滝口悠生のレビュー一覧

  • 寝相

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    ネタバレ

    「寝相」
    眠る祖父、引き取った孫。その周囲。
    祖父の夢の中では今までの人が集まり、関係性も崩れ、幸せな混沌に。
    新人賞受賞作を軽々と凌駕して書名にするに値する傑作。

    「わたしの小春日和」
    職を辞し妻と別れ実家に戻った男が、色々と観察する。
    荒唐無稽さは抑え目。

    「楽器」
    新潮新人賞受賞作。にして、すでに堂々たる人称の移動が。
    宴会の家を取り巻くようにして庭に現れた死人たち、を、死人たちの眼からも描いている?

    とにかくこの人みたいな小説を書きたいんだ。再認識。

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    2016年09月13日
  • ラーメンカレー

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    滝口悠生『長い一日』をO氏へ勧めてから、その続き『ラーメンカレー』と『昼下がりに友人と』を読む。問題は「窓目くん」である。他者との関係が旺盛なのだが、孤独も深い。恋人とも離れて付き合った方がうまくいくという人物として描かれている。実在するのかという疑問は付きまとうけれど、小説のシンボルとしてこの上ない性格を持っていると思うのだ。

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    2026年09月10日
  • 長い一日

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    面白いのだけど、なかなか読み進まない。
    ても、途中で諦める気にもならない。
    なんか気になる。
    ということで、最後まで読み通しました。
    本当になんでもない、特に大したことが起こるわけでもない、短い期間の数少ない登場人物の心理描写。
    それでも読ませるのだから不思議である。

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    2026年09月10日
  • 死んでいない者

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    ある男性が亡くなって、お通夜に親族が集まる。子に孫にひ孫に…。普段顔を合わせることもなくて、誰が誰やらよくわからないけれど、みんなでお酒を飲んで料理をつまんで、何となく近況などを話したり。
    話の視点がゆるゆるといろいろな人に移り変わるわ、登場人物が多いわで、なんだか読みづらいなあと思ったけど、その感じが、実際に親戚に久しぶりに会った時のあの人誰だっけと頭の中の記憶の古い引き出しをひっくり返す感じに似てて、ちょっと面白くなってくる。
    人が亡くなるって妙な感じ。身近な人にとっては一大事なんだけど、世界はそんなことに関わりなくふつうに続く。

    ところで、私は、通夜に来ていた故人の友人のはっちゃんが故人と旅した時のことを思い出す話がいいなあと思ってます。

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    2026年08月26日
  • ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス(新潮文庫)

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    タイトルによりずっと気になっていたが、微妙に手に入りにくく読むことが叶わなかった作品ということで自分にとって愛着のある一冊ではあるけれど、これは芥川賞受賞作『死んでない者』に至るひとつの過程を読み取れるような作品だと思った。『死んでない者』は30人近い親戚がひとりの人物の死によって集まり、彼ら・彼女らの交錯する人間関係や人生観が展開される傑作で、本作はその凄みにはまだ到達していないように思われた。

    だからこそ、本作に足りないものは何だったのかを考えることを通じて、小説というものの真髄に至れるような気もして、それゆえに豊かな読書体験でもあった。

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    2026年07月16日
  • 長い一日

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    何か特別な事が起きるわけではなくて、淡々と日常が綴られていく。
    そんな生活の中でも感じたことはいっぱいあって、毎日同じようでいて、少しずつ違っていて。
    それぞれの登場人物たちの頭の中を覗き見してるような不思議な感覚。
    読み終わった後、変わり映えのないように見える日々も愛おしくなる一冊。

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    2026年06月29日
  • たのしい保育園

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    わたしにはこどもが居ないし、こどもという存在が近くにいないのだが、この本を読み進めるうちに、もうとっくに失ってしまったこどもの目線で、世界を捉え直せたような感覚になった。親になったひとたちは、こういう体験を一緒にしているんだろうか。

    言葉を持たなかったころのこと、言葉を持たないなりに何かを伝えようと泣いていたころのこと、少しずつ言葉を獲得して、訴えればそれが叶うと信じていた、希望しか知らないころのこと。今を懸命に生きていたころのこと。

    自分にもそんな頃があったかどうか、正直思い出せない。けれどもしあったとしたら、いつから絶望を覚えたり、過去や未来に思いを馳せるばかりで、今を生きることに集中できなくなったのだろう。そんなことを考えた。

    保育園を題材にしているのでこどもが話の中心にはいるものの、ももちゃんのお父さんをはじめ、ご近所さんなど、その周りの人々の心の描写も繊細で時にとてもハッとするものがあった。

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    2026年06月22日
  • たのしい保育園

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    滝口さん自身が親になって、保育園への登園風景や幼い子供らのかかわり、散歩での出来事などが淡々とつづられている。相変わらず改行が最小限。成長を見守る感動や喜びやらちょっとした寂しさも。この忘れてしまいそうな感覚をうまく言葉を紡いでいて私も十数年前の長男の保育園のことを思い出す。
    唐突にロッテの高沢、という副題の章があり、80年代にプロ野球で活躍した人が60過ぎて保育士さんになったことを知った。
    読み進めながらあれ?この人最近亡くなったんじゃなかったっけ、そのくだりも出てくるかな、と思ったら高沢秀昭を高代延博と勘違いしていた。痛恨!

