矢部嵩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレまあこのタイトルでこのイラストなら興味持たないわけないよね。で、
奇書が読みたいアライさん
が勧める一冊に入っていたので、読んでみた。
すごかった……。
すでに熱量の高い感想はたくさんアップされている。たとえば、
物語はいかにして充足しうるか?――矢部嵩『〔少女庭国〕』における服従の論理、オタクの欲望、観測者不在の百合
というページ。
ので以下メモ。
・映画「キューブ」。と思いきや。
・筒井康隆の実験と、グロテスク趣味。
・冗談の人類史。
・ボルヘスとか……無限や迷宮といえばという安直な連想だが。
・ネーミングセンス素晴らしい。
・こやまけんいちで脳内再生。
・文体が微妙にてにをはが合っている -
Posted by ブクログ
今まで読んだホラーの異常性って私の中で大体二分化されるんだよね。
正常が異常を作る場合(人工)と、異常がそのまま表に出される場合(天然)。
後者に近いのではないかなと思う。
作られた異常は筆者の「これ気持ち悪いでしょう?怖いでしょう?」が強く感じられすぎて楽しめなくなるんだけど、この作品は筆者の自己顕示欲もあまり感じられなくて、そこは良い。
異常な親類縁者がいるとなるとその血を引く父親も、その子供である主人公も…と想像させる所が上手いと思った。
理由が明かされず謎のまま終わってホラーが成り立つなら、如何様にも恐ろしいもの生み出せそう!なんて。 -
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Posted by ブクログ
140文字で描く怪談。ほとんど歌詞のような意味不明な内容のものからオチまでちゃんと着いた物語になってるものまで作家それぞれ個性が出ていて面白かった。
もちろん私の好みは短くとも物語になっているものだ。下手の横好きではあるが物を書いたこともあるので僅かな字数で書くことの難しさはわかる。でもこの短編集はおそらく一般ウケは狙ってないように思う。ああ、でもWebで人気の意味怖に近いものがあるかもしれない。短すぎるだけに文章の裏を読む想像力は必要だ。
澤村伊智のは短いながらもやはりキレがあった。あとは一田和樹、岩城裕明の作品が個人的には好みだった。 -
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Posted by ブクログ
卒業式へ向かう途中、目が覚めると暗い部屋に貼り紙がありました。
“ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ”
ドアを開けるたびに卒業生が一人倒れています。無限に続くドアと無限に増え続ける少女達。残虐か繁栄か、少女たちの永遠なる建国史。
SFです。しかもかなり特殊かつ斬新な物語。なぜ卒業試験を行うかは分かりません。数式を満たした先は分かりません。どのような仕組みで部屋が続いているかも分かりません。調べることに意味は無いのです、生きるためにはドアを開けて卒業生という名の物資を手にしなければならないのですから。これは理不尽かつ残虐なるルールな中で少女たちが -
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Posted by ブクログ
ネタバレ書店で気になって購入。
怖い…というより船酔いみたいな気持ち悪さ。グロい割には主人公の少年が淡々としてるので、そこはあまり(人によると思うけど)気にならないけれど、文体や『奇妙さ』が当たり前にある居心地の悪さ。
理屈とか伏線回収とか好きな人はモヤっとするかもしれないけれど、訳が分からない不気味さが好きな人は気持ちよく酔えるのかもしれない。
個人的に1番不気味だったのは、なぜか突然ルビがめちゃくちゃ振られたページ(笑)
それまで振られてなかった簡単な漢字にもルビ!!ミス?と思ったけど、初版どころか四刷目なのでわざとなんだろうな。なんの意図が…気持ち悪い(笑)
あと警察の自販機の件が解決して -
Posted by ブクログ
色々な意味で問題作だよなぁ、と思う。少女庭国にしろ、補遺にしろ。表題作は短くて、むしろ補遺が本番って感じ。
生活の描写が出てきた後に、それについて詳しい解説がなされるのは、報告書を読んでいるような気分で不思議な感じがする。それがなぜか、っていうのは、読み進めていくと、ああ意図的だったんだな…って分かった。
壮大なエピソード集(短編集とは違う。叙事詩が近いかな…?)って感じなんだけど、百合として読むのにもSFとして読むのにも、どちらにも明確な結論みたいなものが用意されてなくて、ちょっと消化不良な感じが残る。風呂敷広げるだけ広げて、放ったらかして次を広げるみたいな。ただ、オチは余韻があって…