【感想・ネタバレ】ミッドナイト・バスのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2022年08月29日

高宮利一は新潟東京都間の長距離バスの運転手。東京には料理屋を営む志穂という恋人がいる。彼女と踏み込んだ関係になろうと決めると、間が悪いことに息子が新潟の家に帰って来た。とても具合が悪く、仕事も辞めたようだ。娘は結婚を考える相手がいるが、彼の母親がかなりの曲者。そして別れた妻の具合もよくないようだ・・...続きを読む

この家族以外にも様々な人物が物語に入り込んできて、ミルフィーユのような多重な話になってゆく。

素晴らしく良かった。自分が完全に利一に同化して没入してしまった。渋い家族小説の傑作でもあり、恋愛小説でもあった。

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Posted by ブクログ 2021年09月23日

高速深夜バスの運転手の元夫が運転するバスに、十数年前に離婚した元妻が乗車してくる。ゆっくり、静かに進行するストーリー。舞台は、新潟。家族の再生と新スタートの物語。温かい気持ちにさせられる作品。

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Posted by ブクログ 2021年05月18日

東京でノルマに追われる日々に疲れた男は故郷の新潟県でバスドライバーとして就職。家族とともに人生のやり直しを目指す。

はずだった。

10数年後、男は妻と別れ、夜行バスを運転する生活の中で東京に恋人を作る。妻は再婚するが、新しい家族となじめず体を壊す。子どもたちも社会に染まりきれずモラトリアムな生活...続きを読むを送る。

理想と違う現実は残酷だ。

一度バラバラになった家族だが、ちょっとしたきっかけで顔を合わせるようになる。今度こそ逃げることなく向かい合っていれば、何かが起こるかもしれない。そう信じて男は朝に向かって走る夜行バスを運転する。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年06月08日

久々に伊吹有喜の小説を読んだ。やっぱ上手いね、この作家さん、挿話の配置とか、伏線の回収とか、もっていき処が丁寧かつ絶妙やわ。

家族再生の物語、親子って普通こうなんよ。子供の幸せを願わずにいられない。自分の人生の岐路であっても、子供が泣いてたり…いや悲しい顔や悩んでる仕草を見せただけで、自分のことは...続きを読むどうでも良くなってしまう。

俺もそうやって両親に育てられてきたし、俺もそういう風に子供に接してしまう。血を分けた子供に対して行うDVとかハラスメントとか、ああいうのは道徳観とかを抜きにしても、生理的に受け付けないのは、どんな形であれ親からきちんと愛情を受けて育ってきたからだと思う。感謝しかない…

話はずれてしまったが、とにかく出てくる人すべてが、愛情を受けるか注いでいるか、その両方か…なので、少々人間関係でギクシャクするシーンがあっても心を荒ませず読むことができる。

ラストの主人公の息子が去る間際がカッコいい。
「父さんの幸せは俺たちの幸せだ」
俺も本当にそう思うわぁ。息子として。

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Posted by ブクログ 2024年03月28日

今まで読んだ作者の本の中で一番面白かった
物語にも入り込めた
繋がりもスムーズで、文章が上手いと思う
4冊だけど、今のとこハズレ本もない
今まで知らんかったけど、好みの作家さんだ

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Posted by ブクログ 2024年02月01日

それぞれ年齢を重ねるに連れて感じる生きづらさをそれぞれの立場で表現してくれている。どの視点に感情移入できるかは自分の置かれている立場によって異なると思うが。

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Posted by ブクログ 2023年12月27日

実は、自分の中で映画が先行しています。
でも、映画とは全く違った印象を持ちました。

リイチさん、新潟の人って感じがする。優しすぎる、待つことに慣れすぎている。でも、そこに人間味が溢れていて、たまらない。
「いこい」に行ってみたい。癒されたいなあ。
この本を読みながら、新潟市を訪れました。高速バスで...続きを読む。萬代橋やバスセンターの描写が素敵でした。実際に目にして、白鳥さんが来るような、そんな気さえしました。
またいつか、読み返したいです。

