伊吹有喜のレビュー一覧
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「鎌倉茶藝館」を読み終えたあと
台湾茶の湯気の向こうに、
人の孤独や再生、過去との和解が
そっと描かれている物語だった。
物語の舞台は古都・鎌倉の一角に佇む小さな茶善館。
そこに集う人は、何かしらの過去を抱えている。茶葉が開く時間とともに、人の心も少しずつほどけていく描写だった。
特に印象的だったのは、「待つ」という行為の意味だ。台湾茶は急いで淹れても本来の香りは立たない。湯の温度、蒸らしの時間、茶器との対話。その丁寧な工程があってこそ、茶葉は真価を発揮する。人物たちもまた、すぐに答えを出すのではなく、時間をかけて自分自身と向き合っていく。その姿は、忙しさに追われがちな現代の私たちに、立ち止 -
Posted by ブクログ
ネタバレ50代の親の気持ちで読みました。
娘の結婚、という急変した身辺はひとまず横に置いて、学生の頃から長い年月をともに過ごしてきた夫婦の様子がやけに胸に迫り、息苦しさをおぼえるほどでした。下り坂にある体の不調、自身の親のことなど老いへの不安・・・漠然としたものも含め気づくといつも曇り空の下にいるような自分にますます嫌気がさして・・・。
本を読みながら、そうか、こんな心持ちはわたしだけじゃないのだな、と思いつつ、彼らのストーリーを追う中で、それでも、次々とふりかかってくるものと対峙していくしかないのだな、と奮い立つ気持ちも抱きました。
もう取り返しがつかないと思われた亀裂からのラストの展開に、な -
Posted by ブクログ
何の前情報もなく、なんとなく手に取った1冊。なんて素晴らしい本だったんだろう。
私にも高校生の頃があったはずだ。忙しい日常に流されて生きてきた気がする。でも確かに、悩み、苦しみ、そして大声で笑った高校生の頃の自分を思い出せた。私にもそんな時間が確かに存在していた。
短編連作はすごく好きだけれども、そこに時間軸がつくとこんなにも豊かになるんだと感動した。同じ時間を生きることも、とても素敵なことだ。
しかし、時の流れの中で、変わっていったもの。そして変わってないもの。そんなことをすごく感じた。
人とのつながりで、涙がこぼれた。私は3章の『明日の行方』が1番好き。おばあちゃん子やったから。
そ -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めて読む作家さんで、自分が鎌倉好きなのと、緑が映える爽やかな装丁に心惹かれて手に取りましたが…いい意味で裏切られました笑
ただ、大人の恋愛模様に戸惑いながら読んでいくと、美紀が直哉に溺れるかのごとく、物語に前のめり気味でのめり込んでいっている自分に気付き、苦笑い。
美紀さんは、よっぽど美人で雰囲気のある人なんだろうなぁと推測。
今の40代は若いと言いますが、20〜30代をどう生きたかの通知票が40代で帰ってくると言うように、それまでの人生にどう向き合ってきたかが表情に出ますよね。
学生時代の恋人との突然の別れから、結婚生活、死別、その後の姪とのいざこざ。
すべて一筋縄ではいかないながらも