笹本稜平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『破断 越境捜査』/笹本稜平
警察小説のシリーズもののうち、第3弾にあたります。著者の作品を初めて手に取ったのが、このシリーズでした。瞬時にのめりこんでいき、いつも続編が出るのを心待ちにしています。
警察小説ですが、どちらかというと、派手なアクションシーンをはじめ色濃い、味濃いシーンというより、あっさり目な印象が強いのですが、本書においては警察vs公安の図式が明確に示されており、最後はそこまでいったかという展開になっています。
神奈川県瀬谷区の山林で、白骨化した死体が発見された。死体は10年前に都内で疾走した右翼の大物。神奈川県警は自殺で片づけたが、あることに疑念を持つところから物語が始まります。
登場人物も一癖も二癖もある者ばかり。巨大な影となってつきまとう公安に対して、捜査一課の刑事と、県警の不良刑事、ヤクザの大物がワンチームとなり、正攻法ではなく、型破りな対抗法で公安と張り合う!!果たして結末は・・・ -
Posted by ブクログ
アフガニスタンで起きた邦人殺害事件に、政治家が関与しているとの情報に、東京地検の検事と警視庁の刑事さらに公安の警部がタッグを組み、不安定なアフガニスタンで捜査を開始する。
アフガンの地方軍閥組織、タリバーンやIS等々、捜査陣を脅かす存在に、彼らは一時も気を許すことができない状況が続く。
さらに、アメリカCIAの関与。果たして彼らも敵なのか?
そして次々に明らかになる、途上国支援の美名に隠されたODA資金を巡る政権の疑惑。
指揮権が発動されてしまうのか、最後まで予断を許さない展開。
けれども、著者のこれまでの冒険小説の緊迫感までには、少し届かないかなあ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2時間ドラマ特番脚本みたいな警察小説。
笹本稜平の筆があるから読ませるが、これを映像化したら下手すると凡百のサスペンス劇場になってまうだろうなぁ。鹿児島指宿ご当地ものに、脚本になかった特攻隊(知覧あたりも出てくるので)あがり役が出てきたりして…。
老人誘拐救出劇、戦後のどさくさに隠れた謎、主人公と被害者老人の因縁…、ち密に描かれているからこそご都合主義的な展開もハラハラドキドキできる。ノンフィクションのだいご味は「ウソだから安心できるがウソを感じずドキドキできること」だと思っている。この作品もそうだが笹本小説はその辺実に上手くバランスをとってくれるのだ。 -
Posted by ブクログ
ノンキャリアで所轄勤務の係長葛木と、キャリアの息子俊史とが、協力して事件に立ち向かうシリーズの第3弾は、全編、立てこもり犯と葛木たちとの緊迫した攻防で占められている。
立てこもり犯は何と、SITの係員だった元警官。
彼の要求は、退職のきっかけとなった事件の真相を、警察が公表することだった。
その警察幹部の隠蔽を暴くことに共感する葛木と刑事警察部門の面々。
対して、闇に葬りたい公安・警備の幹部は、元警官の射殺を画策する。
刑事部門と公安部門との虚々実々の戦いに、読み手も熱くなる。
刑事である前に一人の人間であろうとする葛木と、警察の不正を糺すために権力を追及するという息子俊史。
彼らの清々しい活躍は、読書の楽しみを満喫させてくれる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ評価は4.
内容(BOOKデーターベースより)
神奈川県瀬谷区の山林で、白骨化した死体が発見された。死体は、十年前に都内で失踪した右翼の大物。神奈川県警は自殺で片付けたが、あることに疑念を持ち捜査結果に納得しない県警の刑事がいた。宮野裕之。宮野はさっそく警視庁に赴く。捜査一課の鷺沼友哉にその疑念を話し、やがて、“不正規捜査”が始まった―。物語冒頭からトップギアで走るスピーディな展開。次々とわき起こる謎。2人の前にちらつく公安警察の影。まるで現実を見ているかのような組織の腐敗を正義で抉る、大好評シリーズ第3弾!!
安定のおもしろさ。しかし、このシリーズを読んでいると公安の腐敗、検察庁の腐敗って現実なんだろうなぁ~と思えてくる。いざって時警察って頼れないんだろうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ評価は4.
