滝口悠生のレビュー一覧

  • 水平線

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    時系列と語り手が移り変わるので、最初は戸惑うが、惹き込まれて読んだ。硫黄島、父島の戦中戦後の家族の物語。現代を生きる孫世代との謎の交信が不自然でなく描かれ、謎への興味に引っ張られて読めた。
    硫黄島に米軍が上陸して戦場となっていたことを初めて知ったし、そもそも島の存在を知らなかった。内地に引揚げる家族と別れ、島に残らなければいけなかった人達の悲惨な運命。描写は淡々としていながら、それぞれの人物が語り手として登場することで飾りのない心情が伝わる。終わっていない終わり方も良い。

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    2023年11月20日
  • ラーメンカレー

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    読み始めこそ独特な展開に やや戸惑うが
    すぐに慣れ、劇的な展開など一切ないのだが
    とても良かった。

    アッパとマンマ(ロンドン在住のスリランカ人
    ジョナサンの両親)の調理シーンがなかでも
    印象的。

    後半の「窓目くんの手記」も独特な文章、言い回し
    が多いが、センチメンタル。

    この著者はお初だったが
    他の作品も読んでみよう。

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    2023年10月23日
  • 死んでいない者

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    当たり前のことだけど、人間ひとりひとりにそれぞれの思考があって。当たり前のことすぎて忘れがちだけど、ぜったいに忘れてはいけないことだとおもった。ひとの考えていることを知るのはたのしい 

    たばこの煙や水の流れにそって揺蕩う記憶たち。うつくしいです...

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    2023年09月11日
  • 水平線

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    夏の季節に読めて良かったです。複数の本を同時並行で読み進める癖があるから、読み終わるのに1ヶ月くらいかかってしまったけど。
    たとえば長い一日などで感じた、日常の中の些細なことの自分・他者の拡がりや、茄子の輝きで感じた、過去の自分の記憶の漂いみたいな、滝口さんの哲学たちが、時間軸や物理的にも拡張された壮大なスケールで展開されてゆきます。
    壮大なスケールと言っても、SFみたいなあり得ない世界というわけではなく、まぁ見方によってはそうかもしれないけど、なんだか本当にあるような、ファンタジーとかって分類する意味がないような、日常のものとして語られていく。その語りが、悲哀に満ちた劇的な最期ではなく、硫黄

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    2023年08月27日
  • ラーメンカレー

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    ずっと積読していたけど、滝口さんの本を読みたいゾーンに入り、グイグイ引き込まれて読んだ。おもしろかったー!!!他人やその人の生活を見る視点が、その見方と書き方が、独特。おもしろい。
    窓目くんが愛おしい!
    でもなぜか、滝口さんの本は、滝口さん読むぞのエンジンがかからないと、ぐいっと読めない。なんでだろう。おもしろかったな〜

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    2023年08月02日
  • 水平線

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    好きな滝口悠生さんの長編小説。文章がいい。「これは対話と呼ぶに足ル、と重ルは思っていル。」 ここ好き。
    いつもの軽妙で誠実な語り口から広がる世界。過去と今、未来。現実と空想、縦横無尽。
    硫黄島で生活していた人たちは私の頭の中にいるし私の頭の中からどこかへ呼びかけている。

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    2023年06月24日
  • 死んでいない者

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    ある老人の通夜に集まった30人近くの遺族。彼らの間を語り手を次々と変えながら物語が進む。時には今誰が語り手なのか判らなくなることも。其々の語り手に憑依しながら物語の世界を漂っている様な不思議な感覚に陥った。

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    2023年05月24日
  • 死んでいない者

    購入済み

    新たな光で照らす「生」

    ヒトは、抗うことの出来ない結末に向かい、為す術もなく生きて行く。
    そこには本来、物語は無いが、すべてを擬人化してしまう私たちは、物語を作り続ける。
    他人事のように日常は進んで行く。

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    2023年03月29日
  • 水平線

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    とても読みでのある小説だった。読書好きの人には勧めたい本。
    長いし、わりと時間はかかるのだが、どんどんページをめくっていきたくなる小説。
    時空を超えたり、死者が語ったりするのはどちらかというと苦手なのだが、全く違和感なく、そんなこともあるだろうよみたいな感じで読めた。

    硫黄島に人が住んでいたのは、映画「硫黄島からの手紙」等で知っていたし、その人たちが大変な思いをしたというのもなんとなくはわかっていた。そして戦後戻れないままであったことも理解していた。でもそこまでだった。この小説を読んで、生き生きとして暮らしていた人たちの様子、そこを去らなければいけなくなった悲しみ、家族との別離、新しい土地で

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    2023年03月21日
  • 水平線

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    太平洋戦争の激戦地、硫黄島を巡る物語。人々の声が現代に届く。水平線っていう言葉の響きが歌のように体の中を通り抜けていく。

