滝口悠生のレビュー一覧

  • 死んでいない者

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    わぁこの作家は私と同い年なのか。
    はじめて読んだけど、めっちゃ書きたい内容だった。

    前情報なく手に取って、
    通夜の親戚の集まりを描いてるとわかってかなり身構えた。
    私自身地方の出身で親戚付き合いが濃いもので、
    自分の中の強固なリアリティがあるものだから
    嘘っぽさとかがあると途端に引いてしまうだろうなと。
    でも今作はそんな自分を次第にほぐして行って、
    最終的にはなかなか遠くまで連れて行かれた。

    まるで線香の煙のようにたゆたいながら
    何人もの親戚たちの内側に入り込んでは
    この親戚たちの関係性や複雑な思いを描きつつ、
    型にはまらぬ家族のあり方をいくつも提示する。
    特に後半はかなりドライブしてくる

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    2022年01月17日
  • 死んでいない者

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    「通夜」という一枚の黒々した布に、その製作過程あるいは身に纏ったことのある人々が様々な角度から手を伸ばしている様を連想した。あらすじと呼べるあらすじも全然なくただ「死者」と残された様々な年齢・立場・関係・人となりを持つ親戚たちが死という一つの出来事に対して、それぞれ淡々と向き合っている。ごく自然に視点が入れ替わり、そこに章分けやカッコ書きなどの心内語と実際に口に出された言葉を分かつ明確なものは存在しない。時間軸もするりと別のところに飛んで行く。文体や進み方は一見奇妙だが、死という究極の非日常が根底にあるその場にしかないリズムが確実に存在する。そんな究極の非日常を描いておきながら、案外「現実」っ

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    2021年03月26日
  • 死んでいない者

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    うわ!これ!大好きです!!!!語りは幽霊のように人びとの思考と記憶を辿り、それは声も身体も超えて、時間を自在に伸縮させる。そのなかで忘れがたく描かれる機微の愛しさ。敦賀の砂だったか石だったかのところかなり好き(好きといいながら砂だか石だかおぼえていないのだからまるで信用がならない)。

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    2021年07月24日
  • ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス(新潮文庫)

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    ライ麦畑を捕まえてを彷彿とさせる青春小説。物語の経過の構成が素晴らしくずっと世界に引き込まれていく。日常の中の情熱、衝動。全てを飲み込んでしまうと体内が爆発しそうな青春。一気に滝口悠生に惹かれてしまいました。衝撃作。

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    2018年08月07日
  • 寝相

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    三編とも好きなんだけど、「わたしの小春日和」のおもしろさ。まじめなのがおもしろくて、にこにこへらへら読んでたら急にすごく本当のこと言うから、ずっとそればかり考えるはめになった。「嘘のない答えなどないとあなたは思っている。そして、だから問うまい、考えまいとする」って小説の中だけじゃなくて、滝口さん本人がそう思ってるくせに。

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    2016年10月07日
  • 寝相

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    ネタバレ

    「寝相」
    眠る祖父、引き取った孫。その周囲。
    祖父の夢の中では今までの人が集まり、関係性も崩れ、幸せな混沌に。
    新人賞受賞作を軽々と凌駕して書名にするに値する傑作。

    「わたしの小春日和」
    職を辞し妻と別れ実家に戻った男が、色々と観察する。
    荒唐無稽さは抑え目。

    「楽器」
    新潮新人賞受賞作。にして、すでに堂々たる人称の移動が。
    宴会の家を取り巻くようにして庭に現れた死人たち、を、死人たちの眼からも描いている?

    とにかくこの人みたいな小説を書きたいんだ。再認識。

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    2016年09月13日
  • たのしい保育園

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    本の雑誌・年間ランキングから。結構主体的に育児に関わっているぽい父の目線がメイン。でも母の関わりや、ほかの親との交流なんかも適宜描かれ、自身の経験なんかもちらほら思い出したりしつつ、物語は進む。しかし、ふいちゃん、ってなんていう名前なんだろ。

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    2026年01月07日
  • たのしい保育園

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    連絡帳にすぐに書きたくなったり、つい長文になったりする、ももちゃんのお父さん、笑ってしまう。さすが文筆業!
    文筆業じゃなくても、とてもわかる。

