矢部嵩のレビュー一覧
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「てのひら怪談」よりもさらにミニマムな「ゆびさき怪談」。140文字以内という制約があるけれど、それでも、というかだからこそ描き出されるさまざまな恐怖が魅力的です。描かれない部分も多いけれど、その分想像力が恐怖を増幅させることも。
怖いと思ったのは織守きょうや「首がない」「橋姫」、澤村伊智「地獄」「ファミレス」、堀井拓馬「ネタバレイヤー」などなど。岩城裕明「ヒールはやめて」はなんだか可愛くて和みました。矢部嵩の作品はどれも不気味で素敵。そして白井智之「白塗りの悪魔」「川辺の砂」って……不可思議なホラーとしても読めますが。ミステリファンにはいろいろ気づけて楽しい作品では。 -
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グロテスクでスプラッタな描写が微に入り細を穿ち続くので好みはきっぱり分かれるが、それと同じ位イノセンスな描写が飛び出してくるのが癖になる、謎の依存性のある小説。
一話目がある種壮絶なネタバレなのだが、これを最後におくだけで印象ががらりと変わる。
夏子が肝心な記憶を忘れている(忘れさせられている)ので、読者と作者の間に共犯関係が成立する巧みな構成。
登場人物の価値観もめいめいぶっとんでおり、まずそこで受け付けるか受け付けられないかふるいにかけられるが、痒いのを掻くのが気持ちいいビルマ君よろしく、その生理的な不愉快さも慣れると快感に裏返る。
そして折々にとびだす比喩が感動するほど斬新。
たとえば主人公の夏子・淡い初恋の心情。
「私も夜小倉くんのことを考えることがよくありました。二人で話す機会は多くありませんでしたが、教室や登下校、近くで呼吸に触れるにつれ、目に入る彼をため込む抽斗を隠し持つようになっていたのでした。
聞いた声や重ねた会話が夜開けて星に見えるように、喉の奥の内臓辺りに並べて飾ってあるのでした」
この感覚、わかる……!
一見支離滅裂意味不明だが、手垢に塗れた比喩では到底表せない微妙な琴線を弾いて共感の嵐。
「バインダーぽい手触りの曇り空」などの情景描写をはじめ、あくまで女子小学生の知識の範囲から逸脱せずに、「あーわかる」となるオリジナリティあふれる比喩を駆使するのは凄い才能。
グロ描写は活字では耐性あるので然程気にならなかったが、どちらかというと「雨を降らせば」での葬式会場での暴走など、無関係な弔問者への行き過ぎた仕打ちのほうが苦味が勝った。
読み手の感性の問題なので、ブラックユーモアとして流せる人もいるのだろうが……
収録作の中では「魔法少女帰れない家」が白眉。
いい人だと思ってたひとが実は……な、お約束の展開なのだが、二重三重のどんでん返しに突き落とされる。
いい話だなあで一件落着しかけたのにけっしていい話で終わらせてくれない、これぞサイコホラーの真骨頂。
奥さんと夏子たちの交流を象徴する、微笑ましかったお面のエピソードが、ラストの数行で完膚なくぶち壊される。
同じエピソードで同じセリフを扱いながら、こんなに印象が違うんだと衝撃。
消された記憶の範囲は謎だが、お面をもらった時点まで遡らないなら、本当にただ興味がなくて貰ったことすら忘れていた可能性があり、暴かれた温度差がうそ寒い。
最終話はダイジェスト版で夏子の人生もとい余生が描かれるが、ブルースとの関係性の変化に驚き半分納得半分。
一話ごとに赤ん坊から幼児へ、幼児から反抗期へ、反抗期から思春期へ……と成長していく過程を見ていたので、最期の言葉は切なかった。
ぬりえの願いの持論、「ただ巻き戻せばただ繰り返すよね」「私の願いじゃないから上手に線を引きかねる」、地球先生の雨のたとえ話など、含蓄みで考えさせられることも多い。
一話目の惨劇が頭に焼き付いてる読者ほど、「なんでも願いが叶うって素晴らしい!」「困ってる人の願いを叶えてあげるのはいいことだ!」と無邪気に称えられないのではなかろうか。
小学生の友人同士や家庭内での会話も、単語を投げ合ってる感じが等身大でリアル。
胸を張って人に薦められるかといえば首を縦に振れまいが、ハマる人はとことんハマるだろうよそに類を見ない作風で、そっと評価されるべき怪作。
「地獄は歩いてこない。自分から落ちていく」
この言葉がいつまでも心に残る。 -
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ハヤカワ文庫の百合SFフェアに伴い、早川書房の単行本から文庫化された作品。
とある女学院の卒業生である少女は、卒業式が行われる講堂へ向かう途中、気付くとうす暗い部屋に寝かされていた。その部屋にはドアが二つあるばかりで、一方のドアにはドアノブがなく、もう一方のドアには張り紙がされていた。張り紙には「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」と書かれている。つまり卒業生の寝ている部屋が次々と続いており、ドアを開放することで、2人の少女が目覚めたならば1人が、5人の少女が目覚めたならば4人が死ななければその空間から脱出できないというのである。
100頁に満たない短編「少女庭国」はそのような状況で目覚めた13人の少女が、互いに殺し会うのか、それとも別の選択をするのかといった物語である。この物語の結末は気持ちのよいものとは言えないかもしれないが、心に響く良い結末だったと私は感じた。
