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中山 祐次郎
神奈川県生まれ。聖光学院中学校・高等学校卒業[3]。暗記が苦手で自らを「試験強者ではなかった」と述べ、大学受験の際は2年浪人して医学部に前期後期計5回不合格となった(山梨大学医学部、岡山大学医学部、札幌医科大学医学部、岐阜大学医学部、千葉大学医学部に不合格[4])[3]。鹿児島大学医学部卒業。
外科医、作家。1980年神奈川県生まれ。横浜で汽笛を聞きながら青春時代を過ごし、聖光学院中学・高等学校を卒業後、二年間の代々木ゼミナール横浜校での浪人生活を経て、鹿児島大学医学部医学科に入学。卒業後、がん・感染症センター都立駒込病院外科初期・後期研修を修了、同院大腸外科医師として勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、2017年4月から福島県の総合南東北病院外科医長。2018年4月、京都大学大学院医学研究科で優秀賞を受賞し公衆衛生学修士。2021年10月より神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院外科に勤務。2023年福島医大で医学博士。参加手術件数は一年に約200件。専門は大腸がんや鼠径ヘルニアの手術、治療、外科教育、感染管理など。資格は外科専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定資格(大腸)、臨床研修指導医、ロボット手術指導者資格(大腸プロクター)。著書に新書「医者の本音」(2018年SBクリエイティブ 15万部)など、小説「泣くな研修医」(2019年幻冬舎)はシリーズ70万部超のベストセラーになりテレビ朝日系列で連続ドラマ化された。医師向け教科書「恥をかかない 5年目までのコンサルト」や「ダヴィンチ導入完全マニュアル」「ラパS」「ロボット支援下結腸切除術」、監修に看護学生向け教科書「ズボラな学生の看護実習本 ずぼかん」など。連載はヤフーニュース個人など。講演多数。
「「なぜお医者さんは、そんなに冷たいのですか?」 えっ? 編集者さんからの思いがけない質問に、私は驚きました。 いや、そんなに冷たいですか? 毎日、丁寧に接しているはずなのになあ……。 そう思いつつも、深夜に院のデスクで一人、胸に手をあてて考えてみました。すると、出るわ、出るわ。患者さんを冷たくあしらう発言をした自分の姿……。うーんと唸りながら、ここに贖罪のつもりで本音をお話ししたいと思います。これまで私の態度が冷たいと感じていた患者さん、そしてご家族のみなさん、すみませんでした。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「本書をお読みのあなたは、残念ながら「医者の態度を、冷たいと感じたことがある」とお思いのことでしょう。私としても、ほかのドクターが患者さんと話すところを見て「いや、それはちょっとヒドイのでは……」と思うことはよくあります。相手が若手だった場合には注意するようにもしています。ですが、相手が先輩医師の場合、特に上下関係の強い外科医の世界では、指摘することは簡単ではありません。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「 病名を断言できない最たる理由には次の二つが考えられます。 一つ目は、「診断が確定しづらい」。どういうことでしょうか。 医者をやっていて日々思うのは、「この患者さんは ◯◯病だ」と診断するのは容易ではない、ということです。「あなたはおそらく ○ ○病でしょうね」くらいは言えるのですが、「あなたは ○ ○病です!」と断言するのは難しいのです。 具体例をあげましょう。私が専門にしている大腸がんでは、腹痛や血便などの症状が出ます。そこで、 C T検査とお尻の穴からカメラを入れる大腸内視鏡検査を行いますが、検査結果で「うーん、大腸がんっぽいなぁ」と専門家が判断しても、まだ診断はできません。診断を確定させるには、悪そうなところのごく一部をちぎって取り、病理科の専門医に顕微鏡で見てもらって、「この細胞は adenocarcinoma(大腸腺がんのこと)です」と診断されて初めて「大腸がん」という診断に至るのです。