滝口悠生のレビュー一覧
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子育てにおけるかけがえのない瞬間が幾重にも重なっていくような、素敵な本だった。自分の子どもとの思い出を追体験している部分もある、という自覚もあるが、毎日通った保育園への坂道、抱っこしたときの重さ、一緒に見た飛行機、そんな小さい子供と過ごした日々のディテールがまざまざと思い出された。
ただ一方で、子育てのキラキラした部分だけを切り取ったものというわけでもなく、小説家ならではの表現も随所に見られかなり読みごたえもあった。
神聖さすら感じる保育室での赤ちゃんの昼寝、パレスチナの少年に思いをはせながら見る空高く飛ぶ凧、半分になった紙に書かれたももちゃんの「も」。
描き下ろしとして書かれた「名前」のラス -
Posted by ブクログ
葬儀に集まった親族達の所作や心模様
故人とのエピソードが語られていく物語
場面 視点 会話 可視化された想念が
いつのまにか切り替わっていく文体
脳内映像は俯瞰したりズームアップしたりと
忙しない
けれどそれが時間経過や人々の浮かんでは消えていく想いのリアルそのものだと思いました
故人への想いが強烈に伝わってくる
わけではないけれど
ふと湧き上がってくる思い出で生前の故人を偲ぶ
そこに現れる故人は死んでいない者たちと同じ強さで心のうちに現れていました
人々の想念が移ろっていく様を読みながら
今まで参列してきた葬儀で
死んだらどうなるのだろう
生まれ変わりってあるのかなぁ
などと頭をよぎっ -
Posted by ブクログ
前半は2歳の娘ももちゃんの保育園での
送り迎えに奮闘するお父さんの悲喜交々
ままならない娘の感情に直面したお父さんの戸惑いに悲哀を感じつつ
娘との冷静なやりとりに
おおらかな愛情を感じました
後半は3歳になったももちゃんとお父さんの
日常風景
対話のシーンやふと感じてしまう不安が
とてもリアル
今でこそお父さんの保育園の送り迎えの姿は
良く見かけるけど
私の子育て時代は結構珍しかった
夫が送り迎えをすることが多かった我が家は一時期保育園のお友達にはお母さんのいない子として
認知されてたなぁ
実はこの物語
単なるお父さんの子育て奮闘記に留まらない
ももちゃんのお父さんは我が子を一人の人間と -
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著者は1982年の生まれらしいから、これを書いたのは34歳より前になる。
でも、34歳でこれって、ちょっと枯れすぎてない?w
人って。
生まれて、まずは両親や兄弟。次いで、祖父や祖母。さらに親戚や従兄弟と人間関係を広げていって。
歩き始めると、近所の同年代の子ども、そして幼稚園の友だち。
小学校に入り、学年が上がっていくにしたがって、学校の友だち…、つまり親や従兄弟等の血のつながりのある人間関係より、自分の世界で出会った人間関係のウェイトが高くなっていく。
とはいえ、小学生くらいまでは、まだ血のつながりのある人間関係のウェイトはまだまだ高い。
それがイコール、あるいは自分が出会った世界の人間 -
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かけがえのない時間が流れていた。
この本を読んでいる間と、初子が産まれて毎日てんやわんやしていたあの頃とが繋がったような、すごく特殊な読み味の読書でした。
時間旅行をしたみたいな感覚。
読む前のイメージはてっきり『君が夏を走らせる』(文庫版・9784101297743)のような、物語の中で描かれるおとなとこどもの絆を追う作品なのかと思っていたら、それはそうなんだけどちょっとそうじゃなくて、自分の経験と物語が繋がって自分も並走したような、自分の記憶も物語と混ざり合って反応して、結果として過去へジャンプしたみたいな感じでした。
とにかく読んでいたくて電車もバスも降りたくなかったし働きたくなかった -
Posted by ブクログ
素晴らしかった。育児の辛さや尊さ、みたいな観点では全くない、子どもを見るなかでの大人の発見や、子ども自身の思考を想像する。
どんどん視点が変わっていって、読んでいると色んな人の目になれるような。
子どもという新しい存在がいることで、出会う人々。その人々が、どんな眼差しで子どもをみているか。保育園の先生だって、一人一人、考えることや感じることは違う。
偶然、保育園のクラスが一緒で、子ども同士が仲良く、他人ではなくなった家族。その子ども。
散歩ですれ違う近所のおばあちゃん。
子どもって未知の存在に、未知の周りがどんどん広がっていく。それってすごく楽しいことだなぁと感動してしまった!
私ももっと観察 -
Posted by ブクログ
久しぶりに大好きな小説を手に取った。3日で2回、1回目は音楽も流さずに気になるラインや凄いと思った箇所に付箋を立てつつ頁に直に書き込みもしながら、2回目はそこに流れている川のことやフィールドレコーディングするキャラクタのことも意識して水の流れる音からはじまるアルバム、吉村弘の「GREEN (SFX version)」を流しながら文章とエピソード、それに音楽が作る流れに乗って一気に読んだ。凄かった。素晴らしかった。どちらの読み方でも楽しんだ。やっぱり好きだな、と改めて思った。
気を抜くと口にしてしまいそうな、個人と世界の間に漂う、思考や記憶の表面に近い浅い -
Posted by ブクログ
葬儀の周辺の日常の場面だけなのに、登場人物たちのひとつひとつありそうで言語化できていない思考の逡巡
【フレーズメモ帳】
あれこれ詮索されることが兄はうっとうしかった。もう少し正確に言えば、あれこれ詮索された時に返す言葉を持たぬことが自分でもわかっているから、わざわざ出ていってそんな目に遭いたくなかった。
父と母がいなくなった寂しさは、それらとはまったく別に、毎夜布団のなかのふたりを襲ってきた。そんな毎日の時間のことを誰も知らないから、みんな勝手なことを言う。
しかし医者や親戚たちは執拗にそれを精神疾患にしたがり、浩輝を憐れみたがった。いくら違うそうではないと言っても、自分ではそう思ってい