あらすじ
これから大切な能力って何?
いまの子どもたちの文章読解能力は
本当に「危機的」?
未来の大学入試とは? 英語教育は必要?
そもそも日本人の大多数が、
ネイティブと同じ発音をする必要がどこにあるの?
・・・
祖父母から孫へ、親から子へ――。
世代を超えて伝えたい、教育の「本質」を探る。
・・・
教育とは、わからない未来を予想して、
あるいは来るべき未来社会を予想して、
「子どもたちに生きるための能力を授ける」という、
いささか無謀な行為である。
それでも20世紀前半くらいまでは、その予想は、
ある程度可能だったかもしれない。
たとえば自分の息子が、自分のあとを継いで漁師になることが
確実にわかっていれば、その子には、船の動かし方、釣り具や網の整備の仕方、
天候の予測のための知識、万が一の時の泳ぎ方といったことを教えておけばよかった。
しかし、いま私たちが直面し知ているのは、おおよそ以下のような問題である。
■まず、その子が、どんな職業に就くかまったく予想できない。
■たとえ親が子どもを漁師にしたいと考えても、そもそも22世紀に漁師という仕事が
あるかどうかがわからない。
■さらに、たとえ漁師という仕事が生き残ったとしても、そこで必要とされる
能力について予想がつかない。
■それは、漁業ロボットを操作する能力かもしれない。漁から販売までを一元化し、
六次産業化していくコーディネート力かもしれない。あるいは、養殖の技術や
遺伝子組み換えについての研究こそが、漁師の本分となるかもしれない。
■私が暮らす兵庫県豊岡市の隣町、カニ漁で有名な香美町では、多くのインドネシア人が
漁業実習生として漁に携わっている。もしかすると、これからの漁師に必要な能力は
インドネシア語の習得や、イスラムの習慣への習熟かもしれない。
・・・
本書の中で、私は「教育」について考えていきたいと思う。
2020年の大学入試改革など、教育の大きな転換期を前に、私のこれまでの考えを、
ひとつにまとめて記しておくのも、本書の狙いの一つである。
・・・
巻末に高校・大学の授業や、新入社員研修などにも活用可能な、付録「22世紀ための問題集」つき!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
分からない未来に対し、親として子供に何をすべきか。
驚く未来に対し、考えさせ、感じさせる。
大切なことはただそれだけ。
おそらく、それしか無い。
多くの親に読んでほしい良書。
Posted by ブクログ
中高生向けの授業が増えそうなので、参考になりそうな事例を学ぼうと購読。以前からパフォーミングアートで地域活性や人材育成などに取り組んでいる平田さん。今回は子供たち向けに、これから何をどのように学ぶと良いかについての論を展開している。といっても、子供向けというよりは、子供に向き合う大人や、新人を採用する組織に向けたものでもあり、とても参考になった。世界最高クラスの知識はネット学習でいくらでも学べる時代であり、そういった形式知の多寡よりも、「クルー型」(見知らぬ仲間、多様な仲間と、いかに物事を成し遂げていくのか)を見るようになるだろうと。そうすると、このような機会を小さな頃から持つことが大事なのだが、それは首都圏が圧倒的に有利で、同質的・閉鎖的な地方は不利になることが多い。こういうことも格差の端緒になり得るということで、やはり教育は大事。
Posted by ブクログ
21世紀に求められる力・学力観をもとに、入試問題作成の過程やその内容を例に挙げながら出題意図について述べられた本。「21世紀型スキル」である対話力をはかろうとしている考えられた入試方式・内容で、その裏側と思いが分かりやすくまとめられていた。アクティブラーニング化する高等/中等教育機関での授業に応じた試験内容でかなり勉強になるポイントがたくさんあった。
Posted by ブクログ
演劇家平田氏の教育改革への提言 兵庫県豊岡市で行われている演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の実践を紹介しながら、職員採用や大学入試改革などこれからの教育について問題提議をしている。
Posted by ブクログ
著者の教育論は他にも読んだことがあるがそれらには一貫したものがある。現状におもねることなく、しかも実現可能であることを重視する考え方であるが
現代の教育論が個性重視といいながら、結果的に環境要因を無視した不平等な現実を容認するものだという考え方は概ね首肯できるものだ。自己責任論が平等の皮を被った階級主義であるのと同様に子供の個性を定量化して評価の対象にする教育の方法には根本的な誤りがある。
この中で何度か出てくるディスカッションドラマを作らせる演劇的手法は多様化する現代のあり方を他者の視点を通して考えるために設計されている。他人の痛みを知るリーダーを育成するためには使える方法だと考えた。
演劇的な手法を実現するためには指導者の誘導が大きく影響する。演出家ならでは考え方であるとも考えられる。ただ学校の教員が試してみる価値はありそうだ。
Posted by ブクログ
平田オリザさんについては、演劇関係者という認識しかなかったが、大学で教鞭を取られていることもあって、かなり詳しい。
データに基づいてというよりは、ご自分の信念と経験に基づいて、論を展開されているのだが、とても分かりやすい。
教育の専門家ではないが、かなり調べたり実践されたりしている中で得られた知見は、私が普段考えているような見方とは違って、いろいろな見方で大学入試について、子どもたちのことについて考える必要があると感じた。
今の大学入試制度改革のどこが問題か、どのようなものを目指すべきなのか、納得させられることも多かった。
Posted by ブクログ
新井紀子さんの本を読んだ時に感じた違和感のようなものの正体がわかった気がする。いくら論理的な思考や表現力などを身に付けたとしても、相手に伝わらなければ意味がないし、相手の気持ちを理解しようとすることを忘れてしまっていたら意味がない。
そもそも、人はよく誤読をする生き物なのだというのが大前提。それでも、先行きが不透明な未来を生きていくために、きっと大事なのは、さまざまな文化的背景が違う人たちと話しをし、相手の言っていることを理解しようとすること、そして、自分の言いたいことも伝えようとすること。そして、どちらかがいいとかどちらかを選ぶののではなく、それぞれの主張をすり合わせて新しい結論を見出すことができるようになること。
そんな力を身に付けるのに、有効なのが演劇教育。演劇教育を通して、身体的文化資本を一人一人に身につけさせられるようにすること。
面白い取り組みをしている大学の大学入試が本当に面白いし、中学生高校生にも取り入れられる視点がたくさんあったように思う。また、平田さんが学長に就任予定の専門職大学もある兵庫県豊岡市の取り組みが本当にユニークでとても興味深い。東京に住んでいるくせに、こういう地方・地域が元気だとワクワクするし、とてもとても興味がある!