内容(BOOKデーターベースより)
警視庁捜査一課で継続捜査を担当する鷺沼は、捜査二課からの情報をもとに“パチンコ・パチスロ業界のドン”と呼ばれる飛田を訪ねる。飛田の経営する会社にある疑惑が浮かんだためだが、そこには7年前に起きた殺人事件が絡んでいた。捜査を進める鷺沼の前に神奈川県警の宮野が現れる。宮野は七年前の事件の情報を持っていた―。鷺沼と宮野。再び手を組んだ二人に立ちはだかるのは厚い警察組織の壁。真実を掴むため組織と犯罪に闘いを挑む刑事たちの熱い姿を描いた「越境捜査」シリーズ。
それぞれの個性も分かっているので安心して読める。安定のおもしろさ。 -
Posted by ブクログ
「長いものには巻かれない。太い尻尾は逃さない」がチームのスローガン。
警視庁捜査一課特命捜査二係の鷺沼と、神奈川県警のはみ出し刑事宮野、それに二係係長三好、若手刑事の井上。
彼らが、警察の闇に挑むシリーズの第4弾。
今回のターゲットは、警察官僚をも牛耳る存在の政治家。さらに、その裏でうごめく暴力団。
今までは、鷺沼たちが追いかける立場だったが、今回に限っては「流れがいつもと違うのよ。なんだか押しまくられているようで、うっかりすると濁流に呑み込まれて溺れ死にそうな気がするね」と、宮野に言わせるほどの難敵。
これが、題名の所以にもなっているようだ。
ターゲットは見えているのに、見えない圧力で押し戻されるという感覚の彼ら。終盤まで、先行きが見えない。
そんななか、今回初登場するのが、負傷しさらに何者かに狙われている鷺沼の警護を、望んで担当する碑文谷署の女性刑事山中彩香。男所帯だったチームに華を添えている。
今後もチームの一員となるのか、去就が楽しみ。
政治家絡みの刑事事犯に手をつけると、いくら成績優秀で警視総監賞を段ボール箱一箱も貰っていても、巡査部長止まりのまま定年を迎えると、三好係長が語っているが、これってよくあること? -
Posted by ブクログ
長年外洋航海船の船長が最後の船長職となった船は奇しくも初めて船長職として乗船した、パシフィック・ローズ号。その船長最後の日本向け航海の途上でハイジャック事件が起こる。ハイジャック解決に向けて南シナ海の沿岸国と海上保安庁が必死の捜索が続くが行方は洋としてしれない。そんな中、インドネシアの無人島で姿がパシフィックローズに酷似した貨物船から探索機が銃撃を受けた。ハイジャックされたパシフィックローズを押さえるべく暴風の現場海域に派遣された海上保安庁巡視船かいもんとパシフィコローズが決死の航走が続く。臨場感溢れる筆致とスピード感に加えて笹本氏はこの物語に親子の絆、シーマンシップの絆など海洋エンターテイメントに相応しい要素を加えた。下巻も充分期待できる作品である
-
Posted by ブクログ
大雪山で幻のオオカミを探す男と山岳写真家との出会いから、この物語が始まる。
彼の父とも交流があった男は、殺人罪の刑を終え刑務所を仮出所したばかり。しかし、彼の容疑には冤罪の疑いがあり、その謎の解明と幻のオオカミ探しが同時に進行する。
山岳小説に、警察小説、それに動物小説が融合した贅沢な作品。
オオカミを探し求めての中盤までは、冗長な部分も無きにしも非ずだが、後半は冤罪を画策した犯人との攻防、雪山での遭難と、一転緊迫感を増して一気に読ませる。
ここでオオカミは、自然破壊を繰り返す罪深き人間と対極をなすものとして描かれる。昔は、オオカミがいて豊かな自然が保たれていたのに、文明に毒された人間はその大事なことを忘れていると。
「オオカミは大自然が人間社会に派遣した親善大使のような存在」と、登場人物に言わせる。
山岳小説の泰斗ともいうべき著者の自然観が、如実に表されている作品でもある。
また、写真家の父親の言葉として「奈落の上の綱渡り」が再三語られる。人生を例え、その綱とは何かを信じること、そして信じて渡るか臆して逃げるか、と。
「信じて渡る」爽やかな男たちの物語である。 -
Posted by ブクログ
笹本稜平『分水嶺』祥伝社文庫。
厳冬の大雪山を舞台にした山岳ミステリー小説。笹本稜平の山岳物だけに十分面白いのだが、少し詰め込み過ぎのように感じた。冬山と殺人ミステリー、幻のオオカミと男のロマンをかき立てる要素はぎっしり詰まり、物語の核となる登場人物も皆、強い志を持つ男ばかり…些か出来過ぎ。
急逝した父親の遺志を継ぎ、山岳写真家として新たな人生を踏み出した風間健介は厳冬の大雪山で亡き父親と親交のあった田沢保と知り合う。絶滅したはずのエゾオオカミの生存を信じる田沢には殺人罪で服役した過去があり、再び田沢の周囲できな臭い事件が起こり始める…
絶滅したはずのオオカミを描いた作品には、柴田哲孝の『WOLF』、熊谷達也の『漂泊の牙』、西村寿行の『魔の牙』など面白い作品が多いが、本作もその中の一作に十分なり得るだろう。 -
