平田オリザのレビュー一覧

  • 但馬日記 演劇は町を変えたか

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    ・便利になれば幸せになるとは限らない。
    いや、たしかに、便利さが人を幸せにした時代はあった。かつて自動炊飯器が日本の家庭に普及しはじめた頃、日本の主婦の睡眠時間が一時間長くなった。一時間長く眠れることは、誰にとっても幸せだ。
    しかし平成の30年、地方は便利さを故に疲弊してきたのではあるまいか。便利さ競争だけでは大都会に勝てるわけがないのだから、私は科学の進歩を否定するほど石頭ではないが、しかし、何のために便利にするのか、何のために効率を高めるのかという理念がなければ、科学はただ暴走を続けるだけになる。
    豊岡演劇祭の理念は単純だ。アートのために便利にするのだ。トヨタの標語は「Mobillity

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    2025年11月17日
  • わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

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    わかりあうことを前提とするのではなく、わかりあえないことを前提としてコミュニケーションを繰り広げていくという内容の本。
    しかし、具体的な例は演劇を利用したものばかりな点と著者自身も他者への決めつけが多そうな点がやや不満だった。

    哲学で重複する内容だと「大きな物語から小さな物語へ」「バザールとクラブ」などが挙げられるであろう。

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    2025年05月29日
  • 22世紀を見る君たちへ これからを生きるための「練習問題」

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    全体を通して1番グッときたのは以下の部分。
    『特に私が調してきたのは、大学などのリーダーシップ教育においては、「ロジカルシンキング」や「クリティカルシンキング」も大事だが、もう一点、社会的弱者のコンテクストを理解する能力も重要なのではないかという点だ。論理的に喋る・書く能力はもちろん必要だ。しかし、それと同じくらい、論理的に喋れない人たちの言葉に耳を傾ける能力も必要なのではないか。』

    もちろん、人道的、倫理的観点でもなるほどなと考えさせられた。
    ただ、それ以上に、ビジネスにおいても非常に示唆深い指摘だと言える。
    相手が社会的弱者でなく、取引先や上司だとしても、彼らがいつも本人の言いたいことを

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    2025年05月14日
  • 名著入門 日本近代文学50選

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    『小説神髄』坪内逍遥
     一八八四年、二十代半ばにしてシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』の翻訳を出版した坪内逍遥は、翌八十五年、評論『小説神髄』を発表する。
      小説の主脳は人情なり。世態風俗これに次ぐ。(中略)人情とは人間の情慾にて、所謂百八煩悩是れなり。
     と坪内は宣言した。これから書かれるべき小説は、勧善懲悪ではなく、人間の心理(これを坪内は人情と呼ぶ)を直接描写しなければならない。

    『山椒魚』井伏鱒二
     井伏作品の中で私が最も好きなものの一つは『厄除け詩集』と題された漢詩の超訳だ。有名なものは于武陵の「勧酒」の訳。
      コノサカヅキヲ受ケテクレ
      ドウゾナミナミツガシテオクレ

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    2025年02月28日
  • 撤退論

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    衰退する日本をいかに撤退させるかについて、多様な論者たちが論じる一冊。
    サンクコスト、責任追及、同調圧力・・・撤退判断を妨げる要因はいくらでもあるが、どこで撤退の決断に踏み切るのか。
    最後の論者である平川氏の「撤退とは、行くか戻るかの二者択一ではなく、パラダイムシフトなのだ」というメッセージが一番ささった。

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    2025年02月10日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

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    コロナ下で思う事はそれぞれの人に沢山あったなと思い出させる本。
    エッセンシャルワーカーありがとうとメディアで流しつつ、近づくなと差別する。大事といいながら低収入を改善しようとしない。ありがとうと言っておけばこき使っていいと思ってるよね。これからは少子化でエッセンシャルワーカーがますます減ってくる。その際にどうするのかな。

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    2025年01月11日
  • わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

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    職場でのコミュニケーションについていろいろ思うことがあり、少しでも自分の視野を広げることができればと思い購入。

    本作はコミュニケーションについてのハウツー本ではない。そもそも「コミュニケーションとは?」、「本当に現代人はコミュニケーション能力がないのか?」などなどを掘り下げていく内容となっている。

