笹本稜平のレビュー一覧
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『偽装 越境捜査』/笹本稜平
シリーズ第五弾を迎えた、この『越境捜査』シリーズ。
巻を重ねるごとに、鷺沼、宮野をはじめとする混合タスクフォースの味は深まるばかり。
警察小説としても、他に類をみない独特のその味は、自然と病みつきになること間違いなし。
本書では、三年前に新宿で起きた傷害致死事件の容疑者と目される男が横浜のマンションの一室で死体となって発見された。男は、大手金属加工機メーカーの創業者一族の御曹司・木崎乙彦。
彼の身辺を捜査する鷺沼に、一代で財を成した権力者が君臨する大企業の影が。権威と金に見舞われる事件と対峙した時、見えてみたのは・・・ -
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ネタバレ駐在刑事シリーズ2作目。なんとつい最近までテレビドラマをやってたらしい、全然知らんかった。
知っててもドラマを追いかける趣味はないので、観なかっただろうけど。
笹本稜平のエエとこどり(警察小説と山岳小説)とも思えるこのシリーズ。
とはいえ、日本を揺るがすようなとんでもない事件が起きるということはなく、せいぜいまさに駐在さんレベルが頑張る事件が起き、厳冬期8000メートル級山岳や5.14以上の高難度クライミングやらが出てくるわけでもなく、奥多摩の2000メートル以内の日本らしい山が舞台。
こう書くと、エエとこ両方とも抜いた感もあるように思えるが、その抜き加減が絶妙に上手い。
何もハラハラドキ -
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ラストは久々に魂が揺さぶられ、感涙ものである。本作の骨太なエンターテイメントはぶれることなくラストに見事に熱を発しながら収束する。物語の端緒でハイジャックされた後、荒れ狂う海を南シナ海、東シナ海、日本海そして津軽海峡を経て太平洋まで操船してきたシーマンとしての柚木キャプテンの存在が本書の全てであるが、脇もしっかり存在感ある人物で固められている。上巻からの荒狂う海での神がかり的な操船と巡視船かいもん艦長矢吹、IMB本部で柚木艦長の愛娘でもある海上保安庁から駐在官を支える上司のコンディリスとまさに男気満載。一歩間違うとクサイ展開になりそうなものだがその辺が笹本氏の凄いところかもしれない。
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きちんとまとまった面白い作品だと思います。普通に良作だと思います。
笹本氏の作品は、人間を上手に描き出しているなあと感じます。ハイテク技術云々は材料に過ぎません。基本的に技術を礼賛するでもなく、ひたすら各々の人間性を問うているというか。人間の所業の功罪について、それを問うているのだろうと。詰まるところは生き方を考えさせられるというか。
元々の題名は『影のない訪問者』らしいです。新聞の連載小説だったらしいです。個々の趣味により好き嫌いは分かれると思いますが、どうにもウケを間違えているように思いました。スキャンダラスな表題にしてしまい却って損しているだろうなと感じます。
終わり方もあっさりし -
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大分前に購入「積ん読」状態だったのをなぜか読みました。
正直楽しかったです。
作家さん達の代表作のスピンオフというか表題通り「サイドストーリー」。読んだことの無い作品もありましたが、丁寧に作者の横顔やメインのストーリーも書いてあるというサービス付。すべて「煙草」や「一服ひろば」に関連して書いてありますが、上手くからめてあるお話もあれば、やや無くてもいいんじゃない?的なお話も。
冲方丁の「天地明察」は読んでみたいと思っていた本だったので、ますます読みたくなりました。
貴志佑介の「鍵のかかった部屋」からのお話はドラマで見ていた佐藤浩市の芹沢がメインになったのには驚きましたが、まんまでしたね。
限ら -
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ネタバレ笹本稜平作品にしては、小さい小説である。
でも小さいなりに凄くいい。
事件は駐在所が絡む程度の事件だし、主人公は中央での競争に敗れて地方に落ちた警察官僚、登場人物たちも分かりやすくデフォルメされた性格で、舞台はほぼ奥多摩の山か里起こる手の届き感。
これ、笹本小説を期待するから拍子抜けするけど、系譜が理解できたら、楽しみ方が分かる。よーするに江戸時代小説の市井人情ものを味わうように読めば味の分かる作品集だということだ。
山登りも重要な要素になっていて(1作なんかあこがれの北鎌尾根登るんやで、小説とはいえエエなぁ~)俺は甘めに加点します、続編も楽しみ。
それにしても、北鎌尾根って、奥多摩雲取 -
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ニュージーランドの山=アスパイアリングの魅力的な描写、落石事故による遭難からの決死の脱出劇も臨場感たっぷりで、それだけでも楽しめる。
それに加え、この事故が、未必の故意による殺人だと決めつける検察の異常な訴追。その背後にあるのは何か、不気味さに読み手の興味はいやがうえにも増すばかり。
無実を訴える主人公の森尾ばかりでなく、今回のツアーに参加した面々、弁護士の岸田、そして何より検事の湯沢、それぞれが重要な役割を果たしていて、山岳小説+リーガルサスペンスと、一冊で2度楽しめるエンターテイメントと言っていい。
「・・・人生というのは自分で闘いとるべきものだと思うから」という、主人公の姿勢が最後に勝利 -
Posted by ブクログ
迫力のある山岳小説と面白い法廷ミステリーの二つが同時に味わえる贅沢な作品。
ニュージーランドで登山ガイドを務めていた森尾正樹はアイスパイアリングでツアー客と共に遭難事故に巻き込まれる。何とかツアー客を救出した森尾だったが、保険金殺人の容疑で逮捕される。冤罪を強く主張する森尾だった…
遭難事故の状況と森尾に対する検察の取り調べが交互に描かれ、徐々に事故と事件の真相に近付くのだが、断片的な描写であるがゆえ、少しやきもきする。しかし、第八章からは遭難事故の真相がリアルに迫力の描写により描かれ、俄然、目が離せなくなる。さらには検察の厳しい取り調べから法廷での闘いへと畳み掛けるような展開が非常に面白