滝口悠生のレビュー一覧

  • 茄子の輝き

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    映画に作品が登場したことで興味を持ち、手に取る。
    妻と離婚し、職を失う男のストーリー。特に象徴的な事件は起きないが、訥々と主人公の心情が語られていく。

    少しずつ味わいながら読み進めていった。
    男の視点を追体験するような本。世間一般では悲しい、傷を負う経験をしていると思うが、それに真正面から向き合うわけではなく、付き添いながら人生を進めていく人間の物語と感じた。
    悲しいことを悲しいというのではなく、別の行動で表現する。消化する。
    この人の行動が気持ち悪いと思ってしまうとこの小説を楽しめないと思うが、自分はなんだか楽しめた。

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    2026年01月24日
  • たのしい保育園

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    前半は2歳の娘ももちゃんの保育園での
    送り迎えに奮闘するお父さんの悲喜交々
    ままならない娘の感情に直面したお父さんの戸惑いに悲哀を感じつつ
    娘との冷静なやりとりに
    おおらかな愛情を感じました

    後半は3歳になったももちゃんとお父さんの
    日常風景
    対話のシーンやふと感じてしまう不安が
    とてもリアル

    今でこそお父さんの保育園の送り迎えの姿は
    良く見かけるけど
    私の子育て時代は結構珍しかった
    夫が送り迎えをすることが多かった我が家は一時期保育園のお友達にはお母さんのいない子として
    認知されてたなぁ

    実はこの物語
    単なるお父さんの子育て奮闘記に留まらない
    ももちゃんのお父さんは我が子を一人の人間と

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    2026年01月23日
  • たのしい保育園

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    筆者の他のエッセイを読むに、この作品は実際の生活に基づいた、限りなくエッセイに近い物語なのかなと思う。
    お父さんがももちゃんに向ける姿勢が、視線が、「育てよう」という上から目線のそれではなく、客観性のあるものなのが、新鮮に感じた。
    お父さんの、保育園の先生たちに対する観察眼や親しみの情は、保育園で働いている自分からすると嬉しさと、少し身の引き締まる感もあった。
    こういう風に、大人たち皆で、子どもたち皆を、見ていけたらいいなと思う。

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    2026年01月10日
  • 寝相

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    新年一冊目は滝口悠生さんの小説を読むのがここ数年のお気に入り。お正月の話もあってタイムリーだった。話がどんどん展開していって不思議なところまで進んでいく感じ。淡々と書かれているけど、すごく感覚的。好き。また何年か後に読み返したい。

    ………………………
    「目的や意味のとっぱらわれた景色や音に体を預け、ふだんほとんど顧みられることのない、微細な自分の反応や記憶に目を向け目を凝らすことが、まともに生きていくうえでやはり本当に必要なのだと思います。」

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    2026年01月06日
  • たのしい保育園

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    コロコロ変わる視点はももちゃんの視線のよう。

    得られなかった可能性は哀しみではなく、これまでの人生を彩ってくれるものだと思っている富士見さんの秘密の答えに救われる。

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    2026年01月04日
  • 死んでいない者

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    著者は1982年の生まれらしいから、これを書いたのは34歳より前になる。
    でも、34歳でこれって、ちょっと枯れすぎてない?w

    人って。
    生まれて、まずは両親や兄弟。次いで、祖父や祖母。さらに親戚や従兄弟と人間関係を広げていって。
    歩き始めると、近所の同年代の子ども、そして幼稚園の友だち。
    小学校に入り、学年が上がっていくにしたがって、学校の友だち…、つまり親や従兄弟等の血のつながりのある人間関係より、自分の世界で出会った人間関係のウェイトが高くなっていく。
    とはいえ、小学生くらいまでは、まだ血のつながりのある人間関係のウェイトはまだまだ高い。
    それがイコール、あるいは自分が出会った世界の人間