「悪そうなところの一部をちぎって取り」と簡単に書きましたが、それも大変なことです。大腸がんの場合、通常はがんと思われる部位の近くまで大腸内視鏡を寄せて、カメラの脇から出る鰐の顎のような道具で(生検鉗子といいます)かじり取ります。その 1、 2ミリの小さな破片を、大事にホルマリンにつけて病理の医者に提出するのですね。痛みはありませんが、出血をします。その血を止めるのに苦労することだってあります。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「「袖の下」は横行している。それを推測させる事実が、あるテレビ番組( TBS系「直撃!コロシアム!!」 2016/ 4/ 11放送)で指摘されました。がんの名医と呼ばれる医師に対する「患者から〝袖の下〟をもらったことがあるか」という質問に、 50人中 46人が「ある」と答えたのです 私はこの番組をたまたま観ていました。そして、「ああ、そうだろうなあ」と思ったのです。患者さんからの謝礼金は、古くは医師の間で「ゲシュンク」という隠語で呼ばれていました。ゲシュンクとはドイツ語で「贈り物」という意味です。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「よく勘違いされますが、薬を多く処方したからといって医者の収入が増えるわけではありません。むしろ多くの種類の薬を処方すると、病院の収入は減る仕組みになっています。具体的には、 7種類以上を処方した場合処方料が 13点( 42点 → 29点)、処方せん料が 28点( 68点 → 40点)低くなります。 1点 = 10円の換算ですから、 130円、 280円低くなるのです。 これは厚生労働省が行っている、医師の処方を抑制するための措置です。ですから、収入や病院経営という視点だけから考えれば、薬は 7種類を超えないほうが医者としてはありがたいのです。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「対象になったのは乳がん、大腸がん、前立腺がん、肺がんの患者さん。このなかで、「代替医療を受けた 280人」と「病院の従来の標準治療を受けた 560人」の 5年後の生存率を比べると、従来の標準治療を受けた人たちのほうが生存率が高かったという結果が出ました。代替医療を受けた人は、従来の標準治療を受けた人よりも 2. 5倍もの高い死亡のリスクがあったのです。 そして驚くべきことには、代替医療を選ぶ人は高学歴や経済的に恵まれた人々であったのです。 言われてみれば、最近の報道を思い返すと、がんで亡くなった有名人の多くが代替医療を一度は選んでいました。川島なお美さんが「金の棒でこする」などという信じがたいものでがん治療をしたという報道を覚えている方もいるでしょう。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「何度も絵を描いてシミュレーション そんなことを言うと、「もうちょっと真剣にやってくれないか。特別な緊張はないなんて、私の体を切るのに酷くないか」という声が聞こえてきそうです。 ですので、緊張しない理由を述べましょう。 緊張しない理由は、何週間も前から準備をしているからということがあります。 検査結果が一つ一つ出るたびに、外科医は手術のシミュレーションをします。そして、カルテ上に「術前サマリ」という形でまとめます。その上で、私の病院であれば、二回の会議にかけるのです。一回目は、大腸がんを専門とする外科医だけの小さいグループで、 CTや内視鏡検査の画像を一緒に見て、情報を共有し、どんな手術をするか議論します。二回目は、大腸がん以外の専門の外科医、そして内科医、放射線科医などの多職種の会議で発表をします。議論が交わされ、手術内容や治療方針全体が練られます。ですから、手術室に入ったときには、その患者さんについて二回の発表をし、画像を十回ほど見ていることになるのです。 では、いつもとは違う手術のときはどうでしょうか。 いつもと異なる手術の前には、さらに念入りにシミュレーションします。外科医のなかには、実際に血管や腸の絵を描き、「ここでこうやって血管を切って……」とシミュレーションする人もいます。 