伊吹有喜のレビュー一覧
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『今はちょっと、ついてないだけ』
タイトルがいい。つらい時に思い出したら気持ちが前向きになれそう。
「ボーイズ・トーク」から後半の三章がよかった。
控えめでイケメンな立花さんが実在しているような気がしてしまい、会ってみたくなった。こういう感じの人タイプだな、是非綾野剛さんに演じて欲しいなと思って読んでいたが、すでに玉山鉄二さんで映像化されていた。どんな感じか気になるので観てみようと思う。
ひとつ引っかかった事。岡野が家族をバーベキューに連れ出す場面での奥さんの態度が酷すぎた。段取りが悪くても、楽しませようとしてくれた気持ちを汲むべき。思いやりが大事だよー。
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私は大学時代、所属していたゼミの教授からのアカハラでどん底の気分だった時がある。身に覚えのないことで責められ、散々嫌な言葉をかけられ心臓がどくどくと嫌な音をたてるほど傷つき、夜も眠れず泣く日々だった。これ以上こんなゼミにいられない、と必死に学部長にゼミを変更したいと頼み込んだ。しかし、どこのゼミも手一杯で、私を受け入れられないとの冷たい返事ばかり。そんな中、唯一快く受け入れてくれたのが、私がのちに心より尊敬する恩師だった。
逃げ込んだ先のゼミの恩師がくれた、忘れられない言葉がある。
『人生山あり谷ありですが、悪いことばかりは続きません』
私は、嫌なことに直面して沈んだ気持ちになると、この言葉を -
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新宿の「ねこみち横丁」振興会の管理人をしながら、脚本家を目指す宇藤。
コンクール作品を書き上げた直後、「BAR追分」にやって来たのは劇団を主宰する桜井義秀と出会う。
この桜井は夜の「BAR追分」で働く純とも因縁があったが、桜井と二人三脚で劇団を支えて来た空開の後任として、宇藤を劇団付の脚本家として、誘う。
念願の脚本家の道が開けてきた宇藤だったが、人生の大きな岐路に戸惑ってしまう。
宇藤の心の迷いを丁寧に描きながらも、BAR追分に訪れる人々との出会いを描き、相変わらずモモちゃんの料理も美味しそう。
特別な食材を使う訳でなく、作り方を変えることで、様々なメニューを生み出すモモちゃんの才能がとても -
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シリーズ2作目。
新宿の「ねこみち横丁」にある、昼はバールで、夜はバーの「BAR追分」
管理人もどきに慣れて来た宇藤と、「ねこみち横丁」の人たちの交流が1作目より濃厚になって来て、前作より断然面白い。
他の方のレビューにもあるように、お料理の描写が別人のように良くなっていて、男性3人で食べにいった「おだしや」のうどんも、桃子が作るオムライスもピンチョスもとても美味しそうだった。
奇しくも、コロナの後遺症で味覚・嗅覚がないので、妄想でおかしくなりそうなくらい。
夜の「バー追分」で働く純くんの話もあり、登場人物の背景も徐々に見えて来た2作目。
3作目も楽しみ。
それにしても、オムライスにシチュー。 -
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ネタバレ人生を彩る料理に乾杯。
7つの個性的な短編が収められている。登場する料理も様々。お酒からお菓子、パン。時代も場所も様々だ。読み終わると美味しい料理を食べた後のように満足している。
柚木麻子「エルゴと不倫鮨」ある程度の年収の男と歳が離れた若い女性が集まる店。そこにやってきた招かれざる客は——。卒乳祝いの女性がパワフルでそこにいる人すべてが巻き込まれていく。世界をひっくり返すようなお客にコロリと順応するのはまた女性たち。疲れ果てた男性たちの顔が目に浮かぶ。
伊吹有喜「夏も近づく」三重県の自然の中に暮らす拓実のところに兄が訳ありの少年を連れてきた。美味しい水と自然の中で育ったものを食べるうちに -
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美味しい料理が縁を結ぶ、7つの物語。
お腹がぐうぐう鳴るくらい美味しそうな料理が出てくる作品ばかりで、その中でも伊吹有喜さんの『夏も近づく』が好みだった。
温かい食卓を通して心の距離が近づく様子を丁寧に描いていたところが素晴らしかったのはもちろん、出てくる料理の美味しそうなこと! たけのこご飯、果肉ごろごろのバレニエ、青竹のコップで食べる素麺ーー。身体の隅々まで染み渡るような滋味あふれる料理が恋しくてたまらなくなる。
テレビやスマートフォンを眺めながらささっと食事を済ますのも悪くはないけれど、目の前の料理の香りと素材本来の味に、もっとじっくり向き合って食事をしようと姿勢を正した。
伊吹有喜さ