滝口悠生のレビュー一覧
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ある男性が亡くなって、お通夜に親族が集まる。子に孫にひ孫に…。普段顔を合わせることもなくて、誰が誰やらよくわからないけれど、みんなでお酒を飲んで料理をつまんで、何となく近況などを話したり。
話の視点がゆるゆるといろいろな人に移り変わるわ、登場人物が多いわで、なんだか読みづらいなあと思ったけど、その感じが、実際に親戚に久しぶりに会った時のあの人誰だっけと頭の中の記憶の古い引き出しをひっくり返す感じに似てて、ちょっと面白くなってくる。
人が亡くなるって妙な感じ。身近な人にとっては一大事なんだけど、世界はそんなことに関わりなくふつうに続く。
ところで、私は、通夜に来ていた故人の友人のはっちゃんが故人と旅した時のことを思い出す話がいいなあと思ってます。 -
Posted by ブクログ
タイトルによりずっと気になっていたが、微妙に手に入りにくく読むことが叶わなかった作品ということで自分にとって愛着のある一冊ではあるけれど、これは芥川賞受賞作『死んでない者』に至るひとつの過程を読み取れるような作品だと思った。『死んでない者』は30人近い親戚がひとりの人物の死によって集まり、彼ら・彼女らの交錯する人間関係や人生観が展開される傑作で、本作はその凄みにはまだ到達していないように思われた。
だからこそ、本作に足りないものは何だったのかを考えることを通じて、小説というものの真髄に至れるような気もして、それゆえに豊かな読書体験でもあった。 -
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わたしにはこどもが居ないし、こどもという存在が近くにいないのだが、この本を読み進めるうちに、もうとっくに失ってしまったこどもの目線で、世界を捉え直せたような感覚になった。親になったひとたちは、こういう体験を一緒にしているんだろうか。
言葉を持たなかったころのこと、言葉を持たないなりに何かを伝えようと泣いていたころのこと、少しずつ言葉を獲得して、訴えればそれが叶うと信じていた、希望しか知らないころのこと。今を懸命に生きていたころのこと。
自分にもそんな頃があったかどうか、正直思い出せない。けれどもしあったとしたら、いつから絶望を覚えたり、過去や未来に思いを馳せるばかりで、今を生きることに集中できなくなったのだろう。そんなことを考えた。
保育園を題材にしているのでこどもが話の中心にはいるものの、ももちゃんのお父さんをはじめ、ご近所さんなど、その周りの人々の心の描写も繊細で時にとてもハッとするものがあった。 -
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ネタバレ既読の「国語と出会いなおす」で絶賛されていて。
ももちゃんとお友だちがひたすらかわいらしかった。
ももちゃんのお父さんみたいな親御さんばっかりだったら、ヒステリーもこの世からなくなるのかなぁ。
初読みの作家さんだと思っていたら、いつのまにか視点が変わって誰の思考かわからなくなるこの感じ、「死んでいない者」を読んでいた。もう少し読んでみたいと思う。
今回は冒頭の部分で胸がいっぱいになってしまった。
ご近所の、そのシーンでしか登場しない、孫がいるくらいの年齢の、でも子どもはいない富士見さんという御婦人が、ぐずるももちゃんとお父さんを見かけたとき。
「〜ときどきそんなふうにいないはずの娘や孫のことを想像する。〜別に子どもを持たなかったことを後悔しているわけでも残念に思っているわけでもなかった。いや、自分がしなかったことにまったく微塵も後悔や残念さがないとは言えない。〜経験したことのないこと、たぶんもう経験できないこと、長く生きれば生きるほど、しなかったことは減るかと思いきや不思議と増えていくもので、自分がしそびれたことについて考えることは実は結構ある。もう少し若い頃は、自分が出会わずにきてしまった事ごとについて、まるで損したみたいに思っていた気がするが、富士見さんはだんだんそういうものではないんじゃないかと思うようになった。蓋を開かずにおいた、大事に残した可能性が、むしろ私の宝物みたいに思えてきた。可能性というのは、若い頃はなまじ手が届く気がするから、ついつい得られるものはなんでも得ようとしていまい、得られなかったものを悔いたりするけど、たぶん得られなかった可能性というのはそんな哀しみではなくて、誰かと思い返したり、写真を見たり、言葉にしたりできる私のこれまでの確かな人生を縁どり彩ってくれるものなんじゃないか。〜」
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連絡帳にすぐに書きたくなったり、つい長文になったりする、ももちゃんのお父さん、笑ってしまう。さすが文筆業!