私は医者になって 5年目までは、ほぼすべての手術でスケッチブックなどに絵を描いていました。今でも、血管の走行が普通と違う場合などは、必ず描くようにし、それを手術室に持ち込んで、貼っておきます。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「 海外から若い研修医が来ていたときには、私は英語で日本の手術の解説をしながら、手術を執刀していました。英語は大変でしたが、一度言うことを覚えてしまえば定型文なので楽でした。 これらはすべて、全身麻酔で患者さんが眠っているときのお話です。 手術には、局所麻酔といって手術する部分だけを麻酔し、患者さんは眠っていない状態のこともあります。 そんなときは、患者さんがリラックスできる音楽をかけることにしています。手術の前に患者さんのお好みの音楽を調べておいて、それを流すこともあります。ご高齢だったら心落ち着くクラシック、若い方だったら静かなポップミュージックを流すこともあります。 そんな手術中の音楽ですが、今でも覚えている笑えないエピソードがあります。 ある局所麻酔の手術のとき、看護師さんが持ってきたクラシックの CDをかけました。オムニバスで、いろいろな曲が流れます。『田園』『月光』『新世界より』……「ああ、名曲続きだな」」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「病院というところは不思議な組織です。営業部がなく宣伝もしないのに、患者さん( =病院の顧客)が行列をつくります。医業は許可制の事業で、提供するサービスは「医療」です。そのため、そもそも医療以外のサービス向上には残念ながらあまり目が向かない構造なのです。 つまり、「待ち時間を短縮しても、病院の質の向上には結びつかない」と病院では考えられているのですね。さらに待ち時間の短縮には、病院側のインセンティブがそれほど働かないのです。 ですが、それを逆手に取れば、その病院はもっと流行る、と私は思っています。 どんな病院でも、程度の差こそあれ競争にさらされています。とくに都市部は病院の数が多いため、選ぶ権利は患者さん側にあります。そこで、患者さんを待たせない仕組みを作れば、一定数の患者さんの増加が見込めるでしょう。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「天野医師は、今上天皇の心臓病の執刀医として有名です。私は一度、 m 3. comという医療系のサイトで対談をさせていただいたことがあるのですが、彼は自分のことを「 loser(敗者)」「負けてばかりだった」と評していました。 高校を出てから 3年浪人をして、ようやく日本大学医学部に入学。しかし大学卒業後は、外科研修の名門である三井記念病院に落ちるなど、希望の病院にはことごとく入れませんでした。そのうえ、勤務した病院では、ケンカしたようにして辞めることに。しかし、そこから彼はすさまじい数の手術をし、心臓外科界のトップランナーに上りつめます。現在は、順天堂大学の教授になり、院長まで務めています。医局に入らなかった人が、医局のトップである教授になるということもあるのですね。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「では、患者さんがネットで病院などを検索するときの注意点です。が、残念ながらほとんどありません。もちろん良い医者も悪い医者もこの日本にはいますが、それを対面前に知ることは難しいのです。申し訳ありません。私でも、自分の専門領域以外では全然わからないのです。 よっぽどダメな医者は論外なのですが、そういう医者を除いても、患者─医者関係は「相性」という要素が少なからずあります。人間対人間の、かなり深い交わりになることがあるので、「相性」は外せません。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「また、出身大学のレベルと医者のレベルはそれほど相関ない、というのが私の持論です。東大を出ても出来ない医者がいる一方で、偏差値が高くない私大医学部卒でもハッとするような素晴らしい医者がいるのです。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「医者のタイプはこれだ!
