伊東潤のレビュー一覧
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ネタバレ表題作を筆頭に良作揃いの、戦国を舞台にした短編集。解説にもありますが、展開や盛り上がりどころが計算され尽くされていて、抜群の安定感があります。以下、話ごとに軽くコメント。
「見え過ぎた物見」:物理的な意味での「見る」と、先読みという意味での「見る」、二つの「物見」が話に重なってくるラストが絶妙。
「鯨のくる城」:あたかも作者がその目で見てきたかのような、捕鯨シーンの迫力が凄まじい。
「城を噛ませた男」:昌幸の顔が笑み崩れるシーン、ほとんどホラー(怯)
「椿の咲く寺」:五作品の中で、これだけはちょっとロマンチストな印象。彦蔵さんのせいですな(笑)
「江雪左文字」:時代を何度も行き来するので序盤 -
Posted by ブクログ
北条早雲一代記。
戦国時代最初期に下剋上を成し遂げた謎に包まれた人物を少年時代から描く。最新説に従い生年月日をずらして没年齢を64歳としているので、今までの北条早雲像と随分違う。
司馬遼太郎の「箱根の坂」だと87歳が没年齢になっている。
その差23歳!これだけ違うと話を変えざるを得ない。
今までの枯れたイメージとは違う、アクティブな早雲、勇壮な早雲、命知らずな早雲、に描かれている。
が、至極真面目に作文しているなぁ~と言うのが正直な感想。
これだけ前半生が不明な人なんだから、もっと放埓・奔放に描いても良かったのでは。得体の知れない戦国大名No,1は「国盗り物語」で描かれる斉藤道三だと未だに思い -
Posted by ブクログ
半分を過ぎるまでは…残虐な戦の描写に息が詰まりそうだった。
秀吉の朝鮮出兵の陰で翻弄された幾人もの男や女たち。しかしそれぞれが、自らの置かれた境遇の中で目覚め、成長し、大きくなっていく。朝鮮も日本も関係ない。もう人が死ぬのは嫌だ…そんな思いに従うことは、戦乱の世にはそれだけで自殺行為であることは、近くに太平洋戦争史をひもとくだけで知れること。
しかし、嘉兵衛、金宦はその思いに生きた。その男たちの強さに自らの守ってきた価値観すら捨て、戦の終結に動いた加藤清正。清正に、本当にあるべき指導者の資質を見た。
これがどこまで史実に迫っているかはわからないが、それでも読んでよかった。そう思う。 -
Posted by ブクログ
これは関東での所領や権益を庇護してもらうべく山内・扇谷両上杉家の勢力圏での下剋上を潜り抜けた主人公の長尾景春と北条早雲の歴史小説だ。顕定への私恨から同盟同士だった太田道灌と敵味方に別れた。だが道灌もまた味方の騙し討ちから誅殺され、更なる私怨が芽生えた。息子もまた敵味方となり戦うが息子の親思いに生き様を敵として生き抜いた。「父上は己の信念を貫いたまで、何ら恥じることはありませぬ」と息子もまた顕定への怨念を剥き出して、のちに父子共に北条早雲と共に戦う。戦国下剋上では今日の味方が明日には敵に、更には私怨が叛旗する理由となる。現代でも騙し騙される相手への怨念は消え失せることがない、特に大国同士の立場か