矢部嵩のレビュー一覧

  • 未来図と蜘蛛の巣

    Posted by ブクログ

    話によっては「投げっぱなし」「意味不明」「世界観が分からない」と賛否分かれる話も多かったと思う。それでも、ちゃんと面白いし最後まで惹きつけるのだから「もはやバグだろ」と思いながら読んでいた。
    特に、「エンタ」は最初世界観もよく分からないし、登場人物の複雑な呼び名だったり、ギミックだとかスペックだとか作中内での専門用語が多くて全く理解できない状態から読み始めることになるが、それでも続きが気になるクセになる面白さがしっかりとある。
    もちろん、他の作品も前提からして意味不明な話も多く(たとえば友人が机(生きている)だったり、頭部が車の男性が毎晩尋ねてきたり、話によってはオチも含みを持たせていたり、中

    0
    2025年08月19日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    なんだこれ…と読み始めて最後まで「なんだこれ…」だった。その発想はなかった。面白いとも表現がいいともちょっと違う、変な本。

    0
    2025年08月17日
  • 新しい法律ができた

    Posted by ブクログ

    話題作、人気の作家たちによる"新しい法律ができた"の一文から始まる短編集。同じような短編集の5冊目。めくる度にうわっ、今度はこの人か~とワクワクしながら読めます。個人的に一番良かったのは五十嵐律人さんの憲法のお話でした。
    殺人や男女関係のエピソードあり、中学校から。
    金子礼介「ルパちゃん」
    日野瑛太郎「推し活制限法」
    朱野帰子「日本国民に英語の勉強を義務づけへ」
    阿部智里「つるべを取られて」
    真下みこと「こんにちは、チャッテー」
    須藤古都離「虚法」
    嶋戸悠祐「国家殲滅フットボール法」
    多崎礼「復讐者は振り向かない」
    風森章羽「コロシヤとユキオンナ」
    名倉編「Touch la

    0
    2025年08月11日
  • 新しい法律ができた

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     同じ書き出しで、25人の作家さんが25通りの物語を紡ぐ。1編が6ページほどのショートショートだからサクサク気軽に読めるし、様々なジャンルの物語を1冊で楽しめるためお得感がすごい読書時間を過ごした。

     現実の法から奇想天外な架空の法まで、ジャンルもミステリやディストピアものなど、物語の舞台も現代から近未来、果ては明治時代やアメリカの西部開拓時代まで、多種多様な設定の中でその法律が齎す思わぬ影響や人間模様が繰り広げられる。短いながらどの作品もとてつもない読み応えだった。

     法律というテーマ故か、ディストピアものとの相性が特に良かったように感じる。
     ハッとしたのは、今私たちの生きている世界は

    0
    2025年06月28日
  • 新しい法律ができた

    Posted by ブクログ

    ショートショートというものを初めて読んだ。
    なので、他シリーズは未読。

    「新しい法律ができた」
    最初の1行は全員一緒。
    なんだそれ、面白い!!!
    同じ一行から始まるのに、話の内容も展開も全く違う。面白い。

    1つ目のお話(金子玲介、ルパちゃん)が重くて、苦しくて、
    え!?これ読めるか!?と思ってしまった。
    が、作家によって内容は十人十色。
    様々なバリエーションがあるのが面白かった。
    しかし、法律が主題なので、内容が難しいものも多かった。

    塩屋験さんは(AIが小説を書くようになるが、作者は人の名前にし、人間かAIが書いているか分からなくするという話)、最後、え!?となって驚かされた

    シリア

    0
    2025年06月17日
  • 未来図と蜘蛛の巣

    Posted by ブクログ

     冒頭の短編「待ち合わせる」がものすごく好きで何回も読みました。ほぼなんでもない日常とも言えるような状況なのだけれど、薄氷を踏むような不安と緊張感と、すがりつくような必死な愛情を感じました。

