越前敏弥のレビュー一覧
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ネタバレ十五年の服役を終え、故郷の島へ帰って来てまだ9週間の主人公イズレルが入江にたゆたう7人の死体を乗せた船を発見するところに始まる。
捜査にやってきたのは島の保安官の叔父と郡警察重大犯罪科の女性警部補サラザール。
サラザールとは初対面を装う意味深な関係性、そして陰で交わされる何処かへ消えた″彼女たち″のワード。
事件への直接的な関与、有罪の疑いは無さそうなものの、何やら水面下の秘密がある模様。
回りくどい核心を避けた会話をするものだから気になってしょうがない。
頑張って想像してみるけど、全然絵姿が浮かばない。
小規模なコミュニティで起きたショッキングな事件と水面下で動いている企み、この2つが牽引する序盤。
このまま引っ張るのかと思いきや、割と早い段階で構図が明らかにされる。
それまではサスペンスっぽかったテイストが、そこからは島社会の秘密を巡り巨悪と向き合う冒険小説みたいに感じた。
ページ数の割にはするすると進むので物語としては分かりやすい口なのだが、逆に何か大きな謎があるわけでもなく、何となくありがちな話に終始し、際立ったオリジナリティは感じなかったかな。
イズレルの善良性、子ども達の一瞬の姿を収めた写真から滲み出る希望、このあたりをもっと押し付けがましいくらいに出してくれても良かったのかも。
相打ちからの命からがらで奮闘する最終盤は予定調和すぎて流し読みだったけれど、少年が″跳ぶ″シーンだけはぐっと希望を感じるものがあった。
予定調和を感じ始めたときに「はいはい」と思ってしまうものと、それでも読まずにはいられないものの差って何なのだろうと意識が脇道へ。 -
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随分前にサンリオSF文庫『フレドリック•ブラウン傑作集』を読んだ覚えがあるのだが、内容は完全に頭から消え去っていた。しかし文字を追っている間に思い出すこともままあるので、久々に読んで思い出にでも浸ろうと考え、手にとってみた。悲しいことに、なんの記憶も蘇ってこなかった。しばらく読んでから思い出すことは諦め、初めて読む作家として本書に向き合おうと決めた。
さらりと全ての話に目を通した感触は悪くなかった。多くの作家から愛されてきただけのことはある。本書はさながら魅力的な原石がたくさん詰められた宝石箱のようで、特異な光を放つ短編のどれひとつをとっても退屈させられることはなかった。はずれの入っていないくじの箱、それが『真っ白な嘘』という短編集である。
フレドリックブラウンを一言で表すならば、「無限のアイデアを持つ男」といったところか。『メリーゴーラウンド』の結末や、メタフィクションの先駆けとも言える『町を求む』、『後ろを見るな』、叙述トリックを巧妙に活用した『歴史上最も偉大な詩』など、奇抜なアイデアを下地にした作品が目白押しで、よくもまあここまで斬新なネタを生み出せるなぁと感心させられる。私個人としては『カインの死』がお気に入りだ。この一編、なんの変哲もない主人公の内面吐露を描写しているだけの話に感じられるのだが、終わり際、ぱっと振り掛けられるように付け加えられた文章が全体のイメージをがらっと変える。私自身、最後の3〜4行でここまで物語を方向転換することができるのかと心底驚かされた。短編小説の匠、アイデアの王様、いやはや、さすがなものである。
単なる暇つぶしとして読むのであればこれ以上の本はなかなかないので、時間が空いた時、読み流す程度に字面を追うことは大いにおすすめしたい。しかし、本腰を入れて読むことは絶対にやめたほうがいい。ただただ失望させられるだけだからだ。
フレドリックブラウンを「無限のアイデアを持つ男」と最初に評したが、逆に言うと彼にはアイデア以外に取り柄がないのだ。構成は物足りないか過剰かのどちらかで、心理描写には緊張感がなく、詩的表現も見れたものじゃない。物語の展開も終盤でかなり雑にまとめることが多く、全体的にガタついている。そのため読後感がよろしくないのである。面白いけど、もやっとする、これが本書の悪いところだ。