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    2025年08月24日
  • たのしい保育園

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    ずるずる読んでしまう独特の文体と「ももちゃん」というストンとした語感の組み合わせがめちゃくちゃよかった。人間の外部と内部を細かく細かく行き来するような本。最後まで読み終わったときにカバーを外した際の表紙の見え方もすごい。

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    2025年08月16日
  • 水平線

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    過去も未来も繋がっていルルル。
    本にしかできないことがつまっていル。散らかる文章の先にわたしを待っているものがあル。過去でもあり未来でもあル。

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    2025年08月03日
  • 茄子の輝き

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    2016年に『死んでいない者』で芥川賞を受賞した作者の受賞後第一作。東京の小さな出版社で働く男性の静かな日常が、淡々とした一人語りのようなスタイルで綴られている。一見、なんていう特徴のない文章のように思えるけど、読んでいるうちに、この本の登場人物が生きているという本物の気配が、さざ波みたいにそよ風みたいに浮かび上がってくる瞬間があってハッとさせられたりジワっと温かい気持ちになったりする。「茄子の輝き」というタイトルも、そういう角度から日常の切り取り方をするところがニクいと思う。

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    2025年07月29日
  • たのしい保育園

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    子が産まれ保育園に通うようになった。我が子の成長、保育園の友だちや、散歩で出会う近所の人々、鳥や犬、花。子供の成長を通して感じ考えたことが多い。

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    2025年06月28日
  • たのしい保育園

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    かけがえのない時間が流れていた。
    この本を読んでいる間と、初子が産まれて毎日てんやわんやしていたあの頃とが繋がったような、すごく特殊な読み味の読書でした。
    時間旅行をしたみたいな感覚。

    読む前のイメージはてっきり『君が夏を走らせる』(文庫版・9784101297743)のような、物語の中で描かれるおとなとこどもの絆を追う作品なのかと思っていたら、それはそうなんだけどちょっとそうじゃなくて、自分の経験と物語が繋がって自分も並走したような、自分の記憶も物語と混ざり合って反応して、結果として過去へジャンプしたみたいな感じでした。
    とにかく読んでいたくて電車もバスも降りたくなかったし働きたくなかった

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    2025年06月15日
  • たのしい保育園

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    筆者の愛情がひしひしと伝わってくる一冊
    尊くて大切な一瞬一瞬をシェアしていただいている感覚になる
    子育てに限ったことではなく、今日という日はもう来ない。過ぎ去ってから大切さに気づくもの。
    だからこそ、今この瞬間を、目の前の人々を大切にして生きていきたいと改めて思わされた

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    2025年05月31日
  • たのしい保育園

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    素晴らしかった。育児の辛さや尊さ、みたいな観点では全くない、子どもを見るなかでの大人の発見や、子ども自身の思考を想像する。
    どんどん視点が変わっていって、読んでいると色んな人の目になれるような。
    子どもという新しい存在がいることで、出会う人々。その人々が、どんな眼差しで子どもをみているか。保育園の先生だって、一人一人、考えることや感じることは違う。
    偶然、保育園のクラスが一緒で、子ども同士が仲良く、他人ではなくなった家族。その子ども。
    散歩ですれ違う近所のおばあちゃん。
    子どもって未知の存在に、未知の周りがどんどん広がっていく。それってすごく楽しいことだなぁと感動してしまった!
    私ももっと観察

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    2025年05月27日
  • たのしい保育園

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    ももちゃんとお父さん、お母さん。
    自分自身も含め、子どもの成長の過程ではどうしても零れ落ちてしまう感動、感情、思いを丁寧に描く。
    記憶の隙間に埋もれてしまっているような出来事、その時の気持ちまでも。
    優しい。

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    2025年05月25日
  • 死んでいない者

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    行間に、自分の記憶が浮き上がってくる
    今はもう会えない祖父との二人だけの思い出、恋人と歩いた二人きりの道、そういうものはどちらかがいなくなったあとどこにいってしまうのだろうと考えて宇宙の塵になってしまうようでとても悲しくて涙が止まらなくなった日のことを思い出す

