滝口悠生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
家賃3万円のオンボロアパート「かたばみ荘」。お風呂とトイレもありますが、シャワー&和式トイレのユニットバスって!この間取りには違和感を覚えました。想像しにくいよ〜
退去する際は『次の入居者を連れてこないといけない』というルールがあるため、住人は、知り合いの知り合いの知り合い…が続いてるということ。
退去時に清掃なんてせず、家具や家電はそのまま引き継いだり、代々の住人の暮らした気配を感じながらの生活なんです。
物語はこのアパートの2号室で暮らした住人・関係者がリレー形式で語る、16年間の出来事です。
とにかくずっと語り。相槌を打っちゃいそうになるくらいみんな普通にしゃべってる。脱線もするし「この話いる?」みたいなのもあるのですが、そこにその人らしさがジワジワ出てきます。
ラストでいろいろな種明かしがあって私はとってもスッキリしました。
ユニットバスで覚えた違和感もスッキリ、というか驚愕!えらいこっちゃ!
紹介され紹介し、同じ部屋で暮らした人達。なんだかもう他人じゃない感じがよかったなぁ。 -
Posted by ブクログ
私の苦手とする一見脈絡のない独り言のような文章が続いてるけど、テーマが子育てや保育園の日常なので興味深く読めた。(改行少なめだし)
保育園に通う早生まれのももちゃんは、同じクラスの4月生まれのお友達と比べるとかなり小さい。そのももちゃんの視点(これは多分に父親の想像).
保育園の送り迎えは大抵文筆業の父親が担当してる。その父親の視点、母親の思い、担当保育士の気持ちなどが、行きつ戻りつ細やかに表現されていく。大きなアクションで「ある!ある!」というような出来事ではなく、そうそうこんなことばかりだよなぁ、と思うようなうつろうようなエピソードとそれにまつわる心情を繊細に文章にしている感じ。これはほぼ体験したことがベースだろうなと思われるとても具体的で差し迫った感のあるお話だった。子育て、保育園、自分も同じようなこと感じてた時期があったけれど、それをこんなふうに言語化できるってすごいなぁ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ※登録は文庫版ですが、読んだのは単行本なので、「夜曲」という短編が読めず残念でした。
「やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)」で気になっていた滝口さん。どの作品から読むか悩みましたが、本書にしてみました。
読み始めて「ん?」と思いました。これはあまり読んだことのないタイプだぞ、と。たくさんの人が出てくる群像劇だとか、相関図があった方がいいだとか、セリフが括弧で書かれていないとかそんなことではなく、何かうまく言えないけれど、読んだことのないタイプの本だと思いました。ちょっとググってみて、すごく納得。これは、芥川賞受賞作だったのですね。おそらく芥川賞受賞作なんて今まで読んだことありません。あ、嘘でした、今村夏子さんの「むらさきのスカートの女」は読んでいました。端的にいうと、芥川賞受賞作はたぶん私には無理だろうという苦手意識があるのです。なので、非常に納得。本作も苦手なタイプでした。
亡くなった祖父(とにかくたくさんの親戚が出てくるので、誰目線で呼称してよいかわかりませんが、とりあえず)の通夜に集まった親戚一同の思い、行動、過去と現在、その他諸々という感じでした。親戚付き合いが少なく、兄弟姉妹が多い家系でない私には、誰だかわからな親戚がいたり、年の離れたいとこが複数人いるということ自体経験したことのないことで、名前を覚えることが苦手なこともあり、相関図を書こうかとなんども途中で思いましたが、そのままなぁなぁで読むことにしました。
これだけたくさんの親戚が集まると(故人にとってはひ孫にあたる小さい子までいる)、当然ですが色々な人がいるもので、蒸発してしまっている者、その蒸発してしまっている者は妻にも去られているので、両親ともに不在で暮らしてきている兄弟、中学から学校に行かなくなり、故人の晩年には庭のプレハブに住み込み、故人と共に暮らすことになった孫などもいて、ハッと興味のような意識を持っていかれることがありました。
何が起きるわけではなく、記述の中心になる人物はコロコロと入れ替わりますが、視点は何となく上からという印象がありました。
「死んで居ない者」を中心に「死んでいない者」がまるで日常から切り離されたような時間をともに過ごしながら、しかし、それぞれを生きている、ただそれだけと言ったらそれだけのストーリーです。そうなのですが、通夜という独特な時間、空間を見事に利用しているなぁ、と感じました。それと同時に、このなんてことのない人たちのなんてことのない人生がなんだかと尊く感じられました。
先述したように「苦手なタイプ」の本だったのです。ですが、なんか、よかったです。誰がついているのかわからない鐘の音を想像しながら、葬儀が終わったあと、日常へとそれぞれ戻っていく親戚一同が脳裏に浮かびました。 -
Posted by ブクログ
表紙がとても綺麗で手に取りました。
二十四節気は知っていても、それをさらに三等分した七十二候は知らない人が多いのでは?
わたしも今回初めて知りました。
雉始雊(きじはじめてなく)というように、動詞で示されているのが、分かりやすい。
どれも現代人にも理解できるもので、時代が変わっても季節の移ろいは変わらないものだなと思います。
この本では、二十四節気の春夏部分を抜き出し、また、各節気の真ん中の七十二候をタイトルに各自が短編をお書きになっています。
思えば、短い作品は触れてこなかったので、どれも不思議な余韻を残す終わり方で、こちらの想像力や読解力を掻き立てるなぁと短編の面白みを初めて知りました。