文筆業じゃなくても、とてもわかる。
「緑色」のお父さんが嫌がるももちゃんを抱っこしている時の描写がすごい。こんなに細かく具体的に書いてあると自分が抱っこして同じような目にあった時のことが身体に思い出される。
育児あるあるや、同じ場面の体験はないのに体験したかのように私自身に思い出させるシーンの数々、ひとつひとつが2歳前後の女の子を育てる楽しさ、喜びを感じさせてくれる。
可愛ければ可愛いほど、かけがえのない日々だと感じれば感じるほど、それを破壊するかもしれない何かに不安になる。
パンデミック、戦争、コースを変えさせられた飛行機…
だからこそ、2つある「も」を人に分けてあげるももちゃんの未来を、子どもたちの未来をなんとしても守りたいと思う。 -
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エッセイのような小説。父目線の育児の様子が細やかに描かれている。「イクメン」と言われるような、男性が育児をしていることに対するある種の特別感は感じず、あくまで自然に子育てをしている様子が伝わってくる。育児をしている中で送る小さな出来事や気づき、変化について、書き留めておかないとすぐに忘れてしまうようなこと、でもできるだけ覚えていたいことが丁寧に描かれていて、子育て経験がある身としては、「そうそう!」と頷きながら、するすると世界観に引き込まれてしまう。子育てをしていると、日々発見や喜び、気づきがあって、その時の思いを忘れずにいたいと思いつつも、日常生活のなかで、いつのまにか埋もれていってしまう。
この本を読むと、そんな埋もれてしまっていた思いが、愛おしいような寂しさと一緒に思い起こされて、大変なことも嬉しいこともいろいろあった、初めての子育てのことを優しい気持ちで振り返ることができる。 -
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あさきょさんの本棚から。
保育園に通う子どもの姿とその時の父の感情を、父親目線でかなり丁寧に細かく描いている。
幼児の子育て中、(特にワンオペだと)感じたことや気づくことは山ほどある。
けれども、働きながらの子育てとなるとメモする暇もなく、その感情は流されて忘れ去られてしまうことがほとんどだ。
筆者は父親であり、文筆業をしているからこそ、これだけ日常の些細なことまで書き留められたのかな…と思う。
この本を開けば、あの時のかけがえのないひとときと、いつまでも眺めていたくなるような子ども達の様子がリアルに思い出される。
見たことすべてを連絡帳に書き留めて、保育士さんと共有したいという気持ちには、すごく共感したし、第一子のママ達との戦友のような思いは20年経った今でも変わらない。
そして、保育士さん達への感謝と尊敬の想い。
ただ、急に視点が保育者になったり、近所の人になったりで、始めはやや戸惑うし、読みにくさも。
残念なのは、まだまだ反抗期真っ只中の中学生と闘う毎日で、ゆったりとした気持ちで読むことができなかったこと。
子どもが巣立った後ならきっともっと味わい深いものになるのではないかな。
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緊急事態宣言が発令された2020年からおよそ4年間?の、ももちゃんの成長、新米パパの育児奮闘が中心の物語。
ももちゃんは生後2か月で保育園に入園、お父さんは文筆家で自由業のため、送り迎え担当です。
コロナ禍における育児の複雑な感情を、父親目線で時には母親目線で描いています。子どもの気持ちの描写もとても上手で、ケンカの仲直りの場面のリアルさにはびっくりでした。鋭い観察眼と描写力、恐るべしです。保育の仕事へのリスペクトがひしひしと伝わってきて、とても嬉しい気持ちになりました。小説として楽しめたのはもちろんですが、コロナ禍の現実を、子育て中の親目線で素直に伝えている本書は、今後貴重な資料になるのではないかと思いました。
以前、滝口悠生さんの「死んでいない者」(第154回芥川賞受賞作)を読んだのですが、印象が違っていて、同じ作者?と、ちょっとビックリ。でも新鮮でした。人物視点を変えて描く手法は、どちらも秀逸でした。(本書では、ももちゃん、お父さん、他の登場人物・・・・と語りの主体が変わり面白い。)