    それぞれの人との記憶と、その周辺のためらい
    わたしが大切にしたいと思っていたのにいつのまにか忘れてしまっているためらいのひとときがここには記されている、ように思う
    今の自分をとりまく環境によって、読むたびに印象が変わりそう

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    2025年05月16日
  • 高架線

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    かたばみ荘という、今にも崩れそうなボロアパートの住人たちにより語られる物語。合間には住人のパートナーによる語りなんかもあり、住んでいた男たちは熱を込めて語り、どんどん脱線して自分の人生譚になる。パートナーはそれを冷静に見ている、その対比が面白い。

    彼らの人生は「普通」からズレたようなエピソードが一つはあり、物語に退屈しない。

    語る、という行為は小説の本質であって、この一冊はその本質を追求した作品だ。

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    2025年02月07日
  • 死んでいない者

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    久しぶりに大好きな小説を手に取った。3日で2回、1回目は音楽も流さずに気になるラインや凄いと思った箇所に付箋を立てつつ頁に直に書き込みもしながら、2回目はそこに流れている川のことやフィールドレコーディングするキャラクタのことも意識して水の流れる音からはじまるアルバム、吉村弘の「GREEN (SFX version)」を流しながら文章とエピソード、それに音楽が作る流れに乗って一気に読んだ。凄かった。素晴らしかった。どちらの読み方でも楽しんだ。やっぱり好きだな、と改めて思った。

    気を抜くと口にしてしまいそうな、個人と世界の間に漂う、思考や記憶の表面に近い浅い

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    2025年01月24日
  • 死んでいない者

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    葬儀の周辺の日常の場面だけなのに、登場人物たちのひとつひとつありそうで言語化できていない思考の逡巡

    【フレーズメモ帳】
    あれこれ詮索されることが兄はうっとうしかった。もう少し正確に言えば、あれこれ詮索された時に返す言葉を持たぬことが自分でもわかっているから、わざわざ出ていってそんな目に遭いたくなかった。

    父と母がいなくなった寂しさは、それらとはまったく別に、毎夜布団のなかのふたりを襲ってきた。そんな毎日の時間のことを誰も知らないから、みんな勝手なことを言う。

    しかし医者や親戚たちは執拗にそれを精神疾患にしたがり、浩輝を憐れみたがった。いくら違うそうではないと言っても、自分ではそう思ってい

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    2025年01月24日
  • 死んでいない者

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    ある老人のお通夜に集まる親戚一同の
    どこにでもあるような風景
    親戚といっても知っているような
    知らないような
    わちゃわちゃとした感じが
    すごく共感できた
    それぞれの生き方であったり
    思いであったり
    いろいろな物語があって
    いろいろなものが交差する

    つい最近読んだ「100年の孤独」のような
    一族というとてつもない繋がりを
    感じる
    そしてまた繋がっていく未来も見える
    とかくめんどくさい親戚であっても
    大きな繋がりのひとつであって
    そこが途切れると自分の存在もまた
    なくなってしまう
    なんだか壮大な歴史の中で生きている
    自分て小さいな‥

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    2025年01月24日
  • 高架線

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    わたしは滝口悠生の小説とその「フロー」が大好きだ。
    語り手自体も、そこにあったエモーションや状況、人称までもが移ろいながら緩やかに繋がり重なり合い、世界を形どり物語は進んでいく。ドライヴやグルーヴを感じるというよりも、文章のなかを漂いながら、突然の感情の発露に引っかかって停まったり、いつのまにか入れ替わったようにも思える語り手に驚いたり、最後に溢れてしまう無意識のような一言に少し戸惑ったりもしながらも、ゆっくりと進んでいく。その引っかかりや戸惑い、それらがつくるスピード感と、それを読むわたしの心地よい違和感。その間に生まれるのが小説の「フロー」というものなような気がしている。

    物語と、それ以

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    2024年12月05日