矢部嵩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ10年ぶりの矢部嵩の新刊、うれしすぎて極力何も情報入れずに読んだら短編集だった。めちゃくちゃ面白かった。内容の前に、装幀があまりにもよすぎる。最初はぎょっとしただけだったけれど読んだあとに戻ってみると目次のデザインだけでいくつこだわりがあるんだろうと感動した。殺人野球小説のページ数がうっすら隠されてるのはエンタの長さに気づかせないため? 全てで驚きを与えようって気持ちが伝わってきて読んでいてとにかく楽しかった。日常っぽい淡々とした流れに異質な文が平気な顔で紛れ込んでくるし、『魔女の子供はやってこない』を読んだときの独特の気持ち悪さが感じられて本当にうれしい。
これも未来図と蜘蛛の巣なんじゃ…… -
購入済み
学校
中学校という閉鎖的な空間のことを思い出しました。勿論この作品の世界はかなり歪んでいるので現実世界と照らし合わせるのは難しいですが、スクールカーストをよく理解し書かれているんだなと思います。保健室に集まる子達みんな大好きです。
-
Posted by ブクログ
卒業式会場へ続く通路を歩いていた少女は、ふと暗い石造りの部屋で目覚める。この部屋には二つの扉があり、片方にしかドアノブがない。ドアには以下のような文面の張り紙がある。「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ」。扉を開けると次の部屋にも少女がおり、張り紙があり、また次の部屋にも少女がいる。
このシンプルな条件から、どんな物語を想像するだろう。この物語は、おそらくその想像の通りには全くならない。
異常な世界に突如放り込まれた少女たちの思考と行動はリアル。羅列された「生命行動」はデスゲーム系への否定的命題を投げかけるし、それは「物語」というもの自体に対し -
Posted by ブクログ
ネタバレ※殆ど自分語りになります。
知人に渡された本の中で、約8670日生きてきて、これ程までに自分の価値観形成に至るに語る本に近しい書物はありませんでした。私の今迄の人生が何かの設問だとして、間違いなくこの一冊は参考書となり得るものです。また、今後の私の人生の参考書にもなりそうです。
作中で書かれている「よくなる明日を探しておれはもう二度と地獄への道をさ迷わない」「余生だから私」「どこにも帰れない」という言葉は、まさに全て自分が今までの人生で心から口にした言葉の要約乃至は一語一句変わらないものでした。
そこら辺の安い「価値観の変わる作品」だとか、上っ面の感動や、掃いて捨てる程に転がった出会い別れ -
Posted by ブクログ
死体の部分部分を家中あらゆる隙間から見つけてた僕がそのときは恐怖よりも高揚が勝っていたくらいなのに、夜ホラー映画観て怖がっているところが面白かった。象徴的な場面だなと思った。そこにあるものの気配は微塵も感じないのに、ずっと不在はなずの紗央里ちゃんの実在感。不在の紗央里ちゃんのことを読者にずっと考えさせる工夫が凝らしてあって、気付けばそれが紗央里ちゃんの魅力になっている。そこに描かれていないのに。
家族じゃない。親戚が親戚じゃないときどんな感じか知らない……という中途半端な距離にある「親戚」というものの無気味さ、潜在的な怖さを形象化した傑作。
福満しげゆきの表紙も好き -
-
-
-
Posted by ブクログ
卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の数をmとする時、n−m=1とせよ
2部構成で主役は中学生3年女学生
こりゃあすんごい物語。えっ、メフィスト賞でないのこれ?みたいな感覚(そもそもホラー大賞出身)
上の導入から思いつく話は中頃から完全否定される
この本に書かれているのは
中3女学生
石に囲まれた四角形の部屋と鉄のドア
のアイテムだけで考えられるパターンの全てをひたすらに語る人類史
いやはや感服。たった248ページと思えないほど凄まじいパワーだった
ノリは「クリムゾンの迷宮」「ギャルナフカの迷宮」なんだけれど「シュタインズ・ゲート」やハルヒ「エンドレスエイト」が到 -