伊東潤のレビュー一覧
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日本におけるキリスト教信仰の終焉のシンボルとなる島原の乱に取材した小説。
島原の乱のキリスト教徒がたてこもる原城には元小西行長の配下の武将がおり、攻める側にも小西行長の配下の武将があった。また仏教僧となり、形だけの棄教をすすめることでキリシタンの命をすくおうと東奔西走するのもまた小西行長の小姓であった。武士として生きるか、キリスト教徒としていきるか、あるいは表面上は仏教徒となりながらも本当の救いとは何かを求めるという三人三様の人生。それぞれの運命が
関ヶ原の敗戦(小西行長陣として)以降の時系列で描かれる。
この時代の飢饉があったり、あるいは人生で不運なことがあったときにキリスト教の救いによりハ -
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伊東潤さん三作目。題材は、秀吉晩年の汚点とされている文禄・慶長の役。地名や名前に馴染みがないせいか、一方的な「殺戮」に近い戦場の描写が惨たらしいせいか、なかなか進まない一冊だった。
その場にいる誰もが、もう嫌だ何故こんなことをと辟易しているのに、止まらない止められない。空虚な大義の下で無益な戦いに駆り出され、それでもそこで自分のできることを、信義を曲げずに果たそうとする。でも、止まらない止められない。その後も幾度となく繰り返される戦争の暴走と、翻弄され抗えず蹂躙される無力な民衆。数万と記される数は、一人一人一人一人なのに。
これまで戦国期の小説を読んでも、こんな風に感じることはなかった。感想を -
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伊東潤『琉球警察』ハルキ文庫。
戦後、米軍に支配される沖縄の微妙な社会情勢の中を警察官として必死に泳ぎ続ける東貞吉の姿を描いた歴史冒険小説。
前半の余りある熱量のある展開に比べて、終盤は安っぽいドラマに成り下がった感がある。結局、米軍の横暴から沖縄を護ることも出来ず、何も変わらぬままに終わるという現実が際立つだけだった。洗脳を超えて、いきなりの催眠術とか余りにも陳腐ではないか。非常に勿体ない。
奄美諸島徳之島出身の東貞吉は、琉球警察名護警察署配属時に米軍現金輸送車襲撃事件で手柄を立て公安担当になる。
米軍に支配される微妙な社会情勢の中で、貞吉は沖縄刑務所暴動で脱獄した人民党の瀬長亀次 -
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川中島決戦を舞台に、信玄と謙信二人の大名の間で生き抜こうとする二人の若武者の物語。
どうしても大国に注目が集まるのは、エンタメとしても学問としても仕方がないところではありますが、その裏というか下というか、知られることのない部分に多くの人々が暮らしていたことを忘れてはいけない知っておきたい。
だって、自分もそういう存在の一人だから。
大名の生き様、処世術を学ぶのもいいけど、何者でもない人々の人生こそがきっと学ぶことが多いと思います。
まあ、物語の主人公になっている時点で、名もなき存在ではない、と無粋なこと思うこともある。
いつでもどこでも誰からでも、学ぶことがあるということですよ。影響を受け -
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島原の乱を描く歴史小説。
元小西家臣の三人の視点から描くのも、それぞれの立場がいい立ち位置になっているのもよかったです。
関ヶ原の戦いから島原の乱までは三人の主人公の変遷とキリシタンへの弾圧の強化が並行して描かれていて、序奏としてはよい感じでした。
乱自体の史実についてはちゃんと抑えられているので勉強になりますが、天草四郎の成り立ちに主人公の一人が絡んで詐欺まがいなことをさせるのにはちょっと違和感がありすぎました。
あと、三人の主人公のうちの一人は実在の人物(といっても素性はよくわからないらしいです)なので、最後についても予定調和っぽい感じがしました。
ただ、現在の社会で大きな戦争がいくつか