    「緑色」のお父さんが嫌がるももちゃんを抱っこしている時の描写がすごい。こんなに細かく具体的に書いてあると自分が抱っこして同じような目にあった時のことが身体に思い出される。
    育児あるあるや、同じ場面の体験はないのに体験したかのように私自身に思い出させるシーンの数々、ひとつひとつが2歳前後の女の子を育てる楽しさ、喜びを感じさせてくれる。
    可愛ければ可愛いほど、かけがえのない日々だと感じれば感じるほど、それを破壊するかもしれない何かに不安になる。
    パンデミ

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    2026年01月05日
  • たのしい保育園

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    固有名詞が繰り返されて、絵本のような文体。誰ひとり悪者が出てこなくて、穏やかで、優しくて、まるでももちゃんの日々の成長をももちゃんに読み聞かせしているよう。保育士という職業柄、ももちゃんのお父さんのように、実は自分のお子さんや、園のお友だち、保育士たちまで温かく見守ってくれているお父さんがいるのかもしれないなと思うと、こちらも日々のお仕事の励みになる。

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    2025年10月09日
  • たのしい保育園

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    エッセイのような小説。父目線の育児の様子が細やかに描かれている。「イクメン」と言われるような、男性が育児をしていることに対するある種の特別感は感じず、あくまで自然に子育てをしている様子が伝わってくる。育児をしている中で送る小さな出来事や気づき、変化について、書き留めておかないとすぐに忘れてしまうようなこと、でもできるだけ覚えていたいことが丁寧に描かれていて、子育て経験がある身としては、「そうそう!」と頷きながら、するすると世界観に引き込まれてしまう。子育てをしていると、日々発見や喜び、気づきがあって、その時の思いを忘れずにいたいと思いつつも、日常生活のなかで、いつのまにか埋もれていってしまう。

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    2025年09月04日
  • たのしい保育園

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    あさきょさんの本棚から。

    保育園に通う子どもの姿とその時の父の感情を、父親目線でかなり丁寧に細かく描いている。
    幼児の子育て中、(特にワンオペだと)感じたことや気づくことは山ほどある。
    けれども、働きながらの子育てとなるとメモする暇もなく、その感情は流されて忘れ去られてしまうことがほとんどだ。
    筆者は父親であり、文筆業をしているからこそ、これだけ日常の些細なことまで書き留められたのかな…と思う。

    この本を開けば、あの時のかけがえのないひとときと、いつまでも眺めていたくなるような子ども達の様子がリアルに思い出される。

    見たことすべてを連絡帳に書き留めて、保育士さんと共有したいという気持ちに

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    2025年07月25日
  • たのしい保育園

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    文体とか視点の移り変わりが独特だけど、読みづらくはない。言葉にするのが難しい、子育てにまつわる感覚をうまく言語化していて、共感できるというか、なるほどこういうことだったのかも、と腑に落ちる表現がたくさんあった。

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    2025年07月08日
  • たのしい保育園

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    作家とはすごいものよ。こんなふうに日常を切り取っておけるなんて。羨ましい。
    子どものお父さん、としての目線に徹底して、保育園への連絡帳の拡大版みたいな書き方がいい。まさざしに愛情が溢れてて、読んでて温かい気持ちになる。あと、自由業のお父さんがたくさんいる保育園、てとこが東京というか、都会を感じさせて、カルチャー誌のコラムっぽい印象もあり、なんだかおしゃれな感じもした。

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    2025年06月26日
  • たのしい保育園

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    緊急事態宣言が発令された2020年からおよそ4年間?の、ももちゃんの成長、新米パパの育児奮闘が中心の物語。

    ももちゃんは生後2か月で保育園に入園、お父さんは文筆家で自由業のため、送り迎え担当です。

    コロナ禍における育児の複雑な感情を、父親目線で時には母親目線で描いています。子どもの気持ちの描写もとても上手で、ケンカの仲直りの場面のリアルさにはびっくりでした。鋭い観察眼と描写力、恐るべしです。保育の仕事へのリスペクトがひしひしと伝わってきて、とても嬉しい気持ちになりました。小説として楽しめたのはもちろんですが、コロナ禍の現実を、子育て中の親目線で素直に伝えている本書は、今後貴重な資料になるの

