伊吹有喜のレビュー一覧
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読み始めてすぐに引きこまれ、ほぼ一気読みでした。
三重県の伝統高を舞台にした、みずみずしい青春小説です。
第一章は1988年。
通称が「ハチコウ」の高校に迷いこんだ白い犬。
引き取り手が見つからず、生徒の有志によって高校で面倒を見ることになります。
この章の主人公は高3の生徒、光司郎と優花。
迷い犬はいつも光司郎の席に座ることからコーシローと名付けられます。
男尊女卑の考えが色濃いこの時代。
進路に悩む優花、主人公2人の純粋でまっすぐな恋心、母親の強さや懐の大きさ、その全てに胸をうたれました。
2章以降は章ごとに時代が少しずつ先に進み、主人公も変わります。全ての章において主人公は高3の生徒。18歳という子どもから大人へ変わっていくその心の揺れ動きが見事に描かれていました。
5章の1999年には優花は教員として八高に戻ってきています。
コーシローは老犬となり、より人間の気持ちに敏感に。
最終話は2019年。八高が100周年を迎え、記念式典で光司郎と優花、その他の登場人物達が総出演。読者の満足度が非常に高い終わり方だと思います。
コーシローの存在はさりげないようで、しかしながらコーシローがいなければ登場人物達の人生は全く違う展開になったでしょう。
よい本を読みました。
強く人に薦めたいです。
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Posted by ブクログ
カバーの絵を見て友達二人の底抜けに楽しい話かと思っていたら違いました。
少女向け雑誌の発行元で働く佐倉波津子の戦前・戦中・戦後。
淡い想いや固い決意、ほろ苦い別離も。
お仕事小説として佐倉の成長と活躍を応援しながら楽しみましたが、戦局悪化で夢や輝きが潰えていく雑誌「乙女の友」を彼方の友、読者のために守る過程で力を合わせる編集者の想いがとても尊くてしんみりする。
全てに静かに蓋をする様に過ごしていた佐倉の元を訪ね集う、世代を経た関係者たちがひと時掬い上げた様々な思いと物語は、やがて記憶から記録へと、遠いところに仕舞われて行く。
余韻の溢れる、いい話を読んだ気分。明治41年に創刊され、戦時中も刊行を続けられた「少女の友」を巡る出来事をベースにした作品だそうです。 -
Posted by ブクログ
この間プチ旅行に出かけたお供に読み始めたら止まらなくなってしまった。
激しく温かい気持ちで本を閉じられた。
読み始めてずっと息もできないくらい苦しくて。
美緒ちゃんは私だった。
人の顔色を伺ってしまう、言葉尻で自分に対する負の感情を感じ取ってしまう、詰められると言葉は胸の中に沢山あるのに何も言えなくなってしまう。
決めつけてかかってくる母親。
辛いよね。
苦しいよね。
好きなものが分からない、心地いいが分からない、自分がどうしたいか分からない。
自分を大切にするってことがそもそも分からない。
美緒ちゃんはホームスパンに出会った。
私は音に出会っていた。
自分の心地いいことに気付ければ、理解してくれる人に出会えれば。
それでいくと私は半分美緒ちゃんのお母さんとも似てるのかもしれない。
誰にも甘えられない。頼れない。
こうやって文字に起こして客観的に見ると私かなりやばい人ね。
何が好きなのか、どんなことが心地いいのか、自分はどうしたいのか。少しずつ分かってきた。
本を読むのもそのひとつ。
それすら分からなかった。
人に頼るのはまだまだ。
これが一番難しい。
まだまだ育て直し中だけど、客観視できるようになっただけまだマシかな。
娘達もそうなんだよね。
黙っちゃう。
娘達がぽつりぽつりと話し出すのはお風呂の時間と寝る時。
だから大きくなってきたけど、お風呂も寝る時間も未だに一緒。
いつでも受け止めてあげられるように。
「言わで思ふぞ、言ふにまされる」(言えないでいる相手を思う気持ちは、口に出して言うより強い)
黙っているという向こう側に豊かな森が広がっている。と「ことばのかたち」にも出てきたな。
もしも私が何か言い返した時には相当な勇気を振り絞っているんだなと思って褒めてくれたら嬉しい。
雲を紡ぐ、言葉を紡ぐ、人と人とを紡ぐ。
そんな物語だと思った。 -
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ネタバレ18歳の耀子が14歳の夏を回想しながら進む話。
子供達が子供達で居られた最後の夏。
照子の息子の龍治も加わり過ぎてゆく…
母照子の愛情を幼い頃に感じれず、今も確執が残ってるからつっけんどんな態度だけれど 立海や耀子、長屋の人々に対してはちゃんと誠実な対応をしてくれる事から根は優しい人なんだな、龍治。
耀子にとって立海はいつまでも幼い「リュウカ君」なのかな。弟のような、手の届かない大切な思い出の中の宝物のような。
父性を求めてしまったのか、龍治と共に歩む事に。
大切にされてこなくて、「大切にされる」という事が分からないと泣く耀子。悲しい…。
常夏荘の人達の事だと教えてあげたいなぁ。
この先地の星へと続くようなので、今から読むのが楽しみ。 -
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ネタバレ伊吹有喜さんの本にシリーズ物があると知って手に取った1冊。
大人達の事情に翻弄される子供達。
それでも常夏荘で過ごす日々は宝物のようにキラキラ輝いて見えた。
常夏荘の優しい大人達に見守られて、少しずつ健全な心になっていく。
子供がいるせいか、間宮のお爺さんや照子の気持ちが痛いほど伝わってくる。
子どもたちはいつか全て忘れてしまう。こちらは全て覚えているのに。けれど
「そうでなけれはきっとーー子どもたちは母のもとから巣立てない。」
この言葉が私にはとても沁みた。
彼らが大きくなるにつれてどう成長していくのか楽しみ。続巻も読もうと思う。 -
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ネタバレこの作家さんが気になって手に取ったのですが、実は、シリーズ最終巻だったことが後で判明。
でも、初見でも登場人物たちの背景を丁寧に描いてくれたので、特に引っかかることなく読むことが出来ました。
私も田舎生まれで、村のコミュニティみたいなものに嫌気が差してる部分が大きいのですが、登場人物たちはこの村を愛しているのが何だか良いなと思いました。
「美しさとは・・・」という文章は心に沁みましたし、私の教訓にしようと思いました。
そういえば叔父さんのことが好きだったあの女の人、2年後どうなったんだろう・・・?
