笹本稜平のレビュー一覧
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警視庁監査部に所属する、おなじみ「三匹の侍」が、警察という組織を私物化し、私欲を満たす道具とする黒幕を相手に戦う、小気味いいシリーズの第三弾。
今回の敵は、悪徳ファンドマネージャーと結託し、インサイダー取引で私腹を肥やす警視庁幹部ばかりでなく、検察庁、国税庁にもまたがる悪のネットワーク。
悪のネットワークに、脱税やマネーロンダリングも絡んできて、果たして「三匹の侍」に勝機ありや。ハラハラドキドキの展開に、今回も目が離せない。
『その悪が巨大であればあるほど、その権力が大きければ大きいほど、組織内部の人間はそれを悪と感じなくなる。長いものには巻かれろというのが組織に生きる人間の処世の鉄則・・・、 -
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ビンティ・チュリ(祈りの峰)僕ら3人が出会った山小屋「ビンティ・ヒュッテ」から名前を取って命名した。未だ名前の無い未踏峰。7000m満たない目立たぬ頂きだが、僕らを残し亡くなったパウロさんと僕らの希望の頂だ。パウロさんと僕らは4人のチーム、必ず彼と共に祈りの峰に辿り着こう。胸にはパウロさんの遺骨と、彼が僕らに残してくれた希望を抱いて・・・。
元敏腕システムエンジニアだった裕也は、万引きにより逮捕され職を追われた。
派遣社員として先の見えない仕事に明け暮れる毎日の中、ふと目にした北八ヶ岳の山小屋の募集に応募する。
山小屋「ビンティ・ヒュッテ」のオーナの蒔本(パウロ=洗礼名)は裕也を即決で雇い入 -
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警察の闇を暴く警察小説、面白くないはずがない。
しかも、警察官の不正を断罪する監察係を主人公とする痛快シリーズ『素行調査官』の著者ならば。
『素行・・・』が、職務として警察官を調査する「三人の侍」に対し、こちらはいささか「目的」の違った仲間が、主人公とタッグを組む。犯罪者の金の横取りが目当ての刑事と金目当てに助力する暴力団組長。何ともユニークなキャラが仲間を組むことか。
今回は実際に巷で噂されるパチンコ業界と警察との癒着がテーマ。汚辱にまみれた警察の上層部及び警察庁の幹部に、彼らタスクフォースがどこまで迫れるか、読み応え十分のシリーズ第2弾。 -
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ネタバレ拉致や立て篭もりの被害者の救出などを担当する特殊班の刑事・堂園が、失踪した老人の行方を追う様を、500ページ近くを費やして丹念に描いた物語。
堂園の祖父と失踪した老人・有村との繋がりが、小説の裏のテーマになっている。祖父のかつての故郷・鹿児島にて、戦前戦後を駆け抜けた2人の青年とその恋人たちの哀しい物語。そして、物語の終盤になって解き明かされる謎。その全てが、老人の失踪を引き起こし、堂園の現在の親戚の苦境へと繋がっている。
死亡した被害者の為でも、手柄が欲しいわけでもなく、被害者を生きて取り戻す事に情熱を傾ける堂園の、上司・高平との信頼関係や、桜田門の事勿れ主義のお偉方への怒りがじっくりと -
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笹本稜平の警察小説も侮りがたいが、山岳小説はこそ秀逸。
それぞれに事情を抱える三人が、亡くなった山小屋の主人の魂と一緒にヒマラヤ未踏峰を目指す。世間の片隅で小さくなっていた負け犬根性の自分たちの人生を生きなおすために。
山岳小説の白眉『還るべき場所』とともに、この作品も「生きるとは何か」を問いかける。
著者は、登場人物の一人に語らせる。
『幸福は他人から与えられるものじゃない。誰かから盗みとれるものでもない。自分の心の中にもともと火種があるんだよ。幸福になれるかなれないかは、それを自分で燃え立たせられるかどうかで決まるんだ。・・・』
生きることに疑問を感じるひとへ
『つまり、人間て、ただ生きて