笹本稜平のレビュー一覧
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零下20度、8000メートル級への登攀物語で、猛暑をしばし忘れんと(笑)。
ナンガ・パルバットへの冬季登頂に失敗し、友人を失った主人公たちが、リベンジすべく再度”魔の山”へ挑む。
同行するのは、兄の雪辱に燃える、友人の弟。何やら、思惑ありげな彼のミステリアスな行動と、過酷な天候、さらにロシアパーティーの不穏な動き。
果たして、登頂に成功するのは、誰なのか。
キーとなるのは、「極限状態で、人としての正しい意志を貫くことができるのかどうか」。
書中、主人公たちが自分たちにことよせて話している。
「金にもならない。…そのうえ命まで失いかねない。そんなことに夢中になれる馬鹿がいるから、逆に世の中は正気 -
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登攀小説(そんな分野があるかどうかわかりませんが)の中では、私にとってはベスト3に入ると思いました(ちなみにあとの2作品は「神々の山嶺」「氷壁」です)。専門用語が多いと言えば多いのでしょうが、それが臨場感を盛り上げます。また、他の言葉に置き換えられないのだから、必要最小限の使用だと思います。
登攀のシーンは迫力もあり、心理描写も巧みでページがどんどん進みました。これは「神々の山嶺」を読んだときは、登場人物の体力の消費、山のその時々の条件が響いて読んでいてとても肉体的に疲れたことを思い出すと、迫力を感じたとはいえ、ほどよくあっさりしていたのかな、という気がします。登場人物は極限状況にあると思うの -
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ネタバレ素行調査官シリーズ第3弾。本作はややボリューミーだが、読みやすさは変わらず。
悪の巣窟たる警察内部で、綱紀粛正のため孤軍奮闘する監察課の3人。
今回もワルの権力者たちが巨額の不正マネーを儲けるという悪を許さず…。
いやそれだけならまだしも、それを摘発しようとした善良な警察官の人生を破滅に持ち込んだことを許さない、検察官たちと熱血刑事が大活躍するという話。
悪の権力者が痛い目をみる話ってのは、どうしてこうもオモロいのか。勧善懲悪の気持ちよさ!
多分、現実社会にもこういう巨悪ってのが、たくさんはびこっていて、不公平感を感じているから、せめてフィクションの世界だけでも、善良な人々が勝利してもらい -
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『挑発―越境捜査』/笹本稜平
この「越境捜査」シリーズは大好きですね。
他の警察小説などのように、派手なアクションシーンなどはないのですが、人間の内に秘めている欲望や心情を如実に表してるところが多く、それは、例えば、本庁と県警の縦割り、同じ警察官でも正義感に溢れる鷺沼と、限りなく悪徳景観に近い宮野のコンビ、一般人とヤクザのような、物語の中でもそれぞれ、対比できる構図となっています。
冒頭に述べたように、派手なアクションシーンなどない代わりに、読者も含めて、清濁併せ呑むことを強要されるかのような感覚は一番面白いところです。
だからこそ、混成タスクフォースのチームができるのでしょう。。。 -
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『破断 越境捜査』/笹本稜平
警察小説のシリーズもののうち、第3弾にあたります。著者の作品を初めて手に取ったのが、このシリーズでした。瞬時にのめりこんでいき、いつも続編が出るのを心待ちにしています。
警察小説ですが、どちらかというと、派手なアクションシーンをはじめ色濃い、味濃いシーンというより、あっさり目な印象が強いのですが、本書においては警察vs公安の図式が明確に示されており、最後はそこまでいったかという展開になっています。
神奈川県瀬谷区の山林で、白骨化した死体が発見された。死体は10年前に都内で疾走した右翼の大物。神奈川県警は自殺で片づけたが、あることに疑念を持つところから物語が始ま -
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アフガニスタンで起きた邦人殺害事件に、政治家が関与しているとの情報に、東京地検の検事と警視庁の刑事さらに公安の警部がタッグを組み、不安定なアフガニスタンで捜査を開始する。
アフガンの地方軍閥組織、タリバーンやIS等々、捜査陣を脅かす存在に、彼らは一時も気を許すことができない状況が続く。
さらに、アメリカCIAの関与。果たして彼らも敵なのか?