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    2026年06月20日
  • たのしい保育園

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    慌ただしく時間が過ぎていく、どこへ出かけるでもなく、大事件が起きるわけでもない一日一日が、かけがえのない一日だったんだなと思う。

    ももちゃんのお父さんに共感するところがいくつかあって、読む人によって、共感する箇所も違うのだろう。

    育児中の、うっすら感じながら流れていったなにかを文字にしてもらって、ありがたく思う。

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    2026年06月15日
  • たのしい保育園

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    細やかに0歳から3歳になっていく娘とのやりとりや感じた思いをつづるももちゃんのお父さん。保育園、公園であう人々、子どもの友達の親、など、関わり合う人たちとの機微ややりとりが細かすぎて、子供を世話する中で慌ただしく流れていってしまう思いや感情を余さず言葉にしてくれる。

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    2026年06月01日
  • たのしい保育園

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    ネタバレ

    既読の「国語と出会いなおす」で絶賛されていて。
    ももちゃんとお友だちがひたすらかわいらしかった。
    ももちゃんのお父さんみたいな親御さんばっかりだったら、ヒステリーもこの世からなくなるのかなぁ。

    初読みの作家さんだと思っていたら、いつのまにか視点が変わって誰の思考かわからなくなるこの感じ、「死んでいない者」を読んでいた。もう少し読んでみたいと思う。

    今回は冒頭の部分で胸がいっぱいになってしまった。
    ご近所の、そのシーンでしか登場しない、孫がいるくらいの年齢の、でも子どもはいない富士見さんという御婦人が、ぐずるももちゃんとお父さんを見かけたとき。

    「〜ときどきそんなふうにいないはずの娘や孫のことを想像する。〜別に子どもを持たなかったことを後悔しているわけでも残念に思っているわけでもなかった。いや、自分がしなかったことにまったく微塵も後悔や残念さがないとは言えない。〜経験したことのないこと、たぶんもう経験できないこと、長く生きれば生きるほど、しなかったことは減るかと思いきや不思議と増えていくもので、自分がしそびれたことについて考えることは実は結構ある。もう少し若い頃は、自分が出会わずにきてしまった事ごとについて、まるで損したみたいに思っていた気がするが、富士見さんはだんだんそういうものではないんじゃないかと思うようになった。蓋を開かずにおいた、大事に残した可能性が、むしろ私の宝物みたいに思えてきた。可能性というのは、若い頃はなまじ手が届く気がするから、ついつい得られるものはなんでも得ようとしていまい、得られなかったものを悔いたりするけど、たぶん得られなかった可能性というのはそんな哀しみではなくて、誰かと思い返したり、写真を見たり、言葉にしたりできる私のこれまでの確かな人生を縁どり彩ってくれるものなんじゃないか。〜」

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    2026年04月22日
  • たのしい保育園

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    視点が子供の父から子供、他の子や親へところころ変わり、思いつくまま見たものや思い出したことへ話が飛ぶ構成が、幼き子供の思考回路のようで、意図的に構成されたものなのではと思った。

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    2026年04月02日
  • たのしい保育園

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    本の雑誌・年間ランキングから。結構主体的に育児に関わっているぽい父の目線がメイン。でも母の関わりや、ほかの親との交流なんかも適宜描かれ、自身の経験なんかもちらほら思い出したりしつつ、物語は進む。しかし、ふいちゃん、ってなんていう名前なんだろ。

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    2026年01月07日
  • たのしい保育園

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    連絡帳にすぐに書きたくなったり、つい長文になったりする、ももちゃんのお父さん、笑ってしまう。さすが文筆業!
    文筆業じゃなくても、とてもわかる。

    「緑色」のお父さんが嫌がるももちゃんを抱っこしている時の描写がすごい。こんなに細かく具体的に書いてあると自分が抱っこして同じような目にあった時のことが身体に思い出される。
    育児あるあるや、同じ場面の体験はないのに体験したかのように私自身に思い出させるシーンの数々、ひとつひとつが2歳前後の女の子を育てる楽しさ、喜びを感じさせてくれる。
    可愛ければ可愛いほど、かけがえのない日々だと感じれば感じるほど、それを破壊するかもしれない何かに不安になる。
    パンデミック、戦争、コースを変えさせられた飛行機…
    だからこそ、2つある「も」を人に分けてあげるももちゃんの未来を、子どもたちの未来をなんとしても守りたいと思う。

