矢部嵩のレビュー一覧
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話によっては「投げっぱなし」「意味不明」「世界観が分からない」と賛否分かれる話も多かったと思う。それでも、ちゃんと面白いし最後まで惹きつけるのだから「もはやバグだろ」と思いながら読んでいた。
特に、「エンタ」は最初世界観もよく分からないし、登場人物の複雑な呼び名だったり、ギミックだとかスペックだとか作中内での専門用語が多くて全く理解できない状態から読み始めることになるが、それでも続きが気になるクセになる面白さがしっかりとある。
もちろん、他の作品も前提からして意味不明な話も多く(たとえば友人が机(生きている)だったり、頭部が車の男性が毎晩尋ねてきたり、話によってはオチも含みを持たせていたり、中 -
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話題作、人気の作家たちによる"新しい法律ができた"の一文から始まる短編集。同じような短編集の5冊目。めくる度にうわっ、今度はこの人か~とワクワクしながら読めます。個人的に一番良かったのは五十嵐律人さんの憲法のお話でした。
殺人や男女関係のエピソードあり、中学校から。
金子礼介「ルパちゃん」
日野瑛太郎「推し活制限法」
朱野帰子「日本国民に英語の勉強を義務づけへ」
阿部智里「つるべを取られて」
真下みこと「こんにちは、チャッテー」
須藤古都離「虚法」
嶋戸悠祐「国家殲滅フットボール法」
多崎礼「復讐者は振り向かない」
風森章羽「コロシヤとユキオンナ」
名倉編「Touch la -
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ネタバレ同じ書き出しで、25人の作家さんが25通りの物語を紡ぐ。1編が6ページほどのショートショートだからサクサク気軽に読めるし、様々なジャンルの物語を1冊で楽しめるためお得感がすごい読書時間を過ごした。
現実の法から奇想天外な架空の法まで、ジャンルもミステリやディストピアものなど、物語の舞台も現代から近未来、果ては明治時代やアメリカの西部開拓時代まで、多種多様な設定の中でその法律が齎す思わぬ影響や人間模様が繰り広げられる。短いながらどの作品もとてつもない読み応えだった。
法律というテーマ故か、ディストピアものとの相性が特に良かったように感じる。
ハッとしたのは、今私たちの生きている世界は -
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ショートショートというものを初めて読んだ。
なので、他シリーズは未読。
「新しい法律ができた」
最初の1行は全員一緒。
なんだそれ、面白い!!!
同じ一行から始まるのに、話の内容も展開も全く違う。面白い。
1つ目のお話(金子玲介、ルパちゃん)が重くて、苦しくて、
え!?これ読めるか!?と思ってしまった。
が、作家によって内容は十人十色。
様々なバリエーションがあるのが面白かった。
しかし、法律が主題なので、内容が難しいものも多かった。
塩屋験さんは(AIが小説を書くようになるが、作者は人の名前にし、人間かAIが書いているか分からなくするという話)、最後、え!?となって驚かされた
シリア -
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冒頭の短編「待ち合わせる」がものすごく好きで何回も読みました。ほぼなんでもない日常とも言えるような状況なのだけれど、薄氷を踏むような不安と緊張感と、すがりつくような必死な愛情を感じました。
中編「エンタ」は少女庭国にも似て、やはり実験装置の中のケーススタディのように受け取りました。ウマ娘のようなゲームの中で競わされるキャラクターをよく見てみれば、そこにはこんな生の泥臭さがあるはず、ということでしょうか。「昨日と今日が別のものだと嘘をつく」。「自分が間抜けだとわかっていたことにしたくなる」といったような表現が実に矢部的で好きです。
全体的には難しかったです。自分にとっては、確かに良い、 -
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表紙は福満の文庫で。
ホラーは好きで好んで読むが、これは「薄いな。すぐ読めそう」という理由だけで手を出した。結果、新しい扉を開くことになった。
他のどの作家とも違う、古典にもネットにも寄っていない。あえて…あえて本当にあえるなら筒井か? でもそれも違う。
謎解きもない。小学5年生の男の子が死体を探す。でもいちばんこわいのはそこじゃない。
毎食のご飯がカップ焼きそば。
降り続ける雨。
何度でも洗われるお皿。
食べたいウィンナー。
臭くても言ってはならない他人の家。
他人? 親戚? 家族とは?
おそらく、この作者は本質を知っているのだ。
だけど、言ってもまた仕方のないことだということも知 -
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「魔女の子供はやってこない」 書評:言葉と構造で織り成す異次元の物語
矢部嵩の『魔女の子供はやってこない』は、読む者を深く引き込み、現実と虚構の境界を曖昧にする圧倒的な表現力と構造の妙が光る作品だ。物語を追うごとに、狂気と奇妙な美しさが交錯する世界観が広がり、読む者の感覚を揺さぶり続ける。
まずこの本の表現力は圧巻だ。文章に添えられた「ぼりぼりぼりぼり」というルビが、その場の壮絶さや不気味さを直感的に伝える。さらに、モンタージュ風の描写では文章に番号を振り、視点の断片化を鮮やかに再現している。極めつけは、家の1階と2階での声を文章の配置で表現した部分だ。この手法によって、文字そのものが物語 -
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ネタバレ卒業式会場に向かっていた中三の羊歯子は、気づくと暗い部屋で目覚めた。部屋は四角く石造りだった。部屋には2枚ドアがあり、内一方には張り紙がしてあった。
"卒業生各位 下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし、死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする"
無限に囚われた少女たちの話。以前ハヤカワ文庫さんが行っていた、「ハヤカワ文庫の百合SFフェア」の対象作品のうちの1冊で、先に言っておくとなかなかの奇書、あるいは実験小説の類に近いかと思います。
ちなみに、ここは個人的見解によると思いますが、私はあまり百合味は感じませんでした。 -
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ネタバレ〈ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする〉という卒業試験に放り込まれた中3女子たちのお話。
〔少女庭国〕よりも〔少女庭国補遺〕からが本番でした。
大叙事詩…勃興と滅亡を繰り返す中3女子たち。
世界には部屋と扉と中3女子しかなくて、生きていくとしたらそれらでどうにかやっていくしかない。食べ物飲み物、生活の道具…部屋と扉と中3女子しかないので“それらでやっていくしかない”。
レポートのように書かれる子もいれば、しっかりストーリー仕立てで描かれる子もいました。
SF、デスゲーム系、百合、架空の歴史書…どれにも当て嵌まるし、でも初めて読む質