笹本稜平のレビュー一覧
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ネタバレ評価は4.
内容(BOOKデーターベースより)
警視庁捜査一課で継続捜査を担当する鷺沼は、捜査二課からの情報をもとに“パチンコ・パチスロ業界のドン”と呼ばれる飛田を訪ねる。飛田の経営する会社にある疑惑が浮かんだためだが、そこには7年前に起きた殺人事件が絡んでいた。捜査を進める鷺沼の前に神奈川県警の宮野が現れる。宮野は七年前の事件の情報を持っていた―。鷺沼と宮野。再び手を組んだ二人に立ちはだかるのは厚い警察組織の壁。真実を掴むため組織と犯罪に闘いを挑む刑事たちの熱い姿を描いた「越境捜査」シリーズ。
それぞれの個性も分かっているので安心して読める。安定のおもしろさ。 -
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「長いものには巻かれない。太い尻尾は逃さない」がチームのスローガン。
警視庁捜査一課特命捜査二係の鷺沼と、神奈川県警のはみ出し刑事宮野、それに二係係長三好、若手刑事の井上。
彼らが、警察の闇に挑むシリーズの第4弾。
今回のターゲットは、警察官僚をも牛耳る存在の政治家。さらに、その裏でうごめく暴力団。
今までは、鷺沼たちが追いかける立場だったが、今回に限っては「流れがいつもと違うのよ。なんだか押しまくられているようで、うっかりすると濁流に呑み込まれて溺れ死にそうな気がするね」と、宮野に言わせるほどの難敵。
これが、題名の所以にもなっているようだ。
ターゲットは見えているのに、見えない圧力で押し戻されるという感覚の彼ら。終盤まで、先行きが見えない。
そんななか、今回初登場するのが、負傷しさらに何者かに狙われている鷺沼の警護を、望んで担当する碑文谷署の女性刑事山中彩香。男所帯だったチームに華を添えている。
今後もチームの一員となるのか、去就が楽しみ。
政治家絡みの刑事事犯に手をつけると、いくら成績優秀で警視総監賞を段ボール箱一箱も貰っていても、巡査部長止まりのまま定年を迎えると、三好係長が語っているが、これってよくあること? -
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長年外洋航海船の船長が最後の船長職となった船は奇しくも初めて船長職として乗船した、パシフィック・ローズ号。その船長最後の日本向け航海の途上でハイジャック事件が起こる。ハイジャック解決に向けて南シナ海の沿岸国と海上保安庁が必死の捜索が続くが行方は洋としてしれない。そんな中、インドネシアの無人島で姿がパシフィックローズに酷似した貨物船から探索機が銃撃を受けた。ハイジャックされたパシフィックローズを押さえるべく暴風の現場海域に派遣された海上保安庁巡視船かいもんとパシフィコローズが決死の航走が続く。臨場感溢れる筆致とスピード感に加えて笹本氏はこの物語に親子の絆、シーマンシップの絆など海洋エンターテイメントに相応しい要素を加えた。下巻も充分期待できる作品である
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大雪山で幻のオオカミを探す男と山岳写真家との出会いから、この物語が始まる。
彼の父とも交流があった男は、殺人罪の刑を終え刑務所を仮出所したばかり。しかし、彼の容疑には冤罪の疑いがあり、その謎の解明と幻のオオカミ探しが同時に進行する。
山岳小説に、警察小説、それに動物小説が融合した贅沢な作品。
オオカミを探し求めての中盤までは、冗長な部分も無きにしも非ずだが、後半は冤罪を画策した犯人との攻防、雪山での遭難と、一転緊迫感を増して一気に読ませる。
ここでオオカミは、自然破壊を繰り返す罪深き人間と対極をなすものとして描かれる。昔は、オオカミがいて豊かな自然が保たれていたのに、文明に毒された人間はその大事なことを忘れていると。
「オオカミは大自然が人間社会に派遣した親善大使のような存在」と、登場人物に言わせる。
山岳小説の泰斗ともいうべき著者の自然観が、如実に表されている作品でもある。
また、写真家の父親の言葉として「奈落の上の綱渡り」が再三語られる。人生を例え、その綱とは何かを信じること、そして信じて渡るか臆して逃げるか、と。
「信じて渡る」爽やかな男たちの物語である。 -
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連続殺人事件を追う警察小説でありながら父と子の物語でもある。