内科…細身のメガネ男性が多い。几帳面で緻密な計算が得意。真面目でコツコツ勉強タイプ。論理的。ただし、心臓が専門の循環器内科医、胃腸が専門の消化器内科医は少し体育会系の雰囲気が加わる。女性内科医はときに厳しく患者を指導する。
消化器外科…やや小太りの体育会系おじさんが多い(私もここに入ります)。大胆で豪快に振る舞い、大酒飲みが多い。一夜漬け型だが、ピンチのときには超人的な体力と技術を発揮。直感的。その実、小心者が多い。女性はほとんどいない。
小児科…男性も女性も、見るからに優しい雰囲気をまとう。真面目で誠実、一本気。子供の治療に情熱をまっすぐに向ける。しかし、多忙のためかぬぐいきれない疲れがにじむ。
精神科…真面目な人も、不真面目な人も、いろんな人がいる。ほかの科の医師とは一線を画す、独特の雰囲気を持つ。児童精神科医という、小児を相手にする医師たちは、信じられないくらい優しい。
皮膚科…美人な女性医師が多い。男性医師でも、皮膚科医は肌が綺麗だったりする。
整形外科…細身マッチョのよく日に焼けたイケメンが多い。女性もすらっとしたタイプ。かなりのスポーツマンで、医者になってからも定期的に運動をしている人が多い。酒飲みだが、飲み方はそれほど汚くない。若い男性整形外科医はモテる。
以上、代表的な科の医者像を描きました。言いすぎると怒られるので、このくらいにしておきます。「私は内科医だけど直感的で豪快だ!」とか「整形外科医なのにモテない!」なんて方、すみません。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「 では、医者のアルバイトはどんな内容なのでしょうか。大きく分けて、 3タイプがあります。 「①ガッツリ救急系」は文字どおり、ガッツリと多忙な救急外来の病院で働くこと。給与は高いことが多く、時給 1万円ほどになることもあります。その代わり、当然、一晩で一睡もできず重症患者さんを診続けるため、翌日は廃人になるほど疲れます。ですから若手のうちしかできません。 続いて「 ②寝当直」。こちらも文字どおり「寝」ながら「当直」をするものです。「夜のあいだとくに決まった仕事はないけれど、もし何かあったら対応してね」という勤務です。ほとんどの時間、眠っていられるので、給料は「ガッツリ救急系」と比べると割安です。だいたい一晩 3〜 4万円が相場でしょう。 最後が「 ③専門活かし系」です。こちらは胃カメラができたり、マンモグラフィーの画像が読めたり、専門外来ができたり、といった特殊技能を生かしたアルバイトです。給与は高額かと思いきや、「ガッツリ救急系」と同じかやや安いくらいです。 なおアルバイトを紹介する専門の会社はいくつもあります。大手でも 10社くらいあるでしょうか。それらは、医者を派遣し、給料の 1〜 2割を病院から取っているのです。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「押さえるべき点は、「勤務医」と「開業医」であると先ほど述べました。 この二者は大きく違っていて、簡単にいえば「勤務医はサラリーマン、開業医は社長」なのです。勤務医は会社員と同じく病院に雇われて働き、給与をもらっています。破産はしないが大当たりもないという表現がぴったりきます。 一方、開業医は銀行からお金を借り、起業しています。倒産のリスクもありますし、事業が大当たりして拡大したり、チェーン経営を行ったりすることもあります。 勤務医の給料は、ほぼ 100%年功序列です。私は医者になったばかりの頃、この年功序列に衝撃を受けました。あの先生よりこの若い先生のほうがはるかに仕事をたくさんやっているし、患者さんに信頼もされているのに……と思っていたのです。 しかし、医者という仕事は経験がかなりものをいう世界。外科医の世界はさらにその傾向が強いので、「医師歴が長い =医者のスキルが高い」がかなりの確率で当てはまります。ある医局では、学年が一年上がるごとに年収が 100万円ずつ増えていくという、とてもわかりやすい年功序列を敷いているところもあります。 勤務医がこの年功序列を打破し、突き抜けた給与を手にするには、二つしか方法はありません。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「1.海外へ出て突き抜けた実績を作り、日本に凱旋する これは海外で勝ち続けるという険しい道です。果てしない努力と、類い稀な能力が必要とされます。現在、慈恵医科大学の外科教授をされている大木隆生教授が唯一といっていい例でしょう。大木先生はすでに多くのメディアに出演し、外科界のレジェンドになっています。 大木先生は、医師になって 8年目、無給研究員( =給料ゼロ)という立場で米国の病院に行かれました。