あらすじ
十人の死者が出た簡易宿泊所放火事件の捜査にあたる川崎署の寺島が発見した、身元不明者のものらしき大学ノート。
その最初のページには「1970」「H・J」という暗号めいた文字が記されていた。これはいったい何を意味するのか――?
四十五年の時を経て二つの大事件が交錯した時、戦後日本の〝闇〟が浮かび上がる。白熱の公安ミステリ! !
解説:PANTA(頭脳警察)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日航機よど号ハイジャック事件で世の中が沸騰していたことは朧げに記憶しているもの、実行犯のその後は知ることもなかった。本書の描写はどこまで事実を反映しているのかわからないが、当時の雰囲気を思い出すうえで違和感はない。過去と現在のふたつの事件を行き来する構成は面白いし、結末もお見事。頁を捲るのが楽しく一気に読んだ。著者の他の作品も追ってみたい。
Posted by ブクログ
伊東潤『ライトマイファイア』幻冬舎文庫。
2021年10月新刊の幻冬舎文庫ミステリフェアの1冊。600ページ近い長編公安ミステリー。
タイトルは、やはりドアーズの名曲『ハートに火をつけて』に由来するものだった。ジム・モリソンの何かに怒りをぶつけるようなシャウトが本作のストーリーにマッチする。
時代を扇動し、日本を思う方向へ動かそうとする政治家とその傀儡たる警察組織に翻弄された若き警察官の数奇な人生。人生を踏みにじられた男の声が、タイトルの『ライトマイファイア』なのだろう。史実をベースに創作で味付けした、なかなか読み応えがある面白い作品だった。
平成27年。川崎市の簡易宿泊所で放火事件が発生し、10人もの死者が出る。臨場した川崎署の寺島は火災現場で見付かったコインロッカーの鍵から身元不明者の物と思われる大学ノートを発見する。大学ノートの最初のページに書かれていた『1970』と『H・J』の文字、そこから続く数字の羅列は何を意味するのか。
時代は遡り、昭和45年。北海道で警察官になった三橋琢磨はその成績と三代続く警察官の血筋を買われて、警視庁公安部に入る。公安警察官となった三橋は学生運動を監視するために学生として大学に潜入する。雄志学院大学文学部の学生となった三橋は中野健作という偽名で統学連という組織に潜入を試みる。三橋が統学連に加入するとリーダーの白崎壮一郎は武闘路線を選択し、ハイジャック事件を企てる。
昭和45年から45年後の平成27年。公安組織とそれを操る政治家に翻弄された三橋の人生が明らかになり、偶然にも寺島の人生とも重なっていく。
それにしても、今月の幻冬舎文庫から刊行されたミステリフェア作品の新刊は500ページから600ページ超えの分厚い作品が多いな。面白そうなので、本作を含めて4冊も購入してしまったよ。
本体価格930円
★★★★★
Posted by ブクログ
母から借りた本
・
10人の死者がでた簡易宿泊所の放火事件
そこで身元不明者の物らしい大学ノートが発見される
ノートには暗号のような文字が記されていた
それは何を意味するのか
・
現代に起こった放火事件と45年前に起こった飛行機ハイジャック事件
この二つの事件が交錯しながら進んでいく
よど号ハイジャック事件がモデルになっている
高度成長期が背景にあり、学生運動が盛んに行われていた時代
史実は分からないが、まさかそんな行き当たりばったりで?
ハイジャック成功しちゃうの?
と思わないでもないけど、現代のようなハイテクな時代ではないからこそ成功したのかもしれないなと思う
よど号の犯人達のことはこれまでニュースで見聞きするくらいで特に何の感情もなかったけど、本作を読み少しだけ揺り動かされるものがあった