そして次々に明らかになる、途上国支援の美名に隠されたODA資金を巡る政権の疑惑。
指揮権が発動されてしまうのか、最後まで予断を許さない展開。
けれども、著者のこれまでの冒険小説の緊迫感までには、少し届かないかなあ。 -
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ネタバレ2時間ドラマ特番脚本みたいな警察小説。
笹本稜平の筆があるから読ませるが、これを映像化したら下手すると凡百のサスペンス劇場になってまうだろうなぁ。鹿児島指宿ご当地ものに、脚本になかった特攻隊(知覧あたりも出てくるので)あがり役が出てきたりして…。
老人誘拐救出劇、戦後のどさくさに隠れた謎、主人公と被害者老人の因縁…、ち密に描かれているからこそご都合主義的な展開もハラハラドキドキできる。ノンフィクションのだいご味は「ウソだから安心できるがウソを感じずドキドキできること」だと思っている。この作品もそうだが笹本小説はその辺実に上手くバランスをとってくれるのだ。 -
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ノンキャリアで所轄勤務の係長葛木と、キャリアの息子俊史とが、協力して事件に立ち向かうシリーズの第3弾は、全編、立てこもり犯と葛木たちとの緊迫した攻防で占められている。
立てこもり犯は何と、SITの係員だった元警官。
彼の要求は、退職のきっかけとなった事件の真相を、警察が公表することだった。
その警察幹部の隠蔽を暴くことに共感する葛木と刑事警察部門の面々。
対して、闇に葬りたい公安・警備の幹部は、元警官の射殺を画策する。
刑事部門と公安部門との虚々実々の戦いに、読み手も熱くなる。
刑事である前に一人の人間であろうとする葛木と、警察の不正を糺すために権力を追及するという息子俊史。
彼らの清々しい活 -
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ネタバレ評価は4.
内容(BOOKデーターベースより)
神奈川県瀬谷区の山林で、白骨化した死体が発見された。死体は、十年前に都内で失踪した右翼の大物。神奈川県警は自殺で片付けたが、あることに疑念を持ち捜査結果に納得しない県警の刑事がいた。宮野裕之。宮野はさっそく警視庁に赴く。捜査一課の鷺沼友哉にその疑念を話し、やがて、“不正規捜査”が始まった―。物語冒頭からトップギアで走るスピーディな展開。次々とわき起こる謎。2人の前にちらつく公安警察の影。まるで現実を見ているかのような組織の腐敗を正義で抉る、大好評シリーズ第3弾!!
安定のおもしろさ。しかし、このシリーズを読んでいると公安の腐敗、検察庁の腐敗 -
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ネタバレ評価は4.
内容(BOOKデーターベースより)
警視庁捜査一課で継続捜査を担当する鷺沼は、捜査二課からの情報をもとに“パチンコ・パチスロ業界のドン”と呼ばれる飛田を訪ねる。飛田の経営する会社にある疑惑が浮かんだためだが、そこには7年前に起きた殺人事件が絡んでいた。捜査を進める鷺沼の前に神奈川県警の宮野が現れる。宮野は七年前の事件の情報を持っていた―。鷺沼と宮野。再び手を組んだ二人に立ちはだかるのは厚い警察組織の壁。真実を掴むため組織と犯罪に闘いを挑む刑事たちの熱い姿を描いた「越境捜査」シリーズ。
それぞれの個性も分かっているので安心して読める。安定のおもしろさ。 -
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「長いものには巻かれない。太い尻尾は逃さない」がチームのスローガン。
警視庁捜査一課特命捜査二係の鷺沼と、神奈川県警のはみ出し刑事宮野、それに二係係長三好、若手刑事の井上。
彼らが、警察の闇に挑むシリーズの第4弾。
今回のターゲットは、警察官僚をも牛耳る存在の政治家。さらに、その裏でうごめく暴力団。
今までは、鷺沼たちが追いかける立場だったが、今回に限っては「流れがいつもと違うのよ。なんだか押しまくられているようで、うっかりすると濁流に呑み込まれて溺れ死にそうな気がするね」と、宮野に言わせるほどの難敵。
これが、題名の所以にもなっているようだ。
ターゲットは見えているのに、見えない圧力で押し戻