『キャスリーン、お前の喉をもう一度』は特に読後感が悪かった。ストーリーの流れも悪くなく、人の顔や名前は思い出せないが場所や風景は思い出せるという記憶喪失者のあやふやな心理の描写も巧みで、ぼうっと幻覚の中に迷い込んでしまったかのような気分にさせられて心地よかったのだが、最後の最後にあまりにも雑すぎる種明かしをされて本当に嫌な気分になった。映画『クリムゾンリバー』並に酷い。もう少し丁寧に話を仕上げることはできなかったのだろうか。フレドリックブラウンの小説は、アイデアが第一で、物語や文体はその思いつきの添え物のように感じられる。作家の創作態度にも様々なスタイルがあるだろうから別に否定する気はないが、今後読むことはないと思う。
しかし、本書が完全に酷い本だったかといえば、そんなことはない。最初に述べたように、本書は「原石を集めた宝石箱」として私の目に映った。本当にアイデアは面白いのだ。その当時は誰も思いつかなかったであろう仕掛けの数々は見事の一言に尽きる。歴史を超えて愛されるにはそれだけの理由がある。時の洗礼を受けてなお名を残すフレドリックブラウンの作品群、常に頭の片隅に置いておこうと思う。
余談
ふと思ったのだが、本書のアイデアはそのままに、文体や叙述方法、構成をオリジナルにアレンジして書き直してみたら完璧な作品が出来上がるんじゃないだろうか。駆け出しの作家が創作の練習として活用するのも面白いかもしれない。もしかしたら、フレドリックブラウンに影響を受けた作家達も上記したような方法で腕を上げていったのではないだろうか。星新一やフィリップKディックがそうやってオリジナリティを構築していったと妄想してみる、悪くない。読み終わったあとこうやって都合の良い妄想にふけるのも、読書の楽しみの一つである。
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ネタバレ結婚したばかりのノーラが、「夫のジムが自分を毒殺しようとしているのでは?」と疑念を抱くところから始まる。
実際ノーラは毒の症状でずっと体調が悪いのだが、新年を迎えるパーティーの中、ノーラのグラスを奪い取ったローズマリー(夫の姉)が毒で死亡し、グラスを用意していたジムが疑われる。
ジムの無実を信じるノーラの家族たちだが、この町の人達にはこの一家を敵とみなすような態度をとられ、それでもあきらめずに戦う。主人公のエラリーも見捨てずに家族に寄り添う。
ノーラとジムのことは悲しい結末だけど、ノーラの赤ちゃんは生まれ、パットとカートの手で幸せになるように育てられていくだろう。真実は知らせず、きっと墓場まで持って行く。それがこの子のためと信じて。 -
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全作ロンドン・アイの謎がとても面白く、再びテッドとカットが見ることが出来るという喜びもあって期待値が上がりすぎた。
それもそのはずで、原案者が若くして亡くなってしまったこともあり、作家が変わってしまったからだ。
それでも設定やキャラをしっかり研究した上で練られているだけに再現性は見事だと思う。
今回はニューヨークにいる叔母グロリアといとこのサリムを訪ねることで、物語が始まる。
グッゲンハイム美術館で盗難事件が起き、働いている叔母が疑われてしまい、それを晴らすためにテッド、カット、サリムが奔走する。
良くも悪くもテッドが3ヶ月でとても大人になっていて、人が使う比喩表現を理解して自分も敢えて使ったりだとか、あんなに嫌がっていた嘘を平気でつけるようになったのは驚きなのだが、大切な人のためならと割り切れるようになったようだ。
肝心なミステリーにおいては、慣れてる人ならほぼ序盤で犯人はわかるし、手口や動機も大体予想がつくので驚きは皆無だった。その点が大きくマイナスというか、テッドの独特な視点がなくても解決出来ないか?とは思ってしまった。
警察の調べが甘すぎる設定がなんとも…
それでもテッドとカットの付かず離れずの姉弟愛というか絆が凄く再現出来ているからそこは変わらず良かった。
カンディンスキーの絵も検索したくなる。
"あの絵はひとりの人間の一部だったんだ。"
このテッドの言葉が印象的。
人が昔の絵画に魅了されるのは、間違いなく存在した画家の脳を現代で観られるからだと感じた。 -