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Posted by ブクログ 2023年05月04日

主人公が自分と歳が同じで境遇も似通っていたので、どっぷり感情移入してしまった。

五十歳を目前にしても惑ってばかり、離れた歳の恋人志穂のことも大事に想うばかりに傷つけてしまうも、やっぱり未練がましく思うあたりの心情が分かってしまう。
その辺が歳を重ねても成長できてないんだなあ。しかし最後はどうしても...続きを読む上手いこといって欲しいと願ってしまう。

四十五十は洟垂れ小僧、六十七十働き盛り…という引用されたものがズシンと響く。人間成長の先はまだまだで長いんだ。

最後の
もう一度人生を前に進ませよう。というリイチの想いに勇気を貰えた気がする。犯罪を冒したわけでもないけど、誰でも大なり小なりの挫折はある。再スタートは何歳からでも大丈夫だ、と。

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Posted by ブクログ 2022年12月08日

子供達も成人し、これから人生を楽しもうと思っていた50歳目前の高速バス運転手。ある日、年下の彼女を自宅に連れ帰ると、東京で就職していたはずの長男が、準備していた食事も布団も勝手に使って寝ている。。。
彼女さんには気の毒だけど、そのあたりから息子、娘、別れた妻等々、いろいろ絡まって話が進む。
全てに共...続きを読む感はできないけど、こういう家族もあるかなぁと思いつつ読み進める。私は静かに淡々と進む、こういう雰囲気のお話か好き。

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Posted by ブクログ 2022年11月06日

評価高いから気になって読んだけど納得。利一が内股膏薬的に揺れ動きまくってて離婚結婚が絡んで複雑で、もどかしい部分もあったけど、家族の気持ちも考えて温かい気分で再出発できた良い本。
家族って難しい。別れた妻との間にも愛情は残ってる(と信じたい)し、新たな生活を始めたいし、自分はよくても周りの義理の父と...続きを読む娘との関係や思いもあるし。その場しのぎの優しい言葉で流すんじゃなくてしっかり見つめ直して、葬式じゃない場で全員が納得して会うのって大事だよね。

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Posted by ブクログ 2022年05月27日

家族の話は、本当に……やられます。

読み終わって真っ先に思うこと、これは、主人公利一の息子、怜司の物語だと。

怜司の、相手の先を読むような目つきと短い話し方、掻き毟った背中の痕、掃除したあとの窓ガラスの尋常ではない光り方。
何を隠してるのかわからないなか、怜司のことが心配で、心配で……途中で何か...続きを読む不幸があったらもうこの先読めないとまで感じていた。

ストレス性〇〇と診断されたときに、決して言われないけど感じる「自業自得」という文字。
「環境変えて」と言われて“やれればとっくにやってる”とくさり、その後は“そういわれるにきまってる”と感じて、「医者に行け」と言われても素直に従えない自分の心のもどかしさ……そんな時は、たぶん誰かにギュッと、抱きしめてほしい。

あと、最初の母子のエピソード!
乗車済みの人をかき分け、窓の外でいつまでも手を振る一人息子を見つめる母……心の揺れと夜行バス独特の寂莫の感が、短いフレーズの中で凝縮され映像化される。
読みだして100ページにも満たないのに涙が出るのは初めて(帰宅途中のバスの中で……あせった)。

彩菜のエピソードにはもうひとつついていけないし、利一と美雪・志穂の関係もありきたりの感があるけど、異なる街を夜の間に結んでいる「夜行バス」が、みんなひっくるめて、「明日」を感じさせる。

良かった。

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Posted by ブクログ 2022年01月24日

あなたは、『夜行バス』を利用したことがありますか?

そんな質問に、元気よく“はい”と答える私。実際に大学時代、かなりの回数を利用した私。『深夜バスなら寝ている間に東京に着くよ』、『東京までの往復は一万円でおつりがくる』というように寝ている間に移動が済んでしまい、かつ安価という『夜行バス』はとても魅...続きを読む力的です。そんなバスの装備は運行会社によっても路線によってもマチマチです。『「三列シート」と呼ばれる、一人がけのシートが三列に並んだ車両』に当たるとホッとする一方で、『通路をはさんで二人がけのシートが横に並んだ「四列シート」』に当たると『ハズレ』だと感じます。初めてそんな『四列シート』に乗った時、隣に座ったおじさんが乗るや否や席を倒してしまったのを見てギョッとしたことを覚えています。なんて気がはやい人だろうと思いましたが、いざ走り出して寝ようとした時におじさんと同じ角度にリクライニングさせることができないことに気づきました。まさか知らないおじさんと三十センチの距離に顔を並べたくなどありません。結局中途半端にしか席を倒せなかった私。チクショー、このおじさん乗り慣れている、と後悔先に立たずな眠れぬ一夜を過ごしました。

