矢部嵩のレビュー一覧
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『〔映〕アムリタ』シリーズを思い起こさせるような「自己同一性に対する挑戦」的テーマが随所で匂わせられるが、そこまで踏み込むことなく程よいところで戻ってきてくれる。いや、厳密には戻れてはいないような気もするが、そこらへんの"正常の定義"が読んでいると次第に分からなくなってくる。
現実感のない会話のやり取りは謎の中毒性がある。
この作者の描く登場人物たちは異常な行動をとるほど、口ではまともそうなことを言っているので手に負えない。
読みながらつい鼻を掻いてしまう。
こんなもんわざわざ描写すな、と思うこと仕切りで、目が滑ると言うよりも目を滑らさざるを得ないという状況に追いやられる。 -
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暗黒系ガールミーツガールの怪作。
第1話:ああなるほどねー
第2話:幻想的な作風
第3話:趣味悪いな
第4話:目が醒める。ここからが本番。
第5話:単話としての完成度はこれがピカイチ
第6話:何この名作!
人間の少女である主人公が、魔女の少女に出会って、運命が変わっていくお話。
魔女は人の願いをかなえてくれる。でもその願いは思ったとおりに成就するとは限らない。
小学生的な視野の狭さと、「猿の手」的なコテコテの悪意とが混然一体となって、事態を悪化させて流れがとにかく悪趣味で好き。
グロ描写もキモ描写も盛りだくさんで、倫理的にもいろいろ踏み越えてしまっているので、読み手はものすごく選 -
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ネタバレ悪趣味と言える状況下に放り込まれた少女達が殺し合いをさせられる。端的に言い表せば、それだけの作品であるけれど、〝少女〟という年代の多様さが書き表されている様にも感じました。
怖いもの知らずで無鉄砲な行動に出る子、終わりの見えない現状に閉塞感を感じる子、誰かの為に頑張れる子、仕切りたがりでリーダー気質の子。特殊な環境下ながら、少女らしさを発揮して現状を何とかしようと悩んで行動している少女達。皆、一様に同じ行動を取るわけではなく、似ていながらも違う行動を取り、違う結末を迎えている。その多様さが少女の持つ個性を魅せられている気がしました。
少女庭国補遺では、単調に自殺し殺し殺されてゆき、時折 -
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「てのひら怪談」よりもさらにミニマムな「ゆびさき怪談」。140文字以内という制約があるけれど、それでも、というかだからこそ描き出されるさまざまな恐怖が魅力的です。描かれない部分も多いけれど、その分想像力が恐怖を増幅させることも。
怖いと思ったのは織守きょうや「首がない」「橋姫」、澤村伊智「地獄」「ファミレス」、堀井拓馬「ネタバレイヤー」などなど。岩城裕明「ヒールはやめて」はなんだか可愛くて和みました。矢部嵩の作品はどれも不気味で素敵。そして白井智之「白塗りの悪魔」「川辺の砂」って……不可思議なホラーとしても読めますが。ミステリファンにはいろいろ気づけて楽しい作品では。 -
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グロテスクでスプラッタな描写が微に入り細を穿ち続くので好みはきっぱり分かれるが、それと同じ位イノセンスな描写が飛び出してくるのが癖になる、謎の依存性のある小説。
一話目がある種壮絶なネタバレなのだが、これを最後におくだけで印象ががらりと変わる。
夏子が肝心な記憶を忘れている(忘れさせられている)ので、読者と作者の間に共犯関係が成立する巧みな構成。
登場人物の価値観もめいめいぶっとんでおり、まずそこで受け付けるか受け付けられないかふるいにかけられるが、痒いのを掻くのが気持ちいいビルマ君よろしく、その生理的な不愉快さも慣れると快感に裏返る。
そして折々にとびだす比喩が感動するほど斬新。
たと -
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ハヤカワ文庫の百合SFフェアに伴い、早川書房の単行本から文庫化された作品。
とある女学院の卒業生である少女は、卒業式が行われる講堂へ向かう途中、気付くとうす暗い部屋に寝かされていた。その部屋にはドアが二つあるばかりで、一方のドアにはドアノブがなく、もう一方のドアには張り紙がされていた。張り紙には「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」と書かれている。つまり卒業生の寝ている部屋が次々と続いており、ドアを開放することで、2人の少女が目覚めたならば1人が、5人の少女が目覚めたならば4人が死ななければその空間から脱出できないというのである。
100頁 -
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ある女の子が主人公(一人称)として書かれている。
あらすじにあるように、魔女の家を訪ねることになり、主人公の友達はあっさりと殺害。そこから子供ならではの、しかし人間ならではの揉め事により怒涛の展開を遂げ…
その後、主人公は魔女と共に色々な依頼者の願いを叶えるようになる。
初めから最後まで、殆どが気持ちの悪い描写をちりばめられているが、やけにあっさりでコミカルな展開に思える時もあります。(苦手な人は苦手でしょう)
虫が身体を這うような気味の悪さのある話、一つの家族の、何処にでもありそうで、しかし心の置き場に困る話、と短編が続く。
子供の会話の描写として、口語をそのまま文章にしたのだろうというとこ