笹本稜平のレビュー一覧
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警視庁監査部に所属する、おなじみ「三匹の侍」が、警察という組織を私物化し、私欲を満たす道具とする黒幕を相手に戦う、小気味いいシリーズの第三弾。
今回の敵は、悪徳ファンドマネージャーと結託し、インサイダー取引で私腹を肥やす警視庁幹部ばかりでなく、検察庁、国税庁にもまたがる悪のネットワーク。
悪のネットワークに、脱税やマネーロンダリングも絡んできて、果たして「三匹の侍」に勝機ありや。ハラハラドキドキの展開に、今回も目が離せない。
『その悪が巨大であればあるほど、その権力が大きければ大きいほど、組織内部の人間はそれを悪と感じなくなる。長いものには巻かれろというのが組織に生きる人間の処世の鉄則・・・、相手も長くて太いほど、まかれ心地もいいらしい』。書中の著述は、警察ばかりでなく、最近の不祥事をみると、一般の企業にもいえる言葉である。 -
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ビンティ・チュリ(祈りの峰)僕ら3人が出会った山小屋「ビンティ・ヒュッテ」から名前を取って命名した。未だ名前の無い未踏峰。7000m満たない目立たぬ頂きだが、僕らを残し亡くなったパウロさんと僕らの希望の頂だ。パウロさんと僕らは4人のチーム、必ず彼と共に祈りの峰に辿り着こう。胸にはパウロさんの遺骨と、彼が僕らに残してくれた希望を抱いて・・・。
元敏腕システムエンジニアだった裕也は、万引きにより逮捕され職を追われた。
派遣社員として先の見えない仕事に明け暮れる毎日の中、ふと目にした北八ヶ岳の山小屋の募集に応募する。
山小屋「ビンティ・ヒュッテ」のオーナの蒔本(パウロ=洗礼名)は裕也を即決で雇い入れ暖かく遇した。
パウロは世界的に名の知れたクライマーだったが、現役を退き登山用品店経営を経て、北八ヶ岳で山小屋を経営するに至った。
ビンティ・ヒュッテのスタッフには、卓越した料理の才能が有りながら、アスペルガー症候群であるが故に職場に馴染めずなかったサヤカ。
知的障害はあるが頑強な体と繊細なスケッチ能力を持つ慎二が働いていた。
彼らはパウロの大木のような魅力の下で伸び伸びと仕事を続けていた。
4人は共通の夢を見るようになる。それはエベレストに有る名も無き未踏峰に挑み4人で頂きを踏む事。
具体的に実現する為4人は冬の富士山で訓練を繰り返し着実に実力を伸ばしていった。
山小屋はシーズンオフは働く事が出来ない。3人はそれぞれ違う職場でシーズンインの日を夢見て仕事に勤しんでいた。
そんなある日、山小屋が火事になりパウロは焼死してしまう。
彼らは嘆き悲しんだが、弁護士を通しパウロから3人に遺言が届く。
その遺言にはパウロの生きてきた足跡、そして遺産を彼らに譲り各々の人生に役立てて欲しいという記載が有った。
サヤカは言った「パウロさんを連れてってあげようよ・ビンティ・チュリへ」
分かった。登ろう、ビンティ・チュリに。パウロさんと僕らの夢を実現する為に・・・
この本を山岳小説と読むか、成長小説と読むかで正反対の評価になります。
評判があまりよろしく無い本ではありますが、僕はこの本とても感動しました。
山に夢中でしがみつく事で生きている喜びを全身で感じて、新たな人生の扉を開く原動力にしていく姿を頭に描いて、自分も頑張らなくっちゃと高校生みたいな安直な感想を抱きました。 -
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警察の闇を暴く警察小説、面白くないはずがない。
しかも、警察官の不正を断罪する監察係を主人公とする痛快シリーズ『素行調査官』の著者ならば。
『素行・・・』が、職務として警察官を調査する「三人の侍」に対し、こちらはいささか「目的」の違った仲間が、主人公とタッグを組む。犯罪者の金の横取りが目当ての刑事と金目当てに助力する暴力団組長。何ともユニークなキャラが仲間を組むことか。
今回は実際に巷で噂されるパチンコ業界と警察との癒着がテーマ。汚辱にまみれた警察の上層部及び警察庁の幹部に、彼らタスクフォースがどこまで迫れるか、読み応え十分のシリーズ第2弾。 -
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ネタバレ拉致や立て篭もりの被害者の救出などを担当する特殊班の刑事・堂園が、失踪した老人の行方を追う様を、500ページ近くを費やして丹念に描いた物語。
堂園の祖父と失踪した老人・有村との繋がりが、小説の裏のテーマになっている。祖父のかつての故郷・鹿児島にて、戦前戦後を駆け抜けた2人の青年とその恋人たちの哀しい物語。そして、物語の終盤になって解き明かされる謎。その全てが、老人の失踪を引き起こし、堂園の現在の親戚の苦境へと繋がっている。
死亡した被害者の為でも、手柄が欲しいわけでもなく、被害者を生きて取り戻す事に情熱を傾ける堂園の、上司・高平との信頼関係や、桜田門の事勿れ主義のお偉方への怒りがじっくりと描かれている。展開は王道なので、始めからある程度見えているけれど、その安心感を持って読み進められるとも言える。
GWなどの休みにじっくり読みたい方に良いかもです。 -
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笹本稜平の警察小説も侮りがたいが、山岳小説はこそ秀逸。
それぞれに事情を抱える三人が、亡くなった山小屋の主人の魂と一緒にヒマラヤ未踏峰を目指す。世間の片隅で小さくなっていた負け犬根性の自分たちの人生を生きなおすために。
山岳小説の白眉『還るべき場所』とともに、この作品も「生きるとは何か」を問いかける。
著者は、登場人物の一人に語らせる。
『幸福は他人から与えられるものじゃない。誰かから盗みとれるものでもない。自分の心の中にもともと火種があるんだよ。幸福になれるかなれないかは、それを自分で燃え立たせられるかどうかで決まるんだ。・・・』
生きることに疑問を感じるひとへ
『つまり、人間て、ただ生きているだけで意味があるんだってということよ』
さらに、著者は呼びかける。
「自分の落ち込んだ苦境を時代のせいにするのは簡単だ。しかしそれでは何も変わらない。時代を変えられないのなら、自分を変えるというやり方もある。自分が変われば世界の見え方も変わってくるはずだ。」
そして、夢を持つこと、希望を抱くこと、未来を信じること、を。