滝口悠生のレビュー一覧
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エッセイのような小説。父目線の育児の様子が細やかに描かれている。「イクメン」と言われるような、男性が育児をしていることに対するある種の特別感は感じず、あくまで自然に子育てをしている様子が伝わってくる。育児をしている中で送る小さな出来事や気づき、変化について、書き留めておかないとすぐに忘れてしまうようなこと、でもできるだけ覚えていたいことが丁寧に描かれていて、子育て経験がある身としては、「そうそう!」と頷きながら、するすると世界観に引き込まれてしまう。子育てをしていると、日々発見や喜び、気づきがあって、その時の思いを忘れずにいたいと思いつつも、日常生活のなかで、いつのまにか埋もれていってしまう。
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あさきょさんの本棚から。
保育園に通う子どもの姿とその時の父の感情を、父親目線でかなり丁寧に細かく描いている。
幼児の子育て中、(特にワンオペだと)感じたことや気づくことは山ほどある。
けれども、働きながらの子育てとなるとメモする暇もなく、その感情は流されて忘れ去られてしまうことがほとんどだ。
筆者は父親であり、文筆業をしているからこそ、これだけ日常の些細なことまで書き留められたのかな…と思う。
この本を開けば、あの時のかけがえのないひとときと、いつまでも眺めていたくなるような子ども達の様子がリアルに思い出される。
見たことすべてを連絡帳に書き留めて、保育士さんと共有したいという気持ちに -
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緊急事態宣言が発令された2020年からおよそ4年間?の、ももちゃんの成長、新米パパの育児奮闘が中心の物語。
ももちゃんは生後2か月で保育園に入園、お父さんは文筆家で自由業のため、送り迎え担当です。
コロナ禍における育児の複雑な感情を、父親目線で時には母親目線で描いています。子どもの気持ちの描写もとても上手で、ケンカの仲直りの場面のリアルさにはびっくりでした。鋭い観察眼と描写力、恐るべしです。保育の仕事へのリスペクトがひしひしと伝わってきて、とても嬉しい気持ちになりました。小説として楽しめたのはもちろんですが、コロナ禍の現実を、子育て中の親目線で素直に伝えている本書は、今後貴重な資料になるの -
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0歳から3歳までの娘との生活を綴ったイクメンパパの奮闘記。
先週末、アラフィフながら右目の白内障手術をし(左目は来週)嬉しいことに右目の視力が良くなり、メガネの度が合わなくなったため、今週はなかなか本を読めなかった。あと数週間、新しいメガネとコンタクトになるまでゆっくりペースで読書予定。
毎日のように保育園へ送迎をしたももちゃんのお父さんは、贅沢だったと思う。そりゃあ、ぐずるももちゃんのご機嫌をとりながらの送迎は大変だったと思うけど、子供の1番の成長期を間近に見られたのだから、企業戦士(死語かな)のお父さんたちなんかより贅沢だったと思う。
毎朝の散歩の件なんか、ウチの犬の朝の散歩と同じ。 -
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「お母さんのほうが、よかった」と泣き叫ぶももちゃん。全力で抵抗するももちゃんをなだめて保育園につれていこうとするお父さん。その光景が、目に浮かぶほど細かく書かれているのを始めに読んで、子育ての頃が懐かしくよみがえってきました。
お父さんがももちゃんの気持ちを考えたり、ももちゃんの思いに寄り添う様子を、温かく思う自分に気づきました。細かく子どものことが表現されている文章に、惹き付けられました。
子どもは毎日同じことをしているうちに、いつのまにか大きくなっていて、3歳頃までの発育は見落とすのがもったいないくらいだったなと、私はその時期を過ぎてから気づきました。
ももちゃんのお母さんは、お父さ -
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この著者、読みはじめ慣れないうちは、一瞬、なんか読みにくい?くどい?とか思っちゃうんだけど、慣れるとクセになるというか、ああこの人こういう文章だった好き、と思うっていう。今回もそうだった。口に出さず心のなかで思っていること、うつろっていくさまざまな細かい思いがそのまま書き連ねられるような感じが好き。
ストーリーは、友人のロンドンでの結婚式に出席した30代の夫婦が、その帰りにイタリアに住む妻の友人を訪ねるって話と、同じ結婚式に出席した友人のひとり(窓目くん)の恋愛話。どっちもおもしろかったけど、この「窓目くんの手記1~5」がよかった。手記と言いつつ、手記じゃないみたいな部分があったり、延々と料 -
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読み終わるまでに時間もかかかったけど、読み終えてからもあれはなんだったんだって考える時間もあったりといい読後感だった。
最終章を読んでいた時、この部分を読むためにずっと漂っていたのかもしれないとも思った。思っていル。
「海はあらゆる時間にもつながっているんだ、海を見てれば誰だってそのうちそう気づいて気づいたときには遠い時間が波にのって寄せてくる」
硫黄島にはかつてそこで暮らし死んでいった人々がいた。民宿「水平線」の2階の部屋にはかつてそこで海の向こうを眺めていた家族がいた。そして今を生きる人がいる。そうやって繋がってきたものが時間を超えて混じり合う。海や釣りを介して。
現代パートでは横多の -
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新井田は、先輩から譲られたかたばみ荘のある部屋でに住んでいたが、就職とともに部屋を出ることになった。その際に譲った片川三郎は、しばらくすると失踪し、新井田には大家の万田から問い合わせが届く。片川を探さなくて良いので、次の住人を探すように言われるが…。
日記なのか、インタビューなのか最終的明らかにされないが、いずれかの形で、新井田から次々と住人またはその周辺の人物による視点による自分語りによって語られることによって、かたばみ荘の記憶を描いていく。
ミステリとして読むのであれば、片山三郎が失踪した理由と行き先であったり、かたばみ荘に住む謎の人物であったり、そもそものかたばみ荘の謎に付いてという -
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仁さんと茜ちゃん夫婦のイタリア旅行記風のお話と、後半はその夫婦の友人の窓目君の話。エッセイかと思いきや小説なんですね。視点があちこちに移っていく文体や窓目君の偏執的な語りといい、捉え所のない感じが面白かったです。登場人物みんな本当にどこかにいそうな感じがする。窓目君のあの感じは、そりゃ日本人で付き合える人はいないって言われちゃうよな…と思いつつもちょっと気の毒になったり。でも、彼女でもない大学の同級生に原稿用紙100枚の論文?作文?を渡しちゃうのはやっぱり気持ち悪い。むしろ、数年後に半年とはいえよく付き合えたな。窓目君の遠視的な恋の仕方は、なんか対象を過剰に神聖視してしまうところといい、寧ろ推