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主人公であるスクルージは、お金ばかり大切にし、無愛想で周囲の人々と友好的な人間関係を築こうとしない。そんな彼のもとにクリスマスイブの夜、かつての共同経営者であったマーリーの幽霊が現れる。スクルージは突然の事態に驚きながら、3人の精霊と共に過去、現在、未来の自分、そして周囲の人々を巡る旅に出るというファンタジー作品。
今作の面白い点は、主人公が精霊たちとの旅を通して、それまでの自分の行いを反省し、その後はしっかり改心した行動を他者に対してとる点である。個人的には、彼が老人でありながら人として変わろうとしたこと、それを確かな行動に移したこと、そして最終的には「クリスマスの正しい祝い方を知っている人」として人々に認められたことから、人はいくつになっても変われることを改めて感じさせられたし、自分もそのマインドを忘れてはいけないと思った。 -
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宗教象徴学専門ハーバード大学教授が、死体に焼き印されたイルミナティの文字を見て、スーパージェット機X-33で欧州原子核研究機構セルンへ向かうところからお話がはじまる。殺された科学者は、科学と宗教の歴史における最も厳しい争いのひとつを解決、それは宇宙を創造するビックバンの再現だった。その過程で反物質を生成するのだが...時を同じくしてバチカンでは、コンクラーベ(教皇選挙)が行われる中で、有力候補の4人の枢機卿が誘拐される。上巻最後の方でやっと映画を見た記憶が思い出される始末、なさけない。
ちなみに反物質はあのUSSエンタープライズ号の燃料なんだって、P133。 -
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最近にわかにはまっているフレドリックブラウンの短編集。
各短編をコースになぞらえ、オードブルから始まり食後のコーヒーで締めるフレドリックブラウンのフルコースが味わえるという美味しい1冊でした。
以下お気に入り作品。
「殺意のジャズソング」
友人と中古車販売業を営む主人公。ある日友人が何者かに暴行される事件が起こり、犯人の目星がつかないまま、今度は昔の音楽仲間の一人が殺される。
最後のオチが予想外だった。信頼できない語り手。
「死の10パーセント」
俳優崩れの主人公がとあるきっかけで出会った男にマネジメントされトントン拍子にスターへの階段を上っていく。男との約束は、すべての10%を取り分として男に払う、ということ。
主人公は死神とでも契約してしまったのか、悲惨な末路。そもそもその男と出会ったのが財布を拾って勝手にクレジットカードを使ってしまったからであって、悪いことはするもんじゃないなと思った。
「真っ白な嘘」「不吉なことは何も」に比べたらオチがよくわからなかったりする作品もあったけど、訳者によるものが大きいのかもしれない。たまたま上記2作品は前2冊と同じ越前敏弥氏訳のものだった。
3冊のフレドリックブラウンの著書を読んでみて、お酒を飲んだ後車を運転するシーンがたくさん出てくるんですが、飲酒運転が合法な世界なんだろうか。とかどうでもいいことが気になった。 -
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ネタバレ「アクション作品創作バイブル」は、映画脚本のテクニックを解説したもの。
具体的に、「ダイ・ハード」「ミッション・インポッシブル」「ターミネーター」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「メン・イン・ブラック」「マトリックス」「アベンジャーズ」などの作品をベースに、アクション映画特有の約束事、魅力的ヒーロー、特徴的悪役、被害者の人物設計などを比較解説。
さらに、興奮を引き起こす5つの技巧(権威に抗う、未知との遭遇、障害を乗り越える、制約を克服、禁忌を破る)を説明。
独創性を出せるかどうかは大事だが、逆にオリジナリティにこだわり過ぎて肝心のストーリーや人物像がハチャメチャでは本末転倒。
そんな難題をいかに克服できるのか、本書はそのための初心者テキストとなっています。