    印象的だったのが、作者さんは劇作家ということもあり、コミュニケーションを演劇の側面で考えているのが面白かった。

    コミュニケーション=以心伝心がとれて分かりやすい、みたいなイメージがあるけれど、作者さんに言わせれば「話さない」、すらもコミュニケーション(というか表現、といった方がいいかもしれない

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    2024年09月02日
  • わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

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    ・ダブルバインド(二重拘束)
    二つの矛盾したコマンドが強制されている状態
    ・教育の役割
    社会の要請に応じて、最低限度の生きるためのスキルを子どもたちに身につけさせて世間に送り出すこと
    ・喋らない、いないも表現の一つ
    ・日本語の特性
    強調したいものは語頭にもってくる
    強弱アクセントによって感情を表現する×
    ・対話の基礎体力をつける
    2人でとことん話し合い結論を出すことが重要なプロセス、意見が変わることは恥ずかしいことではない
    ・子供と接する時の優れたコミュニケーション
    子供のコンテクストを受け止めて、さらに受け止めているよということをシグナルとしてら返してあげることが重要
    ・エンパシーとは
    わか

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    2024年01月21日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

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    2020年、COVID-19が席巻した世界では次々と社会の歪みが露呈した。そのコロナ期とポストコロナ期に、次世代の若者たちがどう生きるべきかを内田樹をはじめとした様々な年代の言論人たちが語る。

    内田さんが声をかけて集まった様々な分野の今をときめく著名人たちがコロナとコロナ後の世界をテーマに執筆しました。内田さんのセレクトだけあってみんなけっこう尖っていて(偏っていて)どれも読み応えのある内容でした。中学生向きということで平易な文章で一編が短いのも読みやすくていいと思います。そしてみんな分野が違うので、コロナ期というものを違う角度から見ているのも面白い。また、分野が違っても結局、多くの著者が今

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    2023年08月11日
  • 撤退論

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    少子高齢化社会でも経済成長を続けることは、お米が足りないのにおにぎりをもっと作れって言ってるようなものなのかな。無理よね。
    まず、無理を認めること。
    それから、資本主義社会の外の世界があることを知り、体験し、その世界の間でバランスをとっていくことが鍵だと思った。


    ・大切なことを持続させるために、我々はこれまでの手法からの撤退を学ぶべきなのである。
    ・社会の内と外、此岸と彼岸、文明と自然、常識と非常識などなど、二つの原理を行ったり来たりすることで、問題を「なんとなく」暫定的に解決する。これが地に足を着けることである。
    ・現代における下野とは、他社のニーズを全く気にせず、とにかく徹底的に主観を

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    2023年06月17日
  • 強く生きるノート 考え方しだいで世界は変わる

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    本書のタイトルの通り、ビジネスマンとしての考え方の基礎を各業界の先人から重要ポイントを抜き出して教えてもらう形の本。
    本田直之氏の著作は本作以前のものや本作以降のものもほぼ全部読んでいたため真新しい情報は特になし。
    「子供は時間割があるからあれだけ多くのことを密度高く行動できる。大人も自分の時間割を作れば効率的に動ける。」という主張は参考になる。
    一見、自分の行動を決めて行動することは窮屈なように感じるが、自分で選び、自分で決めたことであれば嫌なことなどないはずだ。
    それに当然生活の上での優先順位は変わっていくので、時間割は適宜ブラッシュアップしていく必要がある。
    なので、自分で決めた予定が窮

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    2023年05月02日
  • 撤退論

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    撤退論。例によって内田樹から寄稿依頼された面々が思い思いに「撤退論」を論ずる。勢い、流れで私も持論を述べたくなるが、テーマ幅広し。一人一人に割かれるページ数が少なく浅い。興味深いのだが〝好奇心のインデックス“程度の本だ。

    切り口がそれぞれ。女性疫学者の三砂ちづるが、撤退の英訳withdrawalを、これは膣外射精という意味にもなるが、人口問題に絡めた性行為の撤退として私感を述べていた。少子化問題に対し、避妊を教育する自らへの疑問、近代化され、そもそも性行為の数が減っている事への警鐘。映画やドラマは見るもので、情報化・計画社会により、日常の起伏が減るように、恋愛や性行為がバーチャルのファンタジ