さて、そんな『夜行バス』には私たちが寝ている間もバスを走らせてくださる運転手さんがいらっしゃいます。特に話をするでもないそんな運転手さんのことを深く考えたことはありません。しかし、乗客のそれぞれにそれぞれの暮らしがあるように、乗客のそれぞれが出発地、もしくは到着地に待つ『家族』がいるように、そんな運転手さんにだって暮らしがあり、『家族』がいるはずです。この作品は、そんな『夜行バス』の運転手さんの暮らしに光を当てる物語。『関越トンネルを越えると、あと半分って気分になる』と、東京〜新潟間を今日も多くの乗客を乗せて走る運転手さんの物語。そして、それは『トンネルを抜けると男で、戻ると父親』というその運転手が、自らの『家族』の『時計』が再び動き出すのを感じる物語です。

『午前五時三十二分。深夜便のすべての客を降ろした高速バス』の中で『運転士の制服の襟元をゆるめ』て、目を閉じるのは主人公の高宮利一(たかみや としかず)。そんな利一は『最近、明け方になると別れた妻の夢を見』ます。『別れたときは三十代だったが『出会った頃の姿』、『二十歳の美雪が泣いている』というその夢。しかし、目覚めると『離婚して十六年もた』ち、『自分がもう四十代の後半になって』いる『現実に気付』きます。『同居した姑との仲がこじれて出ていった』美雪。そして、『別れの理由にもなった母は五年前に亡くなった』という今。『東京新潟間を結ぶ』『定期高速バス』の運転手を続ける利一は、『二年前に理系の大学院を出て、東京で就職し』た息子の怜司と『一ヶ月前に、結婚を考えている人がいる』と話した娘の彩菜のことを思います。『彩菜の結婚が決まれば、自分の人生にも一区切りがつく』と思う利一は、『美越営業所のあかりが見えてきて』、『今夜も無事に戻ってきた』と仕事が終わり安堵します。そして、『彩菜と怜司から電話が』、『怜司からはメール』もあるのを確認し、『読もうとしたときに志穂から電話がかかってき』ました。『あと少しで、あがるから』と伝え『営業所を出』た利一は、志穂の元へと向かいます。利一が『東京の不動産開発会社で働いていたときの上司の娘だった』という志穂は、『西武新宿線の沿線で、小さな定食屋を営』んでいます。そんな志穂を初めて新潟の自宅へと招いた利一は、助手席に志穂を乗せ、家へと急ぎます。そして、玄関へと辿り着いた時『思わず足が止ま』りました。『玄関の引き戸が半分開いて』おり、『廊下に泥と足跡がついている』という状況に『泥棒?と志穂の声がし』ます。そして、『客間のふすまを開け』ると、『ああっ、まぶしいぃぃ』と声を出したのは『酒臭い息子』の怜司でした。『閉め出されるかと思った…ありがと』とよく分からないことを言う怜司に、メールをまだ見ていなかったことに気付く利一。『お前、なんで裸なんだ?』と、息子の姿をよく見ると『背中から腰にかけて肌が赤くただれてい』るのに気付き、志穂を連れて一旦家を出ました。そして、二週間後、東京からの夜行便の出発前に運転手として名簿を確認する利一の前に、『遅れて、ごめんなさい、加賀です』と一人の女性が遅れてやってきました。そんな女性の顔を見て息を呑む利一。それは十六年前に別れた元妻の『美雪』でした。『お母さん… 下に、荷物を入れといたからね』と後ろから少年の声もします。そして、出発した『夜行バス』。そんな『夜行バス』のドライバーとして東京と新潟を行き来する利一。そんな利一の”壊れた「家族」という時計は再び動き出すのか”という『家族』の物語が始まりました。

