平田オリザのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
典型的な女性が書いた本。一人称で、主人公は心の中で色々なことを取り留めもなく考えており、それが読者に筒抜けパターン。こういう語り口が一番苦手です。だらだらと考えていることや行動がいちいち書かれているので読みにくいところもあり、イライラしました。途中までは。
主人公が考えている不必要とも言える雑音は、後半になるにつれて徐々に無くなっていきます。最後は完全に演劇のことだけになる。その叙述によって、主人公が演劇に夢中になり、真剣になっていくという心情の変化を見事に表しています。それを狙っているのかは分かりませんが、いずれにしても素晴らしい作品です。とても面白い本を読んでしまったので、次の本を選ぶの -
Posted by ブクログ
著者の教育論は他にも読んだことがあるがそれらには一貫したものがある。現状におもねることなく、しかも実現可能であることを重視する考え方であるが
現代の教育論が個性重視といいながら、結果的に環境要因を無視した不平等な現実を容認するものだという考え方は概ね首肯できるものだ。自己責任論が平等の皮を被った階級主義であるのと同様に子供の個性を定量化して評価の対象にする教育の方法には根本的な誤りがある。
この中で何度か出てくるディスカッションドラマを作らせる演劇的手法は多様化する現代のあり方を他者の視点を通して考えるために設計されている。他人の痛みを知るリーダーを育成するためには使える方法だと考えた。 -
Posted by ブクログ
新井紀子さんの本を読んだ時に感じた違和感のようなものの正体がわかった気がする。いくら論理的な思考や表現力などを身に付けたとしても、相手に伝わらなければ意味がないし、相手の気持ちを理解しようとすることを忘れてしまっていたら意味がない。
そもそも、人はよく誤読をする生き物なのだというのが大前提。それでも、先行きが不透明な未来を生きていくために、きっと大事なのは、さまざまな文化的背景が違う人たちと話しをし、相手の言っていることを理解しようとすること、そして、自分の言いたいことも伝えようとすること。そして、どちらかがいいとかどちらかを選ぶののではなく、それぞれの主張をすり合わせて新しい結論を見出すこと -
Posted by ブクログ
まことに小さな国が、衰退期をむかえようとしている。
――とは『坂の上の雲』の冒頭を引いての贋作だそうだけど、この本はこのフレーズで始まる。これから衰退していくしかない日本の、この先のいき方を示唆している。
「降りていく生き方」という言葉を聞いたのはほぼ10年前のこと。日本のあり方というよりは、身の丈に合った無理のない生き方をしていけばいいんだというような話だったという記憶があるんだけど、この本はそれを日本という国のあり方として考えようというもの。兵庫県の豊岡市とか四国学院大学とかオリザさんがかかわってきた好事例が紹介される。いずれも理想的で希望がもてるような感じ。ワクワクする未来がやってきそう -
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Posted by ブクログ
筆者自身が述べているけれど、こういうことを書いた時点で怒り出す人がいる。
でも人口減少社会という、止めようのない、そして文字通り未曾有の事態を前にして、これまでと同様の方法論が通用すると考える方が明らかに理性的でないと思う。
だから私は、これからの日本が「下り坂」であることを認めようと思うし(厭だけれど)、下り坂に逆らって上ることができない以上(それができるのがタケコプター。出せるのはドラえもんだけ)、現実的にはその下り坂をいかに「負けしろ」を少なくして下るかという命題を立てざるを得ないと思う。
タケコプターを作りたい人がいてもいいし、そんな天才があらわれてくれることを切に、心の底から願うけ