが大きい。
私は導入の明暦の大火から、江戸の材木復興によって再建したのかと思っていたが、浅はかだったなと感じた。
こうしたなかなか歴史の表舞台に立ちにくいい人物のストーリー、もう少し幅広く読んでいきたいと思う一冊だった。 -
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一言で本作を形容すれば「鎌倉時代の政治ドラマ」ということになる。鎌倉時代辺りの“大鎧”というような華麗な装備に身を包んだ武将が勇躍するような場面が多々在るような物語ではない。源頼朝と妻の北条政子との物語ということになる。
鎌倉幕府が成立して、安定して行くという過程の中、源頼朝は「敵対的勢力が擁立し得る“旗頭”になりそうな人物」ということになる、兄弟や縁続きの源氏系の武将を排するような政治闘争を随分と行っている。本作の物語の基礎となっているのはそういう経過である。
鎌倉幕府が成立して、安定して行くということは、「そこまでの時代の社会の在り方」を「抜本的に変えて行く」という大事業であった。源頼朝はそれに邁進した。が、「敵対的勢力が擁立し得る“旗頭”になりそうな人物」を排することを繰り返す中、「自身の血脈を護る」ということが様々な活動の目的であるかのように、何やら“質的変化”をしてしまう…
そんな源頼朝を支える妻の北条政子である。4人の子達の人生を見守って行くというような「母親の歓び」というような事とは、何時の間にか距離を置くような羽目に陥って行った。結局、彼女は4人の子達の全てに先立たれているのだ…
源頼朝の生涯の最後の方、脳卒中か何かと想像される症状によって公衆の面前で落馬してしまい、そこから運ばれて、やがて落命してしまったという挿話が伝わるのだが、史料の散逸というようなことも在って「晩年の様子」には不明点も多い。本作はそういう「不明…」な部分に関して大胆に想像の翼を羽ばたかせている一面も在る。
或いは「難解?」な面も在るかもしれない諸情勢を、「理想に向かって邁進するが故に、個人的な人生という意味での“不幸”に絡め捕られてしまった?」という感の「頼朝・政子夫妻の物語」として、見事に語り切ったという感の作品だ。
なかなかに愉しむことが出来た!! -
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後北条氏五代に仕え、‘入込’の調略を担った大藤氏一族を扱った小説。信基から曾孫の直信まで、連綿と続く陰の仕事人にスポットを当てており大変渋い。
難事難局に駆り出されては鮮やかな手際で事に当たる。まさに名人芸!
やはり当代無双・足利義明との駆け引きに手に汗握る。また、秀信と越後の龍・上杉輝虎の応酬では軍神を完璧に手玉に取る模様に心躍る。…というよりも思った以上に「上杉謙信」について私自身が無知であったことに気付かされた。
次は謙信を扱ったものを読んでみたい。
これは伊東潤氏の作風なのか、この『城をひとつ』の特徴なのか残念ながら語れないのだが、人物の人間味というか呼吸・溜息まで伝わってくるような文章であると感じました。
短編ながら土方雄久の苦労振りや足利晴氏のどうしようも無さが、まるで知り合いの話のようによく伝わります。
個人的に弓を得意とする人が好きなので横井神助が妙に印象に残りました。
1刷
2021.2.2
2021.2.3 追記 -
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本作品の著者は、以前から注目していたものの、直近では、やや作品の仕上がりが低迷していた印象があったが、久々に完成度の高い作品であったと思う。個人的に歴史小説としては、史実に基づいた作品が好きであるが、一方では、小説化し易い史実は、既に多くの作品が存在し、新鮮魅に欠けるところがあるが、本作品はその両方を満たす出来栄えと評価する。
一般的に大久保暗殺は、西南戦争の傍流、後日譚として描かれることが多いが、本作品はこれに焦点を当て、ここに至る経緯並びに暗殺当時の状況をきめ細かく描かれており、この題材(大久保暗殺)を暗殺者側の目線でここまで描き切れた作品をはじめて読むことができた、というのが感想である。 -
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『決戦!関ヶ原』
誰もが知る関ヶ原の戦い。
4時間で決着がつき、そして最後の西軍 島津が退陣するまでが8時間。
●読みどころ
1.関ヶ原
家康と三成。
戦い前に密談あり。
互いの狙いは何か?
2.戦終えての三成
「勝者はいない。
徳川も豊臣もそして毛利も、さらに私三成も全員
敗者なり。」
その意図とは?
3.織田信長弟 長益。兄に囚われた人生
武勲無しの武将。
最初で最後に近い戦いは家康方で。
千利休の弟子であった長益。
戦場で何を思えたか?
4.島津義弘
66歳。西軍の敗北が決まり、1500の兵で家康の
本陣3万人に向かう。
「己の魂と引きかえに敵をうつ。」
●歴史好きではない私
一人一人の武将を一人称で展開をする描写。
それが臨場感をさらに駆り立てる。
関ヶ原。
舞台はひとつなれど、武将の想いは千差万別なり。
想いのうらには、それまでの人生の曲折がある。
兵どもの夢の跡。
いまから約400年前に存在した史実には、まだまだ知らない物語がある。
#読書好きなひとと繋がりたい