しかし圧巻なのはこのあとに続く「少女庭国補遺」である。例えば先ほどの状況で12人が死に1人が生き残った場合、13人目の次の部屋で眠っていた14人目の少女が、また1人目として目覚める。そのように無限に空間が続いていくのだ。
そしてこのような状況設定の中で、どのようなことが起こりうるのか網羅的に語られるのが「少女庭国補遺」なのだ。少数人数で話し合うか殺しあうかして、1人を選ぶのが基本的なパターンだが、時として国が成立することもある。当然構成員のすべてが少女となるため、帯に書かれているとおり「百合SF建国史」が描かれることになる。
限定的な状況のなかでどこまで可能性は広がるのか、想像力の極地を体験してほしい。しかし、食糧もない空間での生き残りとなるため、必然的にグロテスクな描写がかなりの頻度で登場する。苦手な方は注意されたし。 -
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ある女の子が主人公(一人称)として書かれている。
あらすじにあるように、魔女の家を訪ねることになり、主人公の友達はあっさりと殺害。そこから子供ならではの、しかし人間ならではの揉め事により怒涛の展開を遂げ…
その後、主人公は魔女と共に色々な依頼者の願いを叶えるようになる。
初めから最後まで、殆どが気持ちの悪い描写をちりばめられているが、やけにあっさりでコミカルな展開に思える時もあります。(苦手な人は苦手でしょう)
虫が身体を這うような気味の悪さのある話、一つの家族の、何処にでもありそうで、しかし心の置き場に困る話、と短編が続く。
子供の会話の描写として、口語をそのまま文章にしたのだろうというところが多々見られるので、読みづらい人は読みづらいかと。
また、たまに各キャラの台詞がぶっ飛んでいたり、背景がぶっ飛んでいたりで、あれいまどういう状況なんだっけ?と置いてけぼりにされるときがたまにあるが、それも一興。
魔女や魔法というとファンタジーなものをイメージするが、要所要所に、死とは、願いとは、嘘とは、と哲学が散りばめられている。
ファンタジーやホラーと言うより、人間模様を描く、サスペンスといった枠組みが近いかと思う。 -
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後味の悪さ的な意味で★4つです。
内容自体は正直★1つとか1・5個くらいじゃないだろうか。
ふとホラー読みたくなって本屋をうろつき手頃な値段とページ数だったので購入。
すぐ読み終わりましたがページを捲る度にドキドキとかワクワクなんてもんはなくてただ、だんだんとダメな方向にしか向かっていかない感じ。
見てるこっちがちょっと溜息出るくらいに。
結局誰も救われてなくてどっちの家族もどうかしてるよ、といった感想であります。
でもこんな猟奇的な事にならないにしても多かれ少なかれこうゆう事を考えてる?人はいるのかもしれない。
所詮外側の人間は内側の人間の中にも入れないし解れないって事。
もう少し文が解りやすいというか上手ければなあ… -
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クラス旅行の、荒唐無稽だが衝撃のラスト。
「イかれてんな~w」って思ってたら、他はもっとイかれていた!(なんならこのクラスが一番常識的だった)。
内容の崩壊とともに、生徒たちの名前も崩壊していく。
文章を読んで頭の中に映像を組み立てる行為は、誰しもがすることだと思う。だけど、この文章は一見して映像化することが不可能。
皆さんご指摘の「文章の不自由さ」にプラスして、ちゃんと読んだとて、無理のあるイメージが脳内に展開される。
「あっ、これは無理だ……」と。
個人的には、
「足になんかついてるよ」
「え、何」
「取る取る、動かないで」
(斧で指を切り落とす)
「取れたよ指。ついてた」
このスピード感好きw -
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ネタバレ【収録作品】
「ルパちゃん」 金子玲介
「推し活制限法」 日野瑛太郎
「日本国民に英語の勉強を義務づけへ」 朱野帰子
「つるべを取られて」 阿部智里
「こんにちは、チャッテー」 真下みこと
「虚法」 須藤古都離
「国家殲滅フットボール法」 嶋戸悠祐
「復讐者は振り向かない」 多崎礼
「コロシヤとユキオンナ」 風森章羽
「 Touch law if you can」 名倉編
「ある死刑囚の回顧録」 真梨幸子
「『ラ禁法』ディストピア」 東川篤哉
「忘却加害」 霜月流
「密室の獣」 矢樹純
「御首塚の風」 高田崇史
「ネーミング」 潮谷験
「試み」 献鹿狸太朗
「魔法罪」 高田大介
「もう、ディストピア」 大沼紀子
「自転車武装条例」 矢部嵩
「ありがとう、虎太郎」 柾木政宗
「 ショートケーキの夜」 くどうれいん
「ぜんぶミステリのせい」 白井智之
「帰り道の行先は」 赤川次郎
「革命夜話」 五十嵐律人
「新しい法律ができた」という1行から始まる物語。
法律が題材だから、どうにも不気味な読後感。
「もう、ディストピア」は皮肉が効いている。
最後の「革命夜話」が重い。
この重さが失われつつある今、どんな悪法ができても驚かなくなりつつあるのが怖い。
現実的に生活は大切だけれども、それを守るためには大局を見なければいけない。理想がなければ堕ちるだけだ。