伊吹有喜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
“美味しいおやつが食べたくなる”ようなものではなく、おやつを通して気持ちや人生の揺らぎを描いたアンソロジーだった。
作中のおやつは、ただ甘いものではなく、それぞれの登場人物が踏ん張るための“小さな支え”や“カンフル剤”として描かれていた。
自分らしく生きる道を見つけるきっかけになったり、本と一緒に孤独や空腹を埋める青春の思い出になったり、懐かしい味が安心へ繋がったり。
特に4話目の子育ての話は、自分ではない誰かの人生に関わり続けることの大変さが強く伝わってきた。
迷ったり悩んだりしながらも、その子自身を信じていくしかない。
だからこそ、ほんの少し息をつける“おやつの時間”が必要なんだろうなと思った。
複雑な感情を呼び起こすものだったとしても、それで踏ん張れるなら、その人にとって大切な支えなんだと思う。
5話目では、選択することの難しさが描かれていたけれど、周りの雑音や不安があっても、自分が本当にやりたいことを素直に選びたいし、きっと選べるんだと思えた。
海外児童文学のエピソードと一緒に語られるおやつも素敵で、ただ「美味しそう」だけでは終わらない余韻があった。
まっすぐな道だけが正解じゃなくて、遠回りでも、自分の目指す場所へ向かおうとしているなら、それはちゃんと人生と向き合っていることなんだと思わせてくれる作品たち。
帯にあったようにおやつはまさに“今日を乗り切る力をくれる”ものだった。 -
Posted by ブクログ
なんだかんだ言っても不倫なんてろくな
もんじゃない、何で不倫をするんだろうと
思っていたんですが、スリルや刺激を求める
ためなんて言われたら勝手にしてくれと
作品の趣旨と違う感想を持った島本理生さんの
「楽園の代わりのカッサータ」。
受けた恩というか優しさって相手が
思っている以上に大きなものだし
その優しさを自然とできる彼・・・素敵だ
と思った織守きょうやさんの
「ファースト・アンド・オンリー」。
両親を亡くした悲しみから救い出してくれた
瀬戸内の島でいっしょに暮らす叔父との
素敵な時間とジャムに心ひかれた友井羊さんの
「春とマーマレード」。アイドルって見た目の
華やかさとは裏腹に大変な職業だと思った
畑野智美さんの「アンパッサン」。
子供ってなんだかんだ言ってもその子の
ペースで大人になっていくそして親は
成長した子供のことも認識するけどまだまだ
心配が尽きないって感じた伝わった
名取佐和子さんの「ドーナツ息子」。
有りがちなが言葉だけど、「何かをするのに
早いも遅いもない。ただ、始めるだけさ」
がほんとにそうだよねと心に刺さった
伊吹有喜さんの「ストロベリーの歌」。
どの話も面白かったけど、個人的には
「ファースト・アンド・オンリー」と
「ドーナツ息子」が面白かったかな。 -
Posted by ブクログ
キャッチーなタイトルに惹かれて読んでみた。アンソロジーは読んだことのない作家さんに出会えるよい機会なので、ときどき読むようにしている。
よかった順に、「夏も近づく」、「味のわからない男」、「好好軒の犬」、「どっしりふわふわ」、「エルゴと不倫鮨」。
「夏も近づく」に出てくる料理はどれもシンプルで美味そう。塩むすびとか、筍ご飯とか。可哀想な生い立ちの葉月くんが、叔父さんの料理で癒されていく姿が清冽でよい。
「どっしりふわふわ」は年の差20位のパン職人カップルのお話。ラスト2頁で種明かしされるミスリードについては、これがあるのとないのとでは、どれだけ読後感が違ってくるのか、オチを知ってしまった後では何ともよく分からないが、ない方が良かった気がする。
-
Posted by ブクログ
みんな何かを抱えて生きている。
どうしようもないけれど…悩んだりしながらも生活していくわけで、それでもいつの間にか状況は変化していくのだと。
そのときのご褒美は、きっといつまでも心に残るものなのかもしれない。
どの作品も作家の特徴がよく出ている。
「楽園の代わりのカッサータ」島本理生〜妻子ある相手と伊豆の山奥のホテルで。
「ファースト・アンド・オンリー」織守きょうや〜忘れられない同級生と屋上前の踊り場でお弁当。
「春とマーマレード」友井羊〜果樹が生い茂る瀬戸内海の島で叔父と。
「アンパッサン」畑野智美〜卒業するメンバーと取り組む最後の仕事で。
「ドーナツ息子」名取佐和子〜幼い日の息子との思い出が詰まったドーナツショップで。
「ストロベリーの歌」伊吹有喜〜憧れの女性たちとのイチゴ尽くしのピクニックで。
なかでも「ファースト・アンド・オンリー」の言葉少ないけど思いやりのある関くんが良かった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルで買ってしまった。
北信の湯田中の古本屋併設のフレンチのお店「やまブイブイ」。読書好きの女将さんの、おそらく読んだ本だろう。
折しも、宮沢賢治の『注文の多い料理店』という短編集を読んだところだったので、目について、思わず手に取ってしまった。きれいな古本。200円はお買い得♪
さて、誰から、どの作品から読むか?
折しも、短編集を編むなら、作品の掲載順はどうあるべきかを読み友たちと語る機会があったので、果たして順番は大切か、それとも……、という思いを確かめる意味でも、この短編集は、今、読むべきだとも思ったのだった。
結果、最初に読んだのは柚木麻子から。「エルゴと不倫鮨」
なんといっても『BUTTER』の著者、今、油の、いや、脂はこっちの字か? の乗った作者だ。そのヒット作の影響を色濃く残したような、カジマナを彷彿させる豪快な女性が食の蘊蓄を語り、男どもを翻弄していく。痛快な短篇。
次は、井上荒野。「好好軒の犬」
あまり好きな作家ではないが、ネームバリューはこの中ではある。
作品は、冷めた夫婦間の、なんともいえない機微が描かれていて面白味があった。が、これって、タイトルの「注文の多い……」ではない。「食」の話は出てくるが。
伊吹有喜の「夏も近づく」は、好きなテイストだ。
田舎暮らしの食と生活が丁寧に描かれている。が、これも「注文の多い~」というわけではない。
柴田よしきの「どっしりふわふわ」も悪くはなかったが、パンづくりは、どことなくしあわせと直結しがちな雰囲気が、安易といえば安易だったかな。
いずれにせよ、この短篇集タイトル勝ち。
「料理小説集」や「食のアンソロジー」とか、他のタイトルを付けてあったのでは、手に取らなかったろう。 宮沢賢治におんぶにだっこ? 賢治にエルゴ抱っこ紐、って感じの短編集だった(笑)