     中編「エンタ」は少女庭国にも似て、やはり実験装置の中のケーススタディのように受け取りました。ウマ娘のようなゲームの中で競わされるキャラクターをよく見てみれば、そこにはこんな生の泥臭さがあるはず、ということでしょうか。「昨日と今日が別のものだと嘘をつく」。「自分が間抜けだとわかっていたことにしたくなる」といったような表現が実に矢部的で好きです。

     全体的には難しかったです。自分にとっては、確かに良い、

    0
    2025年05月18日
  • 魔女の子供はやってこない

    Posted by ブクログ

     小学生の主人公と魔女を名乗る少女の邂逅から始まる心暖まる童話…とは全く違い序盤で級友五人が死に、その後も歪んだ視点で綴られる日常とそれを越える人間の醜さが強烈でまさに「吐くほどキュートな暗黒系童話」だった反面、最終話では切なさも感じられた。

    0
    2025年05月10日
  • 紗央里ちゃんの家

    Posted by ブクログ

    表紙は福満の文庫で。

    ホラーは好きで好んで読むが、これは「薄いな。すぐ読めそう」という理由だけで手を出した。結果、新しい扉を開くことになった。

    他のどの作家とも違う、古典にもネットにも寄っていない。あえて…あえて本当にあえるなら筒井か? でもそれも違う。

    謎解きもない。小学5年生の男の子が死体を探す。でもいちばんこわいのはそこじゃない。

    毎食のご飯がカップ焼きそば。
    降り続ける雨。
    何度でも洗われるお皿。
    食べたいウィンナー。
    臭くても言ってはならない他人の家。
    他人? 親戚? 家族とは?

    おそらく、この作者は本質を知っているのだ。
    だけど、言ってもまた仕方のないことだということも知

    0
    2025年04月20日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

     卒業式を迎える筈の中学3年生の女子達が理不尽な卒業試験に強制参加させられるデスゲーム系のホラーと思いきや、当初予想していたものからかけ離れた物語の展開は難解ながらも引き込まれるものだった。「これも奇書に当てはまるのではないか?」という不気味さもあった。

    0
    2025年03月03日
  • 魔女の子供はやってこない

    Posted by ブクログ


    一見児童向けの表紙と表題だが、かなり邪悪な奇書。
    連作短編の形を取り、前半はB級映画のようなシュールなスプラッタ物だが、4話以降は胸焼けするようなダークな内容が大量展開される。
    子供が使う魔法など到底太刀打ちできない人間の深淵と無力感に戦慄する。
    読みにくい悪文は健在だが、ホラー作品として“黒光り”を放つ魔本だった。

    0
    2025年02月06日
  • 魔女の子供はやってこない

    Posted by ブクログ

    「魔女の子供はやってこない」 書評:言葉と構造で織り成す異次元の物語

    矢部嵩の『魔女の子供はやってこない』は、読む者を深く引き込み、現実と虚構の境界を曖昧にする圧倒的な表現力と構造の妙が光る作品だ。物語を追うごとに、狂気と奇妙な美しさが交錯する世界観が広がり、読む者の感覚を揺さぶり続ける。

    まずこの本の表現力は圧巻だ。文章に添えられた「ぼりぼりぼりぼり」というルビが、その場の壮絶さや不気味さを直感的に伝える。さらに、モンタージュ風の描写では文章に番号を振り、視点の断片化を鮮やかに再現している。極めつけは、家の1階と2階での声を文章の配置で表現した部分だ。この手法によって、文字そのものが物語

    0
    2025年01月28日
  • 紗央里ちゃんの家

    Posted by ブクログ


    作中で、異常でないものを探すことが難しい。
    にも関わらず、まるでどこかに整合性が残っている様な、秘密が隠されている様なきれぎれな状態で話は進行し、読者は何一つ縋るよすがが無いまま作品に突き放される。メタファーや何かの意図はどうやらありそうなのだが、恐怖ではなくこの作品全体を取り巻く生理的な嫌悪感が、読者の作品考察の意志を削ぐ。
    この特異さを自分は読書体験としてそこそこ楽しんでしまった。