刑事として捜査ひと筋に生きてきた葛木は息子に対して負い目を感じている。
父として遊んでやったこともどこかに連れて行ってやったこともほとんどない。
妻にばかり子育てを押つけて、まるで母子家庭のような環境に息子を置いてきたからだ。
息子が父の背中から何を学んだかはわからない。
キャリアとして警察庁に入り、いまやエリート警察官となった息子。
その息子が葛木たちの署に設置された捜査本部に管理官としてやってきた。
所轄の刑事たちを手足のように使い、手柄をひとり占めしようとする本庁捜査一課の山岡。
きっちりと筋を通す息子・俊史のやり方は山岡を苛立たせる。
捜査の目処が立たないまま犠牲者は増えていく。
あまりにも出来すぎた息子に少しだけ辟易したが、物語だと思えばあり得ない設定でもない。
刑事の勘というけれど、何かひっかかるような感覚をそう表すのだろうか。
葛木は自分自身の直感を信じ、仲間たちと協力しながら真犯人へとたどり着く。
所轄刑事の意地を感じた物語だった。
本庁に勤務する刑事たちからみれば所轄は道案内くらいにしか思わないかもしれない。
葛木自身にも経験のあることだった。
だからこそ、互いに協力することの大切さを知っているともいえる。
二転三転する捜査方針。
方向が決まってしまえば、他にどんなに有力な情報が出てきても排除されていく。
それは誰にも止められない。
本来、そんなことがあってはならないのだろうが、いかにもありそうで怖い気もしてくる。
読みやすいけれど読み応えがある。
そんな物語だった。 -
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著者の山岳小説の一つの到達点と、解説に書かれてあるが、言いえて妙と共感する。
マッキンリーのカシンリッジ冬季単独登攀を試みる主人公が連絡を絶ち、その盟友が捜索活動する様に全編が費やされている。
山々の描写、登攀の状況、いずれもその場に立ち会わなければ書けないような、そして読者をその場に立たせるかのようなリアルさは、他の作家の追随を許さない著者の独擅場。
そうはいっても、捜索活動の著述は、やや冗長気味で、残りの頁数に嘆息気味であった。
けれども、アラスカ先住民=インディアンで長老の存在が、そんな思惑を削いでくれた。彼が折々に語る処世訓を超えた人生の要諦は、作品を引き締める役割を果たしてくれる。
その精神論、観念的な理念に反発を感じ、批判するレビューも見受けられるが、苦難の時、失意の時、逆境を抜け出す一つの手がかりとして、心のどこかに留めておきたい箴言と理解したい。
その一例
「他人を許せなきゃ自分も許せない。自分を許せない人間には魂の安らぐ場所がない」
「信じることだよ、…悪い想像をしたらきりがない。ただ心が不幸になるだけだ。幸運は不幸な心を避けて通る。希望こそが幸運を掴み取る黄金の腕だから」
その他引用に転記。 -
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ネタバレ『還るべき場所』が8000m峰の公募登山を題材としているのに対して、本作品が題材としているのは、6000m台の未踏峰の一番容易なルートからの登山。尖鋭性はなく、ニュースにもならない、ある意味、自己満足の登山と言える。
登山を行うのは、北八ヶ岳のビンティ・ヒュッテの従業員の裕也、サヤカ、慎二の3人。過去にちょっとした出来心から、不祥事を起こして失職した裕也。アスペルガー症候群で他人から理解されずに苦しむサヤカ。知的障害を持つ慎二。
この作品の最大の特徴は、社会的に疎外され、登山経験の少ない3人が、彼ら3人を結びつけ、理解し、支えてくれたパウロさんの遺志を継いで、力を合わせて、4人の共通の夢である未踏峰初登頂に挑戦する姿にある。障害を持っている人と健常者とが、支え合い、協力する姿を描いたひとつのモデルと言える。
この作品を魅力的なものとしているのは、ビンティ・ヒュッテのオーナーのパウロさんの「ブナの古木」のような人柄だ。
また、作中には、人生や山に関する味わい深い言葉が随所に織り込まれている。
読み進めていくにしたがって、最後に何か大きなアクシデントに遭遇するものと思っていたが、二人パーティーの登場ぐらいで、その二人も悪人ではなかったので、やや拍子抜けした。
情景描写や心理描写に関しては、重複していて、やや冗長に感じる箇所がある。また、サヤカはアスペルガー症候群であるにも関わらず、パウロさんの心情を理解しているような描写があったり、知的障害者である慎二にちょっとしたミスが命取りになる高所冬山登山ができるのかと疑問を感じるなど、リアリティーに欠けていると感じるところもある。 -
