滝口悠生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者は1982年の生まれらしいから、これを書いたのは34歳より前になる。
でも、34歳でこれって、ちょっと枯れすぎてない?w
人って。
生まれて、まずは両親や兄弟。次いで、祖父や祖母。さらに親戚や従兄弟と人間関係を広げていって。
歩き始めると、近所の同年代の子ども、そして幼稚園の友だち。
小学校に入り、学年が上がっていくにしたがって、学校の友だち…、つまり親や従兄弟等の血のつながりのある人間関係より、自分の世界で出会った人間関係のウェイトが高くなっていく。
とはいえ、小学生くらいまでは、まだ血のつながりのある人間関係のウェイトはまだまだ高い。
それがイコール、あるいは自分が出会った世界の人間 -
Posted by ブクログ
かけがえのない時間が流れていた。
この本を読んでいる間と、初子が産まれて毎日てんやわんやしていたあの頃とが繋がったような、すごく特殊な読み味の読書でした。
時間旅行をしたみたいな感覚。
読む前のイメージはてっきり『君が夏を走らせる』(文庫版・9784101297743)のような、物語の中で描かれるおとなとこどもの絆を追う作品なのかと思っていたら、それはそうなんだけどちょっとそうじゃなくて、自分の経験と物語が繋がって自分も並走したような、自分の記憶も物語と混ざり合って反応して、結果として過去へジャンプしたみたいな感じでした。
とにかく読んでいたくて電車もバスも降りたくなかったし働きたくなかった -
Posted by ブクログ
素晴らしかった。育児の辛さや尊さ、みたいな観点では全くない、子どもを見るなかでの大人の発見や、子ども自身の思考を想像する。
どんどん視点が変わっていって、読んでいると色んな人の目になれるような。
子どもという新しい存在がいることで、出会う人々。その人々が、どんな眼差しで子どもをみているか。保育園の先生だって、一人一人、考えることや感じることは違う。
偶然、保育園のクラスが一緒で、子ども同士が仲良く、他人ではなくなった家族。その子ども。
散歩ですれ違う近所のおばあちゃん。
子どもって未知の存在に、未知の周りがどんどん広がっていく。それってすごく楽しいことだなぁと感動してしまった!
私ももっと観察 -
Posted by ブクログ
久しぶりに大好きな小説を手に取った。3日で2回、1回目は音楽も流さずに気になるラインや凄いと思った箇所に付箋を立てつつ頁に直に書き込みもしながら、2回目はそこに流れている川のことやフィールドレコーディングするキャラクタのことも意識して水の流れる音からはじまるアルバム、吉村弘の「GREEN (SFX version)」を流しながら文章とエピソード、それに音楽が作る流れに乗って一気に読んだ。凄かった。素晴らしかった。どちらの読み方でも楽しんだ。やっぱり好きだな、と改めて思った。
気を抜くと口にしてしまいそうな、個人と世界の間に漂う、思考や記憶の表面に近い浅い -
Posted by ブクログ
【フレーズメモ帳】
あれこれ詮索されることが兄はうっとうしかった。もう少し正確に言えば、あれこれ詮索された時に返す言葉を持たぬことが自分でもわかっているから、わざわざ出ていってそんな目に遭いたくなかった。
父と母がいなくなった寂しさは、それらとはまったく別に、毎夜布団のなかのふたりを襲ってきた。そんな毎日の時間のことを誰も知らないから、みんな勝手なことを言う。
しかし医者や親戚たちは執拗にそれを精神疾患にしたがり、浩輝を憐れみたがった。いくら違うそうではないと言っても、自分ではそう思っていないだけだと言う。そんなに言うならそういうことでもいいが、結局それは俺のことを信じないということだから -
Posted by ブクログ
わたしは滝口悠生の小説とその「フロー」が大好きだ。
語り手自体も、そこにあったエモーションや状況、人称までもが移ろいながら緩やかに繋がり重なり合い、世界を形どり物語は進んでいく。ドライヴやグルーヴを感じるというよりも、文章のなかを漂いながら、突然の感情の発露に引っかかって停まったり、いつのまにか入れ替わったようにも思える語り手に驚いたり、最後に溢れてしまう無意識のような一言に少し戸惑ったりもしながらも、ゆっくりと進んでいく。その引っかかりや戸惑い、それらがつくるスピード感と、それを読むわたしの心地よい違和感。その間に生まれるのが小説の「フロー」というものなような気がしている。
物語と、それ以