そこで結果を出し、 10年後には教授になっていました。当時の年収は一億円だったそうです。その後、日本に凱旋帰国され、若くして慈恵医大の教授になりました。そのカリスマ的な生き方は、多くの若い医師の憧れにもなっています。とはいえ、収入は米国の教授のほうがはるかに高いので、凱旋パターンでもなかなか日本で突き抜けた給与を得るのは難しいでしょう。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「まじめなお話をしてきましたが、ちょっと休憩です。今度は医者の恋愛・結婚について見ていきましょう。これもまた、医者というものの生態を知るための重要な鍵になります。 突然ですが、男性医師の多くは、ナースと結婚をします。残念ながら、どれだけ調べても「男性医師の結婚相手の職業はナースが多い」というデータは見つかりませんでした。が、私の知る限り、間違いがない事実だと思います。印象では、 3〜 4割の男性医師はナースと結婚しています。 では、なぜ男性医師はナースと結婚する人が多いのでしょうか? 単純な理由は、「職場恋愛から結婚する人が多いから」です。医者は一般に多忙な上、ほかの業界との接点が少ないため、出会いが職場に限定される人が多い。ですので、職場にいる女性と恋に落ちるのです。それは、ナースです。ナースの 9割は女性であり、医者は臨床医であれば「ナースから報告をもらい、ナースに指示を出す」のが日常です。接する時間が長ければ、そこから恋愛へと発展し、結婚に至るというのはごく自然なことですね。 ほかの理由としては、「医者の特殊な業務形態を理解してくれる、唯一といっていい職業だから」が挙げられます。 医者の勤務は非常に不可思議で、業界外の人には理解しがたい働き方をしています。たとえば月に 10回の当直をしていて、ほとんど家に帰ってこない。たまに帰っても激しく疲れて寝るだけ。丸一日の休日は月に一度だけ。土日も夜もかまわず病院から携帯電話に電話が来る。そんなに多忙なのに、上司とはしょっちゅう飲みに行く(医局や病院によっては断れないことも……)。いつ呼び出されても病院に行けるように、遠出は、夏休み以外はできない。旅行は近場の温泉旅行のみ。しかも風呂場まで携帯電話を持って入る。 職場で医者の働き方を見ているナースであれば「まあそんなものだよね」と納得してくれますが、ほかの業界だと理解しづらいでしょう。こんな労働環境の感覚のズレで、実際に別れてしまったカップルを私は何組も知っています。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「余談ですが、女性医師の生涯未婚率は 35. 9%にも上ります(生涯未婚率は、教育社会学者の舞田敏彦氏によると、 40代後半と 50代前半の未婚率を平均することで算出します)。男性医師の生涯未婚率は 2. 8%、すべての職業の平均が 15. 1%だそうですから、女性医師の生涯未婚率は群を抜いて高いですね(* 9)。原因としては、多忙や高い専門性、そして自分より高い収入の女性を避ける男性が多いためでしょう。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「 医者は世間一般のイメージでは高給取りです。これに、私は忙しさを掛け合わせて考えたいと思います。 私がオススメしたいのは、開業医の二代目です。理由はなんといっても高給で、そして多忙さも比較的マシだからです。 さらに二代目の医者は、生まれたときから金持ちのままずっと来ている人が多いため、素直ないい人がとても多いのです。「いやあ、まあいいじゃないですか」と言ってニコッと笑う。そんなイメージですね。跡を継ぐため、通常 1億から 2億円ほどかかるといわれている開業資金は不要。しかも地元の患者さんがすでについていて「若先生」なんて呼ばれて、親しまれます。普通の開業医よりもはるかに倒産リスクが少ないでしょう。この経済メリットは計り知れません。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「しかし、ネガティブな側面も申し上げておかねばなりません。それは親御さんです。 えてして親が婚約者への条件に厳格なことが多く、とくに学歴や家柄を気にすることがあります。私の耳には、親の結婚相手の条件に合わず大反対されて、破談になったという話はかなり頻繁に入ってきます。この現代になんと時代錯誤な、とお思いでしょうが、今の 50〜 70代の医者は、学歴や家柄を強く気にする人が多い印象です。 しかも、結婚してからも世継ぎを産むことへのプレッシャーがあるそうです。そしてその子供はやはり医者にしよう、なんてことも……。 世の中そう簡単には行かないのですね。