白いボディの『夜行バス』の表紙のイラストが独特な雰囲気感を醸し出すこの作品。書名にある通り『夜行バス』が全編に渡って登場し、物語を絶妙に演出していきます。そんな作品の主人公・高宮利一は『新潟市から離れた美越市に本社を置く白鳥交通』で、長距離区間を運行する高速バスの運転手として働いています。この作品は、そんな利一の『家族』の物語であり、宣伝文句に”壊れた「家族」という時計は再び動き出すのかー家族の再出発を描く感動長篇”と謳われる通り、『同居した姑との仲がこじれて』別れることになった妻の美雪、そして利一が育ててきた息子の怜司、娘の彩菜という『家族』の今を描いていきます。しかし、この作品はそんな『家族』の物語とは別に、利一とは全く関係のない人物の『家族』の物語が、それぞれの章に”サブストーリー”として描かれていくという凝った作りになっています。ただ、全く関係ない人物が唐突に登場するのではなく、それらの人物は利一が運転する『夜行バス』の乗客であるという接点があります。その各章の切り替えはとてもわかりやすく、『***』という記号が章の中に登場したところで視点の主が切り替わります。九つの章から構成されていますが、そんな中から特に印象に残った”サブストーリー”を三つほどご紹介したいと思います。

〈第一章〉: 『東京の大学へ入学する息子とともに新潟から上京し』た相川真由美が主人公。『もう…帰ってこないかもしれないな』と息子のことを思いながら一人、新潟への帰りのバスに乗り込みます。

〈第二章〉: 『東京の本社に』勤務する恋人の佐々木祐介との遠距離恋愛を続ける上島有里が主人公。『気持ちさえ決めてしまえば、きっとどこにだって行ける』と病に伏す東京の祐介の元へと東京行きのバスに一人乗り込みます。

〈第六章〉: 『仕事をリタイアした夫とのんびりと、日本の南へ向かう旅に出る』という菊井綾子が主人公。『これはきっと最後の大旅行』と、『再来月に手術を控え』た夫と、『あのときが一番輝いていた』とそんな夫がかつて営業で回った土地に夫婦で旅をするために、東京行きのバスに乗り込みます。

というように、バスを利用する乗客の人生の一幕に光を当てる物語が描かれていきます。そこで注目したいのは、そのそれぞれの主人公視点に切り替わった瞬間に本来の主人公である利一が高速バスの運転手の一人となってしまう、その視点の切り替えの絶妙さです。『前を見ると、背の高い運転手が客席を見て、人数を数えている』、『背の高い運転手が微笑み、うなずいた』、そして『背の高い運転士がうつむいている女性の前に立っていた』というそのそれぞれの場面。読者が感情移入する先の主人公・利一が全くの他人に切り替わってしまう不思議感。しかし、この描写によって利一視点でしか彼のことを見れなかった読者は第三者的に”高速バスの運転手・高宮利一”を俯瞰して見ることができるようになります。利一視点では決して見えない”背の高い”彼の姿、”微笑み”を見せる彼の優しい姿、そんな仕事人としての利一が見れることで、物語には深い奥行きが生まれていきます。そう、この作品はサイドストーリーを入れることで、物語の幅の広がりだけでなく、主人公の仕事人としての姿が物語に奥行きを生み出す、とても上手い作りがなされた作品だと思いました。

そんなこの作品の”メインストーリー”は利一を中心とした『家族』の物語です。『離婚して十六年もたっている』にもかかわらず、未だ『明け方になると別れた妻の夢を見る』という利一。それは、『どうして別れたんだろう。どうして離れてしまったんだろう』と元妻の美雪も思う通り、『同居した姑との仲がこじれて』しまったのが原因であり、そこには『憎み合って別れたわけではない利一と美雪』という関係性がありました。しかし、十六年という歳月は本人たちが思うよりも遥かに長い時間です。『子どもを置いて家を飛び出していった』というその子どもたちもすっかり大人になり、そんな母親への特別な感情を抱きながらもそれぞれの人生の中で苦悩しながら生きています。また、利一、そして美雪もそれぞれの人生の次の伴侶との関係にそれぞれ複雑な思いを抱きながらも生きています。この作品の宣伝文句には、”壊れた「家族」”という言葉が登場します。確かに『同居した姑との仲がこじれ』たことをきっかけとして美雪が家を後にするという出来事によって『家族』には大きな亀裂が走りました。しかし、上記の通りそんな『家族』にも十六年という歳月を経て新しい時間が流れ始めていたのは間違いありません。この作品で、作者の伊吹有喜さんは利一の言葉を通して『家族』についてこんなことをおっしゃっいます。