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学生時代に過激に山を登った藤木と森尾。藤木は怪我の後激しい山登りは出来なくなったが、その後激しくなくとも色々な人々に山の素晴らしさを体験させて、生活の糧とする事に喜びを見出し、ニュージーランドのアウトドアに特化したツアー会社を立ち上げた。森尾は藤木に誘われスタッフとして充実した毎日を過ごしていた。
会社の名前の基にもなった”光の山”アスパイアリングに登るツアーは会社の看板でもあり、スタッフであっても登る度に新たな力を得られるような素晴らしい山だった。
今回もつつがなくツアーを行える予定だったが、突然の自然落石によって貴い命が奪われ、生き残った人々と力を併せ生還した森尾。力を尽くした森尾に参加者や遺族からも労いと感謝の言葉を貰い、世論も英雄的な行為を褒めこそすれ非難される事は無かった。
しかし、有る時突然降って湧いたような、意図的な殺人を示唆する報道、検察からの殺人罪での逮捕で、地の底へ叩き落とされる事となった。一体誰が森尾を陥れようとしているのだろうか・・・・。 -
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海洋冒険小説と謳っているから、ドンドンパチパチの活劇要素たっぷりの作品かとの思惑とは全く違った(笑)(活劇要素を求めるなら、未読だが『太平洋の薔薇』らしい)。
しかし、沈船をめぐってのスリリングな展開に、本を置く能わず。
400年の時を超えて、祖先が眠っている沈船の引き揚げを計画するその末裔。
そのプロジェクトに携わる水中考古学の泰斗。
沈船の財貨を巡って引き揚げ方法で敵対するビジネスパーソン。
さらには、頻発する海底火山の噴火。
果たして、沈船の引き揚げは?
壮大なスケールで描く海洋ロマンは、どなたかのレビューにあったように、猛暑たけなわの今、読むのにふさわしい。
また、こんなエンターテイメントを書く著者ほど、「読んだ人全てに希望と勇気を与える」作家は、稀だろう。
その思いは、作中の水中考古学者田野倉のこんなセリフにも現れている。
「前進のない人生は生きることを放棄した人生だ。どんな立派な理屈をこねようとそんな人生には人を動かす力もない。そもそも未来というのはリスクそのものだ。一番大事なのは、そのリスクを背負って一歩前に踏み出すことなんだ。おれはそれを戦略的楽天主義と呼んでいる」 -
Posted by ブクログ
久しぶりの笹本稜平。
いやぁ、良くできたエンタテイメントですこと♪
謎―謎―新事実―謎―新事実―謎―危機―恋愛?―危機―危機―新事実―危機―危機―新事実―危機―勝利♪
これでもか?と、繰り返し窮地に立たされる主人公たち。怪しいヤツは、やっぱり悪い奴だったし……味方になりそうな雰囲気を醸し出しつつもやっぱり怪しさの滲んでいたヤツも、案の定に極悪人だったし……
読者の予測を覆す出来事の連続にして、でも期待は裏切らないというニクい展開で、最後はしっかりハッピーエンド♪
アクションもあり、航空機での空中戦も迫力あり。
これ、もし、ちゃんとした予算とスタッフで映画化されたなら『ダイ・ハード』あたりよりも面白い作品になりそうだな、と。
★4つ、9ポイント。
2016.08.23.古。
※南極って、そんなに広いの????
と、驚き!!!
そこを、飛行機など使えずに犬橇で探検していた時代の人達って……。
※笹本作品には警察モノで初めて出会って、そちらを読む機会の方が多かったのだけれど……、
やっぱり彼の作品は警察モノよりこういうタイプの物語の方が、好きだな。 -
Posted by ブクログ
著者の小説の魅力は、強大な権力や登攀困難な山岳に、過酷な戦いを挑む男を鮮やかに描いていることだ。
警察小説では、『素行調査官』シリーズに代表されるように、警察組織の中で、その権力の中枢の腐敗に敢然と立ち向かう。この作品も同じ系列。
友人の自殺に疑惑を抱いた警視庁組対部の主人公は、真相究明に乗り出す。左遷の異動命令にも屈せず、敵は警察組織と狙いを定め、巨悪に戦いを挑む。友人の妻は失踪し、仲間の中には裏切り者が。誰が敵で誰が味方か、疑心暗鬼に囚われながらも、決して妥協することなく、疑惑解明に突き進んでゆく。
一筋縄ではいかぬ展開に、読み手の心も熱くなり、文庫本586頁は、たちまち読み終えてしまう。