伊吹有喜のレビュー一覧
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この間プチ旅行に出かけたお供に読み始めたら止まらなくなってしまった。
激しく温かい気持ちで本を閉じられた。
読み始めてずっと息もできないくらい苦しくて。
美緒ちゃんは私だった。
人の顔色を伺ってしまう、言葉尻で自分に対する負の感情を感じ取ってしまう、詰められると言葉は胸の中に沢山あるのに何も言えなくなってしまう。
決めつけてかかってくる母親。
辛いよね。
苦しいよね。
好きなものが分からない、心地いいが分からない、自分がどうしたいか分からない。
自分を大切にするってことがそもそも分からない。
美緒ちゃんはホームスパンに出会った。
私は音に出会っていた。
自分の心地いいことに気付ければ、理解 -
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ネタバレ18歳の耀子が14歳の夏を回想しながら進む話。
子供達が子供達で居られた最後の夏。
照子の息子の龍治も加わり過ぎてゆく…
母照子の愛情を幼い頃に感じれず、今も確執が残ってるからつっけんどんな態度だけれど 立海や耀子、長屋の人々に対してはちゃんと誠実な対応をしてくれる事から根は優しい人なんだな、龍治。
耀子にとって立海はいつまでも幼い「リュウカ君」なのかな。弟のような、手の届かない大切な思い出の中の宝物のような。
父性を求めてしまったのか、龍治と共に歩む事に。
大切にされてこなくて、「大切にされる」という事が分からないと泣く耀子。悲しい…。
常夏荘の人達の事だと教えてあげたいなぁ。
この先 -
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ネタバレ伊吹有喜さんの本にシリーズ物があると知って手に取った1冊。
大人達の事情に翻弄される子供達。
それでも常夏荘で過ごす日々は宝物のようにキラキラ輝いて見えた。
常夏荘の優しい大人達に見守られて、少しずつ健全な心になっていく。
子供がいるせいか、間宮のお爺さんや照子の気持ちが痛いほど伝わってくる。
子どもたちはいつか全て忘れてしまう。こちらは全て覚えているのに。けれど
「そうでなけれはきっとーー子どもたちは母のもとから巣立てない。」
この言葉が私にはとても沁みた。
彼らが大きくなるにつれてどう成長していくのか楽しみ。続巻も読もうと思う。 -
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温かく優しい気持ちになる一冊。
一気に読み終えて、なおまだ余韻に浸る。
八稜高校で過ごすことになる犬のコーシローと高校生達の物語。
主軸は早瀬と塩見のストーリーだが、いくつもの時代のハチコウセイを通して、その世代の葛藤や恋愛、成長が描かれていて胸に刺さる。
コーシロー目線と高校生目線でのストーリー展開がテンポよく進み、短編でありながら、どこかでつながりを持ちつつ紡がれていく。
伊吹さんの作品は『雲を紡ぐ』に続き二作目。
好きだなぁ。
三重県四日市という伊吹さんの青春を過ごした場所や母校への愛も感じる。
青春を描いた物語がこんなに純粋に心に響いたのは久しぶり。自分の高校生時代を思い出してしま -
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ネタバレこの作家さんが気になって手に取ったのですが、実は、シリーズ最終巻だったことが後で判明。
でも、初見でも登場人物たちの背景を丁寧に描いてくれたので、特に引っかかることなく読むことが出来ました。
私も田舎生まれで、村のコミュニティみたいなものに嫌気が差してる部分が大きいのですが、登場人物たちはこの村を愛しているのが何だか良いなと思いました。
「美しさとは・・・」という文章は心に沁みましたし、私の教訓にしようと思いました。
そういえば叔父さんのことが好きだったあの女の人、2年後どうなったんだろう・・・?
一途だからこそ意地悪だった気もするし、打算的だから2年も待っても脈がなくて年齢的にあっさりとあき -
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ネタバレ不登校になってしまった少女が、父方の祖父が営んでいる山崎工藝舎へ弟子入り。羊毛と触れ合い、試行錯誤していく中で自分の好きなものを見つけ、成長していく物語。
『羊毛は死んだ動物のものじゃない。生きている動物の毛を分けてもらうんだ。だから人の身体をやさしく包んで守ってくれる。』p121
『大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ。』p140
『心にもない言葉など、いくらでも言える。見た目を偽ることも、偽りを耳に流し込むことも。でも触感は偽れない。心と繋がっている脈の速さや肌の熱は隠せないんだ。ものだって同じ。触ってみなさい。』p255
『ただ、腹を -
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ある地方都市の高校を舞台に、時代や立場の異なる複数の登場人物たちが織りなす青春群像劇です。物語の象徴として登場するのが、「シロ」という野良犬です。シロは特定の誰かに属するわけではなく、街や学校にふらりと現れては人々の心に寄り添い、時には人生の転機をもたらします。シロの存在が、主人公たちにとって「何かをつなぐ」象徴となっていることが、物語全体を通じて描かれています。
印象深かったのは、教師として登場する人物が、過去の悔恨と向き合う場面です。彼はかつての教え子に対して適切な言葉をかけられなかったことを後悔し続けています。しかし、シロとのさりげない触れ合いがきっかけで、自分の弱さを受け入れることがで -
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少し前に「雲を紡ぐ」を読んで、伊吹有喜さんの別の作品をと思い読んだ作品。
舞台は高校、登場人物は高校生たちと学校で飼われることになったコーシローという犬。
5話の短編と最終話の6編で、5話の短編は違う年代で主要人物も別々。コーシローは変わらず学校にいて。昭和の終わりから平成の学生生活が描かれて、最終話は令和に。
どの短編も好みだけれど印象に残るのは、、と続けようとしたけれど、どの話も印象に残る。
1話、めぐる潮の音
コーシローとの出会いや名前の由来に触れる1話。あとの話でも触れることが多いためか、ここでの登場人物たちが最も印象に残る。最後にコーシロー視点では胸がキュッと。
2話、セナと -
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自分に自信がなくて、いつも笑顔を貼り付けて過ごすことで友達から揶揄われて学校にいけなくなる。母も父もそれぞれに仕事で大変さを抱えていて、逃げるな、と言われながらも耐えられずに新幹線に乗って盛岡にいる祖父の家に訪れる。
祖父はホームスパンを作る職人をしており、驚きながらも暖かく迎え入れ、本人が置かれている状況を知り、逃げることも大事、自分を守ることも大事だと支えてくれる。
自分の嫌なことはたくさん知っているのに、自分が何色が好きで、何が好きか、いいところに目が向けられていない、と教えてくれたことが印象的だった。
学校に行かなくなったとき、両親、祖父母などの家族は将来のことをそれぞれ心配し、本人を