Posted by ブクログ
連続殺人事件を追う警察小説でありながら父と子の物語でもある。
刑事として捜査ひと筋に生きてきた葛木は息子に対して負い目を感じている。
父として遊んでやったこともどこかに連れて行ってやったこともほとんどない。
妻にばかり子育てを押つけて、まるで母子家庭のような環境に息子を置いてきたからだ。
息子が父の背中から何を学んだかはわからない。
キャリアとして警察庁に入り、いまやエリート警察官となった息子。
その息子が葛木たちの署に設置された捜査本部に管理官としてやってきた。
所轄の刑事たちを手足のように使い、手柄をひとり占めしようとする本庁捜査一課の山岡。
きっちりと筋を通す息子・俊史のやり方は山岡を苛立たせる。
捜査の目処が立たないまま犠牲者は増えていく。
あまりにも出来すぎた息子に少しだけ辟易したが、物語だと思えばあり得ない設定でもない。
刑事の勘というけれど、何かひっかかるような感覚をそう表すのだろうか。
葛木は自分自身の直感を信じ、仲間たちと協力しながら真犯人へとたどり着く。
所轄刑事の意地を感じた物語だった。
本庁に勤務する刑事たちからみれば所轄は道案内くらいにしか思わないかもしれない。
葛木自身にも経験のあることだった。
だからこそ、互いに協力することの大切さを知っているともいえる。
二転三転する捜査方針。
方向が決まってしまえば、他にどんなに有力な情報が出てきても排除されていく。
それは誰にも止められない。
本来、そんなことがあってはならないのだろうが、いかにもありそうで怖い気もしてくる。
読みやすいけれど読み応えがある。
そんな物語だった。 -
Posted by ブクログ
著者の山岳小説の一つの到達点と、解説に書かれてあるが、言いえて妙と共感する。
マッキンリーのカシンリッジ冬季単独登攀を試みる主人公が連絡を絶ち、その盟友が捜索活動する様に全編が費やされている。
山々の描写、登攀の状況、いずれもその場に立ち会わなければ書けないような、そして読者をその場に立たせるかのようなリアルさは、他の作家の追随を許さない著者の独擅場。
そうはいっても、捜索活動の著述は、やや冗長気味で、残りの頁数に嘆息気味であった。
けれども、アラスカ先住民=インディアンで長老の存在が、そんな思惑を削いでくれた。彼が折々に語る処世訓を超えた人生の要諦は、作品を引き締める役割を果たしてくれる。
その精神論、観念的な理念に反発を感じ、批判するレビューも見受けられるが、苦難の時、失意の時、逆境を抜け出す一つの手がかりとして、心のどこかに留めておきたい箴言と理解したい。
その一例
「他人を許せなきゃ自分も許せない。自分を許せない人間には魂の安らぐ場所がない」
「信じることだよ、…悪い想像をしたらきりがない。ただ心が不幸になるだけだ。幸運は不幸な心を避けて通る。希望こそが幸運を掴み取る黄金の腕だから」
その他引用に転記。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『還るべき場所』が8000m峰の公募登山を題材としているのに対して、本作品が題材としているのは、6000m台の未踏峰の一番容易なルートからの登山。尖鋭性はなく、ニュースにもならない、ある意味、自己満足の登山と言える。
登山を行うのは、北八ヶ岳のビンティ・ヒュッテの従業員の裕也、サヤカ、慎二の3人。過去にちょっとした出来心から、不祥事を起こして失職した裕也。アスペルガー症候群で他人から理解されずに苦しむサヤカ。知的障害を持つ慎二。
この作品の最大の特徴は、社会的に疎外され、登山経験の少ない3人が、彼ら3人を結びつけ、理解し、支えてくれたパウロさんの遺志を継いで、力を合わせて、4人の共通の夢である未踏峰初登頂に挑戦する姿にある。障害を持っている人と健常者とが、支え合い、協力する姿を描いたひとつのモデルと言える。
この作品を魅力的なものとしているのは、ビンティ・ヒュッテのオーナーのパウロさんの「ブナの古木」のような人柄だ。
また、作中には、人生や山に関する味わい深い言葉が随所に織り込まれている。
読み進めていくにしたがって、最後に何か大きなアクシデントに遭遇するものと思っていたが、二人パーティーの登場ぐらいで、その二人も悪人ではなかったので、やや拍子抜けした。
情景描写や心理描写に関しては、重複していて、やや冗長に感じる箇所がある。また、サヤカはアスペルガー症候群であるにも関わらず、パウロさんの心情を理解しているような描写があったり、知的障害者である慎二にちょっとしたミスが命取りになる高所冬山登山ができるのかと疑問を感じるなど、リアリティーに欠けていると感じるところもある。