笹本稜平のレビュー一覧
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ソロで数々の難壁を初登頂してきた奈良原和志が、伝説的登山家の初登頂に疑惑を持たれた最難関のローツェ南壁に挑む本格山岳小説。
山岳冒険小説や山岳警察小説といった山を舞台にした小説は数多あるが、登攀自体にここまで的を絞った山岳小説は稀であろう。
ローツェ南壁登攀の前哨戦として、先輩アルピニストの磯村とともに挑むローツェ・シャール縦走もリアル感がタップリ迫力のある描写で、著者もこのコースを経験したのだろうかとの思いがよぎる。
「単なる功名心や征服欲のためではなく、素直で謙虚な心で山と戯れる人びとが増えてくれば、人類はそれだけ豊かになるはずだ」との和志の思いは、作者の思いでもあるだろう。
「大事なのは -
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ヒマラヤ、バルンツェの氷壁をソロで踏破した奈良原和志は一匹狼のアルピニストだった。仲間であり師である磯村に迎えられ、下山してからヒマラヤの登山記録を編纂しているエリザベス・ホーリーのインタビューを受けた。
大人数でチームを組み、大量の酸素ボンベや器材を活用して登る極地法が一般的な登山のイメージだが近頃は高山病のリスクを避けるため軽装で短時間での登坂と下山を目指すアルパインスタイルが主流と成りつつある。
他人と関わることを苦手とする和志としてはバディのスキルや判断決心の容易さから単独でのアルパインスタイルが性に合っており、合理的だった。
和志の夢である、世界第4位の高さでありながら実質高低差が3 -
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ネタバレ長野県警山岳遭難救助隊の桑崎祐二と浜村隆は非番を利用し雪残る後立山連峰に登っていた。そんな時、登山者としては不審な3人組がカクネ里にいるのを見つけた。立場上遭難されても困るため気を配っていたところ、下山途中にカクネ里で倒れている人を見つける。その女性遺体を回収するヘリが迎えにくる時に雪崩が発生し、二人は間一髪救出された。
遺体は他殺のおそれがあり事件の匂いがしたが捜査一課の富坂は山の中の事件の捜査に消極的だった。
その後、男2人と女1人のパーティから救難要請があり、遺体について何か知っている可能性があるカクネ里の怪しい3人組と思えたが吹雪の積雪のため男2人は死亡、女も意識不明だった。 -
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ネタバレ北緯85°の北極圏で資源探査をおこなっているポーラスター85は日本の資源探査会社ジオデータが運営している。隊長は郷田裕斗、若手社員の山浦、女性社員の峰谷、アメリカのパシフィックペトロリアムから2名とカナダ系イヌイットの2名の計8名だった。
そんなポーラスター85が撤収に懸かろうとしていたときロシアがキレイな水爆「ソーヴェスチ」を北極海の水中で起爆させた。地震と共に北極の氷盤には大きな穴があき、海の中には高温の海流が流れた為に北極の氷が溶け出している事がわかった。極度に発達した低気圧の悪気象の為、通常の手段での撤収ができなくなったメンバーは安定した氷を求め移動を開始する。
米国も救助に消極的で大 -
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恋人を自爆テロの犯人に仕立て上げられた唐澤龍二は、首謀者を捉えるため警視庁公安捜査官となる。
その首謀者が新たなテロを予告する。
上司の高坂や同僚たちとともに、テロの防止と犯人検挙に邁進するが、唐澤の前に立ち塞がり彼を目の仇とする部下の井川巡査部長。彼の行動の裏に何があるのか。
犯人への追及と同時に、井川の思惑を捜査することになる。
あるときは強引な捜査をする唐澤であるが、立てこもり犯を前にした状況での彼の言葉に、警察官としての矜持が表れる。
「たとえ相手がテロリストであれ、他の手段を一切論じず狙撃するのが許されるなら、警察はただの私刑集団です。そのときは、一個人の立場から告発も辞さない覚悟で -
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無名のアルパインクライマー・奈良原和志がスポンサーや仲間を得て成長して行く様子は、読んでいて気持ちが良かったです。そしてマルク一味やネパール役人などダークサイドが存在しての攻防戦は、まさしく人間の性(さが)で、アルパインクライミングにおいても例外じゃないですね。
「大事なのは誰かがその頂に立ったという真実であって、それを信じることが登山という文化の高貴なモラル」の一文、なかなかシビアな課題だなと思いました。結局は「たとえ噓をつく人間がいたとしても、それは当人が心に恥を抱えて生きればいいだけの話」なのでしょうが、人間が不完全な以上、この課題は永遠に続きますね。 -
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笹本稜平『アイスクライシス』徳間文庫。
極限サバイバル冒険小説。
今一つドラマとスリルに欠ける感じがする。しかし、北極で海底資源を巡り、ロシア、中国、カナダ、アメリカなどの大国が凌ぎを削りながら暗躍しているのは充分に有り得る話だろう。
資源探査会社に勤務する郷田裕斗は、海底油田の探査のために北極の基地に赴いていた。基地では郷田の同僚とアメリカ人の石油会社のオブザーバー、海洋学者、カナダ系イヌイットたちの総勢7名が油田探査の任務を行っていた。
ある日、郷田たちの基地を激しい揺れが襲う。海底火山の噴火かと動揺が走る中、本社からの情報によりロシアが北極の海底でフォールアウトを生成しない水素爆 -
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「笹本稜平」の山岳長篇小説『未踏峰』を読みました。
『還るべき場所』、『春を背負って』に続き、「笹本稜平」作品です。
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圧巻の山岳シーン、骨太の人間ドラマ。
魂をすすぐ山岳巨編!
「魂の〝青さ〟をくすませるすべてのものへ叩きつけた 渾身の挑戦状」 これを読め!
ときわ書房本店「宇田川拓也」、感動に吼える!
遺骨の入ったケースを胸に、それぞれに事情を抱える「橘裕也」と「戸村サヤカ」、「勝田慎二」の三人は、ヒマラヤ未踏峰に挑んでいた。
彼らをこの挑戦に導いたのは登山家として世界に名を馳せ、その後北八ヶ岳の山小屋主人になった〈パウロさん〉だった。