『家族というのは、ともに過ごした時間の記憶である』。

私たちはそれぞれに全く異なる『家族』の形の中で人生を生きています。『家族』の構成員が変わればまたそこから新たな『家族』がスタートする、そんな風に言ってもいいと思います。だからこそ、この作品の利一の『家族』、つまり『利一と怜司、彩菜、美雪という「家族」』の時間は『止まってしまっ』たという言い方は間違いないのだとは思います。そして、十六年前に時を止めてしまった『家族』の『時計』が、利一と美雪の偶然の再会を経て『再び回り始める』様が描かれていきます。『憎み合って別れたわけではない利一と美雪』。そして”置いていった”美雪と、”置いていかれた”怜司と彩菜。そこには、時を止めた過去に見やるプラスとマイナスの感情がそれぞれに露わになってもいきます。時を止めた後に違う『家族』の形がなければ物語はもっと単純なのだと思います。再び動き出した『家族』の時の流れに安堵する、そんなシンプルな結末があるのであればそれはそれで一つの物語です。しかし、上記した通り十六年という歳月の先には『家族』の構成員それぞれが新たに形作りはじめた『家族』の姿がありました。その両者が併存するということは当然にあり得ません。この作品が読者に突きつけるのはそんな中でこの両者の関係性をどう決着させていくのかという選択を構成員それぞれに問いかける物語でした。『もう一度、人生を前に進ませよう』、『恐れずに進めばいい』と前を向く『家族』たちの物語。それは、『ともに過ごす』『家族』のそれぞれがお互いのことを心から思いやる姿を見るものでもありました。

『夜明け前の薄闇を走っていると、これまでの人生を振り返ってしまう。そして選ばなかった道のことを考える』という『夜行バス』の運転手・利一。そんな利一が、元妻・美雪との再会によって十六年前に時を止めた『家族』の『時計』が『再び回り始める』のを見るこの作品。『深夜バスの話しを書くとき、いくつかの候補の土地があった。その中で新潟〜東京を結ぶ、長い関越トンネルが一つの鍵になった』と語る伊吹有喜さん。そんな伊吹さんが、『トンネルを超えると男、戻れば父親という二面性を描けるのではないかと思った』と続けられる通り、この作品では男と父親のそれぞれの姿を見せる主人公・利一の姿が描かれていました。そんな利一が、そして構成員のそれぞれが『家族』の今を考え、それぞれがそれぞれに思いやる様が描かれていくこの作品。どこかそれだけでドラマを感じさせる『夜行バス』が持つ独特な空気感を物語世界に上手く溶け込ませた、とても印象深い作品でした。

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Posted by ブクログ 2021年09月20日

東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。
ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。

父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。
実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。
そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩...続きを読むむ元妻、美雪。

突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、
今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。
全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。


高速バスの運転手とその家族の物語。中盤から韓流ドラマばりの山あり谷ありで涙腺が……。妹のコスプレアイドルって部分は読者の意表を突きすぎている感があるのではないかなぁって思ってしまった。とはいえ読み応えもあって、奇抜な妹に驚かされて、ちょっとしんみりとした気持にもなれて、結末も良し。おすすめです。

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Posted by ブクログ 2021年05月22日

利一と美雪の、愛惜、という表現がとてもしっくりくるなぁ、と思った。

家族っていったって一つの人間関係なんだけど、切り離すのが難しいだけに、遠くても離れていても収束する時は収束する。

そんな物語な気がしました。

2021.5.22
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Posted by ブクログ 2021年03月28日

全体の流れ、ストーリーがいい、あるいは感動するかと聞かれたらそうではない。
一つ一つのエピソードになんとなく共感して、そうだよね、と読み進めて、いつのまにか終わってしまう本。
ほぼ同年の著者とシンクロしている、ということかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年02月15日