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    2025年06月24日
  • たのしい保育園

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    0歳から3歳までの娘との生活を綴ったイクメンパパの奮闘記。

    先週末、アラフィフながら右目の白内障手術をし(左目は来週)嬉しいことに右目の視力が良くなり、メガネの度が合わなくなったため、今週はなかなか本を読めなかった。あと数週間、新しいメガネとコンタクトになるまでゆっくりペースで読書予定。

    毎日のように保育園へ送迎をしたももちゃんのお父さんは、贅沢だったと思う。そりゃあ、ぐずるももちゃんのご機嫌をとりながらの送迎は大変だったと思うけど、子供の1番の成長期を間近に見られたのだから、企業戦士(死語かな)のお父さんたちなんかより贅沢だったと思う。

    毎朝の散歩の件なんか、ウチの犬の朝の散歩と同じ。

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    2025年05月31日
  • たのしい保育園

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    「お母さんのほうが、よかった」と泣き叫ぶももちゃん。全力で抵抗するももちゃんをなだめて保育園につれていこうとするお父さん。その光景が、目に浮かぶほど細かく書かれているのを始めに読んで、子育ての頃が懐かしくよみがえってきました。

    お父さんがももちゃんの気持ちを考えたり、ももちゃんの思いに寄り添う様子を、温かく思う自分に気づきました。細かく子どものことが表現されている文章に、惹き付けられました。

    子どもは毎日同じことをしているうちに、いつのまにか大きくなっていて、3歳頃までの発育は見落とすのがもったいないくらいだったなと、私はその時期を過ぎてから気づきました。

    ももちゃんのお母さんは、お父さ

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    2025年05月24日
  • たのしい保育園

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    ちょうど息子が春から保育園に通い始め、わかるわかる、この気持ちをこんな風に文章で表してくれてありがとうと思うなど。

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    2025年05月06日
  • ラーメンカレー

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    この著者、読みはじめ慣れないうちは、一瞬、なんか読みにくい?くどい?とか思っちゃうんだけど、慣れるとクセになるというか、ああこの人こういう文章だった好き、と思うっていう。今回もそうだった。口に出さず心のなかで思っていること、うつろっていくさまざまな細かい思いがそのまま書き連ねられるような感じが好き。

    ストーリーは、友人のロンドンでの結婚式に出席した30代の夫婦が、その帰りにイタリアに住む妻の友人を訪ねるって話と、同じ結婚式に出席した友人のひとり(窓目くん)の恋愛話。どっちもおもしろかったけど、この「窓目くんの手記1~5」がよかった。手記と言いつつ、手記じゃないみたいな部分があったり、延々と料

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    2024年12月28日
  • 水平線

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    読み終わるまでに時間もかかかったけど、読み終えてからもあれはなんだったんだって考える時間もあったりといい読後感だった。
    最終章を読んでいた時、この部分を読むためにずっと漂っていたのかもしれないとも思った。思っていル。
    「海はあらゆる時間にもつながっているんだ、海を見てれば誰だってそのうちそう気づいて気づいたときには遠い時間が波にのって寄せてくる」

    硫黄島にはかつてそこで暮らし死んでいった人々がいた。民宿「水平線」の2階の部屋にはかつてそこで海の向こうを眺めていた家族がいた。そして今を生きる人がいる。そうやって繋がってきたものが時間を超えて混じり合う。海や釣りを介して。

    現代パートでは横多の

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    2024年11月30日
  • 高架線

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    新井田は、先輩から譲られたかたばみ荘のある部屋でに住んでいたが、就職とともに部屋を出ることになった。その際に譲った片川三郎は、しばらくすると失踪し、新井田には大家の万田から問い合わせが届く。片川を探さなくて良いので、次の住人を探すように言われるが…。

    日記なのか、インタビューなのか最終的明らかにされないが、いずれかの形で、新井田から次々と住人またはその周辺の人物による視点による自分語りによって語られることによって、かたばみ荘の記憶を描いていく。

    ミステリとして読むのであれば、片山三郎が失踪した理由と行き先であったり、かたばみ荘に住む謎の人物であったり、そもそものかたばみ荘の謎に付いてという

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    2024年08月20日