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    2026年01月05日
  • たのしい保育園

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    固有名詞が繰り返されて、絵本のような文体。誰ひとり悪者が出てこなくて、穏やかで、優しくて、まるでももちゃんの日々の成長をももちゃんに読み聞かせしているよう。保育士という職業柄、ももちゃんのお父さんのように、実は自分のお子さんや、園のお友だち、保育士たちまで温かく見守ってくれているお父さんがいるのかもしれないなと思うと、こちらも日々のお仕事の励みになる。

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    2025年10月09日
  • たのしい保育園

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    エッセイのような小説。父目線の育児の様子が細やかに描かれている。「イクメン」と言われるような、男性が育児をしていることに対するある種の特別感は感じず、あくまで自然に子育てをしている様子が伝わってくる。育児をしている中で送る小さな出来事や気づき、変化について、書き留めておかないとすぐに忘れてしまうようなこと、でもできるだけ覚えていたいことが丁寧に描かれていて、子育て経験がある身としては、「そうそう!」と頷きながら、するすると世界観に引き込まれてしまう。子育てをしていると、日々発見や喜び、気づきがあって、その時の思いを忘れずにいたいと思いつつも、日常生活のなかで、いつのまにか埋もれていってしまう。
    この本を読むと、そんな埋もれてしまっていた思いが、愛おしいような寂しさと一緒に思い起こされて、大変なことも嬉しいこともいろいろあった、初めての子育てのことを優しい気持ちで振り返ることができる。

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    2025年09月04日
  • たのしい保育園

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    あさきょさんの本棚から。

    保育園に通う子どもの姿とその時の父の感情を、父親目線でかなり丁寧に細かく描いている。
    幼児の子育て中、(特にワンオペだと)感じたことや気づくことは山ほどある。
    けれども、働きながらの子育てとなるとメモする暇もなく、その感情は流されて忘れ去られてしまうことがほとんどだ。
    筆者は父親であり、文筆業をしているからこそ、これだけ日常の些細なことまで書き留められたのかな…と思う。

    この本を開けば、あの時のかけがえのないひとときと、いつまでも眺めていたくなるような子ども達の様子がリアルに思い出される。

    見たことすべてを連絡帳に書き留めて、保育士さんと共有したいという気持ちには、すごく共感したし、第一子のママ達との戦友のような思いは20年経った今でも変わらない。

    そして、保育士さん達への感謝と尊敬の想い。

    ただ、急に視点が保育者になったり、近所の人になったりで、始めはやや戸惑うし、読みにくさも。

    残念なのは、まだまだ反抗期真っ只中の中学生と闘う毎日で、ゆったりとした気持ちで読むことができなかったこと。
    子どもが巣立った後ならきっともっと味わい深いものになるのではないかな。

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    2025年07月25日
  • たのしい保育園

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    文体とか視点の移り変わりが独特だけど、読みづらくはない。言葉にするのが難しい、子育てにまつわる感覚をうまく言語化していて、共感できるというか、なるほどこういうことだったのかも、と腑に落ちる表現がたくさんあった。

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    2025年07月08日
  • たのしい保育園

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    作家とはすごいものよ。こんなふうに日常を切り取っておけるなんて。羨ましい。
    子どものお父さん、としての目線に徹底して、保育園への連絡帳の拡大版みたいな書き方がいい。まさざしに愛情が溢れてて、読んでて温かい気持ちになる。あと、自由業のお父さんがたくさんいる保育園、てとこが東京というか、都会を感じさせて、カルチャー誌のコラムっぽい印象もあり、なんだかおしゃれな感じもした。

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    2025年06月26日
  • たのしい保育園

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    緊急事態宣言が発令された2020年からおよそ4年間?の、ももちゃんの成長、新米パパの育児奮闘が中心の物語。

    ももちゃんは生後2か月で保育園に入園、お父さんは文筆家で自由業のため、送り迎え担当です。

    コロナ禍における育児の複雑な感情を、父親目線で時には母親目線で描いています。子どもの気持ちの描写もとても上手で、ケンカの仲直りの場面のリアルさにはびっくりでした。鋭い観察眼と描写力、恐るべしです。保育の仕事へのリスペクトがひしひしと伝わってきて、とても嬉しい気持ちになりました。小説として楽しめたのはもちろんですが、コロナ禍の現実を、子育て中の親目線で素直に伝えている本書は、今後貴重な資料になるのではないかと思いました。

    以前、滝口悠生さんの「死んでいない者」(第154回芥川賞受賞作)を読んだのですが、印象が違っていて、同じ作者?と、ちょっとビックリ。でも新鮮でした。人物視点を変えて描く手法は、どちらも秀逸でした。(本書では、ももちゃん、お父さん、他の登場人物・・・・と語りの主体が変わり面白い。)

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    2025年06月24日