伊吹有喜のレビュー一覧
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今回は燿子がお仕事を始めてからの成長物語。昔嫌なヤツだった由香里がかっこいいバリキャリになっていて、燿子のいい相棒となっていくのがすごく良かった。好きだなぁ。こういうはっきりした女性。オドオドして自分に自信のない燿子が、由香里や千恵や照子たちの影響で少しずつ変わっていく。そして燿子の心にいつもある青井先生の言葉、
・「どうして」ではなく「どうしたら」と考える。
・自立(顔を上げて生きること)と自律(美しく生きること)
この2つは本当に前向きになれる素敵な言葉だと思う。
立海との関係は相変わらず切ない。この後どうなっていくのか。続きが早く読みたい。 -
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お母さんになり、常夏荘で“おあんさん”となった28歳の耀子に会えて感慨深かった。
時代の移り変わりとともに環境も変われば、耀子自身の心境にも変化が起きていく…。
目まぐるしく、思わぬ展開でした。
ここが耀子にとっての人生の分岐点、今が大事な時だと思うと読みながらつい力が入ってしまう。
亡き父が叶えようとした未来に思いを馳せる耀子。
人生いろいろ。ちょっと切ない場面も。
深く心に染み入るストーリーで、温かく清々しい読後感でした。
『“私たちは小さな撫子”。星の形に似たこの花は、風に揺れても折れない、うつむかない。つつましくとも凛と咲き、地の星のごとく光を放つ。』 -
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先に読んだ「犬がいた季節」の解説に『その年の本屋大賞ノミネート作に「彼方の友へ」が入っていなかったことに途轍もない衝撃を受けた…』と書いてあるのを見て、この本も読んでみたいと思っていた。
こちらもとても面白かった。
昭和初期、父が消息を絶ち母も病気になっては進学も諦め慎ましい生活を余儀なくされていたハツのお話。
知り合いの口利きで憧れの少女雑誌「乙女の友」編集部に職を得たハツが場違いな場所で戸惑いの日々を過ごす序盤を過ぎて、なかなか原稿を仕上げてもらえない作家先生を自転車でさらってきたあたりから面白くなってきた。
そこからは、主筆の有賀に鍛えられながら、周囲の作家や画家からも様々なことを吸収して、ハツが物書きとして頭角を現していく姿が瑞々しく描かれて、とても惹き込まれる。
ハツの親しみやすい人柄はもとより、冷静な主筆の有賀、優しいながら謎めいた画家の純司、いつも一緒にいて支えてくれる編集補佐の史絵里、陰ながら指導してくれる科学小説家の空井、ハツが憧れる女性作家の美蘭など、それぞれに陰影がある人物像が面白みを増す。
“友へ、最上のものを”という思いのもとに描かれる雑誌づくりの話には、ともすれば不要不急と切り捨てられる美や芸術、音楽や文芸の存在の重さを改めて教えられるし、この時代を描けば避けて通れない大戦前夜から敗戦までの禍々しい出来事には反戦の思いを、銃後で協力し合って逞しく生きる女性たちの姿には社会における女性活躍に対する思いを汲み取ることができる。
色々なテーマが折り重なっている物語だが、それらが声高にではなく、お話の中からしっかりと沁みてくるような描き方が好ましい。
後半、有賀が入営するあたりからなんだかメロドラマっぽくなってきたが、そこからあのようなエピローグになろうとは…。戦後の復興の中でそれぞれが歩んだ数奇な運命が、五線譜の暗号とつながるラストがとても良かった。
番外編も、本編であのように逝った空井を偲んで秀逸。 -
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私が読んだ伊吹さんの作品は再生の物語が多い気がする。
この作品も、妻である乙美を亡くした良平とその娘の百合子がどのように生きていくのかを考えて進む物語だ。
突然現れた井本とハルミ。現実にこんなことが起こったら受け入れることは難しいだろう。しかし、こんな2人がもし現実に現れたなら自分の人生も変わっていくのかもしれない、と想像したら楽しくなった。
良平も百合子もこの2人に出逢わなかったら、人生なにも変わらなかっただろう。
乙美が託した想いを繋ぎに来た井本。
井本とハルミの去っていく姿がどちらも気になる。
実際この2人は何者だったのか、と。
ずっとずっと良平と百合子と居て欲しかった。そこが少し残念。
井本が去って行った時の良平の気持ちが切なかった。
良平と百合子を取り巻く親族にも腹が立ったり、共感したりと色んな気持ちにさせられたところを思えば、なかなか面白い作品だったと思う。 -
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伊吹さんの小説、2冊目。読み終えて感じたこと。
美鷲の風景描写が、想像できるくらいの表現の素晴らしさに惹かれた。
家族を失った貴美子と心の風邪をひいてしまった哲司。
貴美子の優しさと気遣い、テキパキとこなす仕事。かっこいいと思った。
お互いに欠けているもの、大切なものに気付き前に進もうとするストーリー。
貴美子は本当に温かい女性だと思う。
謙虚でどんな人にも温かく接することができる女性。
弱いようで、芯の強さもある。
大切なものを手にするために、自由に生きれたらどんなに幸せかなぁ、と思ったストーリーだった。
ちょっぴりもどかしくてせつなくもなる大人の恋も描かれてて、色んな気持ちになれた。
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【少女雑誌の灯す光】
伊吹さんの本を初めて読みました。
時は戦前の昭和。少女雑誌「乙女の友」が大好きで、その主筆とイラスト作家の先生たちにあと蛾れている佐倉波津子ことハツ。あるきっかけで、その主筆のアシスタント、という形で出版社編集部に雇ってもらえることになるのだけれど…
戦争という緊急事態と価値観の大転換の中でのお話。
いろいろ考えさせられた。
「そんな余裕のない状況なら、書物や雑誌など不要ではないですか」
コロナの緊急事態下に問われたたくさんの文化活動の意味。リアルだった。
出版社や書籍に関わる人々はどう影響され、どのような決断を経ていったのか。
違う時代の話。
たくさんの芸名。
おちゃめでカラフル。
教科書や授業では知りえない、生きている人間を感じられた本。
フィクションなんだけど現実でもある、そんな気がするお話だった。
灯台のような雑誌。「暗がりのなかに光をともす存在」。
状況がどんなに難しくなっても、「彼方の友」―全国の読者―との間に自らが課した約束を守り続けるために下す決断の数々。知りえないけれど。そんなことを考えたり。
女性とキャリア。今も男女のキャリア格差は閉じていない。この議論は今に始まったことでも何でもないことにあらためて気づく。主人公をはじめ、昭和前期にも強く生きる女性たちが生き生きと描かれている。
そしてなにより、この本は、ただ昔を書くのではなく、今老人施設で余生を過ごす主人公ハツが、夢うつつの状態の中、過去を回想している設定。
人の価値観に与える戦争の影響は大きい、ってそのあと読んだ村上春樹さんのエッセイに書いてたけれど、断絶があるぐらい、すごい激動の時代を生きてきた人が、今も生きていて一緒の社会にいるってこと、
凄い貴重だし、普段自分は忘れすぎてる、と思う。
本気で想像しないと想像できないことなのだと思う。