    0
    2025年01月07日
  • 紗央里ちゃんの家

    Posted by ブクログ

     小学生の主人公が父と共に親戚の家を訪れ、亡くなったお祖母ちゃんの詳細や従姉の紗央里ちゃんの不在などを訝しむうちに、洗面所で謎の指の欠片を見つけてしまうという、登場人物全員が異常かつ狂った文体で淡々と語られる物語が不気味だった。ラストは…

    0
    2024年11月18日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    どこかでおすすめされてたので。タイトルや表紙や百合だって言葉に惑わされずに読んで良かった。タイトルはあっという間に終わる、呆気なさや戸惑いは補遺で満たされる。

    0
    2024年07月15日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    読み始めてすぐに「魔女の子供はやってこない」の人か!と気づき座り直して読みました。
    果たしてAIにこれが書けるかな。この人がいる限り創作は死なないなって思う。
    三大奇書に並ぶのではないか、と褒め倒しそうになる一方で、子供には絶対読ませたくない胸糞本なので、星の数が難しいです。
    後、著者がこの人だってわかってたらきっと読んでない。鬱になりそう。

    0
    2024年04月30日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    脱出できるのは一人だけ。
    デスゲームであり、シチュエーションノベルであり、文明勃興記であり、青春小説であり、実験小説であり…百合でもあるのか。
    無限に増殖する少女。殺すか殺されるか死ぬか生きるか。不条理を超えた先にある感慨。ともかくとんでもない作品。

    0
    2024年01月14日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    卒業式会場に向かっていた中三の羊歯子は、気づくと暗い部屋で目覚めた。部屋は四角く石造りだった。部屋には2枚ドアがあり、内一方には張り紙がしてあった。
    "卒業生各位 下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし、死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする"


    無限に囚われた少女たちの話。以前ハヤカワ文庫さんが行っていた、「ハヤカワ文庫の百合SFフェア」の対象作品のうちの1冊で、先に言っておくとなかなかの奇書、あるいは実験小説の類に近いかと思います。
    ちなみに、ここは個人的見解によると思いますが、私はあまり百合味は感じませんでした。

    0
    2023年12月24日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の数をmとする時、n-m=1とせよ。
    卒業試験として課された命題だけを見ると、脱出ゲーム、デスゲーム、バトルロワイヤルなどが想像されますが、そういうものも含めた人類史のような一冊でした。
    意外な広がりもありつつ、核心には触れない。映画CUBEを見たときの感覚に近い。
    少女たちを閉鎖空間に閉じ込めて何やかんやという話が好きなんでしょ、ということかな。
    五九[東南条桜薫子]のエピソードがこの本のすべてという気がしました。

    0
    2023年12月19日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    脱出ゲーム的な話かと思いきや、なんだか世界が発展する縮図を見たかのように感じ、小説を読んではいるのだが、何か他のことが頭の片隅にずっとへばりつくような小説。

    他のどんな小説とも似ない、ある種奇妙で独立しているなぁと感じる。

    人が増えれば増えるほど厄介だけど、快適な生活はできるのだと実感。支え合いは必要だけど、もはや依存関係になっているんだよなぁ、と。

    0
    2023年08月14日
  • 〔少女庭国〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    〈ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする〉という卒業試験に放り込まれた中3女子たちのお話。
    〔少女庭国〕よりも〔少女庭国補遺〕からが本番でした。
    大叙事詩…勃興と滅亡を繰り返す中3女子たち。
    世界には部屋と扉と中3女子しかなくて、生きていくとしたらそれらでどうにかやっていくしかない。食べ物飲み物、生活の道具…部屋と扉と中3女子しかないので“それらでやっていくしかない”。
    レポートのように書かれる子もいれば、しっかりストーリー仕立てで描かれる子もいました。
    SF、デスゲーム系、百合、架空の歴史書…どれにも当て嵌まるし、でも初めて読む質

    0
    2023年07月30日