伊吹有喜のレビュー一覧
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お久し振りにこの作者さん、デビュー作に行ってみる。
仕事にも家庭にも疲れた哲司が、亡くなった母が最後に住んでいた港町の家を訪ねたところから始まる物語。
そこで偶然知り合った喜美子に母の遺品整理を手伝ってもらうことになったが、喜美子にも息子と夫を相次いで亡くしていた過去があり…といった展開。
悪くない話なのだが、何故だかあまり響かずで、実際にあったらいいよねえというか、もはやこういう話はお腹いっぱいって感じ?
病んでいる割には偉そうかつ頑なな哲司にも、自分を守るためとは言いながら自らをオバチャン呼ばわりする喜美子にも、あまり魅力を感じず。
哲司の奥さんもどうだかとは思うのだが、なんか男だけに都合の良い収束になったのは、ちょっと可哀想だったかなあ。
我が身を振り返れば、仕事で病むこともなく勤めを続けて来られ、配偶者とはまあまあの仲(多分)で、こういう感想書けるだけ恵まれているのだと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ料理をテーマにしたアンソロジー。
柚木麻子さん『エルゴと不倫鮨』…安定した著者の「反権力(=男性)」「女たちの結束」鉄板ネタ。安定した漫才を見ているよう。
伊吹有喜さん『夏も近づく』…一番飯が美味そうだった。柚木さんの後に「義姉から性的虐待を受ける少年」が登場するので、並びとして良い。
井上荒野さん『好好軒の犬』…文学的。悪い犬じゃないんだよ、かわいそうな犬なんだよ が無意識的な嫌味、斜めな見方。おもしろかった。
坂井希久子さん『色にいでにけり』…金平糖の着色や和菓子の着色。江戸時代の話。粋。
中村航さん『味のわからない男』…こういう芸能人、いそう。リアル。
深緑野分さん『福神漬』…表現がうまい。そして後の作品『どっしりふわふわ』にもなんとなくつながっていくのだが、主人公の「私」が男なのか女なのか判然としないまま終わる。それもうまいな、と。
柴田よしきさん『どっしりふわふわ』…前半部分、悩める50手前の女主人公に、感情移入。パンの描写もうまい。だがオチはいまいち、だと思う。同性愛者である必然性が、まったく無い。単純に同性愛者を「オチのネタ」として使うのは、驚きを起こすには技術としてアリ、だが、テクニカルすぎて興ざめ。
☆気になった表現
私が小説なんて書くようになったら、妻である部分は少なからず損なわれるはずだ。
時に飢えるほどの貧乏暮らしだったという少年時代を持つ光一郎は、今は自分が稼いだお金でたべたいものを食べられる、という現実と時々うまく折り合えなくなる。
『好好軒の犬』井上荒野
見事だった本棚はがらんどうとなり、お腹を空かせて恨めしそうに私を見た。
『福神漬』深緑野分 -
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会社で総務畑を歩んでいた青柳は、あるとき会社の社長令嬢が所属するバレエ団への出向を命じられる。
家を出て行った妻と娘、バレエ団で出会う団員や、世界的バレエダンサーの高野悠、そのトレーナーとして青柳と同じく出向してきた瀬川。
登場人物がとても多くて。
バレエ公演に客演する那由多の所属するグループ(バーバリアンJ…EXILEみたいな感じかな)の阿久津さんなんて、出てくるたびに誰?という感じだったぁ。
おおざっぱに言えば、バレエ公演のチケットを売るために頑張る話と、公演本番でのトラブルを乗り越える話。
主役を期待されていた高野の慢性な不調、妻と娘との関係、ヒロイン?美波との関係。
いろんな問題やトピックスが登場するが、何かきっちり解決するというより、とにかくやりきる!という感じ。
高野が言った、やりきって競技生活を終えられる人の方が少ない、という言葉は心に響いた。
バレエは見ないけど、フィギュアスケートは好きで見ているが、10代で大きな怪我をして期待されていたような活躍ができずに引退する選手もいる。ごく一部のスーパースターをのぞいては、満足してやりきって競技生活を終えられる人なんて、ほぼいないんだよね。
そして恋愛要素については、青柳と美波のことより、高野と瀬川の関係の方が、胸に響いたな。
最後の空港での再会シーンなんて、トキメキしかないよ。
宝塚月組でお芝居原作に採用された本ですが、青柳と美波をトップコンビに演じさせるのは冒険だったのでは、と思った。 -
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バラバラになった家族が再び集う時、それぞれの想いはさざめき揺れる。
16年前に子供2人を置いて出ていった妻が、利一の運転する深夜バスに乗車してきた。
子供たちも成人して、親も看取った利一は恋人と自分の人生を歩いて行く時期が来たと思っていた。
しかし、息子は突然帰ってくるし、娘も何やら始めた様子。
そして、元妻が現れて…
恋人との仲も危うくなる。
話の中の過去の後悔と未来への不安が、似ていないのに自分のことと重なり、涙腺が緩む。
家族の難しさと有りがたさとが交差して、寂しさも伴う。
そして、深夜バスに乗って遠くに行ってみたくなる。
2024.11.4