伊吹有喜のレビュー一覧
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出版順に読んだので、なでしこ物語はこれが3作目になる。
なんて切ないのだろう。
読み終えてしばしどっぷりこの世界から抜け出せなかった。
「地の星」で疑問に思ったままになっていたことが次々にわかってくる。
こちらを先に読むのと後に読むのでは、龍治の印象ががらりと変わる。
環境は恵まれていたけどずっと孤独で、心の拠り所があまりない人だったんだな。
心の奥にある14歳の燿子と10歳の立海、そして龍治との思い出を
そっと大切に開ける。
後に語られる方がその大切さが際立つ。
だから、「天の花」が後になったのかなと思った。
立海の一途な思いが報われてくれたらとは思うが、
小さい頃の4歳差、大人になっ -
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ネタバレ常夏荘をとりまく人々、しきたり、地域の風習などが
あまりにも昔のもののように感じていたら、
1980年とそれほど前ではなかった。
前時代的な雰囲気と、
都会から持ち込まれる現代的なものとの違和感を感じた。
複雑な家庭の事情を持ち、
子どもたちからはいじめの対象となっている燿子と立海。
2人が出会い、
お互いの中に自分の安らげる居場所を見つけていくのが
ほっとすると同時に、
この状態がいつまでも続くとは思えないという気持ちで、
ずっとドキドキしながら読んだ。
突然の別れは、とても悲しくやりきれなかったが、
立海のたくましさに救われた。
次作もあるようだが、2人が再会できているといいなと思った。 -
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最近、青春小説ばっかり読んでいたので、久々に大人のお話。
心のバランスを崩し休職中のエリートサラリーマン哲司が紀伊半島の港街、美鷲を訪れる。そこで出会った喜美子。明るい振る舞いの裏には悲しい過去があり。
最初はこの喜美子の田舎のオバちゃん然とした感じがイヤだったけど、読み進めていくうちにそれが彼女の自信のなさやあきらめてきたものからくるものだとわかってくる。本当は誰よりも純粋でまっすぐで。だから哲司もそんな彼女に癒され、徐々に自分を取り戻していくんだね。大人の夏休み。
「風待ち」という言葉がいいね。「道を踏み外したのではなく、風待ち中。いい風が吹くまで港で待機しているだけ」
惹かれあう二人だけ -
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宝塚の演目の原作とあるが、テレビドラマにもなった作品のようだ。
ストーリー、キャラクターが魅力的で、絵になる場面も多い。
なるほど、人気があるのもうなずける。
主人公は二人いる。
製薬会社勤務の青柳は、リストラ寸前。
おまけに妻子に見捨てられる。
そんな彼にとってはまったくお門違いのバレエ団運営に出向させられる。
もう一人は、青柳と同じ会社のトレーナーの瀬川由衣。
彼女も会社が後援していたマラソンランナーのマネジメントに失敗し、崖っぷち。
初期状態がこれなら、浮揚するしかないわけで。
新たに担当となった世界的バレエダンサー、高野のマネジメントにがむしゃらに取り組む由衣。
悩みながらも「王 -
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料理をテーマにしたアンソロジー。
女性作家ばっかりかなと思ったけど、中村航さんは男性かな?色んなテイストの作品が詰まっていて、美味しくて嬉しいアンソロジーでした。
以下お気に入り作品。
柚木麻子「エルゴと不倫鮨」
不倫を嗜む男たちの隠れ家的鮨屋に、明らかに場違いなくたびれたおばさんが襲来する。そのおばさんはなぜかとても料理に詳しく、次々と美味しそうなオリジナル創作鮨をオーダーしはじめ…まさにタイトル通り注文の多い料理小説。ラストのオチも痛快でよい。
伊吹有喜「夏も近づく」
悠々自適な田舎暮らしをしている主人公が、兄から半ば押し付けられる形で甥っ子を預かることに。田舎の豊かな自然と触れ合うこ -
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「どうして、って思いそうになったら、どうしたら、って言い換えるの」「『どうして』グズなの?この質問に答えは出ない。だけど『どうしたら』グズではなくなるの?この質問には考えれば答えがでる。 答えが浮かばなかったら誰かに相談してもいい」
自立、かおをあげていきること。
自律、うつくしくいきること。
やらまいか。
あたらしいじぶんを、つくるんだ。
これは、父親を早くに亡くし、母親が男を作っていなくなってしまったことで、常夏荘に連れてこられた、燿子に、立海の家庭教師・青井がかける言葉だが、いい大人の私にも十分に響く言葉だった。
それと同時に、子供にかける言葉は本当に大切で、安易に悪い言葉を使ってはい -
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「なでしこ物語」から18年後
28歳になった耀子は『おあんさん』となり、
そして1児の母になっていた。
先の「なでしこ物語」では、
自分は何もできない、
何をしてもグズだと、自信を持てないでいる
小さい女の子だった耀子が、
「どうして?ではなくどうしたら?」
と自分で考え、女性として、母として、
自立・自律した大人になっていく耀子の
成長していく姿が描かれていて、
とてもカッコ良くうつりました。
***ネタバレ***
しかし
龍治と結婚していたのにはビックリ!
どこがどうなってそうなったのだろう?
その辺りの事が次に出版された
「天の花 なでしこ物語」
で描かれているようなので、
引き続き -
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『なでし子物語』の続編。出版は『なでし子物語』『地の星』『天の花』の順だけど、時系列としては『なでし子物語』『天の花』『地の星』の順。『天の花』から読めば良かったかなぁ?とちょっとモヤモヤ。
『なでし子物語』では10歳だった耀子も今は28歳で一児の母。
高校卒業と同時に結婚、出産した耀子は社会人経験がないが、家庭の事情や色々思うところあってスーパーでパート勤めを始める。そこから起業するまでのお話。
これだけ書くと奥さんの奮闘記って感じだけど、耀子が嫁いだのは地域の名士の家。そんな家の奥さんがパートに出ていることで陰で没落したのかと噂を立てられ、起業しようとみんなに出資金を募れば、あんたんちみ -
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バレエは全く未知の世界。読み終えてバレエを実際に観てみたくなりました。
思うようにいかない事態にも黙々と対処するリストラ要員で出向中の青柳。一方、予期せぬ事態で同じく崖っぷちのスポーツトレーナー瀬川。
共に社が後援するカンパニー(バレエ団)の舞台を成功させるべく奮闘する。
舞台は無事成功するの?二人の進退も気になるしチラホラと見え隠れする恋の予感の方も気になる。
作中にでてきた「日本で受け入れられないなら海外で」という発想が良かった。自分次第で可能性は広げられる。
みんなで1つのものを作り上げる一体感が気持ちいい。そして舞台裏をちょっと覗いた気分です♪
面白かった!
『気持ちさえ決まれば