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    2023年04月02日
  • 名著入門 日本近代文学50選

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    近代文学の概観に触れた気になった!
    小説なぞすでにある日本語を使って作者の物語を書いているように思いがちだけど、何が文学であるべきかということについて大きな流れがあるんだ。
    あとから振り返って批評すると「評価が固まった」とか、日本語の使われ方の歴史の中の位置付けとかもあるんだなー
    元が新聞のコラムなので一つの本に対する文章量はかなり少ない。

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    2023年02月28日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

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    中高生を想定読者とした、現在30代〜70代の20名からのメッセージ。今回のパンデミックであらわになった日本社会の欠陥について、こんなに不出来な社会を後続世代に遺すことになってしまった責任を感じ、補正しきれなかった悔しさがにじむ。

    世代が変わると考え方や行動も変わる。是非、現状を反面教師として欲しいです。

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    2023年01月05日
  • 撤退論

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    内田師範のお話以外あまり面白くありませんでした。面白くないのは、たぶん、書いてる人たちの表現力が頭良すぎて何がいいたいのかケムに巻かれたような気持ちになるからかもしれません。

    わかりやすすぎるのも、あれだし難解すぎるのもちょっと。

    正直に申し訳ございません。

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    2023年05月25日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

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    斎藤幸平さんの名前があったので読んでみた。
    一番心に残ったのは平川克美さんの文章だろうか。会社勤めするようになって当たり前のように見聞きしてきた経済合理性。原価を絞り、無駄を排除して、より低価格の製品を提供する。お客様の要望に応え、お客様が期待する以上の価値を生み出すこと。製造業をはじめ、経済はそのようにして成長するものだと思っていた。
    しかし、現在は総供給が総需要を上回っている状態。必要ないものを売るための広告やマーケティングなど、ブルシットジョブ(この本で言及してる人の多いこと!)が蔓延し、限られた利潤を確保するために「集中と選択」という言葉に現れるように、偏った資源配分をし、競争優位性の

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    2022年12月14日
  • ともに生きるための演劇

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    個人的には平田オリザ著「わかりあえないことから」の方が内容が充実していて、話が深く胸が躍ります。ぜひ読んでみてください!

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    2022年11月09日
  • 撤退論

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    撤退についての、さまざまな論者からの寄稿
    それぞれでいろんな発見も、驚きも
    (少し誇張しているのかもしれませんが)
    ありました。

    撤退の困難さはいろんなところで感じる昨今です。

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    2022年10月11日
  • 撤退論

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    撤退論 内田樹編 晶文社
    歴史のパラダイム転換に向けて

    題名に惹かれて手に取ってみたけれど
    前書きを読んで学者の限界を感じた
    まず仲間内で先生と呼び合うのをやめてからにしてほしい
    少子化がいけないと決めつけてからの話では
    答えが出ないだろう
    問題は噂されている
    権力を振りかざしている側の都合で
    少子化を作り出して不安をばらまいていることの真偽を
    確かめることが前提だろう

    識者とされた多くの人が原稿を寄せた中で
    唯一面白く読ませてもらったのは
    『個人の選択肢を増やす「プランB」とは何か』
    というタイトル始まるお話だ
    広い目線で現代文明が陥っている
    物質至上主義の問題の急所を捉えている
    いやも

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    2022年10月06日
  • ともに生きるための演劇

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     「2時間で読める教養の入り口」が売りの「学びのきほん」シリーズで、演劇と教育の話。生きる上で演劇がなぜ必要か、教育に取り入れることでどんな力を付けさせるのか、という話がとてもコンパクトに分かりやすくまとまった本。コロナやウクライナ侵攻といった世相も絡めて解説されている。「どんな多様な価値観が集まったとしても、それぞれの価値観を認めあいながら、対話をあきらめず、問題を解決して、楽しく共同体を作っていける自立した一人ひとりを育てたい」(p.111)という一貫した著者の思いがよく分かった。
     おれは英語を教える人なので、そして昔演劇を少しやっていたから、演劇教育の必要性といった話がスッと入ってくる

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    2022年08月31日