会社を辞めて地元に帰ってきた主人公は夜間の高速バス運転手になりそのバスに16年前に別れた妻が乗ってきたその妻にも家族があり複雑な家庭になっていたが バスの運転手リイチに2人の子供がストレス病を患ってたリイチには志穂と言う女性がいたその女性も離婚し店を切り盛りしているなかなか面白い本である

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Posted by ブクログ 2020年10月28日

初の伊吹さんの小説。長距離バスの主人公リイチが様々な乗客と織りなすドラマと勝手に想像してたら違ってた。リイチと付き合ってる志穂。そして16年前に別れた更年期障害の妻との再会から子ども達を巻き込んで展開していきます。可愛らしい志穂と離れる決意をしたところが腑に落ちないところもあったが、ラストに会いに行...続きを読むくシーンでホッとした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年10月19日

利一と美雪がまた復縁するのかと思ったが、やはりもう始まってしまった家族があるので、現状のままそれぞれの人生を歩む。そういう人は割と居るのではないでしょうか。元妻や元交際相手に再会したら、一瞬の迷いは誰でもあるかも。しかしお互いが新しい人生を作ってしまっていて、それも壊してしまうともっと最悪の人生にな...続きを読むるのかもと気づく。
敬三の介護のことや、子供の成長などどんどん状況が変わっていくので、いつまでも交際仕立ての頃の感情だけでは動けない。
年齢を重ねるにつれ色々な背景を背負ってみんな生きていく。それでも自分の人生だし悩むこともわかる。
彩菜や怜司も色んな事を経験し、大人になろうとする姿も良かった。怜司が器用貧乏なところも、どうにかして良い方向になれるように海外の仕事で頑張って欲しい。

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Posted by ブクログ 2020年10月09日

新潟と東京を結ぶ夜行バスの運転手。ある日16年前に離婚した妻が乗客として乗ってくる。運転手を軸に夜行バスを巡る人間模様を描いたオムニバス形式の感動小説。

映画化もされた作品。まもなく50に手の届く歳の男性が主役。自分と同世代ということもあり感情移入して読むことができた。筆者もほぼ同世代。そろそろ自...続きを読む分の限界と終着点が見えて居る、でもまだ何か足りない、何かがしたいという複雑な感情。

結婚に失敗したことから、東京に暮らす新たな恋人ともう一歩が進めない。子供は大人になりそれぞれの人生を踏み出そうとしているがまだ未熟。主人公の暮らす新潟と恋人のいる東京。関越トンネルが父と男の境目という設定はお見事。

夜行バス、たいていの人は多分それぞれの人生でその一晩のみ交錯するだけ、だがそれぞれに重い人生がある。

「走り続けたこの先はいつだって、きれいな朝が待っている。」

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Posted by ブクログ 2020年09月26日

故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長篇。

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Posted by ブクログ 2020年08月21日

支えてくれる人、支えている人を、どんなに意識せず毎日暮らしていたか考えさせられた。体温、重さ、匂いがあるんだよなと思い起こされ、沁みる本だった。

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Posted by ブクログ 2023年05月15日

すれ違い、生き違った家族が会いまみえた時に、どうやって向き合い、どうやって再出発していくのか。家族とはとても近いため、時には支えに、時には脅威になる、そんなデリケートな関係なのかもしれない。それでも家族を紡ぐ物語が心引かれるのは、それをみんな求めているのだろう

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Posted by ブクログ 2023年05月12日

「終わり良ければ」という言葉があるが、
そのような印象がややある作品。

終始起伏は少なく、それぞれが抱える問題(家族、仕事、恋愛、結婚、離婚)に対して向き合い、最後にはそれに対する答えを見つけ新たに歩みを始めるというストーリー。

この作品は、読者側の今の状況や精神状態によってハマる/ハマらないが...続きを読む大きく左右されると思うが、何かモヤモヤしている時に読んでみる一冊としては良いと思う。

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Posted by ブクログ 2022年07月17日

独特の雰囲気だがこのトーンは嫌いではなくむしろ好み。ただ、登場人物が皆個性的というか支離滅裂で、こんな人たちでは穏やかな人生を送ることは無理だろうという感じ。特に元夫婦の2人は大嫌いなタイプで最後まで共感することは出来ず。子どもたちは早く経済的にも精神的にも自立しこんな親から卒業して、その呪縛から逃...続きを読むれるべき。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年05月14日