一途だからこそ意地悪だった気もするし、打算的だから2年も待っても脈がなくて年齢的にあっさりとあきらめた気もするし、それとも告白して玉砕したのか・・・。
いわゆる"女"だったからこそ、どういう風にケリを付けたのか気になります。
あと、最後に二人が結ばれる結末になったのは、シリーズを最初から読んでいる読者はどういう感情になったのでしょう・・・?
え?そっち??みたいに思ったのか、伏線は張られていたのか・・・。
後日、シリーズ1作目から読んでみたいなと思います。 -
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ネタバレ不登校になってしまった少女が、父方の祖父が営んでいる山崎工藝舎へ弟子入り。羊毛と触れ合い、試行錯誤していく中で自分の好きなものを見つけ、成長していく物語。
『羊毛は死んだ動物のものじゃない。生きている動物の毛を分けてもらうんだ。だから人の身体をやさしく包んで守ってくれる。』p121
『大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ。』p140
『心にもない言葉など、いくらでも言える。見た目を偽ることも、偽りを耳に流し込むことも。でも触感は偽れない。心と繋がっている脈の速さや肌の熱は隠せないんだ。ものだって同じ。触ってみなさい。』p255
『ただ、腹をくくるだけ。選んだ道でこの先何があろうとも、引き受ける覚悟を決めるだけ。』p318
『遠く、雲のように儚くても、それでも人は手を伸ばして、つかもうとする、夢や希望を。』p391
我慢しなくていい。
逃げてもいい。
人と同じようにできなくていい。
あなたはあなたのままでいい。
そう言ってくれる人が一人でもいてくれたなら。
子ども達はきっと自分の道を自分で見つけられる。
親として子どもの力を信じる。ただ信じて、待つ。
ほんとうに、良書でした。
ここに書ききれないくらいの心にしみる言葉をもらいました。1月にして、私の2025年ベスト本になりうる作品に出会えたと思います。 -
Posted by ブクログ
自分に自信がなくて、いつも笑顔を貼り付けて過ごすことで友達から揶揄われて学校にいけなくなる。母も父もそれぞれに仕事で大変さを抱えていて、逃げるな、と言われながらも耐えられずに新幹線に乗って盛岡にいる祖父の家に訪れる。
祖父はホームスパンを作る職人をしており、驚きながらも暖かく迎え入れ、本人が置かれている状況を知り、逃げることも大事、自分を守ることも大事だと支えてくれる。
自分の嫌なことはたくさん知っているのに、自分が何色が好きで、何が好きか、いいところに目が向けられていない、と教えてくれたことが印象的だった。
学校に行かなくなったとき、両親、祖父母などの家族は将来のことをそれぞれ心配し、本人を責めたり脅したりしてどうにか学校に行かせようとする。気持ちを言えずに黙っているのは、自分の気持ちがよくわからなかったり、相手を傷つけてしまうかも、怒られるのではないかと色々考えているから。
親が怒るのは、本気で将来を心配していて、子どものことが大事だから。
自分が好きだと惹かれるものに集中して取り組み、自分の作品に向き合うことが自分自身と向き合うことにつながっていくという過程に惹きつけられた。
また、その子の姿をみて責めずに、急かさずに暖かく支える家族や周りの人たちの存在が大事。仕事に向き合う厳しさも同時に伝えながら、どこか信じたり祈ったりする姿勢で。
人と人が生きていくなかで、一方的に支えるのではなく、子どもの成長が祖父や両親を精神的に支えているところもあり、家族っていいなと思った。
糸は、切れても大丈夫。また繋げて一本の糸にできる。
涙なしでは読めない一冊。