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Posted by ブクログ
わたしは滝口悠生の小説とその「フロー」が大好きだ。
語り手自体も、そこにあったエモーションや状況、人称までもが移ろいながら緩やかに繋がり重なり合い、世界を形どり物語は進んでいく。ドライヴやグルーヴを感じるというよりも、文章のなかを漂いながら、突然の感情の発露に引っかかって停まったり、いつのまにか入れ替わったようにも思える語り手に驚いたり、最後に溢れてしまう無意識のような一言に少し戸惑ったりもしながらも、ゆっくりと進んでいく。その引っかかりや戸惑い、それらがつくるスピード感と、それを読むわたしの心地よい違和感。その間に生まれるのが小説の「フロー」というものなような気がしている。
物語と、それ以上に「フロー」自体を楽しみたい(というのは理解できない言語の音楽を聴くのにも近いかもしれない)というときがある。そんなときにわたしは滝口悠生の小説を手に取る。今回は「高架線」。読むのは3回目だ。
古いアパートの一室の歴代の住人とその周辺の7人の人々が、アパートのこと、失踪した住人のことを語りはじめる。その語りはアパートや失踪した住人のことを語りながらも、それを語るためには、語ろうとすると、それまでの人生を語りはじめることになる。語らずにはいられなくなる。人生が、今に、アパートや失踪人に至るその緩やかだったり性急だったり唐突だったりする移り変わりもまたフローになる。
そんなフローに身を任せようと思いながらも、以前読んだときとはフォーカスしてしまう部分、物語に向ける視点の方向や物語から向けられる言葉の意味が変わっていたことに気がつく。
「時間が経って年をとれば、どんなに変わらなそうに見えた人だって結構変わる」そう、以前読んだときとはわたしも変わったのだ、と確実で哀しみも含んだ実感をともないながら思う。もしかしたら、この小説を語る、語りなおすときには、この小説の語り手たちのように、この小説を読んでいる今に至る、少なくとも以前読んだときからのわたしの人生もまた語ることになってしまうのかもしれない。しかしそこには「簡単に話せないような後悔とか反省とか、怒りとか憎しみとかが人の経験には必ずあるでしょう?」ありますね。「それは他の人には、すべてはわかりえないものでしょう?」……たしかに。だから、まだそれを書いたり、考えたりは出来ないというかしたくないです。聞きたくもないですよね。
一旦ため息をつく。
もう一度ページを捲り始める。そこにはやっぱりとても素敵なフローがあった。これまでの人生も含めて改めてそこに身を任せてみれば、また心地よい読書が始まった。安心した。やっぱり滝口悠生の小説が、「フロー」が大好きだ。改めて思った。少し救われた気もしてしまった。次に読むときには、わたしの人生も語れるように、語れるようなものになっていれば良いな、と思う。今乗っている電車は地上を走っているけれど、車窓からは少しだけ青空が見えた。
「そうやって元のところに留まらないで、次々動いて移動していくようなものなんだな、人が生きるということは」本を読むことも同じなのかもしれない、と今はそんな風に考えています。
Posted by ブクログ
新井田は、先輩から譲られたかたばみ荘のある部屋でに住んでいたが、就職とともに部屋を出ることになった。その際に譲った片川三郎は、しばらくすると失踪し、新井田には大家の万田から問い合わせが届く。片川を探さなくて良いので、次の住人を探すように言われるが…。
日記なのか、インタビューなのか最終的明らかにされないが、いずれかの形で、新井田から次々と住人またはその周辺の人物による視点による自分語りによって語られることによって、かたばみ荘の記憶を描いていく。
ミステリとして読むのであれば、片山三郎が失踪した理由と行き先であったり、かたばみ荘に住む謎の人物であったり、そもそものかたばみ荘の謎に付いてというところになるのだが、ある意味そのへんはどうでもいいというところが面白いところでも有る。
ふんわりと過去の関係ない話が続くため、当初は散漫に感じるものの、片山三郎の謎が明かされていくうちに話が一旦まとまっていき、『蒲田行進曲』のあたりで理由がわからなく広がって収束してという、なんとなく安部公房を想起させるようなストーリーでも有る。
純文学かと言われると、きっとそうではないのだろうけれども、ふわっと解ったようでわからないような雰囲気は芥川賞系なのだろうなあ。
些細なところだが、七見奈穂子のところは序盤はやけに分が長いまどろっこしい文学的な表現だったのに、途中からさらりと軽い口調になってしまうのと、タムラックスの視点がなかったのが残念なところか。
最終的に、タイトルの『高架線』が比喩なのか直接表現なのかはちょっと判断に苦しむところでは有る。
Posted by ブクログ
家賃3万円のオンボロアパート「かたばみ荘」。お風呂とトイレもありますが、シャワー&和式トイレのユニットバスって!この間取りには違和感を覚えました。想像しにくいよ〜
退去する際は『次の入居者を連れてこないといけない』というルールがあるため、住人は、知り合いの知り合いの知り合い…が続いてるということ。
退去時に清掃なんてせず、家具や家電はそのまま引き継いだり、代々の住人の暮らした気配を感じながらの生活なんです。
物語はこのアパートの2号室で暮らした住人・関係者がリレー形式で語る、16年間の出来事です。
とにかくずっと語り。相槌を打っちゃいそうになるくらいみんな普通にしゃべってる。脱線もするし「この話いる?」みたいなのもあるのですが、そこにその人らしさがジワジワ出てきます。
ラストでいろいろな種明かしがあって私はとってもスッキリしました。
ユニットバスで覚えた違和感もスッキリ、というか驚愕!えらいこっちゃ!
紹介され紹介し、同じ部屋で暮らした人達。なんだかもう他人じゃない感じがよかったなぁ。
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