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「では、逆に私がおすすめしたくないのはどんな医者でしょうか。 それは、ずばり私のような外科系の勤務医です。 理由は(なんとなく想像がついていらっしゃるかもしれませんが)、激しく多忙であることです。その多忙さは常軌を逸しており、夜中に電話で呼び出されて、三日間帰って来ないなんてことや、たまの休日もなぜか出勤して、そのまま緊急オペで帰って来ないなんてことも……。土日は当直やバイトで、遠出ができないことも多々。映画を観ている最中に病院に呼び出され、ソーッと映画館を抜けて病院へ行ったことも、何度もあります。 外科医のなかには、「結婚相手は同じ業界の医者やナースじゃないとだめだ。この狂った忙しさは理解してもらえない」と考えている人もいるくらいです。私もおおむねこの意見に賛成です。 そして、すべて「多忙」を言い訳にするのも医者の良くないところです。知人の外科医の奥さんは、「父親はいないものと思って、一人で子育てをしている」と言っていました。 家事はしない、帰って来ない、そして世間のイメージほど高給取りではない。そこに、外科医の多くの場合「酒飲み」がトッピングされます。さらには、外科医は短命の人が多い。科別の医者の寿命を調べたデータは、残念ながら見つけられませんでしたが、私の知っている外科医は明らかに短命な印象で、 60代の早めで亡くなる人が多いのです。それも、「睡眠不足・過労・暴飲暴食」ですから頷けるのですが。こういった理由で、外科医は(自分でいうのもなんですが)、あまりオススメはしづらいのです。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「その上で、私が合コンした相手の職業には、大変珍しい人たちが含まれていました。例えば女子アナウンサー、宝塚トップ、弁護士、代議士、神官、歌手など。それでも人数で言えば一番多かったのは、医療業界ではない一般企業に勤める女性でした。意外と少なかったのは、女性医師や薬剤師、看護師といった同業者の方々。女性医師はときどき他の職種の方々にお一人で交ざっていることがありました。が、多くの場合は「すみません仕事で」と開始時間から大幅に遅れてやってきて、「すみません明日早いんで」とさっさと帰っておられました。飲んでいる途中で病院に呼び出されていなくなる、という方もいました。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「基本的に医療機関を無料で受診できるなど、医療制度が日本と大きく違うため単純な比較はできませんが、イギリスは世界の中でも「費用対効果」を医療の世界で厳しくみている国です。費用対効果の点から、アバスチンという薬は効果(つまりどれだけがん患者さんのいのちを延ばすか)の割に費用が高すぎる、ということで使うことができないのです。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「したがって、現代の科学ではその人がなぜ亡くなるのか、根本的にはわからないのです。理由がわからないのですから、周囲の人が感情的に納得することも難しいでしょう。医者とて、「運悪く、たちの悪いがんにかかってしまって……」などと説明するくらいしかできません。 そこで、宗教や運命論などにその答えと納得を求める人もしばしばいらっしゃいます。この辺りは、残念ながらもはや医者が手出しできるところではありません。つらそうに患者さんのベッドサイドで声をあげるご家族に、「ご本人はとっても頑張っていらっしゃいました」と声をかけるのが精一杯です。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著
「さて、たくさんの患者さんをお見送りしてきた私は、どんな死に方がしたいのでしょうか。希望が通るとはあまり思えませんが、考えてみました。・肝臓のがんや肝硬変などで、肝不全になって逝く・事故で一瞬にして逝く このあたりです。医者は悲しいもので、すべての科を専門にすることができません。ですから自分の詳しいところあたりに希望が偏ってしまいます。もちろんこれ以外にもいい死に方はあるのかもしれませんが、今のところ私はこの二つがいいかなと思っています。 理由は、「どちらも苦しくないから」です。一つ目の肝不全は、体にアンモニアという毒素がたまっていきぼんやりとしたなか、眠るように旅立ちます。二つ目の事故は、一瞬の出来事ですから痛みも恐怖も何も感じず旅立つことができます。 結局のところ、私は痛いことと苦しいことが嫌なのです。これは、痛みや苦しみでつらそうな患者さんをみている医療者みなが、似たような回答をするように思えます。」
—『医者の本音 (SB新書)』中山 祐次郎著