Posted by ブクログ
学校教育は今後どうなっていくのだろうか。
自分は何を目指して授業を進めていけばよいのか。
このままではあんま良くないような気がしつつも、
これまでと大差ない授業に終始してしまう。。。
豊岡市おもしろそうやな。
Posted by ブクログ
オンライン化が進むことで、かえって「本物」に触れる体験という文化資本格差が都市と地方で拡大する、という指摘は面白かった。豊岡市で推し進めている演劇による町起こしに関しては賛否両論あるようだが、その理念については共感できるところがあった。「教科書の読めない子どもたち」への反論など、著者なりにこれからの子どもたちに必要な力について論を展開されていた。
Posted by ブクログ
大学入試改革に伴う今後の教育のあり方についての連載をまとめたもの。
ところが刊行前に改革自体が暗礁に乗り上げ、さらに刊行後にCOVID19による混乱。
それでも本書で述べられていることは未来を向いている。
Posted by ブクログ
表紙は、正直、苦笑。
内容は、論じる対象の方が、どんどん腰砕けになってしまったから。
AI新井本に関する部分の的確さは必読。共通テストへの論も。
その他の部分は、「分かり合えない」や「下り坂」とかなり重なってくる。それはけっして悪いことではないが。
Posted by ブクログ
<目次>
序章 未来の漁師に必要な能力は何か?
第1章 未来の大学入試(一)
第2章 未来の大学入試(二)
第3章 大学入試改革が地域間格差を助長する
第4章 共通テストは何が問題だったのか?
第5章 子どもたちの文章読解能力は本当に「危機的」なのか?
第6章 非認知スキル
第7章 豊岡市の挑戦
終章 本当にわからない
附録 22世紀のための問題集
<内容>
劇作家、演出家で大学の教授をしている平田さんの本。豊岡市や奈義町での実践や経験から、演劇型の入試、入社(公務員)試験を実施してきているので、その言葉には深い裏付けがある。第5章は、新井紀子さんの『AI~』への反論なのだが、読んでみての感想は半々。新井さんの論は、学校現場にいて実感していることだったので、腑に落ちた。平田さんの論も筋はある。また平田さんたちの「練習問題」は採点をどうするのか?発想は面白く、効果も覿面だと思う。しっかりとしたルーブリックがあればいいのかな?また、入試の「公平性」と「公正性」の指摘は納得した。多様な人材を採りたいのなら、「公平性」は邪魔になる。公正的にすればするほど、金太郎飴のような人材しか集まらないからだ。これからの世界に必要なものは「多様性」なので、そこは考えなければならないのではないか?
Posted by ブクログ
ざっくり理解&同意したこと:
知識に偏向した旧来の受験的能力は、情報産業の発展とともに今後ますます社会での価値を減らしていく。一方、地頭(身体的文化資産、非認知スキル)の重要性が高まっていくので、教育はそこを重視するべきだし、そうなりつつある。
気になった部分:
・根拠が曖昧で我田引水的主張が見られる。(演劇教育の提供に関する部分)
・政権への批判が多い。「22世紀を見る君たち」が読んだら思想が偏るかも。こんな記載も→「安倍首相や麻生太郎財務大臣のように、資産はあるが身体的文化資本の著しく欠如した人たち」
これは個人的意見だが、もし自分が学生だったら、やりたいなら目一杯やれる環境を与えてくれる、とか、こういうものがあるよ、と紹介してくれるくらいが良い。親や学校からあれこれ押し付けられたら反感を覚えるかもしれない。劇はあまりやりたくないし、声が小さい人の役なんて用意されて、それをやらされたくない笑
Posted by ブクログ
大学入試改革の本質、問題点や将来像について
知識や技能に加え
思考力、判断力、表現力を問う問題例をあげている
アクティブラーニングの重要性、潜在的学習能力つまり伸びしろ力が問われる
そして著者は専門である演劇について教育が諸外国に比べて低いことをのべ
非認知能力のひとつとして演劇や芸術教育が今後の教育に役立つともいう
Posted by ブクログ
タイトルから自分の子供達に読まれせる本と思っていたが、全然違った。保護者や教育に関わる人が読むべき本。
個人的にあまり教育に関心が無いのか、かなりの部分を読み飛ばしてしまった。
今後の日本の先行きを考えるために最も教育について真剣に考えなければいけないと認識できただけでも良しとしたい。
Posted by ブクログ
これからの受験問題、これからの教育を考える上では面白いが、どうなのかなあ、個人的にはあまりアクティブラーニング的なものに、受験などが、かわるのには、やや懐疑的です。