伊吹有喜のレビュー一覧
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シリーズ第三弾。
「ねこみち横丁」振興会の管理人をしながら脚本家を目指す宇藤君。コンクール応募の為の原稿を書き上げて、昔の同級生に読んでもらったりしている最中、BAR追分に居合わせた売れっ子劇作家にその原稿を読んでもらう事に・・・。
今回も美味しい料理が盛り沢山の連作四話でお送りする本書。全体を通して、宇藤君の進路といいますか、人生の岐路に立たされた彼の葛藤を軸にしつつ、BAR追分を訪れる人々の物語が絡んでくる展開です。
個人的に第三話「蜜柑の子」が好きでした。特にラストで柊君が長距離バスの窓からメロンパンの入った袋を宇藤君に投げるシーンが印象的で、この場面を芥川龍之介の『蜜柑』とリンクさ -
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ネタバレ口コミで次作を先に読むべきか、
出版順に読むべきかが議論されていたので悩んだが、
出版順に読んでみることにした。
そこに作者の意図があるのかも。
まず、18年も経っていて、
燿子は結婚し子どももいて(しかも相手は立海ではなく)、
スーパーで働いていることにしばらくついていけなかった。
燿子は高校生の頃かなり優秀で、海外で働きたいと思っているくらいだったが、
あっさり結婚したらしい。
そして自身が「おあんさん」に。
遠藤家は更に没落していて、以前に働いていた人々は今は皆いない。
まだ若いのに、何回も転回している人生だなあ。
1作目のなでしこ物語から時間をあけずに読んだので、
あまりにも違うスト -
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ネタバレ職を失ったら、どうなるのだろう。最近、始終思っている。働けない自分に価値はあるのだろうか。働けても働けなくなっても、自分に価値を見出してくれる人はいるのだろうか。それが家族だったのかもしれないのに、、。
「 もしかしたらお役に立つかもしれない。そのためのグッズです。いつ、どこで、どんな状況であろうと、自分のところに来た球は必ず拾う。そのためのもの。気にしないでください」
「 でも子供を産んだり、人を育てたりできる人は強い。どちらもできない人間は仕事とプライベートが行き詰まると、身の置き所が見つからない」
「 あらたまった話じゃないんで、イチさんの席がいいです。みんなよく隣に座ってしゃべっ -
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ネタバレ2020/6/11
伊吹さん好きやけどこのシリーズだけはストレスがたまる。
子供時代のはすごくよかったんよ。
でも2作目で大人になってて龍治と結婚したって?え?年の差!?え?リュウカ君は?ってなったやん。
そしてその間に何があったのかが本作。
ヨウヨが花開く前に摘み取ってしまったようで、龍治の印象はすごく悪かった。
大人が子供をだましたように思ってたけど龍治は龍治で好きになってしまったんだね。
わかるけどでもハッピーではない。
落ちたところで咲きましょうみたいなことなのか。
ヨウヨは咲いているのか、これは。
リュウカ君も龍治もこれでいいのか。
この後どうなるんやったけな?
自分の記憶のなさが嫌 -
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今の世の中の空気感で、自分の心も疲れている実感があり、少しほっこり楽な気持ちになれそうな本を読みたくなり、手に取った。
心に傷を持った、39歳の哲司とキンコ(喜美子)が、夏のひとときに出会い惹かれていく。
正直、第一印象は、哲司は少し偉そうで、キンコは元気と下品を取り違えてるオバチャンみたいで、微妙に感じたのだけど、
一見、全く交わることがなさそうな二人が、いつの間にか、距離が近づいていくと、交わす言葉に、優しさや、哀しみを隠した明るさや、温度みたいなものが感じられるようになる。すると、不思議。二人ともが魅力的に思えてきて。こう言う二人が、これからの人生を支えあっていけたらいいな、と思う気持 -
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『なでし子物語』『地の星』に続く三作目。どうやらこの続きも『常夏の光』として連載中のようです。
天竜川の上流、かつて林業で財を成した財閥・遠藤家の大邸宅・常夏荘を舞台にした物語。
どこかバーネットの作品『小公子』『小公女』『秘密の花園』等を思い出させるなかなか良い雰囲気で始まった『なでし子物語』。その20年後、没落した遠藤家を支える若い女主人の奮闘を描く『地の星』。でもねぇ、その方法が余りに小ぢんまりとした手作りお菓子製造であり、その過程もご都合主義満載のお仕事小説で少々がっくり。三作目にはなかなか手が出なかったのです。
で、この三作目『天の花』。
時系列的には『なでし子物語』に続く10年間 -
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ネタバレ*かつて新宿追分と呼ばれた街の「ねこみち横丁」の奥に、その店はある。BAR追分。昼は「バール追分」でコーヒーやカレーなどの定食を、夜は「バー追分」で本格的なカクテルや、ハンバーグサンドなど魅惑的なおつまみを供する。人生の分岐点で、人々が立ち止まる場所。昼は笑顔かかわいらしい女店主が、夜は白髪のバーテンダーがもてなす新店、二つの名前と顔でいよいよオープン! *
優しい空気感が漂う作品です。
それぞれ少し訳アリな人々が、触れ合いながらゆるゆると前に進んでいく、と言った感じでしょうか。
「ボンボンショコラの唄」は少しだけひねってあるのが楽しい。
タッチも軽く、さらっと読める短編集です。