伊吹有喜のレビュー一覧
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〈ぼくはときどきユゲになるのよ。ここにいるんだけど、いない。〉
まるで、世間から取り残された様な撫子の咲く常夏荘。
そこに住む人々の佇まいにいつしか引き込まれる。
これは、2013年に単行本で読んだ時の感想。
『常夏荘物語』を読み終え
シリーズ一作目の内容をすっかり忘れてしまっていたので再読。
立海と耀子の出会い。
おあんさんと呼ばれると照子の過去。
自立し、かおを上げ
自律し、うつくしく生きる(生きた)人たち。
ここに全て書かれていた。
立海の可愛らしさ。
『常夏荘物語』では立派な男性になられて。
シリーズを順番に読まなくても
十分に楽しめる作品。
次は『天の花』『地の星』を読もう -
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アンソロジーは「名前も作品も初めて知った」作家のほうが断然面白く感じる。この本では坂井希久子『色にいでにけり』がそれで、普段読まない時代ものだがとても面白かった。主人公の境遇と芯に持つ矜持、江戸の色名と和菓子の描写が実に生き生き、しみじみと描かれていて、このシリーズが読みたくなった。
他は伊吹有喜『夏も近づく』、深緑野分『福神漬』も滋味があってよかった。井上荒野『好好軒の犬』はラストが上手い。柚木麻子『エルゴと不倫鮨』はトップバッターとして勢いがあり好印象。柴田よしき『どっしりふわふわ』はラストが安直な気がしたのと、中村航『味のわからない男』は好みが合わなかった。 -
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神保町にできたシェア型書店の「本丸書店」に行ってきました。
その際に、今村翔吾さんの作品だけではなく、
棚主さんから購入したいと思い、
伊吹さんの本作を見つけて購入しました。
転職して仕事が変わって、
知らず知らずに余裕をなくしていたのか、
全く読書ができない時間がありました。
そんな時に本作を読みました。
不登校になった高校2年の美緒は、
両親たちから逃げるように盛岡の祖父の元へ向かう。
羊毛を手仕事で染め、紡いでいる工房。
美緒は自分のホームスパンを紡ぐ。
最初はよわっちくて心配だった美緒が、
祖父や工房の人たちと接することで、
成長していく美緒に涙でした。
祖父が無骨なんだけど -
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何気に手に取った本だったが、とても面白かった。
失ってみて、大丈夫がわかることは本当にある。
妻を突然亡くした妻とその娘の再生の話。亡き妻の乙美さんのレシピが深い。多くの恵まれなかった女性達や亡くなった家族にも素晴らしいレシピ、処方箋を残してくれた。愛情に溢れた素晴らしい女性だったんだろうな。
四十九日の宴会も良かった。熱田の姉があまりにひどい物言いで腹ただしかったかったが、ずっと頭が上がらず言い返せなかった熱田もついに言い返せた。これも大きな変化。怒って帰ってしまったと思えた姉だが、最後の展開もほろっとした。これもやはり乙美さん人徳だろう。
他にも、いろいろな展開があって面白かった。他 -
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すっかり
映画を見ているようなそんな
映像が目に浮かぶような感覚で読んでいました。
読み終わった後も余韻にどっぷり浸かったままで、とても素敵な本に感動しています。
時は
昭和12年から20年
戦前から戦後の激動の時代のお話です。世の中がざわついていて、
不安がある中で
雑誌「乙女の友」に憧れていた右も左もわからないハツを
温かく、そしてきびしく
作家としても主筆としても育て
た有賀主筆や、仲間達の温かいやりとりが本当に胸が何度もキュンとしたり、じんわりしたり…力強さを感じたり…
身近な人達が
次々に戦争に出征していく中
あとを引き継ぎ、みんなが帰ってくる場所を守っていきたいと
奮闘するハツの姿 -
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以前さてさてさんの本棚で拝見して、面白そうだなと思ったのだが、これもまた酔っ払いの私がいつの間にか勝手に買っていた( ̄▽ ̄)
老人施設で暮らす佐倉ハツ。
ある日小さな箱が手渡される。
その箱は遠い昔刊行された雑誌の付録だった。
ハツは老人施設でまどろんでいる。
次第に夢の中へ引き寄せられ、過去を思い出す。
『乙女の友』という雑誌は、少女時代のハツの憧れであった。中でも有賀憲一郎の詩と、長谷川純司のイラストに魅力され、切り抜きをノートに貼って大切にしていた。
ひょんなことから、その憧れの雑誌社で、しかも有賀主筆の隣で働くことになるハツ。
戦前から戦後までの激動の時代を、雑誌社の仕事を通