深夜高速バスの運転手と家族恋人たちの物語
各々の仕事や介護、人間関係、これからやこれまでを織り交ぜながら綴られていく
主人公の物語以外に深夜バスを利用した乗客の
物語もあり、私は往年のロック歌手の話しが素敵だと思えた

池袋→新潟の路線、私も利用した事もあり
見送った事も、迎えに行った事もある
新幹...続きを読む線とは少し違う独特な雰囲気が伝わる

主人公の利一の煮え切らなさにも共感できたり
朝に向かう深夜バス、登場人物達が朝に向かうであろう期待感が良い

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Posted by ブクログ 2021年10月11日

重たくて深い心情を描いた話でズンと来た。
リイチの焦ったいところや不器用さにイラっとしたが、まあ、それが人間なんだろうね

「深夜バスは夜から朝に向かって走るバスだ」
「夜明け前がいちばん暗い」

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Posted by ブクログ 2021年05月05日

考えたらしょうがないかもしれないけど、タイミングというのはある。
それでもバスは人の気持ちを乗せて、次の目的地へ進む。

(以下抜粋)
○繊細な人なんだよ、と絵里花が言った。
「目が良くて。すべてが見えすぎちゃって、疲れちゃうんだ、たぶん」
それがわかるこの子も、おそらく同類だ。(P.212)
○リ...続きを読むイチさんは決して踏み込まないの。一緒にいてほしいって言ったら、いてくれるし、優しくしてと言ったら、優しくしてくれる。だけど決してそこから先に来てくれない。自分の内側にも踏み込ませない。(P.233)
○あなたに惹かれるのは、若さの名残。私にとってあなたは青春時代そのもの。失われていく若さの象徴みたいなもの。だから惹かれるの。愛情じゃない、愛惜なの

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Posted by ブクログ 2020年08月07日

たまにしか乗らないけどバスが好きだ。目的地にいる友達に会えるのは楽しいし、バスの隣に座る人と思いがけず話をする事もある。帰りのバスは寂しくもあるが、旅で出会った人や感じた感情を思い返す大切な時間にもなる。
この物語でも色んな想いを抱えた人が、回り道をしながらも、それぞれ自分の感情と向き合って生きてい...続きを読むる。周りの人や自分自身を認めるための物語のように感じた。
もう少し家族と向き合う機会を持たなきゃなと反省。何事もすぐには結果はでない。後悔しないように、お互いに間違いながらも暖めあって行ける関係が築けたらと思う。

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Posted by ブクログ 2020年07月27日

7月-24。3.0点。
新潟在住の長距離バスの運転手、バツイチで社会人の息子、娘が相次いで戻ってくる。息子は会社を辞め、娘はネットアイドルになりグッズを販売する。

恋人、子供たち、元妻、元妻の父親、降って湧いたような関係に苦しみながらも前へ。
登場人物それぞれの描写が丁寧。悩みながらも少しずつ前へ...続きを読む。共感出来る。

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Posted by ブクログ 2020年07月19日

穏やかに進行する、失われた家族の修復の物語。読み手が考える収まりどころにゆっくりと向かっていく感じ。
登場人物それぞれの職業やその抱えている問題などが説明しきれていない印象。特に娘の彩菜を取り巻く状況が分からない。往年のシンガーとの相談する場面に違和感。息子の怜司の方は登場場面数は多いが抱えている謎...続きを読むは勿体ぶった割に終盤に要約して説明があり消化不良。150万円の借金は結局なんの為だったのかわからずじまい。彩菜の友達で東京の彼氏に遊びに行ったら彼女といたエピソードは続きがないのか。市町村合併と会社の吸収合併の筋は必要あったのか。
主人公である利一は、取り巻く二人の女性を思わせぶりに接触した後塩対応したり、恋しくなったと一方的にまた会いに行ったりと一貫性がない。
全体的に不要なエピソードが多く無駄に長い印象。また、人物が取った行動がそれまでのエピソードと結びつかない。
全体の雰囲気はよいがまいた伏線の回収が甘く消化不良。

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