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    2023年03月21日
  • ラーメンカレー

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    滝口作品と言えば、記憶、思い出。
    今回は旅が(大きな意味で)テーマ。
    旅を描くという事は、記憶を辿ることは必定。
    滝口悠生作品の髄を存分に楽しめる。
    後半は窓目くんが主人公。
    『長い一日』などで存在感を放っていた彼がついに。
    なんだかやっぱり、いいキャラクターだ。

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    2023年02月16日
  • 高架線

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    滝口悠生さんの本はこれで3冊目。やっぱり私、この人の本は、他の作家さんと比べても特別な感じで好きみたいだ、と思う。今まで好きな作家は誰か?と聞かれてもモゴモゴしてきたが、この人は自分の好きな作家だと言えそうな気がする。好きな作家がいてもいなくてもいいとは思うんですが。
    全体的に、なんかやさしい。登場人物ひとりひとりに敬意があって、頭の中で考えていることを愛おしく考えているようだ。人生って、本当にそういう一瞬でも思ったりしたことの積み重ねでできてるわけで、アウトラインだけたどっていると、見落としてしまうことがある気がする。

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    2023年01月29日
  • 高架線

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    宮部みゆき『理由』を思い出した。リレーするように語り手が代わっていくのが面白い。失踪した人物と関係の深い人、ちょっと距離がある人…と主観客観が入り混じって、濃淡が生まれている。『蒲田行進曲』を重ね、かたばみ荘の最後にされる種明かし。気持ちのいい読書だった。『死んでいない者』も読まないと。

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    2023年01月11日
  • 水平線

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    太平洋戦争末期と現代。
    物語は時空を行き来しながら進む。
    70年以上の時間を隔てた人物から届く電話、メール。
    今を生きる若者が導かれるように縁ある地に足を運ぶ。
    不思議な物語。だが、この構成だからこそ強く伝わるメッセージが確かにある。
    これまでの滝口作品とは一線を画す作品。
    傑作。

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    2022年09月03日
  • 高架線

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    ノスタルジックな気持ちにさせる、暖かくて微笑ましい作品でした。「かたばみ荘」の歴代の住人たちが、紡ぐリレー方式のドラマ。著者の作品はこの作品が初めてだったのですが、文字がびっちりでも、文体が語り口調で、出会ったことのないライトな純文学で読みやすかったです。映像化しても面白いかなって、個人的に感じました。

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    2022年06月08日
  • 死んでいない者

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    最初は、ある一族の人たちが
    お通夜の1日にあったこと思ったことを
    ダラダラ書いているだけだと思った。
    しかし頑張って読み進めていくうちに
    不思議な気分になってきた。
    読みながら自分の経験したいろんなことを
    思い出す。
    すごく芥川賞っぽい小説だと思う。

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    2022年02月19日
  • 死んでいない者

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    わぁこの作家は私と同い年なのか。
    はじめて読んだけど、めっちゃ書きたい内容だった。

    前情報なく手に取って、
    通夜の親戚の集まりを描いてるとわかってかなり身構えた。
    私自身地方の出身で親戚付き合いが濃いもので、
    自分の中の強固なリアリティがあるものだから
    嘘っぽさとかがあると途端に引いてしまうだろうなと。
    でも今作はそんな自分を次第にほぐして行って、
    最終的にはなかなか遠くまで連れて行かれた。

    まるで線香の煙のようにたゆたいながら
    何人もの親戚たちの内側に入り込んでは
    この親戚たちの関係性や複雑な思いを描きつつ、
    型にはまらぬ家族のあり方をいくつも提示する。
    特に後半はかなりドライブしてくる

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    2022年01月17日
  • 死んでいない者

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    うわ!これ!大好きです!!!!語りは幽霊のように人びとの思考と記憶を辿り、それは声も身体も超えて、時間を自在に伸縮させる。そのなかで忘れがたく描かれる機微の愛しさ。敦賀の砂だったか石だったかのところかなり好き(好きといいながら砂だか石だかおぼえていないのだからまるで信用がならない)。

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    2021年07月24日
  • ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス(新潮文庫)

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    ライ麦畑を捕まえてを彷彿とさせる青春小説。物語の経過の構成が素晴らしくずっと世界に引き込まれていく。日常の中の情熱、衝動。全てを飲み込んでしまうと体内が爆発しそうな青春。一気に滝口悠生に惹かれてしまいました。衝撃作。

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    2018年08月07日
  • 茄子の輝き

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    ネタバレ

    以前勤めていた会社の、もう二度と会うことのない同僚を想う、というシチュエーションは、好きな小説でもある保坂和志の「コーリング」を思わせる。「コーリング」はふと思いを馳せる事がコミュニケーションたり得るか、というテーマだったように思うが、こちらは、関係が絶たれてから、孤独の中で記憶が劣化し、本当の意味で関係が消滅していく事をテーマにしているように思った。特に、元妻の合成写真を作り続ける章など。だから、すごく暗いし救いのない気分になる。しかし、その分、最後のサービスが利いてくる。過去を思い返す事が多く、その都度複雑な気分になる自分としてはこういう話は好きだ。

    あと、出てくる地名がいちいち自分に関

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    2018年02月22日